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◆第五章 森羅の中◆
第一話 店主の不在
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景星学園で発生した【馬の怪】から二週程が過ぎようとしていた。
アカリの通う学園内はすっかり通常の様子に戻ったという。あれから【怪異】は無くアカリ自身にも問題は起きていない。学園で目撃された怪異については榑木が適当に語った『研究棟から漏れた幻覚物質』を原因とすることで騒動自体も問題なく処理された。
その流れでスミジもアフターケアの必要が無くなりいつもの日常に戻った──かと思いきやそうではない。
放課後……アカリがアルバイトに訪れた懐覧堂にスミジの姿はない。代わりに店に居たのは早乙女シズカと見慣れない制服の美少女。
「シズカさん、こんにちは……。あの……お客様ですか?」
振り返った少女は都内でも有名なお嬢様学校『聖アグニア女学院』の制服を着ていた。少女はアカリに気付くと姿勢を正し自己紹介を始める。
「初めまして。私は三条マリナと言います」
「初めまして。私は九郷アカリです。ここでアルバイトをしてます」
「お幾つですか?」
「十六歳です」
「では、私が一つ上になるわね。アカリさんて呼んでも良いかしら?」
「はい。じゃあ、私はマリナさんで良いですか?」
「ええ。宜しくね、アカリさん」
アカリは三条が差し出した手を握り返し笑顔で応える。そんな様子を微笑ましく見ていたシズカは思い出したように口を開いた。
「もしかしてアカリちゃん……スミジから聞いてないの? アイツ、今日は祓い師の仕事で出掛けたのよ」
「お仕事ですか?」
「ええ。何日か前に伝えたんだけど……」
シズカから【あやかし】に関する依頼を受けたスミジは、今朝方早くに出掛けたらしい。
「代わりに私が店番押し付けられたんだけど……スミジの奴、後でお仕置きね」
パキパキと指を鳴らし不敵な冷笑を浮かべているシズカにアカリは苦笑いだ。
「ハハ……じゃあ、今日は久し振りにシズカさんとお話しができますね」
「ええ……。三条さんと話もあったから丁度良かったわ」
「…………?」
意味が判らず首を傾げるアカリに三条が事情を伝えた。
「えっ? 三条さん、祓い師なんですか!?」
「ええ。この間の景星学園の件で道祖土さんと知り合いになったの。今日は、早乙女さんに呼ばれて……話というのはその時の報酬ね」
三条家にとっては微々たる額の報酬……しかし、これは祓い師の対価として必要なこと。まだ祓い師として独自の体系を確立していない三条マリナは報酬を受け取ることで術式の弱体化を防ぐ必要があった。
「へぇ~……大変なんですね、祓い師って」
「私はまだ駆け出しの様なものだから……。アカリさんは道祖土さんのお弟子さんではないの?」
「私は依頼人……の様なものでして……エヘヘ」
アカリはどこか気不味そうだ。三条が確認の視線をシズカに向ければ小さく首を振っている。
「アカリちゃんは【あやかし憑き】なのよ。スミジの術で抑えてはいるのだけれど、また祓いきれていないの」
「だから懐覧堂で働くのが【あやかし】を祓って貰う私の対価なんです。それまではスミジさんが守ってくれるって」
「そうだったの……」
経緯は違えど三条の母と同じく【あやかし】の被害者──そんなアカリに三条は共感を持った。
アカリの通う学園内はすっかり通常の様子に戻ったという。あれから【怪異】は無くアカリ自身にも問題は起きていない。学園で目撃された怪異については榑木が適当に語った『研究棟から漏れた幻覚物質』を原因とすることで騒動自体も問題なく処理された。
その流れでスミジもアフターケアの必要が無くなりいつもの日常に戻った──かと思いきやそうではない。
放課後……アカリがアルバイトに訪れた懐覧堂にスミジの姿はない。代わりに店に居たのは早乙女シズカと見慣れない制服の美少女。
「シズカさん、こんにちは……。あの……お客様ですか?」
振り返った少女は都内でも有名なお嬢様学校『聖アグニア女学院』の制服を着ていた。少女はアカリに気付くと姿勢を正し自己紹介を始める。
「初めまして。私は三条マリナと言います」
「初めまして。私は九郷アカリです。ここでアルバイトをしてます」
「お幾つですか?」
「十六歳です」
「では、私が一つ上になるわね。アカリさんて呼んでも良いかしら?」
「はい。じゃあ、私はマリナさんで良いですか?」
「ええ。宜しくね、アカリさん」
アカリは三条が差し出した手を握り返し笑顔で応える。そんな様子を微笑ましく見ていたシズカは思い出したように口を開いた。
「もしかしてアカリちゃん……スミジから聞いてないの? アイツ、今日は祓い師の仕事で出掛けたのよ」
「お仕事ですか?」
「ええ。何日か前に伝えたんだけど……」
シズカから【あやかし】に関する依頼を受けたスミジは、今朝方早くに出掛けたらしい。
「代わりに私が店番押し付けられたんだけど……スミジの奴、後でお仕置きね」
パキパキと指を鳴らし不敵な冷笑を浮かべているシズカにアカリは苦笑いだ。
「ハハ……じゃあ、今日は久し振りにシズカさんとお話しができますね」
「ええ……。三条さんと話もあったから丁度良かったわ」
「…………?」
意味が判らず首を傾げるアカリに三条が事情を伝えた。
「えっ? 三条さん、祓い師なんですか!?」
「ええ。この間の景星学園の件で道祖土さんと知り合いになったの。今日は、早乙女さんに呼ばれて……話というのはその時の報酬ね」
三条家にとっては微々たる額の報酬……しかし、これは祓い師の対価として必要なこと。まだ祓い師として独自の体系を確立していない三条マリナは報酬を受け取ることで術式の弱体化を防ぐ必要があった。
「へぇ~……大変なんですね、祓い師って」
「私はまだ駆け出しの様なものだから……。アカリさんは道祖土さんのお弟子さんではないの?」
「私は依頼人……の様なものでして……エヘヘ」
アカリはどこか気不味そうだ。三条が確認の視線をシズカに向ければ小さく首を振っている。
「アカリちゃんは【あやかし憑き】なのよ。スミジの術で抑えてはいるのだけれど、また祓いきれていないの」
「だから懐覧堂で働くのが【あやかし】を祓って貰う私の対価なんです。それまではスミジさんが守ってくれるって」
「そうだったの……」
経緯は違えど三条の母と同じく【あやかし】の被害者──そんなアカリに三条は共感を持った。
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