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第八話
恋時雨 その四
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「お早うございます」
「お早う」
その頃、オーナーと華乃子、真帆と彰仁が続々と台場駅へと到着。挨拶を交わしていた。
「そう言えば、仕事以外でこうして皆で集まるのって無かったな」
「何だか不思議な気分ねぇ」
オーナー夫妻は、嬉しそうに言った。何だかんだと人と接する事が大好きなのだ。
「そうですねぇ。それにしても、早乙女先輩のお見合い前の時間に待ち合わせって……なんか意味あるんでしょうか?」
少し困惑したように彰仁は言った。
「芥川先生と太宰先生によると、万が一お見合いが中止になったりした時を考えて、だそうですけど……」
「どの道、芥川先生がみのりちゃんを、太宰先生が蒼君を誘い出して、海辺で偶然にばったりと会って……て段取りよね」
口ごもる真帆の後を、華乃子が引き継ぐ。
「僕達の任務は、もし二人が気まずそうになった場合に、これまた偶然を装って場を盛り上げる為に参上、でしたよねぇ。さすがにこのメンバーがわらわらと現れたら不自然極まりない、て言うか……」
「まぁ、一番は私達の出番が無い事を祈りたいねぇ」
彰仁の後を、オーナーが引き継ぐ。これには皆が同意見だった。皆、頷き合う。
「取りあえず、海辺とやらに行ってみようか。さっき太宰先生からのグループlineaのメッセージだと、女神の像付近の海辺のベンチにいるらしいね。別の方向に行こう」
オーナーの一声で、一同は歩き出した。
「久しぶりね」
すぐにみのりの母だと分かるほどに、良く似ている。少し照れくさそうに微笑むみのりの母季実子と、得意そうな妙子叔母がホテル近くの公園で待っていた。ここで待ち合わせして、ホテルの見合い場所の喫茶店に向かうのだ。二人とも黒のスーツ姿だ。
『じゃ、頑張って。見守ってるから。終わる頃また出て来るよ』
(有難うございます)
芥川はスッと姿を消した。
「じゃ、行きましょうか。きっと気に入ると思うわ」
妙子は意気揚々と先に立って歩き出した。その後を、苦笑しながら歩くみのりとその母。みのりはふと、蒼介の事が頭に浮かんだ。
(蒼介先輩、私がお見合いする事……どう思ったかな……)
間もなくホテルに到着した。
『そろそろお見合いの時間だね』
と太宰は蒼介を振り返った。蒼介は何かが吹っ切れたように、晴れ晴れとした表情をしていた。
『本当に大切な物は、目に視えににくいから疎かにしがちだけど、失ってからじゃ遅いからさ。相手を想いやる気持ちも大切だけれど、度を越し過ぎると単なる自己保身・自己愛の権化になっちゃうんだよ。一番は自分がどうしたいか、だと思う。……僕が言っても説得力無いと思うけど、あちらの世界に行って漸く気づいたんだよね』
太宰は寂しそうに言った。
「何となく、おっしゃる事、分かる気がします。僕は自分が傷つくのを恐れて、気付かれないようにこっそり彼女を眺めていただけでした。まるで人形を眺めるみたいに」
自嘲気味に答える蒼介。
『まだ間に合うさ。これはチャンスだと思うよ。……さ、行こうか』
と太宰はニヤリと笑った。立ち上がる蒼介、こくりと頷いた。
その頃、真帆たちは蒼介たちとは別の方向の海辺を目指してのんびりと歩いていた。
「お早う」
その頃、オーナーと華乃子、真帆と彰仁が続々と台場駅へと到着。挨拶を交わしていた。
「そう言えば、仕事以外でこうして皆で集まるのって無かったな」
「何だか不思議な気分ねぇ」
オーナー夫妻は、嬉しそうに言った。何だかんだと人と接する事が大好きなのだ。
「そうですねぇ。それにしても、早乙女先輩のお見合い前の時間に待ち合わせって……なんか意味あるんでしょうか?」
少し困惑したように彰仁は言った。
「芥川先生と太宰先生によると、万が一お見合いが中止になったりした時を考えて、だそうですけど……」
「どの道、芥川先生がみのりちゃんを、太宰先生が蒼君を誘い出して、海辺で偶然にばったりと会って……て段取りよね」
口ごもる真帆の後を、華乃子が引き継ぐ。
「僕達の任務は、もし二人が気まずそうになった場合に、これまた偶然を装って場を盛り上げる為に参上、でしたよねぇ。さすがにこのメンバーがわらわらと現れたら不自然極まりない、て言うか……」
「まぁ、一番は私達の出番が無い事を祈りたいねぇ」
彰仁の後を、オーナーが引き継ぐ。これには皆が同意見だった。皆、頷き合う。
「取りあえず、海辺とやらに行ってみようか。さっき太宰先生からのグループlineaのメッセージだと、女神の像付近の海辺のベンチにいるらしいね。別の方向に行こう」
オーナーの一声で、一同は歩き出した。
「久しぶりね」
すぐにみのりの母だと分かるほどに、良く似ている。少し照れくさそうに微笑むみのりの母季実子と、得意そうな妙子叔母がホテル近くの公園で待っていた。ここで待ち合わせして、ホテルの見合い場所の喫茶店に向かうのだ。二人とも黒のスーツ姿だ。
『じゃ、頑張って。見守ってるから。終わる頃また出て来るよ』
(有難うございます)
芥川はスッと姿を消した。
「じゃ、行きましょうか。きっと気に入ると思うわ」
妙子は意気揚々と先に立って歩き出した。その後を、苦笑しながら歩くみのりとその母。みのりはふと、蒼介の事が頭に浮かんだ。
(蒼介先輩、私がお見合いする事……どう思ったかな……)
間もなくホテルに到着した。
『そろそろお見合いの時間だね』
と太宰は蒼介を振り返った。蒼介は何かが吹っ切れたように、晴れ晴れとした表情をしていた。
『本当に大切な物は、目に視えににくいから疎かにしがちだけど、失ってからじゃ遅いからさ。相手を想いやる気持ちも大切だけれど、度を越し過ぎると単なる自己保身・自己愛の権化になっちゃうんだよ。一番は自分がどうしたいか、だと思う。……僕が言っても説得力無いと思うけど、あちらの世界に行って漸く気づいたんだよね』
太宰は寂しそうに言った。
「何となく、おっしゃる事、分かる気がします。僕は自分が傷つくのを恐れて、気付かれないようにこっそり彼女を眺めていただけでした。まるで人形を眺めるみたいに」
自嘲気味に答える蒼介。
『まだ間に合うさ。これはチャンスだと思うよ。……さ、行こうか』
と太宰はニヤリと笑った。立ち上がる蒼介、こくりと頷いた。
その頃、真帆たちは蒼介たちとは別の方向の海辺を目指してのんびりと歩いていた。
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