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第八話
恋時雨 その一
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「お疲れ様」
「お疲れ様です」
夜の休憩30分の際、真帆と蒼介が同時に休憩に入る。二人ともトレイを両手に持ち、まかないの鮭おむすびを真帆が一つ、蒼介が二つ。野菜スープと冷たい麦茶を乗せてテーブルに向かい合って座る。
「二人だけで休憩入るのって珍しいね」
「そうですね」
……うわぁ、なんか緊張しちゃう。でもこれはオーナーと華乃子さんがみのり先輩たちの事を打ち合わせするように設けてくれた時間だから、有効に使わないと。30分なんてすぐ終わっちゃう……
真帆は逸る鼓動を見せぬように平常心を装いながら話の要について切り出す。
「芥川先生から伺いました。先輩が、蒼介先輩からみのり先輩の事相談受けたってお話」
「あ、あぁ。びっくりしたけど、話は途中でさ。絶対誰にも言わないでくれって言われたのに、これじゃ僕が口が軽くて約束が守れない奴になっちゃう」
彼は苦笑している。
「でもそれは、事情が事情だし。仕方ない事かな、と」
「まぁ、臨機応変にいかないとだけどさ。それで、早乙女先輩の事占ってあげたんだよね? 二人はどんな感じ?」
「お二人とも前から気になってたみたいですよ」
「なんだぁ、両想いか。ならこんな大事にしなくてもお互い素直になれば簡単……だったらこんな事になってないのか」
真帆の困惑したような表情で察する。
「そうなんですよ。お互いに、相手は自分の事を異性の対象と見てない、と最初から諦めてしまってて。特に、蒼介先輩は今回のお見合い話で落ち込み激しくて自信喪失。仮にみのり先輩から告白しても信じられなくて余計頑なに、と占いで出ました」
「あー、マジかぁ。対処方法は?」
「静観、必要があれば手助け、でもこのままだと……」
「すれ違ったままジ・エンド、か」
「はい……」
「だから、太宰先生たちが……」
同時にため息をつく二人。
「でも、僕とみのりちゃん、オーナーと華乃子ちゃん、芥川先生と太宰先生だけで、どうやって話し合えば良いんだろう? だってお見合いは次の休みの火曜日だろ?今日は日曜日だし、全員で話し合う時間無くないか?」
「あ! 言われてみたらそうですよねぇ……」
『その点はご心配無く!』
「「太宰先生、芥川先生」」
戸惑い始めた二人の左隣に、太宰が現れた。同時に、太宰の後ろに芥川も。
『この件は「linea《リネア》」でやり取りしよう!』
「「linea《リネア》で??」
真帆と彰仁は、同時に驚いて声をあげる。「linea《リネア》」とは、ある大手企業が提供するSNSの呼び名で、今は携帯でのやり取りは、メールよりもほとんどこちらが主流になっていた。
『うん。僕が「linea《リネア》」でさ、ひと呼んで「みのり&蒼介を結ぶ会」てlinea《リネア》グループを作るよ。一度、生身の人間とやり取りして見たかったんだよね。亡者同士だけじゃなく』
太宰は嬉しそうに笑った。恥ずかしそうに二人を見つめている芥川とのコントラストがが印象的だ。
「……て言うか、普通に人間と同じように携帯とかパソコンとかなさるんですか?」
真帆の問いかけに、彰仁も「そうだよ、それそれ」と頷いている。
『ほら!』
「あ! 見たところ透けてるだけで普通の黒い携帯……」
太宰は左の袂から携帯を取り出して見せた。
『私のも……』
彼のはワインカラーのようだ。いずれも透けているだけで人間が使うものと大差は無い。芥川はそのまま説明を始めた。太宰は何やら携帯を操作している。
『あちらの世界でも携帯やパソコンのようなものは存在しているんだよ。亡者同士でやり取りしたりね。こちらの世界とさほど変わらないよ、使い方もね。実は、聞いた事あると思うけれど所謂霊界から人間界の伝言とかはね、携帯やパソコン、ラジオなんかの通信機器からの方が伝わり易いんだ。ま、電磁波が多いところに霊現象が多い、て言う奴さ。パソコンから霊が出現とか、有り得ない事じゃないよ』
彼が説明し終わると同時に、彰仁と真帆の携帯にlineaの受信が入る。
『あ、僕からの友達申請が来てると思うから承認してね。そしたら「みのりと蒼介を結ぶ会」のグループに招待するから』
と得意顔の太宰。二人は画面を開くと、よく見掛ける顎に手を当てた太宰の写真がプロフィール画像となり「太宰治さんから友達申請が来ています」というメッセージが来ていた。
「えーーー? まだ僕達のlinea先も教えて無いのに?」
彰仁の疑問に、真帆も頷きながら太宰を見つめる。
『それは幽霊の得意分野ってもんだよ。よく、怪談話にあるだろう? 宛先不明の着信履歴とかさ』
ニヤリと彼は笑った。ゾーッと背筋に寒気を覚える彰仁に、「あー、なるほど」と納得する真帆。二人は太宰からの友達申請を許可した。すぐに、太宰から「みのりと蒼介を結ぶ会」のグループ招待のメッセージが届く。
こうして彼らは、みのりと蒼介を応援していく事となったのである。
「お疲れ様です」
夜の休憩30分の際、真帆と蒼介が同時に休憩に入る。二人ともトレイを両手に持ち、まかないの鮭おむすびを真帆が一つ、蒼介が二つ。野菜スープと冷たい麦茶を乗せてテーブルに向かい合って座る。
「二人だけで休憩入るのって珍しいね」
「そうですね」
……うわぁ、なんか緊張しちゃう。でもこれはオーナーと華乃子さんがみのり先輩たちの事を打ち合わせするように設けてくれた時間だから、有効に使わないと。30分なんてすぐ終わっちゃう……
真帆は逸る鼓動を見せぬように平常心を装いながら話の要について切り出す。
「芥川先生から伺いました。先輩が、蒼介先輩からみのり先輩の事相談受けたってお話」
「あ、あぁ。びっくりしたけど、話は途中でさ。絶対誰にも言わないでくれって言われたのに、これじゃ僕が口が軽くて約束が守れない奴になっちゃう」
彼は苦笑している。
「でもそれは、事情が事情だし。仕方ない事かな、と」
「まぁ、臨機応変にいかないとだけどさ。それで、早乙女先輩の事占ってあげたんだよね? 二人はどんな感じ?」
「お二人とも前から気になってたみたいですよ」
「なんだぁ、両想いか。ならこんな大事にしなくてもお互い素直になれば簡単……だったらこんな事になってないのか」
真帆の困惑したような表情で察する。
「そうなんですよ。お互いに、相手は自分の事を異性の対象と見てない、と最初から諦めてしまってて。特に、蒼介先輩は今回のお見合い話で落ち込み激しくて自信喪失。仮にみのり先輩から告白しても信じられなくて余計頑なに、と占いで出ました」
「あー、マジかぁ。対処方法は?」
「静観、必要があれば手助け、でもこのままだと……」
「すれ違ったままジ・エンド、か」
「はい……」
「だから、太宰先生たちが……」
同時にため息をつく二人。
「でも、僕とみのりちゃん、オーナーと華乃子ちゃん、芥川先生と太宰先生だけで、どうやって話し合えば良いんだろう? だってお見合いは次の休みの火曜日だろ?今日は日曜日だし、全員で話し合う時間無くないか?」
「あ! 言われてみたらそうですよねぇ……」
『その点はご心配無く!』
「「太宰先生、芥川先生」」
戸惑い始めた二人の左隣に、太宰が現れた。同時に、太宰の後ろに芥川も。
『この件は「linea《リネア》」でやり取りしよう!』
「「linea《リネア》で??」
真帆と彰仁は、同時に驚いて声をあげる。「linea《リネア》」とは、ある大手企業が提供するSNSの呼び名で、今は携帯でのやり取りは、メールよりもほとんどこちらが主流になっていた。
『うん。僕が「linea《リネア》」でさ、ひと呼んで「みのり&蒼介を結ぶ会」てlinea《リネア》グループを作るよ。一度、生身の人間とやり取りして見たかったんだよね。亡者同士だけじゃなく』
太宰は嬉しそうに笑った。恥ずかしそうに二人を見つめている芥川とのコントラストがが印象的だ。
「……て言うか、普通に人間と同じように携帯とかパソコンとかなさるんですか?」
真帆の問いかけに、彰仁も「そうだよ、それそれ」と頷いている。
『ほら!』
「あ! 見たところ透けてるだけで普通の黒い携帯……」
太宰は左の袂から携帯を取り出して見せた。
『私のも……』
彼のはワインカラーのようだ。いずれも透けているだけで人間が使うものと大差は無い。芥川はそのまま説明を始めた。太宰は何やら携帯を操作している。
『あちらの世界でも携帯やパソコンのようなものは存在しているんだよ。亡者同士でやり取りしたりね。こちらの世界とさほど変わらないよ、使い方もね。実は、聞いた事あると思うけれど所謂霊界から人間界の伝言とかはね、携帯やパソコン、ラジオなんかの通信機器からの方が伝わり易いんだ。ま、電磁波が多いところに霊現象が多い、て言う奴さ。パソコンから霊が出現とか、有り得ない事じゃないよ』
彼が説明し終わると同時に、彰仁と真帆の携帯にlineaの受信が入る。
『あ、僕からの友達申請が来てると思うから承認してね。そしたら「みのりと蒼介を結ぶ会」のグループに招待するから』
と得意顔の太宰。二人は画面を開くと、よく見掛ける顎に手を当てた太宰の写真がプロフィール画像となり「太宰治さんから友達申請が来ています」というメッセージが来ていた。
「えーーー? まだ僕達のlinea先も教えて無いのに?」
彰仁の疑問に、真帆も頷きながら太宰を見つめる。
『それは幽霊の得意分野ってもんだよ。よく、怪談話にあるだろう? 宛先不明の着信履歴とかさ』
ニヤリと彼は笑った。ゾーッと背筋に寒気を覚える彰仁に、「あー、なるほど」と納得する真帆。二人は太宰からの友達申請を許可した。すぐに、太宰から「みのりと蒼介を結ぶ会」のグループ招待のメッセージが届く。
こうして彼らは、みのりと蒼介を応援していく事となったのである。
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