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◆第三章 人が生み出す怪異◆
第三話 残穢
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滋賀県までの往路は新幹線を利用した。東京駅から京都駅まで向かいそこから大津へ──。午前八時前に出発したスミジと伊庭は昼前には琵琶湖付近に到着した。
県警には事前に話を通していたらしく、目的地の警察署に到着するなり同行してくれる担当者との挨拶が始まった。
「警視庁の伊庭です」
「ようこそ。私は大津署の秋山と申します」
担当者となったのは若い女性警官。伊庭は気だるげな目で秋山の容姿を観察している。
(……新人婦警か。ベテランを頼んだんだがな)
不満はあるもののそれを顔には出さない伊庭……しかし、秋山はその心中を悟ったらしく申し訳無さそうに笑う。
「スミマセン。私のような新人が担当で……」
「い、いや……」
見抜かれた伊庭は居心地が悪そうだ。スミジはそんな伊庭に助け船を出すことにした。
「初めまして、秋山さん。私は道祖土と申します。警視庁からの依頼で来ました」
「は、はい! 初めまして。宜しくお願いします、道祖土さ……んん?」
今度は秋山が幾分反応に困っている。
恐らく、怪異祓いが同行するという話だけは聞いていたのだろう。一般良識で考えれば存在自体が胡散臭いと思われても不思議ではない『祓い師』……それでも僧侶や神主姿の者なら多少は納得したかもしれない。
だが、現れたのはサンダルに紺の作務衣姿の男。秋山からすれば冴えない陶芸家にしか見えない。
「……………」
「秋山さん。一応、コイツが“祓い師”で間違いないからな?」
「はっ! し、失礼しました!」
「大丈夫、大丈夫。何処でも似たような反応されるんだよ。スミジ、お前今度作務衣に名前縫い付けとけ。『はらいし・さいどすみじ』って」
「俺は幼稚園児か」
仏頂面のスミジと伊庭のやり取りに秋山婦警は思わず笑みを溢した。その影響か気を取り直したらしく改めて打ち合わせを続ける。
「失礼しました。今回、私が運転手を兼ね現地の案内役を勤めます。お二人の要望には出来るだけ応えるように署長からも言われているので遠慮せず仰ってください」
「それはありがたい。じゃあ、早速事故現場に行きたいんだが……」
「分かりました。今、車を寄せますのでお待ち下さい」
秋山は急ぎ足で車に向かう。が……鍵を忘れたらしく慌てて署内へと入っていった。
「……大丈夫かねぇ」
「まぁ、運転手としてだけなら多分……」
「で……どうだ、この辺は?」
「良いところだよねぇ。東京より空気がうま~い!」
「そういう話じゃねぇ……よっ!」
伊庭はスミジの太腿辺りに軽い膝蹴りを入れた。
「痛い! ……この暴力警官め」
「ほうほう。そんなに本物の暴力警官を見たいか?」
伊庭は懐の拳銃をチラつかせた。
「え、遠慮しま~す」
「分かったならホレ……どんな感じだ?」
「今のところは何とも……。この辺りは比叡山の影響もある土地だから霊気が強くて分かりづらいんだよ。あ……そう言えば一つだけ分かったこともあるけど?」
「何だ……?」
「あの、秋山さんて娘……多分、身内の誰かが祟られてる」
伊庭は気付かなかったが、スミジには秋山の身体に微かに漂う残滓とでも呼ぶべき気配が見えていた。
「はぁ……? ばっ……お前、それ割と大事じゃねぇか!」
「まぁね……。という訳で」
秋山はパトカーではなくミニバン型の車をスミジ達の前に寄せた。すると二人は素早くドアを開け瞬時に車へと乗り込む。
「お待たせしました。では事故現場に向かおうと思いますが、どの案件にしますか?」
「いや……。行き先はさっき変更になった」
「はぁ……それではどちらへ?」
「秋山さん……君の家に向ってくれ」
「………………………。はい?」
伊庭の言葉に困惑する秋山を急かし、滋賀の怪異祓いは動き始めた──。
県警には事前に話を通していたらしく、目的地の警察署に到着するなり同行してくれる担当者との挨拶が始まった。
「警視庁の伊庭です」
「ようこそ。私は大津署の秋山と申します」
担当者となったのは若い女性警官。伊庭は気だるげな目で秋山の容姿を観察している。
(……新人婦警か。ベテランを頼んだんだがな)
不満はあるもののそれを顔には出さない伊庭……しかし、秋山はその心中を悟ったらしく申し訳無さそうに笑う。
「スミマセン。私のような新人が担当で……」
「い、いや……」
見抜かれた伊庭は居心地が悪そうだ。スミジはそんな伊庭に助け船を出すことにした。
「初めまして、秋山さん。私は道祖土と申します。警視庁からの依頼で来ました」
「は、はい! 初めまして。宜しくお願いします、道祖土さ……んん?」
今度は秋山が幾分反応に困っている。
恐らく、怪異祓いが同行するという話だけは聞いていたのだろう。一般良識で考えれば存在自体が胡散臭いと思われても不思議ではない『祓い師』……それでも僧侶や神主姿の者なら多少は納得したかもしれない。
だが、現れたのはサンダルに紺の作務衣姿の男。秋山からすれば冴えない陶芸家にしか見えない。
「……………」
「秋山さん。一応、コイツが“祓い師”で間違いないからな?」
「はっ! し、失礼しました!」
「大丈夫、大丈夫。何処でも似たような反応されるんだよ。スミジ、お前今度作務衣に名前縫い付けとけ。『はらいし・さいどすみじ』って」
「俺は幼稚園児か」
仏頂面のスミジと伊庭のやり取りに秋山婦警は思わず笑みを溢した。その影響か気を取り直したらしく改めて打ち合わせを続ける。
「失礼しました。今回、私が運転手を兼ね現地の案内役を勤めます。お二人の要望には出来るだけ応えるように署長からも言われているので遠慮せず仰ってください」
「それはありがたい。じゃあ、早速事故現場に行きたいんだが……」
「分かりました。今、車を寄せますのでお待ち下さい」
秋山は急ぎ足で車に向かう。が……鍵を忘れたらしく慌てて署内へと入っていった。
「……大丈夫かねぇ」
「まぁ、運転手としてだけなら多分……」
「で……どうだ、この辺は?」
「良いところだよねぇ。東京より空気がうま~い!」
「そういう話じゃねぇ……よっ!」
伊庭はスミジの太腿辺りに軽い膝蹴りを入れた。
「痛い! ……この暴力警官め」
「ほうほう。そんなに本物の暴力警官を見たいか?」
伊庭は懐の拳銃をチラつかせた。
「え、遠慮しま~す」
「分かったならホレ……どんな感じだ?」
「今のところは何とも……。この辺りは比叡山の影響もある土地だから霊気が強くて分かりづらいんだよ。あ……そう言えば一つだけ分かったこともあるけど?」
「何だ……?」
「あの、秋山さんて娘……多分、身内の誰かが祟られてる」
伊庭は気付かなかったが、スミジには秋山の身体に微かに漂う残滓とでも呼ぶべき気配が見えていた。
「はぁ……? ばっ……お前、それ割と大事じゃねぇか!」
「まぁね……。という訳で」
秋山はパトカーではなくミニバン型の車をスミジ達の前に寄せた。すると二人は素早くドアを開け瞬時に車へと乗り込む。
「お待たせしました。では事故現場に向かおうと思いますが、どの案件にしますか?」
「いや……。行き先はさっき変更になった」
「はぁ……それではどちらへ?」
「秋山さん……君の家に向ってくれ」
「………………………。はい?」
伊庭の言葉に困惑する秋山を急かし、滋賀の怪異祓いは動き始めた──。
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