姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆第六章 古き大妖◆

第十三話 宿る【あやかし】

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「……。牛鬼は何処に居る?」
『教えたところで貴様が行ける訳が無かろう』
「それ程分かりづらい所か、それとも海の難所か……。……じゃあ、最後の確認だ。大人しく封印されてくれ。そうすれば討滅せずに済む」
『ヒッヒッヒ。お断りだわぇ』

 スミジの足元がひび割れ蛇の尾が槍のように突き出した。磯女は死角になる位置から地中に尾を潜り込ませていたのだ。
 しかし……スミジは素早く反応し、これを思いきり蹴り飛ばし踏み付ける。

 懐から札を取り出し中太筆にてしたためたのは『雷獣之らいじゅうの天火てんか』の文字といたちの絵。札を磯女の蛇体に貼ったスミジは、【弐式・霊印宿陽】による雷撃を発動させる。

『ぎゃぁっ! に、人間如きが何故、こんな力……!?』

 感電した磯女の身体からは水蒸気が立ち昇る。思うように動けないらしくゆっくり身を縮めていた。

 通常では不可能な力も行使できるようになった山での霊力向上……短期間の効果ではあるが、スミジの霊印術は確実に強化されている。【参式・霊装紋】も以前よりも耐久、出力共に上昇していた。

「くっ……。まさか霊力を持つ者が標的とは……」
「ああ。こうなったら、とっととコイツを討滅して連絡しねぇとな」

 心源は木棍を、蒼禅は法具である利剣りけんを構える。

「ちょっと待って下さい」
「何だ、道祖土……まだアレに話があるってのか?」
「そうじゃなくてですね……一応、天元明智の僧にはさっきの話はしてありますので……。それと、今からお二人の攻撃を強化します。術を使用して良いですか?」
「ソイツはありがてぇ。なぁ、蒼禅?」
「え、えぇ」

 許可を得たスミジは二人の武器に霊印術を使用。

 【肆式ししき幽怪ゆうかい憑依ひょうい

 【参式・霊装紋】の単純な強化と違い、また【弐式・霊印宿陽】の様な限定強化とも一線を画す、霊印投写妙法術の奥義の一つ──。
 筆を走らせ中空に描いたのは【怪異】の姿。一つは人面の浮かぶ樹……もう一つは大きな蜈蚣むかでの【あやかし】。

此岸しがんに写しでたる幽怪、その身に更なる依代よりしろを与える。宿りし権能、存分に示せ!【樹神こだま】【大蜈蚣おおむかで】!』

 心源の木棍には『樹神こだま』が、蒼禅の利剣には『大蜈蚣おおむかで』が吸い込まれるようには消えた。同時に、どちらの武器にも霊印が浮かび上がる。 

「木棍は同属性の『樹神』で強化しました。相生効果で磯女の攻撃に対しても効果が上がると思います」
「成る程、【あやかし】の力が宿る訳か……ありがてぇ」
「利剣には磯女と相剋関係にある土気の『大蜈蚣』を付けました。金属だと磯女に相生効果が出て効果が薄いでしょう?」
「……。まさか【あやかし】の力を借りることになるとは……」
「力の一部ですけどね。飽くまで私の霊力で模して幽世から存在の力を借りているに過ぎません」

 しかし、二人はそれぞれの武器からは通常の法具よりも大きな力を感じている。

「此処は天元明智の領分……私が祓っては体面に関わるでしょう。なので飽くまで助力に留めるつもりです」
「俺達に気まで使ってくれるかよ……。確かに、これでも面子ってモンがあるからな。なぁ、蒼禅?」
「そうですね……御助力、感謝する」
「いいえ……。それと、もう一つ。磯女は割と多くの力を持ってますから気を付けて」
「おう。わかってる」
「では、行きましょうか」

 丁度、電撃による痺れから解放された磯女は身体を起こすと憤怒に顔を歪ませ叫んだ。

『もう小細工など要らぬわ! 全員、妾のにえとして喰らい尽くしてくれる!』

 天元明智宗の僧達が自らの霊力を高め磯女へと迫る。スミジは筆を握ったまま二人の戦いを見守った……。 





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