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◆第四章 存在の善悪◆
第三話 馬の怨嗟
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学園構内の移動を続けやがてスミジ達は厩舎に辿り着く。そこには十頭程の馬が馬房の中に並んでいた。
「うわぁ、カワイイ! お馬さん、こんなに居たんだね~!」
物怖じしないアカリは興奮気味に厩舎を覗いている。
「内藤さん。馬はこれで全部?」
「いえ……一頭居ませんね。多分、先輩が連れていったんでしょう。それと、大学側の厩舎は隣なのでそちらにも十頭程居ます」
「そう。ちょっと中を見ても大丈夫?」
「はい。馬を驚かせるようなことをしないで貰えれば問題ありません」
許可を得たスミジは厩舎の中へと歩き始める。
(…………)
馬房を一つづつ確認し戻ったスミジはどこか浮かない表情をしていた。
「何か分かったのですか?」
三船教諭の問いに一瞬だけ視線を向けるも、再び厩舎の方に視線を向けたスミジは黙ったまま。
痺れを切らした三船教諭が再度問い掛けようとしたその時、馬達が一斉に嘶いた。
「えっ? な、何?」
動揺する三船教諭と内藤女子。
「スミジさん……」
「うん。間違いなく怪異だね。但し……」
厩舎の屋根からは大量の馬の脚がぶら下がっていた。その光景に三船と内藤は悲鳴を上げる。
「きゃあああっ!」
「ひっ! な、何よ、アレは!?」
「落ち着いて下さい、三船先生……。取り敢えずアレに害はありません。が……私達に反応して出ているので一旦離れましょう」
薄暗い厩舎の中で発生した怪異。それを目にした三船と内藤を考慮し、スミジは人気があり明るい場所への移動を提案した。
とはいえ、二人はまだ混乱している様子。一方、アカリは友人と恩師を気遣う余裕を見せている。
「アカリちゃんは大丈夫?」
「はい、怖いのはあまり感じないです」
「そっか。……でも、一応コレを渡しておくね」
それは掌に乗る大きさの短冊。表面には赤い龍が描かれていた。同じものを三船と内藤にも手渡したスミジは改めて話を始めた。
「え~っと……何から話した方が良いかな。……。まず、今回の怪異ですが結構ヤバめです」
「ヤバめ……というのは?」
「三船先生。私は最初単純な怪異かと思ってました。祓えば終わりかと……でも、今回の怪異はそう単純な話じゃありません」
「………?」
「ハッキリと言っちゃうと怪異の数が多すぎるんですよ。しかも、現在進行形で増えてる」
学園構内を見て回ったスミジは、怪異の姿を幾つか確認している。当然ながらそれは周囲の者には見えていない様子だった。日中に怪異を視認できるのは祓い師、またはその才覚ある者だけである。
だが……先ず違和感があったのはそこだ。
学園構内に於いて噂になった怪異は、何人もの生徒が逢魔が刻に至る前にその姿を目撃している。先程も三船や内藤清音、そしてアカリがスミジの術を介せずに怪異を目撃した。
そして怪異の種類──。
学園との打ち合わせの時点で判明していたのは、壁抜けする馬、馬の脚……加えて、首の無い馬やタテガミが燃えている馬の目撃情報もあった。
全てが一つの怪異から派生している事例もあるが、今回のものは明らかにそうではない。
「怪異は基本、他の怪異を意識しない。だから、他の怪異を集めるようなこともない。もし他の怪異を利用する怪異ならば、確かな自我が確立されているか……または本能で呼び集めるか……」
前回祓ったバラゴは漫画作品内での緻密な描写により高い知能と確かな人格が宿っていた。あのレベルになると他の怪異を取り込んでもおかしくはない。
対して今回は馬……。人型が混じるものではなく、馬そのもの。集まる怪異も馬ばかりであることを考えるならば、本能で仲間を求めたと見るのが妥当であろう。
「結論から言ってしまえば、これは馬の呪い……怨念や怨嗟です。でも、学園内を見て回りましたが原因が分からない。内藤さん……最近、死んだ馬は居る?」
「いいえ……ここ数年は無いと先輩からも聞いてます」
「となると、外部からの可能性も……。益々厄介だな。三船先生……学園の責任者に伝えて下さい。明後日の日曜日は学園を立ち入り禁止にして欲しいと」
「……そこまでする必要があるんですか? 学園内には研究機関があって止められない場所もあるのですけど……」
「そういう場所は先に言って頂ければ対応の準備します。あと、生き物の面倒を見る人にも……。取り敢えず、明日中には準備しますので……」
「………。わかりました。上にはそう伝えます。道祖土さんには明日朝までにはご連絡致します」
「お願いします」
学園の怪異は思ったよりも危険なものだった……。
解決するには原因となっているものを祓う必要がある。しかし、学園敷地が広いことが仇となり特定ができない。
景星学園はアカリの通う学園でもある。早めに解決したいところだ。
そこでスミジが考えたのは、祓い師としては少々な型破りな手段だった……。
「うわぁ、カワイイ! お馬さん、こんなに居たんだね~!」
物怖じしないアカリは興奮気味に厩舎を覗いている。
「内藤さん。馬はこれで全部?」
「いえ……一頭居ませんね。多分、先輩が連れていったんでしょう。それと、大学側の厩舎は隣なのでそちらにも十頭程居ます」
「そう。ちょっと中を見ても大丈夫?」
「はい。馬を驚かせるようなことをしないで貰えれば問題ありません」
許可を得たスミジは厩舎の中へと歩き始める。
(…………)
馬房を一つづつ確認し戻ったスミジはどこか浮かない表情をしていた。
「何か分かったのですか?」
三船教諭の問いに一瞬だけ視線を向けるも、再び厩舎の方に視線を向けたスミジは黙ったまま。
痺れを切らした三船教諭が再度問い掛けようとしたその時、馬達が一斉に嘶いた。
「えっ? な、何?」
動揺する三船教諭と内藤女子。
「スミジさん……」
「うん。間違いなく怪異だね。但し……」
厩舎の屋根からは大量の馬の脚がぶら下がっていた。その光景に三船と内藤は悲鳴を上げる。
「きゃあああっ!」
「ひっ! な、何よ、アレは!?」
「落ち着いて下さい、三船先生……。取り敢えずアレに害はありません。が……私達に反応して出ているので一旦離れましょう」
薄暗い厩舎の中で発生した怪異。それを目にした三船と内藤を考慮し、スミジは人気があり明るい場所への移動を提案した。
とはいえ、二人はまだ混乱している様子。一方、アカリは友人と恩師を気遣う余裕を見せている。
「アカリちゃんは大丈夫?」
「はい、怖いのはあまり感じないです」
「そっか。……でも、一応コレを渡しておくね」
それは掌に乗る大きさの短冊。表面には赤い龍が描かれていた。同じものを三船と内藤にも手渡したスミジは改めて話を始めた。
「え~っと……何から話した方が良いかな。……。まず、今回の怪異ですが結構ヤバめです」
「ヤバめ……というのは?」
「三船先生。私は最初単純な怪異かと思ってました。祓えば終わりかと……でも、今回の怪異はそう単純な話じゃありません」
「………?」
「ハッキリと言っちゃうと怪異の数が多すぎるんですよ。しかも、現在進行形で増えてる」
学園構内を見て回ったスミジは、怪異の姿を幾つか確認している。当然ながらそれは周囲の者には見えていない様子だった。日中に怪異を視認できるのは祓い師、またはその才覚ある者だけである。
だが……先ず違和感があったのはそこだ。
学園構内に於いて噂になった怪異は、何人もの生徒が逢魔が刻に至る前にその姿を目撃している。先程も三船や内藤清音、そしてアカリがスミジの術を介せずに怪異を目撃した。
そして怪異の種類──。
学園との打ち合わせの時点で判明していたのは、壁抜けする馬、馬の脚……加えて、首の無い馬やタテガミが燃えている馬の目撃情報もあった。
全てが一つの怪異から派生している事例もあるが、今回のものは明らかにそうではない。
「怪異は基本、他の怪異を意識しない。だから、他の怪異を集めるようなこともない。もし他の怪異を利用する怪異ならば、確かな自我が確立されているか……または本能で呼び集めるか……」
前回祓ったバラゴは漫画作品内での緻密な描写により高い知能と確かな人格が宿っていた。あのレベルになると他の怪異を取り込んでもおかしくはない。
対して今回は馬……。人型が混じるものではなく、馬そのもの。集まる怪異も馬ばかりであることを考えるならば、本能で仲間を求めたと見るのが妥当であろう。
「結論から言ってしまえば、これは馬の呪い……怨念や怨嗟です。でも、学園内を見て回りましたが原因が分からない。内藤さん……最近、死んだ馬は居る?」
「いいえ……ここ数年は無いと先輩からも聞いてます」
「となると、外部からの可能性も……。益々厄介だな。三船先生……学園の責任者に伝えて下さい。明後日の日曜日は学園を立ち入り禁止にして欲しいと」
「……そこまでする必要があるんですか? 学園内には研究機関があって止められない場所もあるのですけど……」
「そういう場所は先に言って頂ければ対応の準備します。あと、生き物の面倒を見る人にも……。取り敢えず、明日中には準備しますので……」
「………。わかりました。上にはそう伝えます。道祖土さんには明日朝までにはご連絡致します」
「お願いします」
学園の怪異は思ったよりも危険なものだった……。
解決するには原因となっているものを祓う必要がある。しかし、学園敷地が広いことが仇となり特定ができない。
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