姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆第六章 古き大妖◆

第十二話 牛鬼の狙い

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「ハッハッハ! 面白ぇじゃねぇか……。確かに祓い師ってのは幽世かくりよの力さえも借りるんだよな。天元明智の奥義だって似たようなものだろ?」
「心源さん! 我らの信仰と一介の祓い師を同列に語るのはお止めください!」
「頭が固ぇな、蒼禅……。現に道祖土が助力に来て助かったろ? 何より賢雲殿の推挙でもあるんだぜ? “一介の祓い師”ってのはちと失礼に当たる」
「うっ……。こ、これは失礼しました」

 賢雲は天元明智の中の重鎮らしく、スミジを推挙したことを軽んじた蒼禅はバツが悪そうだ。

ワリぃなぁ……。蒼禅僧正は宗派への信心が強すぎるのよ……気を悪くしたなら俺も謝るからよ」
「いえ……気にしてないですよ。道祖土は変わり者が多いからそう見られても仕方無いです」
「そう言ってくれると助かる。で、道祖土よ……寺の方はどうした?」
「皆さん無事ですよ。呪詛は祓いましたから自然と回復する筈です。念の為、あちらにも結界を張りましたし」
「……。お前、寺に来てからどの位経過している?」
「そうですね……十分位ですか」

 これには心源、蒼禅共に目を丸めた。スミジの言葉が正しければ、僅か十分で寺院の呪詛を祓い、僧達を介抱し、結界を二つ張ったことになる。本来それらはかなりの時間を要する行為……。

「道祖土の妙技か……まぁ良い。で……どうするんだ? アイツ仕留めちまえば楽だっただろうによ」
「そ、そう言わないで下さいよ。磯女には聞きたいこともあるんですよ」
「聞きたいこと?」

 そんな会話をしている間に、磯女は“のたり”とかま首を持ち上げスミジを睨む。

『き、貴様ぁ! 妾の美しい顔によくも……!?』
「磯女……お前の役割は誘導だな?」
『……。何をいってる』
「僧侶の生き肝には高い霊力が詰まっている……だったか? 前にそんなことを言う【あやかし】が居た。お前の襲撃は牛鬼が僧侶を食うまでの時間稼ぎであると同時に分散させるのが目的……違うか?」
『………』

 表情が固まったかと思いきや徐々に口許が歪む磯女は、恐ろしい程冷たい微笑みを浮かべつつ身体を伸び上がらせスミジ達を見下した。

『賢しい祓い師も居たものよ……。だが、半分正解といったところよな』
「半分……?」
『ヒヒヒ……我らは僧侶が目的ではない。霊力が高ければその肝は最高の糧となる』
「………」
『気付いたみたいだのぅ。糧は坊主どもに限ることではない』
「………祓い師か」

 要するに霊力の高い相手なら誰でも良いのだろう。

 襲撃も天元明智宗という団結力の強い組織を混乱させ、あわよくば僧侶をさらい、喰らう……その隙に牛鬼が散っている僧侶、或いは祓い師を狙うのが目的だったということになる。

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