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第十一話
女同士で歓迎会
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「あ、あの! や、やっぱり手伝います!」
と言って立とうとするあたしを、ちょうど取り皿と箸を人数分持ってきた清少納言さんが
「いいからいいから。今日は立夏ちゃんの歓迎会なんだから座って座って」
と笑う。続いて、瓶ビールや缶酎ハイ、烏龍茶のペットボトルなどとコップをトレイに乗せて運んで来る小野小町さん。
「そうそう、私たちが強引に誘ったんだし気にしない気にしない」
そう言いながら、テーブルの上にトレイごと置き並べ始める。清少納言さんがカセットコンロをセットし始めた。
「はーい、お待たせ」
紫式部さんがお鍋を持って来た。中には沢山の具材がぎっしりと入っている。そして紫式部さん、小野小町さん、清少納言さん、あたしの四人全員がテーブルを囲んで椅子に座った。
「立夏ちゃんは醤油タレと胡麻ダレ、どっち派かしら? それとも両方? 因みに私たち三人は両方使う派なんだけど」
「あ、私も両方で宜しいでしょうか? すみません、図々しく……」
「とんでもない! 全員両方ね」
と言いつつ、小野小町さんが醤油タレを、紫式部さんが護摩ダレを小皿に注ぎ始めた。
「遠慮なんかする必要ないわよ。これから一緒に働く仲間なんですもの。まぁ、私は水木の定休日にしか顔を出さないけど。普通にお客として結構利用させて貰ってるんだけどね。あ、立夏ちゃんは何飲む? ビールか烏龍茶、緑茶、レモンハイがあるけど」
清少納言さんは三つのグラスにビールを注ぎながら言った。
「あ、烏龍茶でお願いします」
「烏龍茶ね、お代わりあるから好きなの飲んでね」
「はい、有難うございます」
烏龍茶が入ったグラスを受け取る。ビ-ル、と言いたいところだが、直ぐに酔ってしまいそうだ。
「いきなりの展開で気後れして遠慮しちゃう気持ちは分かるけど、ホント、気を遣わなくて良いから。私たちは千年以上も色んな時代、色々な人間模様をみてきてるし。ちょっとやそっとじゃ動じないから、気軽に何でも言ってね」
紫色部さんが締め括る。どこまで本当の話なのか。また夢なの現実なのか判別がつかない。でも、夢ならこのまま醒めないで欲しい、と思った。
……ここで働いてみたい……
強くそう感じはじめていた。眠ったら、一人旅の途中のあたしに戻るのだろうけど。今は、平安時代に活躍した女性たちと楽しみたい。平安を代表する女性たちに、歓迎会を開いて貰えるなんて。夢でもなかなかな見られるもんじゃないもの。
「はい、立夏ちゃん最初に取って」
紫色部さんが菜箸を渡してくれる。
「有り難う御座います。お先に失礼します」
とこたえながら受け取り、まずは醤油タレが注がれた小皿に白菜を入れた。次に帆立、京野菜、甘エビ、豚肉と入れていく。そしてたんまり盛られた小皿を置くと、両手で菜箸を紫色部さんに返した。
紫色部さんが胡麻ダレを注がれた小皿に、鍋から具材をとっていく。
篁さんがこの場に居ないのは残念だけど、平安女子会なんて魅力的過ぎる。篁さんは、「女性同士積もる話もあるでしょう、私は次回参加にしますよ」と館の三階に帰った。彼の部屋があるらしい。二階は紫色部さんの部屋と小野小町さんの部屋が隣合っており、 今は紫色部さんのお部屋にお邪魔している。
びっくりしたのは、「せっかくだから泊っていきなさいよ」という紫式部さん達に対して、それはさすがに悪いし、宿を取ってあるからと断ろうとすると……
「ご旅行中宿泊予定だった旅館は全てキャンセルの連絡をしておきましたよ。手続きも済んでいますから、後でファックスが届きます。そしたら書類、お渡ししますね」
と当然のように篁さんが言って来た事だ。あたし、泊まる旅館の名前なんか言ったっけ……? なんだか記憶が曖昧だ。けれども不思議なほど不安も不審も感じず、それどころかワクワクしていた。
「結局、小野小町さんの本命は誰だったのよ?」
清少納言さんが身を乗り出す。あたしも興味ありだ。
「またその話? ひ・み・つ!」
小野小町さんは妖艶に微笑んだ。
と言って立とうとするあたしを、ちょうど取り皿と箸を人数分持ってきた清少納言さんが
「いいからいいから。今日は立夏ちゃんの歓迎会なんだから座って座って」
と笑う。続いて、瓶ビールや缶酎ハイ、烏龍茶のペットボトルなどとコップをトレイに乗せて運んで来る小野小町さん。
「そうそう、私たちが強引に誘ったんだし気にしない気にしない」
そう言いながら、テーブルの上にトレイごと置き並べ始める。清少納言さんがカセットコンロをセットし始めた。
「はーい、お待たせ」
紫式部さんがお鍋を持って来た。中には沢山の具材がぎっしりと入っている。そして紫式部さん、小野小町さん、清少納言さん、あたしの四人全員がテーブルを囲んで椅子に座った。
「立夏ちゃんは醤油タレと胡麻ダレ、どっち派かしら? それとも両方? 因みに私たち三人は両方使う派なんだけど」
「あ、私も両方で宜しいでしょうか? すみません、図々しく……」
「とんでもない! 全員両方ね」
と言いつつ、小野小町さんが醤油タレを、紫式部さんが護摩ダレを小皿に注ぎ始めた。
「遠慮なんかする必要ないわよ。これから一緒に働く仲間なんですもの。まぁ、私は水木の定休日にしか顔を出さないけど。普通にお客として結構利用させて貰ってるんだけどね。あ、立夏ちゃんは何飲む? ビールか烏龍茶、緑茶、レモンハイがあるけど」
清少納言さんは三つのグラスにビールを注ぎながら言った。
「あ、烏龍茶でお願いします」
「烏龍茶ね、お代わりあるから好きなの飲んでね」
「はい、有難うございます」
烏龍茶が入ったグラスを受け取る。ビ-ル、と言いたいところだが、直ぐに酔ってしまいそうだ。
「いきなりの展開で気後れして遠慮しちゃう気持ちは分かるけど、ホント、気を遣わなくて良いから。私たちは千年以上も色んな時代、色々な人間模様をみてきてるし。ちょっとやそっとじゃ動じないから、気軽に何でも言ってね」
紫色部さんが締め括る。どこまで本当の話なのか。また夢なの現実なのか判別がつかない。でも、夢ならこのまま醒めないで欲しい、と思った。
……ここで働いてみたい……
強くそう感じはじめていた。眠ったら、一人旅の途中のあたしに戻るのだろうけど。今は、平安時代に活躍した女性たちと楽しみたい。平安を代表する女性たちに、歓迎会を開いて貰えるなんて。夢でもなかなかな見られるもんじゃないもの。
「はい、立夏ちゃん最初に取って」
紫色部さんが菜箸を渡してくれる。
「有り難う御座います。お先に失礼します」
とこたえながら受け取り、まずは醤油タレが注がれた小皿に白菜を入れた。次に帆立、京野菜、甘エビ、豚肉と入れていく。そしてたんまり盛られた小皿を置くと、両手で菜箸を紫色部さんに返した。
紫色部さんが胡麻ダレを注がれた小皿に、鍋から具材をとっていく。
篁さんがこの場に居ないのは残念だけど、平安女子会なんて魅力的過ぎる。篁さんは、「女性同士積もる話もあるでしょう、私は次回参加にしますよ」と館の三階に帰った。彼の部屋があるらしい。二階は紫色部さんの部屋と小野小町さんの部屋が隣合っており、 今は紫色部さんのお部屋にお邪魔している。
びっくりしたのは、「せっかくだから泊っていきなさいよ」という紫式部さん達に対して、それはさすがに悪いし、宿を取ってあるからと断ろうとすると……
「ご旅行中宿泊予定だった旅館は全てキャンセルの連絡をしておきましたよ。手続きも済んでいますから、後でファックスが届きます。そしたら書類、お渡ししますね」
と当然のように篁さんが言って来た事だ。あたし、泊まる旅館の名前なんか言ったっけ……? なんだか記憶が曖昧だ。けれども不思議なほど不安も不審も感じず、それどころかワクワクしていた。
「結局、小野小町さんの本命は誰だったのよ?」
清少納言さんが身を乗り出す。あたしも興味ありだ。
「またその話? ひ・み・つ!」
小野小町さんは妖艶に微笑んだ。
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