いらっしゃいませ!フォーチュン喫茶「本源郷」

大和撫子

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第四話

ついてない=憑いてない?! その四

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「1枚目、過去・運命の輪・リバース。2枚目、現在・力・リバース。3枚目、未来・ソード2・正位置」

 まずはタロットが示した通りに名前を読み上げた。少し緊張した様子で、彼は鑑定結果に聞き入る。ウェイト版78枚と、マルセイユ版は大アルカナ22枚と、コート(人物)カード16枚、ヌーメラル(数字)のカードをカップ10枚、ワンド10枚、ソード10枚、コイン(ウェイト版ではペンタクルと呼ぶ)10枚の束に分けて横一列に並べてあった。

 今回はマルセイユ版大アルカナ22枚を手に取る。大きく崩して両手でシャッフルをし、一つにまとめてよく切る。先ほどと同じ過程を得て彼にも参加してもらう。マルセイユ版は正位置でしか解釈しない為、彼からタロットを受け取ると上から7枚目を表に返した。

……悪魔? まさか、何か憑いてる? それとも詐欺、もしくは強い依存……

 どう解釈するか迷った為、どういう事なのかもう一枚補助カードを引こうと思った。

『せっかく視えるんだから、シャットアウトしないで視ればいいのに』

 突如、太宰が彼の右横に姿を現した。

……先生! 鑑定中に!……

 真帆は心の中で叫ぶ。

……そう目くじら立てないでよ。今回、ちょいと占いの範疇を超えそうだから出てきてあげたのに。視る気になれば視えるだろ? ツイてるモノがさ。それに、君みたいな可愛い子が赤の他人の男と密室に二人だけなんて、危ないなぁ。紳士の僕としては、見過ごせないよ……

 と彼は右手で前髪をかきあげた。

……(て、そういう事先生がいっちゃいますか、と言いたいけど…….心の声はダダ漏れなのよね)……

『嫌だなぁ。僕は獣じゃないよー』

……やっぱり、ダダ漏れですよね。えーとですね、一応、その辺りも配慮されてまして。万が一の際は防犯ブザーを鳴らせるよう、スタッフ全員ポケットサイズのベルを持ち歩いているんです。オーナーの手作りなんですけどね……

『なるほどね。で、まぁ、それならいいや。で、この彼にツイてるモノ、視えるだろ?』

 そうやって太宰とやり取りをしてる間も、真帆は「ソードⅡの件で『悪魔』のカードが出たけれど、それってどういう意味? 何か憑いてるの? もう少し変わりやすく教えて」と心の中でタロットにま質問しながら、補助カードを引く。マルセイユ版大アルカナの残りの21枚をシャッフルし一つにまとめ、よく切る。そして上から7枚目を引いて表に返した。

 カードが示したのは………

……節制。この場合の解釈って、もし幽霊とか妖魔とか、恐ろしい類なら「死神」が出たりするから、人ではないけれども悪とも言い難い、みたいな存在、よね……

 と感じながら、ふと太宰と目が合う。彼は「ほらね!」というように真帆を見ている。

「何なに? どういう結果?」

 当の東自身は興味津々で身を乗り出す。真帆は状況的に仕方無く、久々に霊などの人以外の者を意識的に視る力を少しだけ解放した。憑いているものに周波数を合わせるようにして彼の背後を見つめた。


 すると、徐々に彼の右耳あたりにグレーの靄《もや》が浮かび始め、それは少しずつ何かの形を採り始めた。それは、彼の首に枯れ枝みたいに細い灰色の腕を巻き付けた身の丈100cmほどの

……妖? 人の負の念宿るモノ……

 真帆は直感する。それは下腹ぽっこり、短く細い足、顔は大きくて身長の半分ほどあろうか。額が大きく張り、眉も睫毛も無くギョロリとした魚みたいな目。口はへの字で穴子のようだ。髪は落ち武者みたいにザンバラ髪で鉛色だ。灰色の肌に白茶けたボロ布をまとっている。

 それらが、肉眼で直接見える、と言うよりはまさに第三の目に映り込み、脳内に営巣が浮かび上がる。そんなイメージである。

『ドウセ上手クイカナイ、ドウセ無理、イイナアイツハ、ツイテナイ、ツマラナイ……』

 鼻歌を歌うように嬉しいそうに呟くしわがれ声が、真帆の耳に直接響く。

……人間の負の気持ちを養分にしている妖だ。ポジティブに気持ちを切り替えられたらすぐ離れていく感じかな……

 真帆は分析する。

……でも、何で彼に憑いたのかしら?……

『拾い物だよ、彼に聞いてごらん』

 妖の少し後ろで、ニコニコ見守っていた太宰がアドバイスした。

「最近、何か拾ったりしませんでしたか?」

 真帆は言われるままに、彼に問いかけた。彼はアッと何か思い出したように眉をあげ

「あ! 忘れてた! そういえば前、店の床に女性用の髪留めみたいのが落ちてて。昼休みにでもデパートの守衛さんに届けよう、て思ったままバタバタしていてすっかり忘れてたよ!」

 彼は言った。ホラね、と太宰はウィンクして見せる。

「それを境に、ツイてない事が起こるようになったのでは有りませんか?」
「……そういえば……」

 彼は色々と思い当たる節があるようだ。

「えーとね、これなんだ。帰ったらすぐ守衛さんに届けなきゃ」

 と言って、彼はバッグの中からティッシュに来るんだ手の平サイズのものを取り出した。それをテーブルの上に置き、ティッシュを広げる。すると、黒字に赤や青、ピンクに黄色などの色とりどりのスワロフスキーの大小がリボン型にあしらわれた派手なバレッタだった。

「まさか、ここに何かが憑いている……とか?」

 と、おそるおそる真帆を見つめる。

「少々お待ちください」

 じっとバレッタを見つめる真帆。特に何も感じない。持ち主が『どこに落としたんだろうな?』と感じているくらいか。

『これはね、こういう事だよ。僕が言った後に続いて言ってみて』

 太宰は言った。真帆は戸惑いつつも、無意識に彼の言葉に従う。

『髪留め自体は、若い女性がたまたまそこに偶然落としてしまっただけで……』
「髪留め自体は、若い女性がたまたまそこに偶然落としてしまっただけで……」

『そこにたまたま、人々の不平不満や嫉妬、怒りなどの負の念から生まれた妖《あやかし》が格好の餌を求めてさまよっていて、その髪留めが目に留まった。そこに憑いて、拾った人間を餌にすれば良い、と入り込んだ。この場合の餌とは、この妖は人間の運気を吸い取る事、これが餌となる』
「そこにたまたま、人々の不平不満や嫉妬、怒りなどの負の念から生まれた妖《あやかし》が格好の餌を求めてさまよっていて、その髪留めが目に留まった。そこに憑いて、拾った人間を餌にすれば良い、と入り込んだ。この場合の餌とは、この妖は人間の運気を吸い取る事、これが餌となる」

 真帆は太宰からの言葉をそのまま口にしながら、その映像が脳内に浮かび上がっていた。
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