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◆第六章 古き大妖◆
第二十七話 天狗岳での邂逅
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「ん……?」
伊庭が石鎚山法起坊との邂逅を果たしている頃、スミジは未だ石鎚山を駆け回っていた。
伊庭が崖に放り投げられた悲鳴は法起坊の術によりスミジには聴こえていない。当然、伊庭の決意や試練等も知る由もない……。
「気のせいか……。それにしても今日の伊庭さん、頼りになるな」
無論それは伊庭ではなかったのだが、スミジは久々に頼りになる先輩を見て少しだけ嬉しくなった。
「さて……。言われた通り落ち着いて探ってみたら、こんなのが見付かった訳だけど……」
山中で佇むスミジの手には透明な小石が幾つか握られている。
「ガラス……じゃないよな。この霊力が少し残った感じは水晶かな」
暗闇の中で仄かに青白い光を放っていた透明な石は、落ち着いていたからこそ見付けられたものである。
そして当然、それは自然に発生したものではない。同様に、誰かが意図して廃棄したものでもないだろう。
そうなれば自ずと答えは絞られる。
(……。石鎚山法起坊は俺に何かさせようとしてるのか?)
天狗は人間をからかうことも多い。初めはその類いかとも思ったが、考えてみれば元は偉大な修験者・役小角である。この場合、神通力で事情を理解しつつも手間を掛けてくれている……スミジはそう判断した。
「そうとなれば初めから確認しないと駄目かな? え~っと確か……」
最初に気配を感じた位置まで戻り確認すれば、やはり透明な石の欠片を発見。スミジは目印として符を貼り、痕跡を順番に移動。石は七つ程見付かった。
そこでスミジはあることに気付く。
「これ……元は球体か」
岩に腰を下ろし透明な石をパズルのように組み立てる。すると不思議なことに石同士がピタリと合わさり亀裂も消えた。
「つまり、石を集めて復元しろってことか……。意図は判ったけど、意味は解らないな。でもまぁ、折角大天狗様が用意してくれた趣向だ。最後までやってみるかな……」
どのみちこれを果たさねば石鎚山法起坊はスミジの前に姿を現さないだろう。伊庭が少し心配になったが、一応護符も渡してあるので怪我はしない筈……。
そしてスミジは再び山を駆け巡る。以前『覚』の山でも駆け巡ったが、その数倍は本格的な移動だ。岩山と森を野性動物の如き勢いで移動し続けるスミジは、もし他者が見れば【怪異】に見えたことだろう。
そうしてスミジは現れては消える気配を追い続け、夜空が白む僅か前までに全ての石を揃え水晶の復元を果たした。
最後に辿り着いたのは石鎚山の山頂、天狗岳。そこに居たのは二メートルはあるだろう身の丈の、天狗の面を付けた修験者。
そして、もう一人……。
「い、伊庭さん!?」
スミジは伊庭に駆け寄り状態を確認する。寝袋の中で動かない伊庭は呼吸が深い。感じる霊力もかなり弱まっている様だ。
「……。石鎚山法起坊……これはどういうことだ?」
スミジは怒りを隠すことなく法起坊を睨み付ける。
「勘違いをするな。伊庭竜仁は今、羽化の途中だ」
「何……?」
「其奴の願いは祓い師になること……。故に、試練を与え強制的に霊力を目覚めさせた。其奴の代だからこそ叶った願いでもある」
「………。とにかく、話を聞かせて貰えますか?」
「そうだな。一番身近なお前は知っておくべきだろう」
法起坊は大岩に腰を下ろす。スミジは伊庭の荷物から水筒を取り出すと、茶を注ぎ法起坊に差し出した。法起坊は仮面を口許までずらしカップを一口啜る。
「……ふむ。温かく、甘くて美味だ」
「ミルクティーです。それで……」
「そう急くな。道祖土スミジよ……お前は伊庭竜仁の苦悩、気付いていたな?」
「ええ……。だから修行に付き合ったりして霊力を回復させようとしていました。でも、駄目だった」
「では、何故伊庭一族の霊力が失せていたかは知っているか?」
「いえ……」
「では、そこから話すべきだな」
伊庭が石鎚山法起坊との邂逅を果たしている頃、スミジは未だ石鎚山を駆け回っていた。
伊庭が崖に放り投げられた悲鳴は法起坊の術によりスミジには聴こえていない。当然、伊庭の決意や試練等も知る由もない……。
「気のせいか……。それにしても今日の伊庭さん、頼りになるな」
無論それは伊庭ではなかったのだが、スミジは久々に頼りになる先輩を見て少しだけ嬉しくなった。
「さて……。言われた通り落ち着いて探ってみたら、こんなのが見付かった訳だけど……」
山中で佇むスミジの手には透明な小石が幾つか握られている。
「ガラス……じゃないよな。この霊力が少し残った感じは水晶かな」
暗闇の中で仄かに青白い光を放っていた透明な石は、落ち着いていたからこそ見付けられたものである。
そして当然、それは自然に発生したものではない。同様に、誰かが意図して廃棄したものでもないだろう。
そうなれば自ずと答えは絞られる。
(……。石鎚山法起坊は俺に何かさせようとしてるのか?)
天狗は人間をからかうことも多い。初めはその類いかとも思ったが、考えてみれば元は偉大な修験者・役小角である。この場合、神通力で事情を理解しつつも手間を掛けてくれている……スミジはそう判断した。
「そうとなれば初めから確認しないと駄目かな? え~っと確か……」
最初に気配を感じた位置まで戻り確認すれば、やはり透明な石の欠片を発見。スミジは目印として符を貼り、痕跡を順番に移動。石は七つ程見付かった。
そこでスミジはあることに気付く。
「これ……元は球体か」
岩に腰を下ろし透明な石をパズルのように組み立てる。すると不思議なことに石同士がピタリと合わさり亀裂も消えた。
「つまり、石を集めて復元しろってことか……。意図は判ったけど、意味は解らないな。でもまぁ、折角大天狗様が用意してくれた趣向だ。最後までやってみるかな……」
どのみちこれを果たさねば石鎚山法起坊はスミジの前に姿を現さないだろう。伊庭が少し心配になったが、一応護符も渡してあるので怪我はしない筈……。
そしてスミジは再び山を駆け巡る。以前『覚』の山でも駆け巡ったが、その数倍は本格的な移動だ。岩山と森を野性動物の如き勢いで移動し続けるスミジは、もし他者が見れば【怪異】に見えたことだろう。
そうしてスミジは現れては消える気配を追い続け、夜空が白む僅か前までに全ての石を揃え水晶の復元を果たした。
最後に辿り着いたのは石鎚山の山頂、天狗岳。そこに居たのは二メートルはあるだろう身の丈の、天狗の面を付けた修験者。
そして、もう一人……。
「い、伊庭さん!?」
スミジは伊庭に駆け寄り状態を確認する。寝袋の中で動かない伊庭は呼吸が深い。感じる霊力もかなり弱まっている様だ。
「……。石鎚山法起坊……これはどういうことだ?」
スミジは怒りを隠すことなく法起坊を睨み付ける。
「勘違いをするな。伊庭竜仁は今、羽化の途中だ」
「何……?」
「其奴の願いは祓い師になること……。故に、試練を与え強制的に霊力を目覚めさせた。其奴の代だからこそ叶った願いでもある」
「………。とにかく、話を聞かせて貰えますか?」
「そうだな。一番身近なお前は知っておくべきだろう」
法起坊は大岩に腰を下ろす。スミジは伊庭の荷物から水筒を取り出すと、茶を注ぎ法起坊に差し出した。法起坊は仮面を口許までずらしカップを一口啜る。
「……ふむ。温かく、甘くて美味だ」
「ミルクティーです。それで……」
「そう急くな。道祖土スミジよ……お前は伊庭竜仁の苦悩、気付いていたな?」
「ええ……。だから修行に付き合ったりして霊力を回復させようとしていました。でも、駄目だった」
「では、何故伊庭一族の霊力が失せていたかは知っているか?」
「いえ……」
「では、そこから話すべきだな」
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