84 / 153
◆第六章 古き大妖◆
第六話 警戒体制
しおりを挟む
藤倉との挨拶の後、スミジ達が向かったのは天元明智宗が牛鬼対策の拠点として選んだ寺院──。
藤倉の運転する乗用車は海岸沿いの道路を走る。途中、すれ違う車の中にやはり幾度か僧侶の姿が確認できた。
「僧侶を乗せているのは私服警官ですか?」
「はい。天元明智の僧も皆が皆、法衣ではありません。私服の方も多いですよ」
「へぇ……一体どれ程の人数を割いているんですか?」
「警官、僧侶、共に千人です」
「!? ……そりゃあ、また……」
質問したのは伊庭だが、対応の徹底さを聞いてかなり驚いている。
【怪異】に対して二千人体制というのは滅多にない警戒である。通常は県警本部側で容認しないのだが、藤倉はそれを押し通したらしい。
「良く通りましたね……」
「私は元々祓い師なので、かつての祓い師仲間に頼って『護国統霊会』に進言しました」
「成る程……」
護国統霊会は『超法規事例対策室一係』の最上部組織に当たる。皇族から代表を担って貰い国家安寧の為に危険な【怪異】を祓うという理念で創設されている組織だ。
古くは平安の頃より存在した陰陽寮などを元に、修験者、巫女、僧侶、その他霊力を持つ者を取り込み構築された国家機関だが、【怪異】に対するという性質上秘密組織となっている。
表向きの名称は『御霊会議』として宮内庁内に存在している。
その下部組織には、【怪異】から国の運営を守る……つまり国会議員専属機関『国政安護部会』、霊的文化財を管理する『霊遺物管理委員会』、そして警察との融合組織『超法規事例対策室』が存在する。
最上部組織に直接進言出来たということは相当な立場の知人が居たのだろう。そして間違いなくそのお陰で被害拡大は抑えられているに違いなかった。
「成る程……。それなら県警も従うしかないですね」
「警視庁の上司にはかなり嫌な顔はされましたけどね」
苦笑いで運転を続ける藤倉は、それでも信念の元で行動という覚悟の宿る表情だった。
「こんな事態ですから保身なんて考えている場合では無いんです。かつては【あやかし】が見えた身……幽世の存在を知る者として私には責任がありますから」
「立派だと思いますよ。あなたのお陰で現に犠牲は抑えられています」
「それでも……最初の犠牲者を防げなかった。十数年前にも予兆はあったのに、準備が足りなかったのは警察の不手際です」
「それは仕方無いでしょう。十年以上前、あなたは学生でしょう?」
当時、藤倉は十三歳……流石に【怪異】に絡むには若すぎるのだが……。
「いいえ。私は確かに学生でした……でも、無関係だった訳じゃないんです」
「どういうことですか?」
「あの時……私は何も見えない普通の人間でした。でも、ある方が身を呈して守ってくれたんです」
宇和島地方出身だという藤倉は、ある日海岸で黒い靄に襲われた。その際、一人の男が靄を追い払ったのだと自らの体験を語る。
藤倉の運転する乗用車は海岸沿いの道路を走る。途中、すれ違う車の中にやはり幾度か僧侶の姿が確認できた。
「僧侶を乗せているのは私服警官ですか?」
「はい。天元明智の僧も皆が皆、法衣ではありません。私服の方も多いですよ」
「へぇ……一体どれ程の人数を割いているんですか?」
「警官、僧侶、共に千人です」
「!? ……そりゃあ、また……」
質問したのは伊庭だが、対応の徹底さを聞いてかなり驚いている。
【怪異】に対して二千人体制というのは滅多にない警戒である。通常は県警本部側で容認しないのだが、藤倉はそれを押し通したらしい。
「良く通りましたね……」
「私は元々祓い師なので、かつての祓い師仲間に頼って『護国統霊会』に進言しました」
「成る程……」
護国統霊会は『超法規事例対策室一係』の最上部組織に当たる。皇族から代表を担って貰い国家安寧の為に危険な【怪異】を祓うという理念で創設されている組織だ。
古くは平安の頃より存在した陰陽寮などを元に、修験者、巫女、僧侶、その他霊力を持つ者を取り込み構築された国家機関だが、【怪異】に対するという性質上秘密組織となっている。
表向きの名称は『御霊会議』として宮内庁内に存在している。
その下部組織には、【怪異】から国の運営を守る……つまり国会議員専属機関『国政安護部会』、霊的文化財を管理する『霊遺物管理委員会』、そして警察との融合組織『超法規事例対策室』が存在する。
最上部組織に直接進言出来たということは相当な立場の知人が居たのだろう。そして間違いなくそのお陰で被害拡大は抑えられているに違いなかった。
「成る程……。それなら県警も従うしかないですね」
「警視庁の上司にはかなり嫌な顔はされましたけどね」
苦笑いで運転を続ける藤倉は、それでも信念の元で行動という覚悟の宿る表情だった。
「こんな事態ですから保身なんて考えている場合では無いんです。かつては【あやかし】が見えた身……幽世の存在を知る者として私には責任がありますから」
「立派だと思いますよ。あなたのお陰で現に犠牲は抑えられています」
「それでも……最初の犠牲者を防げなかった。十数年前にも予兆はあったのに、準備が足りなかったのは警察の不手際です」
「それは仕方無いでしょう。十年以上前、あなたは学生でしょう?」
当時、藤倉は十三歳……流石に【怪異】に絡むには若すぎるのだが……。
「いいえ。私は確かに学生でした……でも、無関係だった訳じゃないんです」
「どういうことですか?」
「あの時……私は何も見えない普通の人間でした。でも、ある方が身を呈して守ってくれたんです」
宇和島地方出身だという藤倉は、ある日海岸で黒い靄に襲われた。その際、一人の男が靄を追い払ったのだと自らの体験を語る。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる