姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆幕間① 祓い師達の事情◆

幕間・その1 懇親会

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 役割を果たし終えた祓い師達は本来ならそれぞれ帰路につく筈だったのだが……。

「オ~……それはトテモ寂しいデス。折角お仲間に出逢エタのに……」

 牧師リカルドがとても残念そうにしていた為、祓い師達は解散の機会を失った。


 リカルドは元々はアメリカの祓い師である。祓い師の数は海外でも減少しているが、何せアメリカは広大……そもそも祓い師同士が出会うこと自体が稀だった。
 しかも海外の祓い師も例に漏れず他の祓い師達との仕事は行わないとのこと。いや……それ以上に祓い師同士が互いを敵と看做すこともあるという。

 リカルドは自らが所属していた祓い師組織『アルス・ノヴァ修道会』の仲間内しか知らず、他の祓い師と出会っても邪険にされるだけだった……と、遠い眼で記憶を振り返っていた。

「ニホンに来てもそれは同じようなものでシタ。でも今回、皆サン普通に接してくれマス。だからモウ少しお話ししたいデス」

 目をキラキラさせながら懇願するリカルドに一同はやや呆れている。しかし、この場に於いてその願いを無下にする者は居なかった。

「私は構いませんよ」
「俺っちも良いぜ?」
道祖土さいどサン、御門みかどサン、ありがとうございマス!」

 唐突に抱き付かれたスミジと御門……ことのほか怪力だったリカルドにギリギリと絞め付けられているが、二人は苦笑いで必死に堪えている。
 それを見た九頭竜姉妹は、賢雲の背後に隠れつつも同意の姿勢を見せた。

「私達も良いわよ。まだ色々知りたいし」
「聞いても問題ない範囲なら大丈夫ですよね?」
「アリガトウゴザいマ~ス!」
「ふむ。ならば儂も付き合おうか……信仰するものは違えど……いや、信仰するものがある同士語れることもあろうからな」
「賢雲サン! 感謝デス!」

 片手で拝む素振りを見せた賢雲に併せ、リカルドは胸の前で十字を切り両手を組んだ。

 この様子にふと微笑んだ三条は、従者である嘉藤に目配せすると祓い師達に提案を持ち掛ける。

「此処では何ですから場所を移し懇親会としませんか? ささやかながら場所と料理は我々が用意致しますので」
「流石は三条財閥のお嬢さんだな。太っ腹なこった」
「リカルドさんの言ったように折角の御縁。どうやら皆さんは術の【絶対秘匿】の必要も無い御様子……ならば繋がりを持つことは互いのメリットになると思いませんか、御門さん?」
「……確かにな」

 御門はあまり他の祓い師との繋がりを作らない。それは自らの力である魔狼スコルが他者の術さえ喰らう可能性がある故……。
 しかし、スミジのようにそれを理解しつつも態度の変わらぬ者が居ることを内心嬉しいとも思っていた。この場の祓い師達も同様ならば……と僅かに期待しているのも事実である。

「それで……いつも最後の確認になってしまいますが、榑木さんはどうします?」
「……。わかった。この面子なら術式云々で揉めることは無いだろう。確かに俺も頼ることがあるかもしれない。連携の話し合いくらいはしておこう」
「そうと決まりましたら移動しましょうか。嘉藤」
「はい。既に……」
「では、皆さん。外へ」

 三条に言われるまま景星学園高等部の食堂前に移動した一同は、運搬路に停車している黒塗りのリムジンを発見。

(流石は金持ち……)

 半笑いのスミジ。一方、他の祓い師達は何事もないかの様に乗り込んで行く。

「……。もう慣れた方が良いぞ」
「榑木さん……」
「気付いてただろ、アレ?」

 榑木は上空を小さく指差した。そこには光る星の様なものが微かに見える。それは本来、肉眼では到底確認できない人工衛星。恐らく気付いたのは榑木とスミジだけだろう。

「あんなものを持っていて個人で動かせる一族だ。高級車くらいは余裕だろう?」
「ハハ……ハハハ……」

 三条家は世界三か国に事業を展開する大企業でもある。日本、アメリカ、そしてフランス……それぞれに一族が代表取締役会となっているとなればその権力と影響力は計り知れない。
 その令嬢が何故祓い師をやっているのか……スミジにも疑問ではある。

 ともかく、三条茉莉奈まりなは出会った頃と違い友好的な様子なので厚意に甘えることにした。


 嘉藤の運転によりやがて到着したのは、三条グループ系列である高級ホテル。何から何までスケールが違うことに戸惑いつつ、祓い師達は異例の懇親会を開くことになったのであった。 

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