91 / 153
◆第六章 古き大妖◆
第十三話 宿る【あやかし】
しおりを挟む
「……。牛鬼は何処に居る?」
『教えたところで貴様が行ける訳が無かろう』
「それ程分かりづらい所か、それとも海の難所か……。……じゃあ、最後の確認だ。大人しく封印されてくれ。そうすれば討滅せずに済む」
『ヒッヒッヒ。お断りだわぇ』
スミジの足元がひび割れ蛇の尾が槍のように突き出した。磯女は死角になる位置から地中に尾を潜り込ませていたのだ。
しかし……スミジは素早く反応し、これを思いきり蹴り飛ばし踏み付ける。
懐から札を取り出し中太筆にてしたためたのは『雷獣之天火』の文字と鼬の絵。札を磯女の蛇体に貼ったスミジは、【弐式・霊印宿陽】による雷撃を発動させる。
『ぎゃぁっ! に、人間如きが何故、こんな力……!?』
感電した磯女の身体からは水蒸気が立ち昇る。思うように動けないらしくゆっくり身を縮めていた。
通常では不可能な力も行使できるようになった山での霊力向上……短期間の効果ではあるが、スミジの霊印術は確実に強化されている。【参式・霊装紋】も以前よりも耐久、出力共に上昇していた。
「くっ……。まさか霊力を持つ者が標的とは……」
「ああ。こうなったら、とっととコイツを討滅して連絡しねぇとな」
心源は木棍を、蒼禅は法具である利剣を構える。
「ちょっと待って下さい」
「何だ、道祖土……まだアレに話があるってのか?」
「そうじゃなくてですね……一応、天元明智の僧にはさっきの話はしてありますので……。それと、今からお二人の攻撃を強化します。術を使用して良いですか?」
「ソイツはありがてぇ。なぁ、蒼禅?」
「え、えぇ」
許可を得たスミジは二人の武器に霊印術を使用。
【肆式・幽怪憑依】
【参式・霊装紋】の単純な強化と違い、また【弐式・霊印宿陽】の様な限定強化とも一線を画す、霊印投写妙法術の奥義の一つ──。
筆を走らせ中空に描いたのは【怪異】の姿。一つは人面の浮かぶ樹……もう一つは大きな蜈蚣の【あやかし】。
『此岸に写し出でたる幽怪、その身に更なる依代を与える。宿りし権能、存分に示せ!【樹神】【大蜈蚣】!』
心源の木棍には『樹神』が、蒼禅の利剣には『大蜈蚣』が吸い込まれるようには消えた。同時に、どちらの武器にも霊印が浮かび上がる。
「木棍は同属性の『樹神』で強化しました。相生効果で磯女の攻撃に対しても効果が上がると思います」
「成る程、【あやかし】の力が宿る訳か……ありがてぇ」
「利剣には磯女と相剋関係にある土気の『大蜈蚣』を付けました。金属だと磯女に相生効果が出て効果が薄いでしょう?」
「……。まさか【あやかし】の力を借りることになるとは……」
「力の一部ですけどね。飽くまで私の霊力で模して幽世から存在の力を借りているに過ぎません」
しかし、二人はそれぞれの武器からは通常の法具よりも大きな力を感じている。
「此処は天元明智の領分……私が祓っては体面に関わるでしょう。なので飽くまで助力に留めるつもりです」
「俺達に気まで使ってくれるかよ……。確かに、これでも面子ってモンがあるからな。なぁ、蒼禅?」
「そうですね……御助力、感謝する」
「いいえ……。それと、もう一つ。磯女は割と多くの力を持ってますから気を付けて」
「おう。わかってる」
「では、行きましょうか」
丁度、電撃による痺れから解放された磯女は身体を起こすと憤怒に顔を歪ませ叫んだ。
『もう小細工など要らぬわ! 全員、妾の贄として喰らい尽くしてくれる!』
天元明智宗の僧達が自らの霊力を高め磯女へと迫る。スミジは筆を握ったまま二人の戦いを見守った……。
『教えたところで貴様が行ける訳が無かろう』
「それ程分かりづらい所か、それとも海の難所か……。……じゃあ、最後の確認だ。大人しく封印されてくれ。そうすれば討滅せずに済む」
『ヒッヒッヒ。お断りだわぇ』
スミジの足元がひび割れ蛇の尾が槍のように突き出した。磯女は死角になる位置から地中に尾を潜り込ませていたのだ。
しかし……スミジは素早く反応し、これを思いきり蹴り飛ばし踏み付ける。
懐から札を取り出し中太筆にてしたためたのは『雷獣之天火』の文字と鼬の絵。札を磯女の蛇体に貼ったスミジは、【弐式・霊印宿陽】による雷撃を発動させる。
『ぎゃぁっ! に、人間如きが何故、こんな力……!?』
感電した磯女の身体からは水蒸気が立ち昇る。思うように動けないらしくゆっくり身を縮めていた。
通常では不可能な力も行使できるようになった山での霊力向上……短期間の効果ではあるが、スミジの霊印術は確実に強化されている。【参式・霊装紋】も以前よりも耐久、出力共に上昇していた。
「くっ……。まさか霊力を持つ者が標的とは……」
「ああ。こうなったら、とっととコイツを討滅して連絡しねぇとな」
心源は木棍を、蒼禅は法具である利剣を構える。
「ちょっと待って下さい」
「何だ、道祖土……まだアレに話があるってのか?」
「そうじゃなくてですね……一応、天元明智の僧にはさっきの話はしてありますので……。それと、今からお二人の攻撃を強化します。術を使用して良いですか?」
「ソイツはありがてぇ。なぁ、蒼禅?」
「え、えぇ」
許可を得たスミジは二人の武器に霊印術を使用。
【肆式・幽怪憑依】
【参式・霊装紋】の単純な強化と違い、また【弐式・霊印宿陽】の様な限定強化とも一線を画す、霊印投写妙法術の奥義の一つ──。
筆を走らせ中空に描いたのは【怪異】の姿。一つは人面の浮かぶ樹……もう一つは大きな蜈蚣の【あやかし】。
『此岸に写し出でたる幽怪、その身に更なる依代を与える。宿りし権能、存分に示せ!【樹神】【大蜈蚣】!』
心源の木棍には『樹神』が、蒼禅の利剣には『大蜈蚣』が吸い込まれるようには消えた。同時に、どちらの武器にも霊印が浮かび上がる。
「木棍は同属性の『樹神』で強化しました。相生効果で磯女の攻撃に対しても効果が上がると思います」
「成る程、【あやかし】の力が宿る訳か……ありがてぇ」
「利剣には磯女と相剋関係にある土気の『大蜈蚣』を付けました。金属だと磯女に相生効果が出て効果が薄いでしょう?」
「……。まさか【あやかし】の力を借りることになるとは……」
「力の一部ですけどね。飽くまで私の霊力で模して幽世から存在の力を借りているに過ぎません」
しかし、二人はそれぞれの武器からは通常の法具よりも大きな力を感じている。
「此処は天元明智の領分……私が祓っては体面に関わるでしょう。なので飽くまで助力に留めるつもりです」
「俺達に気まで使ってくれるかよ……。確かに、これでも面子ってモンがあるからな。なぁ、蒼禅?」
「そうですね……御助力、感謝する」
「いいえ……。それと、もう一つ。磯女は割と多くの力を持ってますから気を付けて」
「おう。わかってる」
「では、行きましょうか」
丁度、電撃による痺れから解放された磯女は身体を起こすと憤怒に顔を歪ませ叫んだ。
『もう小細工など要らぬわ! 全員、妾の贄として喰らい尽くしてくれる!』
天元明智宗の僧達が自らの霊力を高め磯女へと迫る。スミジは筆を握ったまま二人の戦いを見守った……。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる