40 / 153
◆第四章 存在の善悪◆
第二話 学園調査
しおりを挟む
私立・景星学園──。
ある企業主が人材育成を目的に設立したこの学園は、運動から芸術に至るまで多彩な能力を発揮できる環境が用意されている。
基本的には通常の学習指導要領に沿った教育……しかし当人が望めば専門的カリキュラムも組めるようでその自由度は高い。
反面……モラル面では少々厳しく、特に法に反する行為がある場合や著しい良識の欠如等確認された際は重めの処分が下されることが多い。
これは指導者側も同様で、横暴を行ったと判定された場合その地位を追われる。指導者こそが身を律するべき……というのは創設者の思想らしい。
学園の理念は『可能性の開花が最良の形で行える土壌となること』──。
現にオリンピックでメダルを取る運動選手、学生ながら起業を行う者、そして海外でも賞を取るピアニストや画家など、人材達は既に多くの結果を残している様だ。
アカリの通うの高等部は、同じ敷地内に中等部と大学、そして大学院研究棟を含む大型キャンパス内に存在する。部活動に使用される施設は幾つかが共同施設扱いになっていて、時折大学側の学生が善意で指導協力をすることもあるらしい。
「へぇ~……じゃあ馬術部もその内の一つ?」
「そうなりますね。厩舎は隣接していて馬場は高等部と大学が共同で使用しています。大会成績の良い大学生から指導して貰うこともあるんですよ」
「成る程ねぇ」
放課後……。学園内を移動するスミジとアカリ。二人の隣にはアカリの友人である女子生徒の姿があった。
彼女の名は内藤清音。馬術部員であり怪異の目撃者でもある少女は、アカリと同じ景星学園高等部のセーラー服に身を包んでいる。
「自由な校風には後続を育てる精神も宿るって訳か……。………。でも、自由の割には服装にうるさかったな……あの警備員」
「最近は物騒なので大人たちは不審者には気を付けるように言われているのですよ。つまり、疑われる恰好で来訪したあなたに問題があるのでは?」
「不審者……」
スミジ達を先導し手厳しい発言を放つのは、調査のもう一人の同行者……景星学園高等部の生徒指導担当、三船教諭。
今回、学園側がスミジの案内役として選んだ……というより、自ら案内を買って出た三船教諭は、明るいグレーのリクルートスーツ、ブラウンのパンプス、そして黒縁眼鏡だ。
今朝方、電話にて学園との打ち合わせを済ませたスミジは自宅たる懐覧堂から出発した。シズカが不在の為に折り畳み型自転車を漕ぎいつもの作務衣姿で颯爽と街を通り抜ける。そして景星学園に辿り着いた訳だが……ちょっと息が乱れていた為か、はたまた眩しい太陽を防ぐサングラスが悪かったのか……警備員は初見から警戒していた。
「……三船先生は作務衣が悪いとおっしゃいますか?」
「作務衣が悪いのではなく、仕事に相応しい姿をと申し上げているのです」
「私の仕事は美術品全般です。補修だけでなく自らも作品を作るので作務衣が仕事着なんですが……」
「でも、今日は『馬のおばけ』? を何とかしにいらっしゃったのでしょう? それだけでも胡散臭……失礼。ともかく、もっと学園に来訪するに相応しい服装があったのでは?」
対応が冷たい気がする三船教諭……。
そもそも、祓い師に決まった服装はない。白スーツ、和服、セーラー服やゴスロリ姿の祓い師も居る。作務衣はまだマシな方だとスミジは思っていた。が……冷静に考えれば祓い師という存在自体が胡散臭いのである。
途端にスミジは反論する気力を失い情報収集を続けることにした。
「それで……馬の姿が現れる場所は決まっているんですか?」
「いえ……特には。ただ、高等部側に目撃証言は多い気がしますが」
「う~ん……」
「どうしました?」
「ちょっと気になっていることはあるんです。が……確証はないので、もう少し敷地を見たいですね」
午前の内から放課後に至るまでスミジと三船教諭は校舎以外を見て回り原因を探していた。放課後になって様子が変わるかと思っていたがそうでもない様だ。
アカリの友人であり馬術部員でもある内藤清音に話を聞いても今ひとつ決定的な何かに辿り着けない。
「馬術部の厩舎近辺には現れないの、キヨちゃん?」
「うん。ホラ……前にアカリちゃんに話したと思うけど、厩舎の外に栗毛の馬が逃げ出してたって話があったでしょ? 大学側の馬だと思ってたんだけど違うみたいで……」
「それが噂の『おばけ馬』だったの?」
「多分……。でも、全然普通の馬と変わらなかったんだけどなぁ」
馬の怪異ならば同族の群れに引かれ厩舎に集まるかと思えたがどそうではないらしい。そもそも【馬のあやかし】の起源が何か判らねば対応に不備が生まれる恐れもある。
やはり直接見て確認する必要性がある……こういった怪異への対応は何かと手間が掛かるのだ。
ある企業主が人材育成を目的に設立したこの学園は、運動から芸術に至るまで多彩な能力を発揮できる環境が用意されている。
基本的には通常の学習指導要領に沿った教育……しかし当人が望めば専門的カリキュラムも組めるようでその自由度は高い。
反面……モラル面では少々厳しく、特に法に反する行為がある場合や著しい良識の欠如等確認された際は重めの処分が下されることが多い。
これは指導者側も同様で、横暴を行ったと判定された場合その地位を追われる。指導者こそが身を律するべき……というのは創設者の思想らしい。
学園の理念は『可能性の開花が最良の形で行える土壌となること』──。
現にオリンピックでメダルを取る運動選手、学生ながら起業を行う者、そして海外でも賞を取るピアニストや画家など、人材達は既に多くの結果を残している様だ。
アカリの通うの高等部は、同じ敷地内に中等部と大学、そして大学院研究棟を含む大型キャンパス内に存在する。部活動に使用される施設は幾つかが共同施設扱いになっていて、時折大学側の学生が善意で指導協力をすることもあるらしい。
「へぇ~……じゃあ馬術部もその内の一つ?」
「そうなりますね。厩舎は隣接していて馬場は高等部と大学が共同で使用しています。大会成績の良い大学生から指導して貰うこともあるんですよ」
「成る程ねぇ」
放課後……。学園内を移動するスミジとアカリ。二人の隣にはアカリの友人である女子生徒の姿があった。
彼女の名は内藤清音。馬術部員であり怪異の目撃者でもある少女は、アカリと同じ景星学園高等部のセーラー服に身を包んでいる。
「自由な校風には後続を育てる精神も宿るって訳か……。………。でも、自由の割には服装にうるさかったな……あの警備員」
「最近は物騒なので大人たちは不審者には気を付けるように言われているのですよ。つまり、疑われる恰好で来訪したあなたに問題があるのでは?」
「不審者……」
スミジ達を先導し手厳しい発言を放つのは、調査のもう一人の同行者……景星学園高等部の生徒指導担当、三船教諭。
今回、学園側がスミジの案内役として選んだ……というより、自ら案内を買って出た三船教諭は、明るいグレーのリクルートスーツ、ブラウンのパンプス、そして黒縁眼鏡だ。
今朝方、電話にて学園との打ち合わせを済ませたスミジは自宅たる懐覧堂から出発した。シズカが不在の為に折り畳み型自転車を漕ぎいつもの作務衣姿で颯爽と街を通り抜ける。そして景星学園に辿り着いた訳だが……ちょっと息が乱れていた為か、はたまた眩しい太陽を防ぐサングラスが悪かったのか……警備員は初見から警戒していた。
「……三船先生は作務衣が悪いとおっしゃいますか?」
「作務衣が悪いのではなく、仕事に相応しい姿をと申し上げているのです」
「私の仕事は美術品全般です。補修だけでなく自らも作品を作るので作務衣が仕事着なんですが……」
「でも、今日は『馬のおばけ』? を何とかしにいらっしゃったのでしょう? それだけでも胡散臭……失礼。ともかく、もっと学園に来訪するに相応しい服装があったのでは?」
対応が冷たい気がする三船教諭……。
そもそも、祓い師に決まった服装はない。白スーツ、和服、セーラー服やゴスロリ姿の祓い師も居る。作務衣はまだマシな方だとスミジは思っていた。が……冷静に考えれば祓い師という存在自体が胡散臭いのである。
途端にスミジは反論する気力を失い情報収集を続けることにした。
「それで……馬の姿が現れる場所は決まっているんですか?」
「いえ……特には。ただ、高等部側に目撃証言は多い気がしますが」
「う~ん……」
「どうしました?」
「ちょっと気になっていることはあるんです。が……確証はないので、もう少し敷地を見たいですね」
午前の内から放課後に至るまでスミジと三船教諭は校舎以外を見て回り原因を探していた。放課後になって様子が変わるかと思っていたがそうでもない様だ。
アカリの友人であり馬術部員でもある内藤清音に話を聞いても今ひとつ決定的な何かに辿り着けない。
「馬術部の厩舎近辺には現れないの、キヨちゃん?」
「うん。ホラ……前にアカリちゃんに話したと思うけど、厩舎の外に栗毛の馬が逃げ出してたって話があったでしょ? 大学側の馬だと思ってたんだけど違うみたいで……」
「それが噂の『おばけ馬』だったの?」
「多分……。でも、全然普通の馬と変わらなかったんだけどなぁ」
馬の怪異ならば同族の群れに引かれ厩舎に集まるかと思えたがどそうではないらしい。そもそも【馬のあやかし】の起源が何か判らねば対応に不備が生まれる恐れもある。
やはり直接見て確認する必要性がある……こういった怪異への対応は何かと手間が掛かるのだ。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる