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◆第三章 人が生み出す怪異◆
第四話 祟り③
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その後、秋山家の面々は態度が一変。
祖父母は茶菓子を次々に用意し、妻は昼食をと準備を始めた。長男はスミジの術を見たいとスマホを構え、婦警の由奈は安堵で何度も鼻をかんでいる……。
運転手役でもある由奈の希望もあり歓待を断ることができないスミジ達は、昼食を待つ間に茂から事故の際の状況を聞くことにした。
「私が見たのは靄の中の大きな顔です。それと……平安などの貴族が使うような牛車が見えました」
「大きな顔と牛車……。古妖で間違いないとすると、『朧車』か『片輪車』かな」
『朧車』は牛車の中から大きな顔が出ている【あやかし】、『片輪車』は牛車の片輪に大きな顔が付いている【あやかし】である。だが……。
「横を抜ける時に顔が見えたんですよね?」
「はい。低い位置に……」
「じゃあ、『片輪車』ですね。見ただけで祟る【あやかし】は案外少ないんですよ」
「片輪車……聞いたことないですね」
茂は公務員で観光案内担当だという。地元に比叡山があるので多少は怪異を知っているのだが、『片輪車』は分からないらしい。
「片輪車は発音だけ聞くと差別用語にも聞こえますからね。どちらかというと『輪入道』の方が有名です」
「それなら知ってます。でもアレは確か、車輪だけでは?」
「そういう個体もいますが、基本は同一と言われてますね。車輪の顔が女だったり、牛車に誰か乗ってたり様々ですよ。それも人の生み出した結果なんですけどね」
【あやかし】の姿が多様化するのは人が噂することで力を得るからである。『輪入道』もその姿が変化し牛車だったり車輪だったりと地方ごとで伝承が違うのだ。
「【あやかし】は人が生み出すんですか?」
「殆どはそうですね。稀に違うものも居ますが……」
「違うもの?」
「殆どの場合は人が想像することで力を得て実体化するんですよ。でも、逆の存在が居ます。例えば『鬼』──」
鬼は元々死を体現化したもの。平安や鎌倉の頃には力の象徴として巨躯に怪力の人型とされている。これは特定の人間を指す可能性があるとスミジは言った。
「『鬼』は古すぎて由来が分かりません。人間に【あやかし】の力が宿ったのが先か、それとも巨躯の人間が超人的で【あやかし】と認識され変化したのか、または全く別のものの可能性もあります。ただ……」
「……何ですか?」
「何にせよ【鬼】は恐ろしいですよ? 万が一、その存在を感じたら逃げる一択です。あれは物理的にさえ危険ですから」
過去……鬼と対峙したスミジはかなりの傷を負った。その際、死傷者も出ているが不安にさせてしまうので敢えて口にはしない。
「話を戻しましょう。秋山さんは比叡山には行かなかったんですか? アソコなら祓うこともできたと思うんですが……」
「それが……近付けなかったんですよ。近付くと頭痛がして……」
「では、向こうから来て貰うことも出来たのでは?」
「それも考えたのですが、お寺の方で何かあったらしく手が足りないと……。失礼ながら怪異と言われてもピンと来ずそのままに……」
ここでスミジは伊庭に視線を向けた。本来、地元の寺社仏閣に依頼すべき案件がスミジに流れたのには理由がある筈。聞きそびれていただけに確認がしたいところである。
「……。比叡山の僧も全員が【あやかし祓い】できる訳じゃないからな。見えないんじゃどうしようもないだろ?」
「見える人達はどうしたの?」
「別件で動いてる。それに、【あやかし】は祓えなくても『厄祓い』できる者は順次対応してくれているらしい」
「………」
では何故、秋山茂は放置されていたのか……。謎は残るが、伊庭はそれ以上答えない。
「まぁ、良いや。で、伊庭さん……秋山さんの『祟り』を祓ったけど、他の人の厄はどんな感じ?」
「報告書にあっただろ? 殆どは地元で祓って貰ったって」
「残ってる人も居るでしょ? どうするの、それ?」
「大丈夫だ」
「…………」
「…………」
「秋山さん、失礼します。伊庭さん、ちょっと……」
祖父母は茶菓子を次々に用意し、妻は昼食をと準備を始めた。長男はスミジの術を見たいとスマホを構え、婦警の由奈は安堵で何度も鼻をかんでいる……。
運転手役でもある由奈の希望もあり歓待を断ることができないスミジ達は、昼食を待つ間に茂から事故の際の状況を聞くことにした。
「私が見たのは靄の中の大きな顔です。それと……平安などの貴族が使うような牛車が見えました」
「大きな顔と牛車……。古妖で間違いないとすると、『朧車』か『片輪車』かな」
『朧車』は牛車の中から大きな顔が出ている【あやかし】、『片輪車』は牛車の片輪に大きな顔が付いている【あやかし】である。だが……。
「横を抜ける時に顔が見えたんですよね?」
「はい。低い位置に……」
「じゃあ、『片輪車』ですね。見ただけで祟る【あやかし】は案外少ないんですよ」
「片輪車……聞いたことないですね」
茂は公務員で観光案内担当だという。地元に比叡山があるので多少は怪異を知っているのだが、『片輪車』は分からないらしい。
「片輪車は発音だけ聞くと差別用語にも聞こえますからね。どちらかというと『輪入道』の方が有名です」
「それなら知ってます。でもアレは確か、車輪だけでは?」
「そういう個体もいますが、基本は同一と言われてますね。車輪の顔が女だったり、牛車に誰か乗ってたり様々ですよ。それも人の生み出した結果なんですけどね」
【あやかし】の姿が多様化するのは人が噂することで力を得るからである。『輪入道』もその姿が変化し牛車だったり車輪だったりと地方ごとで伝承が違うのだ。
「【あやかし】は人が生み出すんですか?」
「殆どはそうですね。稀に違うものも居ますが……」
「違うもの?」
「殆どの場合は人が想像することで力を得て実体化するんですよ。でも、逆の存在が居ます。例えば『鬼』──」
鬼は元々死を体現化したもの。平安や鎌倉の頃には力の象徴として巨躯に怪力の人型とされている。これは特定の人間を指す可能性があるとスミジは言った。
「『鬼』は古すぎて由来が分かりません。人間に【あやかし】の力が宿ったのが先か、それとも巨躯の人間が超人的で【あやかし】と認識され変化したのか、または全く別のものの可能性もあります。ただ……」
「……何ですか?」
「何にせよ【鬼】は恐ろしいですよ? 万が一、その存在を感じたら逃げる一択です。あれは物理的にさえ危険ですから」
過去……鬼と対峙したスミジはかなりの傷を負った。その際、死傷者も出ているが不安にさせてしまうので敢えて口にはしない。
「話を戻しましょう。秋山さんは比叡山には行かなかったんですか? アソコなら祓うこともできたと思うんですが……」
「それが……近付けなかったんですよ。近付くと頭痛がして……」
「では、向こうから来て貰うことも出来たのでは?」
「それも考えたのですが、お寺の方で何かあったらしく手が足りないと……。失礼ながら怪異と言われてもピンと来ずそのままに……」
ここでスミジは伊庭に視線を向けた。本来、地元の寺社仏閣に依頼すべき案件がスミジに流れたのには理由がある筈。聞きそびれていただけに確認がしたいところである。
「……。比叡山の僧も全員が【あやかし祓い】できる訳じゃないからな。見えないんじゃどうしようもないだろ?」
「見える人達はどうしたの?」
「別件で動いてる。それに、【あやかし】は祓えなくても『厄祓い』できる者は順次対応してくれているらしい」
「………」
では何故、秋山茂は放置されていたのか……。謎は残るが、伊庭はそれ以上答えない。
「まぁ、良いや。で、伊庭さん……秋山さんの『祟り』を祓ったけど、他の人の厄はどんな感じ?」
「報告書にあっただろ? 殆どは地元で祓って貰ったって」
「残ってる人も居るでしょ? どうするの、それ?」
「大丈夫だ」
「…………」
「…………」
「秋山さん、失礼します。伊庭さん、ちょっと……」
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