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◆第六章 古き大妖◆
第二十四話 伊庭の願い
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「本当にそれだけか?」
「他に何がある……。俺は所詮、身勝手な人間だ」
「いいや……お前はまだ本心を隠している。お前自身の気付かぬ本当の気持ち、そして封じてしまった記憶と向き合え」
「そんなことをしてどうなる? 俺は霊力が足りない……祓い師じゃないんだ。心の古傷を掘り起こしても何も変わらない」
「本当にそうか? 伊庭竜仁よ」
人が他者に全てを曝け出すのは難しい。ましてや伊庭は密かな覚悟を持っている。法起坊はそれを吐き出せと迫るのだ。当然、伊庭は口を噤む。
「私は天狗だ……相手をしているのは人ではなく自然そのものと思えば良かろう」
「対話ができる相手にそう簡単に割り切れるかよ」
「やれやれ……頑固者め」
仮面の中から小さな吐息が聞こえる。
「では、牛鬼の件は諦めるのだな?」
「……っ!?」
「言った筈だ。私は『人』の代表にお前を選んだのだと。つまり、お前が牛鬼討伐を願うなら私は石鎚毘古命にその願いを伝えることになる」
「……………」
「そして人であるお前が願うならば助力の許しを得られるであろう。しかし、お前が『祓い師の為に願う』のであればその限りではない。だからこそお前が【幽世】に絡む理由を聞いている」
法起坊は心は読めるが敢えて聞いている。
願いは当人が求めるもの……求める以上は理由が存在する。そこから伊庭が願いを聞き届けるに足るべき者かを試しているらしい。
だが……伊庭はそこで違和感に気付いた。
「……。アンタ……何を隠してる?」
「何……?」
「当人の声? 意思? 理由? 幾ら俺が幽世に絡んでも此処までする理由が無いよな?」
わざわざスミジを遠ざけ、更には自らの力を使い伊庭を連れ去り問答をする。幾らなんでも回りくどい。特にスミジを排除する理由がわからない。スミジが居ようが居まいが意思は確認できるのだから。
伊庭の内心をスミジに知らせない配慮の可能性もあるが、大天狗には『他心通』がある。そこまでする道理に違和感が拭えなかったのは伊庭の勘──。
そんな伊庭の心を読んだ法起坊は……盛大に笑った。
「ハッハッハ! これは失敗だったか……幾分回りくど過ぎたな」
「どういうことだ……?」
「何……悪気はなかったのだ。許せ。実はな……お前の真の願いを知った故試した。だが、その願いを叶えれば牛鬼討伐の依頼は受けられぬ。だから同時に叶えようとしたのだよ」
「……??」
伊庭は益々混乱した……。
「分からぬか? では、お前の本当の願いは何だ?」
「俺の……本当の願い……」
今度は逡巡する伊庭。しばしの沈黙の末、恐る恐るといった体で言葉を発した。
「俺はまだ……祓い師になることを諦められていない……んだと思う。指を咥えて見ているのはもう沢山なんだ……」
「その願い……叶えてやれるとしたらどうだ?」
「! ……ほ、本当か!?」
「本当だ。だからこそ先程の話になるのだ」
法起坊は今度は試すような問答を止め順を追って話し始めた。
「他に何がある……。俺は所詮、身勝手な人間だ」
「いいや……お前はまだ本心を隠している。お前自身の気付かぬ本当の気持ち、そして封じてしまった記憶と向き合え」
「そんなことをしてどうなる? 俺は霊力が足りない……祓い師じゃないんだ。心の古傷を掘り起こしても何も変わらない」
「本当にそうか? 伊庭竜仁よ」
人が他者に全てを曝け出すのは難しい。ましてや伊庭は密かな覚悟を持っている。法起坊はそれを吐き出せと迫るのだ。当然、伊庭は口を噤む。
「私は天狗だ……相手をしているのは人ではなく自然そのものと思えば良かろう」
「対話ができる相手にそう簡単に割り切れるかよ」
「やれやれ……頑固者め」
仮面の中から小さな吐息が聞こえる。
「では、牛鬼の件は諦めるのだな?」
「……っ!?」
「言った筈だ。私は『人』の代表にお前を選んだのだと。つまり、お前が牛鬼討伐を願うなら私は石鎚毘古命にその願いを伝えることになる」
「……………」
「そして人であるお前が願うならば助力の許しを得られるであろう。しかし、お前が『祓い師の為に願う』のであればその限りではない。だからこそお前が【幽世】に絡む理由を聞いている」
法起坊は心は読めるが敢えて聞いている。
願いは当人が求めるもの……求める以上は理由が存在する。そこから伊庭が願いを聞き届けるに足るべき者かを試しているらしい。
だが……伊庭はそこで違和感に気付いた。
「……。アンタ……何を隠してる?」
「何……?」
「当人の声? 意思? 理由? 幾ら俺が幽世に絡んでも此処までする理由が無いよな?」
わざわざスミジを遠ざけ、更には自らの力を使い伊庭を連れ去り問答をする。幾らなんでも回りくどい。特にスミジを排除する理由がわからない。スミジが居ようが居まいが意思は確認できるのだから。
伊庭の内心をスミジに知らせない配慮の可能性もあるが、大天狗には『他心通』がある。そこまでする道理に違和感が拭えなかったのは伊庭の勘──。
そんな伊庭の心を読んだ法起坊は……盛大に笑った。
「ハッハッハ! これは失敗だったか……幾分回りくど過ぎたな」
「どういうことだ……?」
「何……悪気はなかったのだ。許せ。実はな……お前の真の願いを知った故試した。だが、その願いを叶えれば牛鬼討伐の依頼は受けられぬ。だから同時に叶えようとしたのだよ」
「……??」
伊庭は益々混乱した……。
「分からぬか? では、お前の本当の願いは何だ?」
「俺の……本当の願い……」
今度は逡巡する伊庭。しばしの沈黙の末、恐る恐るといった体で言葉を発した。
「俺はまだ……祓い師になることを諦められていない……んだと思う。指を咥えて見ているのはもう沢山なんだ……」
「その願い……叶えてやれるとしたらどうだ?」
「! ……ほ、本当か!?」
「本当だ。だからこそ先程の話になるのだ」
法起坊は今度は試すような問答を止め順を追って話し始めた。
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