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◆第三章 人が生み出す怪異◆
第十一話 切り札②
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スミジが新たに取り出したの一本の筆──。
通常使用している太筆よりやや太いが倍程長め。そして黒色の金属製にも見える筆管には金の紋様が装飾されていた。
『ほう? その筆……妙な圧を感じるぞ』
「これは俺の切り札の一つだ。但し、霊力をバカ食いするから滅多に使わないけどな」
『益々面白いぞ、人間よ! 我をもっと追い込め! もっと昂らせよ! 戦いこそが愉悦なり!』
バラゴが馬の前足を高く上げ思いきり大地を踏み付けると、伝わる振動が山を揺らす。それはスミジの体勢を僅かに不安定にさせた。
バラゴはその隙を見逃さず接近……強烈な一撃がスミジへと迫る。
だが……刃はスミジの眼前で停止した。
防いだのは先程新たに持ち替えた黒い筆。筆の先には方陣が朱墨で展開されている。更にその先には方陣から抜け出す様に龍の頭部が出現していてバラゴの刃を止めている。
『何だと……?』
それは小柄だが確かに龍……赤い龍はぬるりと方陣から抜け出しスミジの周囲を浮遊した。
「これは切り札だって言ったろ?」
龍はスミジの持つ筆に呼応する動きを見せバラゴへと襲い掛かる。
口から炎を吐き牽制しながら攻める龍。バラゴは右手の提灯から炎を放ち対抗し、更に刃を横凪ぎに払い龍を斬り裂こうとした。だが、その鱗は堅く刃は再び弾かれた。
スミジが操る龍はすかさず尾による追撃の一撃を放ち、バラゴは初めて大きく体勢を崩す。
『ぐっ……まさか人が龍の力を使うとはな。だが……この力は……』
「この龍は術による絵の顕現じゃなく幽世から直接喚び出した本物だ。ウチの先祖は代々変わり者が多くてね……一族の使命より他のことに没頭する者がちょくちょく生まれたりするんだ。この筆はその先祖の一人が造った」
【幽幻筆・『赤龍』】
霊気写法による【あやかし】の再現に於ける耐久性と力の弱さを改善する為に、スミジの先祖が考案した祓い筆の一つ。
特殊な墨を媒体にする道祖土の術に限界を感じたその男は、再現ではなく本物を喚び出し操ろうとした。そして選んだのが霊獣である龍……伝承は広く伝わり認識度も高い龍の力は神としても崇められる強力なもの。
男は素材を求め海を越え大陸へと渡り方々を探し回る。龍を生み出すには相応しい媒体が必要と考えたのだ。そして辿り着いた深山幽谷にて龍の遺骸を見付けその筆の作製に利用したのである。
「龍なんて素材にしたからか、その先祖は長くは生きられなかったらしいけどな……。だから、龍を幽世から喚べるのはこの一本のみだ。ただ、さっきも言った様に霊気をバカ食いするから使える者も少ない」
『だが……貴様は使えるのだな?』
「俺は……まぁ、ちょっと事情があって霊気が多いんだ。それでも長くは使えないけどな」
『成る程……文字通り切り札。クックック! やはり良いぞ、貴様! スミジと言ったな? 貴様を倒した後は転生させ魔の者として魔王様に仕えさせてやろう!』
「だから遠慮するって……」
スミジは筆をタクトの様に振るい赤龍を操る。龍は小型だがその分素早く多彩な力を秘めていた。尾はバラゴの体勢を幾度も崩し、炎はその身体を焼いた。特に雷は太刀を持つバラゴに対して非常に効果的だった。
しかし、その度に体勢を立て直し刃を振るい続けるバラゴ。脅威だったのは赤龍の動きに対応し始めたことだ。
スミジは決着を急ぐことにした……。
通常使用している太筆よりやや太いが倍程長め。そして黒色の金属製にも見える筆管には金の紋様が装飾されていた。
『ほう? その筆……妙な圧を感じるぞ』
「これは俺の切り札の一つだ。但し、霊力をバカ食いするから滅多に使わないけどな」
『益々面白いぞ、人間よ! 我をもっと追い込め! もっと昂らせよ! 戦いこそが愉悦なり!』
バラゴが馬の前足を高く上げ思いきり大地を踏み付けると、伝わる振動が山を揺らす。それはスミジの体勢を僅かに不安定にさせた。
バラゴはその隙を見逃さず接近……強烈な一撃がスミジへと迫る。
だが……刃はスミジの眼前で停止した。
防いだのは先程新たに持ち替えた黒い筆。筆の先には方陣が朱墨で展開されている。更にその先には方陣から抜け出す様に龍の頭部が出現していてバラゴの刃を止めている。
『何だと……?』
それは小柄だが確かに龍……赤い龍はぬるりと方陣から抜け出しスミジの周囲を浮遊した。
「これは切り札だって言ったろ?」
龍はスミジの持つ筆に呼応する動きを見せバラゴへと襲い掛かる。
口から炎を吐き牽制しながら攻める龍。バラゴは右手の提灯から炎を放ち対抗し、更に刃を横凪ぎに払い龍を斬り裂こうとした。だが、その鱗は堅く刃は再び弾かれた。
スミジが操る龍はすかさず尾による追撃の一撃を放ち、バラゴは初めて大きく体勢を崩す。
『ぐっ……まさか人が龍の力を使うとはな。だが……この力は……』
「この龍は術による絵の顕現じゃなく幽世から直接喚び出した本物だ。ウチの先祖は代々変わり者が多くてね……一族の使命より他のことに没頭する者がちょくちょく生まれたりするんだ。この筆はその先祖の一人が造った」
【幽幻筆・『赤龍』】
霊気写法による【あやかし】の再現に於ける耐久性と力の弱さを改善する為に、スミジの先祖が考案した祓い筆の一つ。
特殊な墨を媒体にする道祖土の術に限界を感じたその男は、再現ではなく本物を喚び出し操ろうとした。そして選んだのが霊獣である龍……伝承は広く伝わり認識度も高い龍の力は神としても崇められる強力なもの。
男は素材を求め海を越え大陸へと渡り方々を探し回る。龍を生み出すには相応しい媒体が必要と考えたのだ。そして辿り着いた深山幽谷にて龍の遺骸を見付けその筆の作製に利用したのである。
「龍なんて素材にしたからか、その先祖は長くは生きられなかったらしいけどな……。だから、龍を幽世から喚べるのはこの一本のみだ。ただ、さっきも言った様に霊気をバカ食いするから使える者も少ない」
『だが……貴様は使えるのだな?』
「俺は……まぁ、ちょっと事情があって霊気が多いんだ。それでも長くは使えないけどな」
『成る程……文字通り切り札。クックック! やはり良いぞ、貴様! スミジと言ったな? 貴様を倒した後は転生させ魔の者として魔王様に仕えさせてやろう!』
「だから遠慮するって……」
スミジは筆をタクトの様に振るい赤龍を操る。龍は小型だがその分素早く多彩な力を秘めていた。尾はバラゴの体勢を幾度も崩し、炎はその身体を焼いた。特に雷は太刀を持つバラゴに対して非常に効果的だった。
しかし、その度に体勢を立て直し刃を振るい続けるバラゴ。脅威だったのは赤龍の動きに対応し始めたことだ。
スミジは決着を急ぐことにした……。
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