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第七話
文豪、恋の手ほどき?! 序章
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時刻は午後2時。ランチ時のピークの第一段が過ぎたところだ。これからほどなくして第二段のピークの波がやってくる。これが午後4時前あたりまで続く。その為通常、従業員の昼休憩は早めに取る1名が午前10時~と、午後4時頃から90分、1時間ほどずらして休憩となる。合間を見て10分程度の休憩が別に設けられている。そして夜の休憩が30分ほどある。
そんな休憩のあり方だったが、今日は午後2時からみのりと真帆の二人が昼休憩を取っていた。特例で、オーナーと華乃子が木曜日は通常休みのシフトのアルバイト従業員二人に、昼ピーク時だけ臨時でシフトに入ってもらうように依頼したのだ。里美も頼子も近くに住む主婦で、快諾してくれた。理由は、みのりの見合いの件を、真帆が占う時間を取る為の配慮だ。故に、スタッフ全員が知っている。
二人は休憩に入った途端に、まかないのきのことツナのパスタとオニオンスープを素早く平らげ、時間いっぱい占いに費やすつもりだ。今、みのりの見合いについてどうなるかを、ウェイト版タロット78枚でケルト十字という展開法に並べて占う最中だ。
……うーん、乗り気じゃない事がありありと出てるなぁ。お相手の方は、うーん、なるほどね。あれ? 障害・鍵となる場所にペンタクル10、本人の願望を示す場所にペンタクルナイト……
時にウェイト版は、カードに描かれている絵柄そのままを示す時がある。真帆は言葉を選んで慎重に切り出した。
「……お相手の方、ご自身のお母様との結びつきが強いですね。恐らく、お母様のお友達の息子さんが結婚したか婚約したかで、その対抗意識で今回のお見合い話を勢いで受けた、と言う感じに出ています」
「それって、俗に言う超マザコン、て奴?」
「えぇ、まぁ。あくまで私が占った範囲内でのお話ですけれど」
「じゃ、お断りしても後腐れ無さそうね」
「ええ。ご子息もお母様に言われたからお見合いをする感じで、お母様もまだまだ息子さんを手元に置いて可愛がりたい、と出ています」
「あら、嫁さんになる人は大変だぁ」
「うーん、この方自体、結婚の必要性を感じてないかも……」
「お母さんLoveかぁ」
みのりは何だかとても嬉しそうだ。そこで、真帆は思い切って切り込んでみる。
「……それで、その……みのり先輩、実はかなり前から気になる方がいらっしゃるのではありませんか?」
みのりの表情が、瞬時に驚きと戸惑いに変貌を遂げた。
「え……?」
ほんの少しだけ、沈黙が二人を包みこむ。部屋の壁時計が、コチコチと時の流れを刻む音がやけに響いた。
「そっかぁ、やっぱりバレちゃったかぁ」
みのりは諦めたように笑った。
「あ、いいえ。タロットで占ったら出て来たって感じで。今の今まで全く気付きませんでしたし」
「うん。だって隠してたからね。それに、恋愛の話にならなかったもんねぇ」
「確かに」
「それで、その相手は何て出てる? いいよ、出てる事ズバッて言って大丈夫だよ」
みのりは腹を括った様子だ。
「あ、はい。では……今出ている感じですと、その男性はとても優しくて思いやり深い方で、みのり先輩は結構長い間、ただ見つめているだけ……と。そんな感じです」
真帆はカードから読み取れる事をそのまま伝えた。
「あーぁ、そのまんまだぁ。あははっ、バレバレだぁ。そうなんだよね。片想いなの。ずっと見てるだけ」
「なるほど。でも、その方……かなり身近にいらっしゃるんじゃないですか?」
「うーん、そうなんだよねぇ。よく話はするんだけど、でもあんまりプライベートの突っ込んだ話はしないって言うか。そうだなぁ……じゃぁ、彼の事って占って貰える?」
「あ、はい、勿論です」
「気を遣わなくていいからね。もし彼に、彼女がいたりしたらハッキリ言って頂戴ね」
「はい、わかりました」
真帆は笑顔で応じながら、今展開していたタロットを集め、一つの束にまとめてシャッフルを始めた。そしていつもの手順をふみ、みのりにも参加して貰ってカードを展開していく。
「へぇ? 初めて見る展開法だね」
「あ、そうですね、主に二人の対人関係を集中して視る時に適している展開法で、変形ヘキサグラム、て言うんです」
「ヘキサグラム……言われて見れば、六芒星に二つの角が生えてるみたいな形ね」
「ですよね」
真帆は展開されたカードのリーディングを始めた。みのりはドキドキしながら待つ。
……えー??? 何コレ? 初めて視るケースなんだけど。どう読めば良いのかしら……
真帆は改めて展開されたカードを見て愕然とした。それは初めて見るパターンだった。
……お相手に彼女とか居ない、フリーで、しかもみのり先輩の事気になってる。それなのに、二人の未来は「世界・リバース」最終結果は「死神・正位置」。つまりこの場合は成就しないで未完成のまま終わるって、どういう事よ???……
どう伝えようか迷うほどに、焦ってしまう。
「何て出た? ホント、気を遣わなくていいからね」
「あ、はい。少々お待ちを」
真帆は何でもない事のように笑顔と平常心を装いつつ、自分に喝を入れる。
……落ち着け、真帆! 焦るな! こう示した原因は必ずある筈だから! お互いに両想いなのに成就しないまま終わる、この原因を探れば良いんだわ……
こんな時の為に、テーブルの端の方に予備で用意してあるウェイト版タロット二種類を両手に取る。それは手の平サイズの小さいもので、一つは色々な子猫が描かれたもの、もう一つはモルモットが描かれた非常に可愛らしいものだ。子猫のタロットをテーブルの端の方で素早くシャッフルし始める。このように緊急事態が発生した際、場所を取らずすぐに占えるようにミニサイズを用意しているのだ。素早く通常の手順でみのりにも参加して貰い、裏返しにしたタロットの束の上から7枚目を引いて表に返す。
……カップ5・正位置か。成る程、諦めモード。望み無しだと思い込んでるのか。それで、そのまま……
モルモットのタロットをシャッフルする。今度は自分でみのりの想い人側の原因を探る為だ。裏が返した束から同じように上から7枚目を引く。
……隠者・正位置。あぁ、考え過ぎて行動に移せないままずっと来てしまって。挙句に諦めてしまう、て感じか……
真帆は再び言葉を慎重に選びながら切り出した。
「ご縁はあるし、お付き合いが始まってもおかしくなさそうな状況なのに、成就しないまま自然消滅、と出ていて……」
「えーーーー? 何それ?」
「ですよね。それで、原因はお互いに最初から諦めモードというか、特にお相手の方がそう言う感じが強く出ています」
「そ、そうなの? じゃぁ……私から思い切って告白したら、上手く行く……とか?」
みのりは頬を紅潮させながら遠慮がちに聞いて来た。
……何だろう? なんか引っかかるなぁ。そんな単純に解決出来なそうというか……
真帆は何となく予感がしつつも、思い込みは厳禁だと自らを戒める。
「じゃあ、みのりさんから告白したらどうなるかとそのアドバイスを見てみますね」
「宜しく」
再び、最初に展開していた変形ヘキサグラムを崩し、カード78枚をシャッフルし始めた。
そんな休憩のあり方だったが、今日は午後2時からみのりと真帆の二人が昼休憩を取っていた。特例で、オーナーと華乃子が木曜日は通常休みのシフトのアルバイト従業員二人に、昼ピーク時だけ臨時でシフトに入ってもらうように依頼したのだ。里美も頼子も近くに住む主婦で、快諾してくれた。理由は、みのりの見合いの件を、真帆が占う時間を取る為の配慮だ。故に、スタッフ全員が知っている。
二人は休憩に入った途端に、まかないのきのことツナのパスタとオニオンスープを素早く平らげ、時間いっぱい占いに費やすつもりだ。今、みのりの見合いについてどうなるかを、ウェイト版タロット78枚でケルト十字という展開法に並べて占う最中だ。
……うーん、乗り気じゃない事がありありと出てるなぁ。お相手の方は、うーん、なるほどね。あれ? 障害・鍵となる場所にペンタクル10、本人の願望を示す場所にペンタクルナイト……
時にウェイト版は、カードに描かれている絵柄そのままを示す時がある。真帆は言葉を選んで慎重に切り出した。
「……お相手の方、ご自身のお母様との結びつきが強いですね。恐らく、お母様のお友達の息子さんが結婚したか婚約したかで、その対抗意識で今回のお見合い話を勢いで受けた、と言う感じに出ています」
「それって、俗に言う超マザコン、て奴?」
「えぇ、まぁ。あくまで私が占った範囲内でのお話ですけれど」
「じゃ、お断りしても後腐れ無さそうね」
「ええ。ご子息もお母様に言われたからお見合いをする感じで、お母様もまだまだ息子さんを手元に置いて可愛がりたい、と出ています」
「あら、嫁さんになる人は大変だぁ」
「うーん、この方自体、結婚の必要性を感じてないかも……」
「お母さんLoveかぁ」
みのりは何だかとても嬉しそうだ。そこで、真帆は思い切って切り込んでみる。
「……それで、その……みのり先輩、実はかなり前から気になる方がいらっしゃるのではありませんか?」
みのりの表情が、瞬時に驚きと戸惑いに変貌を遂げた。
「え……?」
ほんの少しだけ、沈黙が二人を包みこむ。部屋の壁時計が、コチコチと時の流れを刻む音がやけに響いた。
「そっかぁ、やっぱりバレちゃったかぁ」
みのりは諦めたように笑った。
「あ、いいえ。タロットで占ったら出て来たって感じで。今の今まで全く気付きませんでしたし」
「うん。だって隠してたからね。それに、恋愛の話にならなかったもんねぇ」
「確かに」
「それで、その相手は何て出てる? いいよ、出てる事ズバッて言って大丈夫だよ」
みのりは腹を括った様子だ。
「あ、はい。では……今出ている感じですと、その男性はとても優しくて思いやり深い方で、みのり先輩は結構長い間、ただ見つめているだけ……と。そんな感じです」
真帆はカードから読み取れる事をそのまま伝えた。
「あーぁ、そのまんまだぁ。あははっ、バレバレだぁ。そうなんだよね。片想いなの。ずっと見てるだけ」
「なるほど。でも、その方……かなり身近にいらっしゃるんじゃないですか?」
「うーん、そうなんだよねぇ。よく話はするんだけど、でもあんまりプライベートの突っ込んだ話はしないって言うか。そうだなぁ……じゃぁ、彼の事って占って貰える?」
「あ、はい、勿論です」
「気を遣わなくていいからね。もし彼に、彼女がいたりしたらハッキリ言って頂戴ね」
「はい、わかりました」
真帆は笑顔で応じながら、今展開していたタロットを集め、一つの束にまとめてシャッフルを始めた。そしていつもの手順をふみ、みのりにも参加して貰ってカードを展開していく。
「へぇ? 初めて見る展開法だね」
「あ、そうですね、主に二人の対人関係を集中して視る時に適している展開法で、変形ヘキサグラム、て言うんです」
「ヘキサグラム……言われて見れば、六芒星に二つの角が生えてるみたいな形ね」
「ですよね」
真帆は展開されたカードのリーディングを始めた。みのりはドキドキしながら待つ。
……えー??? 何コレ? 初めて視るケースなんだけど。どう読めば良いのかしら……
真帆は改めて展開されたカードを見て愕然とした。それは初めて見るパターンだった。
……お相手に彼女とか居ない、フリーで、しかもみのり先輩の事気になってる。それなのに、二人の未来は「世界・リバース」最終結果は「死神・正位置」。つまりこの場合は成就しないで未完成のまま終わるって、どういう事よ???……
どう伝えようか迷うほどに、焦ってしまう。
「何て出た? ホント、気を遣わなくていいからね」
「あ、はい。少々お待ちを」
真帆は何でもない事のように笑顔と平常心を装いつつ、自分に喝を入れる。
……落ち着け、真帆! 焦るな! こう示した原因は必ずある筈だから! お互いに両想いなのに成就しないまま終わる、この原因を探れば良いんだわ……
こんな時の為に、テーブルの端の方に予備で用意してあるウェイト版タロット二種類を両手に取る。それは手の平サイズの小さいもので、一つは色々な子猫が描かれたもの、もう一つはモルモットが描かれた非常に可愛らしいものだ。子猫のタロットをテーブルの端の方で素早くシャッフルし始める。このように緊急事態が発生した際、場所を取らずすぐに占えるようにミニサイズを用意しているのだ。素早く通常の手順でみのりにも参加して貰い、裏返しにしたタロットの束の上から7枚目を引いて表に返す。
……カップ5・正位置か。成る程、諦めモード。望み無しだと思い込んでるのか。それで、そのまま……
モルモットのタロットをシャッフルする。今度は自分でみのりの想い人側の原因を探る為だ。裏が返した束から同じように上から7枚目を引く。
……隠者・正位置。あぁ、考え過ぎて行動に移せないままずっと来てしまって。挙句に諦めてしまう、て感じか……
真帆は再び言葉を慎重に選びながら切り出した。
「ご縁はあるし、お付き合いが始まってもおかしくなさそうな状況なのに、成就しないまま自然消滅、と出ていて……」
「えーーーー? 何それ?」
「ですよね。それで、原因はお互いに最初から諦めモードというか、特にお相手の方がそう言う感じが強く出ています」
「そ、そうなの? じゃぁ……私から思い切って告白したら、上手く行く……とか?」
みのりは頬を紅潮させながら遠慮がちに聞いて来た。
……何だろう? なんか引っかかるなぁ。そんな単純に解決出来なそうというか……
真帆は何となく予感がしつつも、思い込みは厳禁だと自らを戒める。
「じゃあ、みのりさんから告白したらどうなるかとそのアドバイスを見てみますね」
「宜しく」
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