姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆第六章 古き大妖◆

第十一話 加勢

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「……。心源さん」

 スミジが結界を張った瞬間、僧兵姿の若い男は場の空気が変わったことに反応を示した。

「おう。結界だな……しかもかなり強力なヤツ」

 同様に直綴じきとつに袈裟を纏う中年の僧も結界の展開に反応した。 

「ですが……我らの宗派ではありませんね」
「恐らく賢雲殿から連絡のあった祓い師だろうぜ。確か道祖土さいど……」
「あの道祖土一族ですか?」
「間違いなかろうな。道祖土の者は癖が強いというが……」

 二人は女面の大蛇から顔を背けずに会話している。それが気に入らないのか、大蛇……磯女は忌々しげに舌打ちした。

『フン……わらわを前にしながら仲良くさえずるとは、随分と余裕のあることよ』
「なぁに言ってやがる。さっきからテメェが逃げ回ってやがるからお喋りに花が咲いちまうんだろうが」
『ホホホ。無駄無駄……安い挑発には乗らぬわ』
「ちっ! 本っ当にやりづれぇな、畜生め!」

 剃髪の中年僧侶・心源は手にしていた木棍で苛立たしげに地を突いた。

 先程から森の中を移動し攻撃を避ける磯女は、何故か本格的な攻撃をしてこない。そこに違和感を感じ決着を急ぐも、近付くと磯女の髪が絡み付いてくる。
 それを避けながら隙を突こうとすると今度は睨まれ呪詛の圧が高まり動きが鈍るのだ。

 かといって挑発しても乗ってこない。心源と蒼禅はは寺院の僧が気掛り……だったのだが……。

「だが……」
「ええ。今の結界は森を囲んだのでしょう。つまり……」
「寺の方は取り敢えずは無事ってことだな。アッチに行かせないようにするのと逃がさぬ為の結界、か」
「ですが、我々も閉じ込められた状態ではあります」
「そこは道祖土だ。磯女を仕留める算段があるんだろうよ」

 磯女はまだスミジに気付いていない。ならば二人で磯女の気を引いてスミジが不意打ちをし易い様にと考えたのだが……。

『ええぃ! また妾を無視す……グギャ!?』

 何かが側頭に当たり、磯女は突然横に大きく倒れ樹に激突する。同時に……入れ替わるように磯女が居た位置に現れたのは作務衣姿の男。

「…………」
「…………」

 本来なら一撃で仕留められる機会……それをわざわざ潰しての参上に、心源と蒼禅の視線は生温い。

「……お前が道祖土か?」
「ええ。やはり賢雲さんから連絡がありましたか?」
「ああ。俺ぁ大源寺の住職、心源だ。こっちは……」
「天元明智宗・僧正、蒼禅と言います」
「私は道祖土スミジ……超法規事例対策室からの依頼と賢雲さんの頼みで来ました」

 心源、そして蒼禅はスミジの姿を改めて確認する。外見は然程強そうには見えないが感じる霊気は強い。
 そう……これならば先程の一撃を必殺にも出来た筈。納得がいかない蒼禅はスミジに問い質す。

「何故、アレが気付かぬ隙を突かなかったのです?」
「あ~……今のは簡単に言うなら私の流儀ですよ。【あやかし】でも存在を奪うなら正面から向き合う」
「【怪異】相手に何を甘いことを……」
「道祖土は【あやかし】の力も借りるので、【怪異】に対しても敬意を払うんです。理解しろとは言いませんよ」
「………」

 蒼禅はスミジの在り方に疑問を持つが、心源は盛大に笑った。

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