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◆第一章 怪異を祓う者◆
第二話 スミジの副業
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静岡県・遠州のとある街──。
閑静な住宅街から少し離れた地区にある日本家屋。歴史ある佇まいの家は白壁の塀で大きな敷地をぐるりと囲んでいた。
事実、『名取家』は地元では知らぬ者無き有力な地主で、幾人もの代議士を輩出した家柄でもある。
今回スミジへの依頼は資産家ともコネクションのあるシズカを通しての依頼──当然ながら富裕層である。
「スミジさん。庭に池がありますよ……」
「アカリちゃん……俺は庭に小さな滝がある家を見たことあるよ?」
「世の中、あるところにはあるんですね……お金って。ハァ……」
スミジがシズカから【乙】の依頼……つまり“あやかし祓い”の依頼を受けてから数日後の連休初日。何故かアカリも同行することとなり三人はシズカの運転する車で静岡まで足を延ばしていた。
女性の使用人に門から屋敷へと案内される中、風光明媚な庭園を遠い眼差しで眺めている作務衣男とポニーテール少女。そんな二人の様子に、シズカは小さく溜め息を吐きながら念を押す。
「……。二人とも、依頼人に失礼が無いようにお願いね?」
「は、はい」
「特にスミジ。アンタは余計なことを言わないでよね?」
「おいおい……俺がいつ依頼人に失礼を?」
「半年前、依頼人のお宅の掛け軸や屏風が贋物だって言っちゃったでしょ。あれで依頼人が終始不機嫌だったんだけど、忘れたの?」
「……忘れた」
「………」
「………」
シズカは惚けるスミジの尻を思いきり蹴り上げた。
「くぁ! シズカ! 何を……」
「何か文句でも?」
シズカは笑顔……しかし、その背後に般若のようなオーラが見えた気がした。スミジ、途端にへりくだる。
「へへへ。シズカのアネさんにぁ世話んなりっぱなしで……」
「同い年なんだからアネさんはやめなさい。それと今更下手に出られてもねぇ……?」
「そ、それより、アカリちゃんは付いてきて大丈夫だったの?」
危機回避の為アカリをダシに使うスミジはかなり必死な御様子。どうやらシズカの方が立場は上の様だ。
「はい……家族にはシズカさんと出掛けると言ってあるので」
アカリは休日ということもあり普段着で同行していた。
リボンを配った薄茶のフレアスカートに白いブラウス、ピンクのカーディガン姿は、いつもの制服姿とはまた違った印象を与えている。
「……。君達、親公認なほど仲良かったの?」
「そうよ? 良くお茶してるもんね~?」
「ね~?」
女子高生と意気投合しているシズカに『良い歳して……』と思ったものの言葉にしなかったスミジ。彼の判断が賢明であることは言うまでもない。
そんなこんなと案内された名取家の敷地内。一同は母屋ではなく庭園を抜けた先にある小さな別邸へと案内される。屋内の和室に居たのは、齢七十半ばになるかという老人。ただ、体調が優れないらしく布団に座椅子を使い半身を起こしている状態だった。
「皆さん、ようこそおいで下さった。私の名は名取昭一郎……名取家の前当主だ。見苦しい姿で申し訳ないが、話を聞いて頂きたくて御呼びした。先ずは遠路遥々の御足労感謝する」
寝巻き姿の幾分窶れた昭一郎は、深く頭を下げている。
「頭をお上げ下さい。私達も仕事として来訪しましたので……。改めまして、私は早乙女シズカと申します。桐谷様から御連絡を頂きましたので大体の事情は……」
「そうか……桐谷君は古くからの友人でね。彼に相談した甲斐があった。君達の話も桐谷君から聞いたのだよ」
そこでアカリは隣に座るスミジに耳打ちした。
「桐谷さんて誰ですか?」
「以前、依頼を受けた人だよ。何でも有名な作曲家だとか……」
「へ、へぇ~。……。ところで私、場違いですよね」
「気にすることないよ。俺も場違いだから」
「いやいや。スミジさんはお仕事を受ける人でしょう?」
「そういや、そうだった。アハハハ」
「うっかりさんですね。アハハハハ」
そこでシズカは二人をジロリと睨む。スミジとアカリは睨まれたカエルのように硬直した後、素直に謝罪した。
「ハッハッハ。そんなに堅くなる必要は無い。それより挨拶が遅れて申し訳無い。君が道祖土《さいど》君か……噂は聞いているよ」
「噂……ですか?」
「ああ。君はまるで鬼神の様だ……とね?」
「ハハハ。い、いやぁ……そ、それは流石に買い被りですねぇ……」
スミジは苦笑いでポリポリと頬を掻く。アカリは『鬼神』という言葉と普段のだらしないスミジとのギャップに首を傾げた。
閑静な住宅街から少し離れた地区にある日本家屋。歴史ある佇まいの家は白壁の塀で大きな敷地をぐるりと囲んでいた。
事実、『名取家』は地元では知らぬ者無き有力な地主で、幾人もの代議士を輩出した家柄でもある。
今回スミジへの依頼は資産家ともコネクションのあるシズカを通しての依頼──当然ながら富裕層である。
「スミジさん。庭に池がありますよ……」
「アカリちゃん……俺は庭に小さな滝がある家を見たことあるよ?」
「世の中、あるところにはあるんですね……お金って。ハァ……」
スミジがシズカから【乙】の依頼……つまり“あやかし祓い”の依頼を受けてから数日後の連休初日。何故かアカリも同行することとなり三人はシズカの運転する車で静岡まで足を延ばしていた。
女性の使用人に門から屋敷へと案内される中、風光明媚な庭園を遠い眼差しで眺めている作務衣男とポニーテール少女。そんな二人の様子に、シズカは小さく溜め息を吐きながら念を押す。
「……。二人とも、依頼人に失礼が無いようにお願いね?」
「は、はい」
「特にスミジ。アンタは余計なことを言わないでよね?」
「おいおい……俺がいつ依頼人に失礼を?」
「半年前、依頼人のお宅の掛け軸や屏風が贋物だって言っちゃったでしょ。あれで依頼人が終始不機嫌だったんだけど、忘れたの?」
「……忘れた」
「………」
「………」
シズカは惚けるスミジの尻を思いきり蹴り上げた。
「くぁ! シズカ! 何を……」
「何か文句でも?」
シズカは笑顔……しかし、その背後に般若のようなオーラが見えた気がした。スミジ、途端にへりくだる。
「へへへ。シズカのアネさんにぁ世話んなりっぱなしで……」
「同い年なんだからアネさんはやめなさい。それと今更下手に出られてもねぇ……?」
「そ、それより、アカリちゃんは付いてきて大丈夫だったの?」
危機回避の為アカリをダシに使うスミジはかなり必死な御様子。どうやらシズカの方が立場は上の様だ。
「はい……家族にはシズカさんと出掛けると言ってあるので」
アカリは休日ということもあり普段着で同行していた。
リボンを配った薄茶のフレアスカートに白いブラウス、ピンクのカーディガン姿は、いつもの制服姿とはまた違った印象を与えている。
「……。君達、親公認なほど仲良かったの?」
「そうよ? 良くお茶してるもんね~?」
「ね~?」
女子高生と意気投合しているシズカに『良い歳して……』と思ったものの言葉にしなかったスミジ。彼の判断が賢明であることは言うまでもない。
そんなこんなと案内された名取家の敷地内。一同は母屋ではなく庭園を抜けた先にある小さな別邸へと案内される。屋内の和室に居たのは、齢七十半ばになるかという老人。ただ、体調が優れないらしく布団に座椅子を使い半身を起こしている状態だった。
「皆さん、ようこそおいで下さった。私の名は名取昭一郎……名取家の前当主だ。見苦しい姿で申し訳ないが、話を聞いて頂きたくて御呼びした。先ずは遠路遥々の御足労感謝する」
寝巻き姿の幾分窶れた昭一郎は、深く頭を下げている。
「頭をお上げ下さい。私達も仕事として来訪しましたので……。改めまして、私は早乙女シズカと申します。桐谷様から御連絡を頂きましたので大体の事情は……」
「そうか……桐谷君は古くからの友人でね。彼に相談した甲斐があった。君達の話も桐谷君から聞いたのだよ」
そこでアカリは隣に座るスミジに耳打ちした。
「桐谷さんて誰ですか?」
「以前、依頼を受けた人だよ。何でも有名な作曲家だとか……」
「へ、へぇ~。……。ところで私、場違いですよね」
「気にすることないよ。俺も場違いだから」
「いやいや。スミジさんはお仕事を受ける人でしょう?」
「そういや、そうだった。アハハハ」
「うっかりさんですね。アハハハハ」
そこでシズカは二人をジロリと睨む。スミジとアカリは睨まれたカエルのように硬直した後、素直に謝罪した。
「ハッハッハ。そんなに堅くなる必要は無い。それより挨拶が遅れて申し訳無い。君が道祖土《さいど》君か……噂は聞いているよ」
「噂……ですか?」
「ああ。君はまるで鬼神の様だ……とね?」
「ハハハ。い、いやぁ……そ、それは流石に買い被りですねぇ……」
スミジは苦笑いでポリポリと頬を掻く。アカリは『鬼神』という言葉と普段のだらしないスミジとのギャップに首を傾げた。
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