姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆第四章 存在の善悪◆

第五話 九人の祓い師

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 続いて口を開いたのは黒いゴシックロリータ衣装に身を包む眼帯の少女。目鼻立ちが整っているので衣装の違和感があまり無いものの、日中の学校なので存在自体はかなり浮いている。

わたくしは三条・F・茉莉奈まりなと申します。こちらの男は私の執事で嘉藤……」
「三条家、マリナ様専属執事の嘉藤かとうでございます。以後、お見知り置きを」

 深々と頭を下げた嘉藤は三十代程の痩せ型の男。オールバックの黒髪に眼鏡、ダークスーツ姿だ。190センチはあろう長身が迫力を感じさせる。

「三条って、もしかして“あの”三条?」
「“あの”が何を指しているかは存じませんが、恐らくあなたの考えている三条家で間違いないと思います」
「ヒュ~ッ! まさか三条財団の御令嬢が祓い師とはね。そんな危険を背負う必要無いっしょ?」

 馴れ馴れしく三条へと近付く御門だが、その眼前に嘉藤が立ちはだかる。

「要らぬ詮索はなさらぬことですよ、御門様」
「ご、ごもっとも~」

 嘉藤の笑顔の圧力に怯んだ御門は苦笑いでスミジの傍まで戻ってきた。

「大人しくしてろよ……」
「え~? スキンシップは大事だろ?」
「……ったく。失礼しました、三条さん。コイツはこんな奴ですが悪い奴ではないので……」
「構いませんよ。ただ、やはり祓い師が複数集まるのは好ましくないので距離は置いて頂きたいですね」
「……わかったな、御門?」
「へいへ~い。わっかりやしたよ~」

 反省した様子の無い御門の頭をスミジはペシリと叩く。三条と嘉藤は小さく溜め息を吐いていた。

「次は……」

 スミジが視線を向けた先には全身黒衣装の若い男が座っている。ライダースジャケット、レザーパンツ、ブーツやグローブも黒革。ネックシャツのみが布の様だがそれも黒い。傍らには同様に黒革張りのビリヤードキューケースが置かれていた。

榑木くれきすばるだ」

 榑木はスミジとそう歳は変わらない様に見える。が、寡黙な様でそれ以上口を開かなかった。

「……。次は……」
「私達ね!」

 赤い袴の巫女衣装少女が二人──。容姿は髪以外瓜二つなので双子と思われる。が、祓い師にしてはかなり幼い。

「ねぇ、キミ達……中学生くらい?」
「え? そうだけど、何?」

 またもや御門は遠慮することなく問い掛ける。

「じゃあ、間違っちゃったのかな? ここはコスプレ会場じゃないよ?」
「バカにすんな、このホスト崩れ!」
「く、崩れ……?」
「アタシ達は九頭竜くずりゅう神社の巫女……アタシは姉の九頭竜くずりゅう青葉あおば、コッチは双子の妹の紅葉くれはよ! ちゃんとした祓い師だよ!」

 姉の青葉は御門を睨み、妹の紅葉は姉を宥めようとオロオロしている。御門はやや困った様子でスミジに助けを求める視線を向けた。

「……失礼しました、九頭竜さん。コイツには後で言って聞かせるので……」
「フン……」
「それで……。九頭竜神社の神主は貴士さんだった筈ですが……」
「アンタ、お父さんの知り合いなの?」
「一応、君達のお父さんは道祖土さいどの親類筋に当たるんですよ。だから道具の仕入れやらも私がやってるんですが……」

 九頭竜神社はスミジの一族とは別系統の祓い師である。が、現在の神主である貴士は婿として迎えれられた立場……同時に道祖土の血筋だ。

 九頭竜は本来巫女が怪異祓いを行っていたが、貴士の妻である楠葉くすはは病弱で祓い師としての役割を果たせなかった。故に貴士が次の巫女が生まれるまでの代理として祓い仕事を行っていたのだが……。

「お、お父さんはお母さんの付き添いをしてます」

 小さな声で答えた妹の紅葉は少し不安げな表情だ。

「お母さんの体調が優れないのですか?」
「はい。今、入院していて……」
「それは大変ですね。……。時に、貴士さんには今回の件は?」
「……も、勿論、伝わってるわよ? だから私達が来たんでしょ?」

 青葉の笑顔はやや引き攣っている。紅葉は落ち着かない様子で視線を逸らした。

 と……ここで御門は急に強気になった。

「あれ~? もしかして、お父さんに内緒で来たのかなぁ? 悪い子だなぁ~」
「な、何よ! 私達はアンタなんかよりも実力あるんだからね!」
「え~? でも、お父さんに内緒で来たんでしょ? それってつまり、半人前じゃないの~?」
「うっ……!」
「どっしよっかなぁ~? お父さんに言っちゃおうか? 二人とも凄く怒……グヘッ!」

 御門の頭にスミジの拳骨が炸裂。御門は頭を押えうずくまっている。

「御門……お前、小物になってるぞ」
「痛いよ、スミっち! 俺はこの子達を心配してだね……」
「わかってるが、もっと言い方があるだろ? お前、女性には優しいんじゃ無かったのか?」
「子供はカテゴリーエラーですが?」
「…………」

 スミジはもう一発拳骨を落し九頭竜姉妹の前に歩み寄った。

「コイツは言い方はアレだけど君達を心配しているのは本当ですよ。今回の怪異は結構厄介で危険になる可能性もある。私としても君達に何かあれば貴士さんに申し訳が立たない」
「でも、私達は九頭竜の巫女としての力をお母さんから託されたの! だから……!」
「………。じゃあ、一つだけ約束。二人は私と行動して下さい。それなら依頼を受けるのを認めます」

 この言葉に青葉は憤慨の様子を見せる……しかし、紅葉の説得もあり渋々納得した。

「……甘いな、スミっち」
「そう言うなよ、御門。お前ならこの娘達の気持ちもわかるだろ?」
「まぁ……ね」
「さて……これで全員ですかね。でも、事前に聞いていた人数より足りないかな……」
「いや……もう一人だ」

 榑木がスミジの言葉に反応し目線を向けた先には、首から十字架を下げた黒い詰襟法衣の外国人が近付いてくる。
 銀髪で四十手前程の大男はニコニコと笑顔を振り撒いていた。

「オー……道に迷ってしまいましたヨ。ワタクシ、リカルド・グローライズといいマース。サオトメさんの依頼はコチラで合ってマスカ~?」
「はい。間違いないです」
「ワタシ、一応牧師デ~ス。フツツカモノですがヨロシコお願いしマ~ス」

 八人目の助っ人祓い師、リカルド登場。スミジは簡略的に皆を紹介。改めて祓い仕事の話へと移る。


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