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◆第一章 怪異を祓う者◆
第四話 怪異を祓う者③
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「それじゃ始めるよ、千夏ちゃん。大丈夫……千夏ちゃんには何もさせないから」
震えながらも千夏は小さく頷いた。続いてスミジは視線を昭一郎へと移す。
昭一郎は深く頭を下げている。隣ではアカリとシズカが頷いていた。
「さて……お前が煙々葛篭か。言葉は話せるか?」
『ギギギ……』
「ダメか。じゃあ一方的に……お前は人から生まれた【あやかし】みたいだけど、こっちの世にもこの子にも迷惑をかけている。だから祓わなくちゃならない」
この言葉を聞いた途端、煙々葛篭はスミジに襲い掛かった。
今回の光景は全員に見えている。黄昏時から闇に染まる時間と千夏を囲んだ結界の効果。庭に常設された電灯の灯りの中、常識では計り知れない場面に一同は息を飲む。
「さて……いくか」
スミジは取り出した太筆で素早く宙空を払う。伸びて迫った煙々葛篭の腕は、描かれた宙に浮かんだバツの字に阻まれた。
スミジは続けて迫る腕を次々に躱しながら移動する。
「スミジさん……。千夏ちゃん……」
アカリ達はただ見守ることに専念するしかなかった。
(ふぅむ……この距離で誘き寄せようとしても千夏ちゃんから離れないか……。仕方無い。なら……)
スミジは続いて細筆を取り出す。右手に細筆、左手に太筆の二刀流。左手で素早く描いたのは『閃』の一文字。瞬間、文字は激しく輝いた。
『ギギギ……!』
煙々葛篭は突然の閃光に怯み縮んでいる。スミジはその間に懐から巻き物を取り出し宙で広げた。そして素早く右手の筆を走らせ巻き物に何かを書き込んで行く。巻き物に描かれたのは『煙々葛篭』の姿──赤い墨で描かれたそれを瞬く間に描き上げたスミジは完成した絵を千夏の方へと向けた。
『ここに現世の姿を写された【あやかし】よ。描かれし姿に足りぬ魂を塗り込めよ。怪画となりて理は幽世に還れ──初式霊気写法、【絵封】!』
スミジの言葉が終わると同時……煙々葛篭は引き寄せられるように巻き物へと迫る。千夏に巻き付き抵抗する様子を見せるも、まるで絵の具が溶けるように解けやがて巻き物の絵に色を塗り込めていった。
煙々葛篭が全てが吸い込まれたのを確認したスミジは、素早く巻物を封じ懐にしまう。そして千夏に歩み寄りソッと頭を撫でた。
「これで大丈夫だよ、千夏ちゃん。もう怖いことは終わりだ」
「本当?」
「うん。でもね、これは俺じゃなくて君のお祖父ちゃんのお陰。だから君はちゃんとお祖父ちゃんにお礼をするんだよ?」
「うん、約束する! ありがとう、オジちゃん!」
「オジ……ま、まぁ良いけど。ハハハ……」
スミジの言葉と千夏の笑顔でアカリは全てが解決したこと理解した。これで名取家を取り巻いていた怪異は祓われたのだ。
すっかり暗くなった空には美しい上弦の月が浮かんでいた……。
名取家の怪異祓いを終えた後、三人は昭一郎から歓待を受ける。仕事から戻った千夏の両親は怪異について事情を説明されたが幾分困惑気味だった。それはそうだろう……闇深い昔ならばいざ知らず、人が怪異に絡むことなど現代では稀なこと。人は自分の常識を越えるものを理解できないのだ。
それでも……千夏の両親は千夏が明るくなった事実を喜んだ。それが何であれスミジのお陰だと理解したらしく、何度も感謝を伝えていたのがアカリには印象的だった。
震えながらも千夏は小さく頷いた。続いてスミジは視線を昭一郎へと移す。
昭一郎は深く頭を下げている。隣ではアカリとシズカが頷いていた。
「さて……お前が煙々葛篭か。言葉は話せるか?」
『ギギギ……』
「ダメか。じゃあ一方的に……お前は人から生まれた【あやかし】みたいだけど、こっちの世にもこの子にも迷惑をかけている。だから祓わなくちゃならない」
この言葉を聞いた途端、煙々葛篭はスミジに襲い掛かった。
今回の光景は全員に見えている。黄昏時から闇に染まる時間と千夏を囲んだ結界の効果。庭に常設された電灯の灯りの中、常識では計り知れない場面に一同は息を飲む。
「さて……いくか」
スミジは取り出した太筆で素早く宙空を払う。伸びて迫った煙々葛篭の腕は、描かれた宙に浮かんだバツの字に阻まれた。
スミジは続けて迫る腕を次々に躱しながら移動する。
「スミジさん……。千夏ちゃん……」
アカリ達はただ見守ることに専念するしかなかった。
(ふぅむ……この距離で誘き寄せようとしても千夏ちゃんから離れないか……。仕方無い。なら……)
スミジは続いて細筆を取り出す。右手に細筆、左手に太筆の二刀流。左手で素早く描いたのは『閃』の一文字。瞬間、文字は激しく輝いた。
『ギギギ……!』
煙々葛篭は突然の閃光に怯み縮んでいる。スミジはその間に懐から巻き物を取り出し宙で広げた。そして素早く右手の筆を走らせ巻き物に何かを書き込んで行く。巻き物に描かれたのは『煙々葛篭』の姿──赤い墨で描かれたそれを瞬く間に描き上げたスミジは完成した絵を千夏の方へと向けた。
『ここに現世の姿を写された【あやかし】よ。描かれし姿に足りぬ魂を塗り込めよ。怪画となりて理は幽世に還れ──初式霊気写法、【絵封】!』
スミジの言葉が終わると同時……煙々葛篭は引き寄せられるように巻き物へと迫る。千夏に巻き付き抵抗する様子を見せるも、まるで絵の具が溶けるように解けやがて巻き物の絵に色を塗り込めていった。
煙々葛篭が全てが吸い込まれたのを確認したスミジは、素早く巻物を封じ懐にしまう。そして千夏に歩み寄りソッと頭を撫でた。
「これで大丈夫だよ、千夏ちゃん。もう怖いことは終わりだ」
「本当?」
「うん。でもね、これは俺じゃなくて君のお祖父ちゃんのお陰。だから君はちゃんとお祖父ちゃんにお礼をするんだよ?」
「うん、約束する! ありがとう、オジちゃん!」
「オジ……ま、まぁ良いけど。ハハハ……」
スミジの言葉と千夏の笑顔でアカリは全てが解決したこと理解した。これで名取家を取り巻いていた怪異は祓われたのだ。
すっかり暗くなった空には美しい上弦の月が浮かんでいた……。
名取家の怪異祓いを終えた後、三人は昭一郎から歓待を受ける。仕事から戻った千夏の両親は怪異について事情を説明されたが幾分困惑気味だった。それはそうだろう……闇深い昔ならばいざ知らず、人が怪異に絡むことなど現代では稀なこと。人は自分の常識を越えるものを理解できないのだ。
それでも……千夏の両親は千夏が明るくなった事実を喜んだ。それが何であれスミジのお陰だと理解したらしく、何度も感謝を伝えていたのがアカリには印象的だった。
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