『異聞・閻魔様の副官』~水琴窟と天然石の館へようこそ!~

大和撫子

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第八話

異聞?奇談?・後編

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 紫式部さんは照れたように語る。

「……立夏ちゃんも知っていると思うんだけどね。死んだ後……源氏物語という淫らで破廉恥、不道徳な物を書いて人々を惑わせた罪とかで。地獄に落とされる事になったのよ。最後のチャンスとして閻魔様と副官、つまり篁さんね、彼らの前で申し開きする時になって閃いたの」

 ワクワクする。なんだろう? この感覚……

「お二方に源氏物語を読んで貰って、本当に風評通りなのか直々に判断して貰おう、て」

 妙に納得して頷いているあたし。自分を信じて揺るぎない精神、中身がしっかりと伴うから説得力が違うなぁ。確かに、源氏物語自体には今の官能小説みたいに直接的な表現は一切なかったもんね。ただ、読み手が色々妄想出来るように匂わす表現がズバ抜けていただけで……。

「それじゃぁ、結果はやっぱり……?」

 自然に問いかけていた。大きく頷いて二ッと自身の笑みを浮かべる式部さん。

「『もののあわれ』『わび』『さび』が絶妙に表現されていて素晴らしい芸術だ、て」
「閻魔様も私も、すっかり夢中になってしまいましたねぇ」

 篁さんが話しを引き継いだ。

「そうこうしている内に、時は流れて室町時代に突入。死者はドンドン増えて地獄の職員たちはてんてこ舞いに。そこで、紫式部さんにもお仕事を手伝って貰おうという話になったんですよ」
「そうなの。閻魔副官補佐としてね」

 紫式部さんは言った。

「なるほど、それでは皆さん、元仕事関係の上司と部下、という関係だったのですね」
「そういう事になりますかね。けれども時が過ぎて…随分長く閻魔様の副官を務めて来たし。そろそろ転生しても良いかな、という風に思えるようになりまして。転生するならいつの時代に、容姿は? どんな目標を持って、という事をランチの際に皆さんで話し合うようになって。それで、どうせなら三人で生前の不満を解消しつつも必要な方々に癒しと活力の場を与えられたら良いね、という話になったのですよ」
「そして現在を選んだ?」
「ええ。私たちは冥府の職員として働いた事で、生前の業を解消した事にもなりますので、容姿や地位、能力などはある程度考慮されるという特権があるのですよ。この時代を選んだのは、心が砂漠のように渇き切った方々が数多くいそうでしたからね」
「へぇ?」

 紫式部さんと小野小町さんが顔を見合わせて微笑み合った。そして小野小町さんが口を開く。

「せっかくだから、全員現代風の美人設定にして貰ったの。美の基準で時代と共に完全に変わっていくから。小野篁がオーナー兼セラピスト、ヒーリングアイテム担当、紫式部さんは店長でもあって、かつ厨房兼ハーブセラピー担当、私は厨房とウェイトレス兼色彩セラピー担当。とはいっても、厨房関係や食事を運んだりとかは臨機応変に三人全員でこなす、て感じね」
「そうだったんですね。皆さん、そうしてそれぞれの得意分野を活かしてらっしゃる。……正直言って羨ましいです。私、タロットカードが大好きで。少し前、電話占いのパートをしていたんですけど……」

 自分でも驚くほど正直に本音を吐露していた。恐らく、私を見つめるスタッフたちの視線が、とても穏やかで好意的に感じたからだろうと思う。
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