姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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スミジとアカリの姫国あやかし紹介録③

第三回 妖怪画

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「スミジと!」
「アカリの!」
「姫国あやかし紹介録~!!」

 ドンドン!

「はい! という訳で三回目です。スミジさん、今回は?」
「妖怪画について少し語ろうと思ってます」

 妖怪の存在の多くは言い伝え……しかしながら、人間はその姿を多く書き残している。世にいう妖怪画というものだ。
 何故人間は妖怪画を描き妖怪画に惹かれるのか……それは、未知への好奇心から始まる。

「はいはい。それっぽく言っても蒼村はにわかだろ?」

 ………。はい!自分、俄かっス!よろしくお願いしやっス!

「そんなハキハキと……」
「蒼村は実際俄かだから開き直ったんだよ、アカリちゃん」

 ………えへ。

「……。と、という訳で妖怪画ですが、日本画には独特の魅力がありますよねぇ。アカリちゃんは何か見たことある?」
「小さい頃に図書館で大きな骸骨の絵を見たことがあります。あれは怖かったですね」
「がしゃ髑髏の浮世絵だね。作者は歌川国芳うたがわくによしの作だと思う。国芳は妖怪絵師としては有名な方だよ。歌川一門は他にも広重ひろしげ(安藤広重)、そして豊国とよくに豊広とよひろも妖怪画を描いています」

 歌川一門に限らず浮世絵師は妖怪画を結構残していますね。割とポピュラーな題材だったと見るべきでしょう。

「そうなんですか? 浮世絵っていうと、葛飾北斎とか東州斎写楽が有名ですけど……」
「彼等も描いてるよ?」
「初めて知りました……」
「昔はエアコンなんて無かったから怪談話で涼んだそうだよ。不思議なことは怪異のせいにしたりと何かと空想力が高かった時代だからね……夜の闇が深い分、妖怪が身近だったのかな」

 まさに怖いもの見たさもあり、書き手もそれを表現したりして楽しんでいたのかもしれませんね。

「妖怪画で有名な方って結構居るんですか?」
「そうだね。妖怪画と言ったらこの人……という方は【鳥山石燕とりやませきえん】かな。『図画・百鬼夜行ひゃっきやこう』が有名だよ。石燕の描く妖怪画はおどろおどろしたものというより、ちょっと奇妙だったり不思議だったりが多い」
「へぇ~……」
「それに偉大な漫画家・水木しげる先生が大きな影響を受けたことで有名な方でもある」
「ゲ、ゲゲゲの大先生が……!」
「ア、アカリちゃんは漫画好きだよね……。ともかく、日本の妖怪像は【鳥山石燕】と【水木しげる】という偉大なお二方の影響が大きいのは間違いないよ」

 因みに作者は河鍋暁斎かわなべきょうさい月岡芳年つきおかよしとしが好き。

「そういえば本編に出てきましたよね、河鍋暁斎さん?」
「実は暁斎も芳年も最初に名前が出た歌川国芳の弟子なんだ。二人の絵は芸術性が高いから俺も好き」

 河鍋暁斎は幕末から明治の日本画家。その人物像は『画鬼』と言われる程の探究家。逸話だけでも結構面白い。

「逸話ですか?」
「修行時代の話だね。暁斎の師・国芳の教えで、人の動きを観察して描くのに喧嘩している人を捜して写生していたそうだよ。他にも生首を拾って書き写したとか……」
「うわぁ……怖いです」
「それだけ絵を追い求めたんだよ。師匠が変わって狩野派に入門した時も火事になった中を写生したり……まぁ凄い人物なんだ。その分、絵の迫力は別格。沢山の師匠もいたから技術も凄い」

 気になった方は調べてみてください。天才ってこんな人なんだろうと思えます。


 そして月岡芳年は現代でも通じる構図が多いですね。洗練されたデザインというかダイナミックさというか……。

「芳年の作品で有名なのは『新形三十六怪撰』ですね~。実はコレ、完成前に芳年が亡くなって弟子が完成させたそうです」
「そんなことが……」
「晩年の芳年は病に侵されていて、そんな中で描いたのが『新形三十六怪撰』です。これが凝ったデザインなんだよ。絵を見せながら説明できないのが残念」
「ああ! スミジさんの画商の血が騒いでます!」
「他にも佐脇嵩之さわきすうしの『百怪図巻』も妖怪画を語る上では外せないね~」

 妖怪画……というより他にも絵巻では『稲生物怪録』が有名ですよね~。最後、打ち出の小槌が出てきますし。

「ああ! 作者さんにまで火が付いた!」
「『百鬼夜行絵巻』や『付喪神絵巻』は室町時代に書かれた文化財……これも貴重な妖怪画だ」

 貴重でいうなら本作タイトルの参考になった『姫国山海経きこくせんがいきょう』なんか『虫の妖怪』とか載ってる珍しい物でしょう?

「だ、段々と妖怪画というより歴史資料になっていってませんか?」
「山海経と言ったら中国を無視は出来ないだろ、蒼村?」
「お、お~い! スミジさん、作者さん?」

 まだまだ沢山ある妖怪画が紹介しきれない。

 嗚呼……素晴らしき哉、【あやかし】の世界!皆さん、おいで!寄っといで?

「だ、誰か二人を止めて~!?」
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