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◆第一章 怪異を祓う者◆
第三話 憑かれた者②
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別邸に運ばれた食事に舌鼓を打った一同は、幾分体力が回復した昭一郎から説明を受けることになった。
「御体の調子はどうですか?」
「かなり楽になった。本当にありがとう」
「いえ……これも仕事ですので。それで本来の依頼なのですが……」
シズカに促された昭一郎は思考を整理している様だ。
「うむ……。………。実は、ある日を境に私の孫娘の様子がおかしくなってな。以前は明るい子だったのだが、今は殆ど話さない。特に最近は部屋に籠ってしまっている」
「それは……失礼ながら学校の人間関係が影響している訳では無いのですね?」
「私も初めはそれを考えた。だが……アレは違う」
「と……言いますと、私共に依頼するだけの理由があった訳ですね?」
「ああ……」
昭一郎はゆっくりと語り始める。自らが目にしたものを思い返しながら……。
「私も孫を励まそうと色々と考えた。あの子の楽しめそうな場所に行ったり好きな物を与えたり……。あの子も喜んでいたんだが……次の日になると……」
「………?」
「あの子の身体に痣が出るのだ。楽しんだ分、与えた分、腕に痣が出る。与えた物は壊れ、痣が痛いと泣くのだ」
「………自傷行為ではないと確証がある。そうですね?」
「うむ。実は夜中に一度だけあの子の部屋を覗いた。その時、眠るあの子の脇に黒い影が見えたのだ。直ぐに消えたので見間違いかと思っていたのだが……今日の出来事で確信した。アレは私に憑いたのと同じ空気を纏っていた」
昭一郎は改めて姿勢を正し、スミジ達に深々と頭を下げる。
「どうか孫娘を助けて欲しい。この通り……どうか宜しくお願いします」
「な、名取さん! 頭をお上げ下さい! ほら、スミジからも……」
「……名取さん。一つ確認したいのですが……最近何らかの絵を購入しませんでしたか?」
昭一郎は突然話が変わったことに幾分の躊躇いを見せたが、記憶を辿り誠実に答える。
「三週程前に掛け軸を購入したが……」
「それは何処にありますか?」
「母屋に……。それが孫娘と関係があるのだろうか?」
「それが私の探している物だった場合、かなり厄介です。すぐに確認を」
「……わかった。案内しよう」
昭一郎は着替えた後、直ぐに母屋へと一同を案内する。向かったのは奥座敷。壁には花の描かれた掛け軸が掛けられている。
「………お孫さんの部屋はこの上では?」
「あ、ああ。確かに……」
「掛け軸を見ても?」
「お任せする。好きにやってくれて良い」
スミジは素早く掛け軸を壁から外すとおもむろに表装から本紙を引き剥がした。
「ちょっ! スミジ!」
慌てるシズカを余所にスミジは本紙の裏側に取り出した筆を当てた。が……何も起こらない。
「………外れ、か」
安堵の混じったその言葉と同時にシズカはスミジの頭をひっぱたいた。
「あ~ん~た~ね~?」
「ま、待て、シズカ? これは緊急なことだったんだ! それに本絵は綺麗に剥がしただろ? 表具は俺が直せるから……痛いっ!」
「バカスミジ! それにしたって限度があるでしょ! スミマセン、名取さん……掛け軸は綺麗に修復してお返ししますから」
このやり取りを見ていた昭一郎は豪快に笑う。
「ハッハッハ! 別に構わんさ。孫娘の為に必死にやってくれたんだ。掛け軸の一枚や二枚」
「ほ、本当にスミマセン……ホラ、スミジも謝って!」
「え~……。どうもスミマセンでした。ちゃんと修復しますから、後で表具の指定をお願いします」
「良いさ。それより……」
「お孫さんの話ですね?」
再び別邸にて仕切り直しとなった中、昭一郎は孫娘である『名取千夏』の現状について切り出した。
「部屋に籠って食事も殆ど摂らないのだ。成長期だから心配でな……」
そこで口を開いたのはアカリだった。
「お孫さんはお幾つなんですか?」
「今年で十一歳になる。身内の贔屓目で見ているかもしれんが、とても頭の良い子だよ」
「少し話をしてみたいのですが……」
「構わない。寧ろそうしてやってくれればありがたい。あの子の部屋は母屋の二階……使用人に案内させるとしよう」
千夏は家族が近付くと嫌がるのだそうで、昭一郎や両親ともあまり顔を合わせないという。アカリは益々力になりたいと思ったらしくかなり意気込んでいる。
「行きましょう、スミジさん! シズカさん!」
「お、おぉ……。アカリちゃんがやる気に……」
「そ、そうね。じゃあ、行きましょうか」
そうしてスミジ、アカリ、シズカは使用人に案内され千夏の部屋へと向かう。
名取家が最初に関わった怪異──それは“現代ならでは”のものと呼べる存在だった。
「御体の調子はどうですか?」
「かなり楽になった。本当にありがとう」
「いえ……これも仕事ですので。それで本来の依頼なのですが……」
シズカに促された昭一郎は思考を整理している様だ。
「うむ……。………。実は、ある日を境に私の孫娘の様子がおかしくなってな。以前は明るい子だったのだが、今は殆ど話さない。特に最近は部屋に籠ってしまっている」
「それは……失礼ながら学校の人間関係が影響している訳では無いのですね?」
「私も初めはそれを考えた。だが……アレは違う」
「と……言いますと、私共に依頼するだけの理由があった訳ですね?」
「ああ……」
昭一郎はゆっくりと語り始める。自らが目にしたものを思い返しながら……。
「私も孫を励まそうと色々と考えた。あの子の楽しめそうな場所に行ったり好きな物を与えたり……。あの子も喜んでいたんだが……次の日になると……」
「………?」
「あの子の身体に痣が出るのだ。楽しんだ分、与えた分、腕に痣が出る。与えた物は壊れ、痣が痛いと泣くのだ」
「………自傷行為ではないと確証がある。そうですね?」
「うむ。実は夜中に一度だけあの子の部屋を覗いた。その時、眠るあの子の脇に黒い影が見えたのだ。直ぐに消えたので見間違いかと思っていたのだが……今日の出来事で確信した。アレは私に憑いたのと同じ空気を纏っていた」
昭一郎は改めて姿勢を正し、スミジ達に深々と頭を下げる。
「どうか孫娘を助けて欲しい。この通り……どうか宜しくお願いします」
「な、名取さん! 頭をお上げ下さい! ほら、スミジからも……」
「……名取さん。一つ確認したいのですが……最近何らかの絵を購入しませんでしたか?」
昭一郎は突然話が変わったことに幾分の躊躇いを見せたが、記憶を辿り誠実に答える。
「三週程前に掛け軸を購入したが……」
「それは何処にありますか?」
「母屋に……。それが孫娘と関係があるのだろうか?」
「それが私の探している物だった場合、かなり厄介です。すぐに確認を」
「……わかった。案内しよう」
昭一郎は着替えた後、直ぐに母屋へと一同を案内する。向かったのは奥座敷。壁には花の描かれた掛け軸が掛けられている。
「………お孫さんの部屋はこの上では?」
「あ、ああ。確かに……」
「掛け軸を見ても?」
「お任せする。好きにやってくれて良い」
スミジは素早く掛け軸を壁から外すとおもむろに表装から本紙を引き剥がした。
「ちょっ! スミジ!」
慌てるシズカを余所にスミジは本紙の裏側に取り出した筆を当てた。が……何も起こらない。
「………外れ、か」
安堵の混じったその言葉と同時にシズカはスミジの頭をひっぱたいた。
「あ~ん~た~ね~?」
「ま、待て、シズカ? これは緊急なことだったんだ! それに本絵は綺麗に剥がしただろ? 表具は俺が直せるから……痛いっ!」
「バカスミジ! それにしたって限度があるでしょ! スミマセン、名取さん……掛け軸は綺麗に修復してお返ししますから」
このやり取りを見ていた昭一郎は豪快に笑う。
「ハッハッハ! 別に構わんさ。孫娘の為に必死にやってくれたんだ。掛け軸の一枚や二枚」
「ほ、本当にスミマセン……ホラ、スミジも謝って!」
「え~……。どうもスミマセンでした。ちゃんと修復しますから、後で表具の指定をお願いします」
「良いさ。それより……」
「お孫さんの話ですね?」
再び別邸にて仕切り直しとなった中、昭一郎は孫娘である『名取千夏』の現状について切り出した。
「部屋に籠って食事も殆ど摂らないのだ。成長期だから心配でな……」
そこで口を開いたのはアカリだった。
「お孫さんはお幾つなんですか?」
「今年で十一歳になる。身内の贔屓目で見ているかもしれんが、とても頭の良い子だよ」
「少し話をしてみたいのですが……」
「構わない。寧ろそうしてやってくれればありがたい。あの子の部屋は母屋の二階……使用人に案内させるとしよう」
千夏は家族が近付くと嫌がるのだそうで、昭一郎や両親ともあまり顔を合わせないという。アカリは益々力になりたいと思ったらしくかなり意気込んでいる。
「行きましょう、スミジさん! シズカさん!」
「お、おぉ……。アカリちゃんがやる気に……」
「そ、そうね。じゃあ、行きましょうか」
そうしてスミジ、アカリ、シズカは使用人に案内され千夏の部屋へと向かう。
名取家が最初に関わった怪異──それは“現代ならでは”のものと呼べる存在だった。
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