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◆第六章 古き大妖◆
第二十八話 伊庭家の呪詛
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祓い師・伊庭家は、かつて時の権力者に仕えたこともある歴史ある一族だったことはスミジも耳にしている。事実、現在の皇室からも覚えが良く伊庭自身もスミジとの連携により功績を上げているので、皇室付きの『護国統霊会』への勧誘も出ていた程だ。
「伊庭家はその歴史から【あやかし】にも【人】にも恐れられた一族であった」
「人にも……ですか?」
「うむ。伊庭家の役割は簡単に言えば暗殺……祓い師の術を用い、帝に害為す者を排除する一族。無論、無駄な殺傷はせぬが必要とあらば容赦なく……といったものだ」
「…………」
故に『伊庭は現世の番犬』とまで言われていたと法起坊は口にした。
それ程となれば伊庭家を排除したい勢力も少なからず存在する。帝に仕え寵愛を受けたい祓い師、伊庭家に誅殺された遺族、また新たな帝を据えて成り代わろうという者の謀略等が乱立し、伊庭家は徐々に立場を追われていった。
そして伊庭家は自らの存在により帝に害が及ぶ可能性を考慮し、皇室付きから離れ野に下り世俗の祓い師となった。
「だが、この際にある者が呪詛を用いた。伊庭家が二度と皇室付きに戻らぬようにとな」
「呪詛……それが伊庭家が霊力を失った原因……」
「その一端ではある。が、直接の原因ではない。直接の原因は【あやかし】と呪術師の共謀によるまた別の【呪詛】だ」
伊庭家の力を恐れた【あやかし】達と伊庭家への恨みを持つ者から依頼を請けた祓い師は、こともあろうか協力体制を確立し伊庭家を狙ったという。しかし、伊庭の当主はこれを全て撃退。だが、自らも呪詛を受けたが故にその霊力は低下を始めた。
その後、代を重ねる毎に霊力が失われる呪詛により祓い師としての伊庭家は没落へと向かう。長き時間を掛けてでも伊庭家の存在を幽世に関わる立場から排除したいという【あやかし】の呪詛は強力だった。
「しかし……最初に呪詛を受けた伊庭家当主は、霊力が失われる前に自らに術を施していた。それが今、伊庭竜仁が霊力を目醒めさせる要因となったのだ」
徐々に霊力が失われる呪詛を理解した伊庭家当主は、それを打ち消す為の呪詛を自らに施していた。
代を重ねる毎に当主の魂を一部削り『呪詛を弱める』という真逆の呪い……これにより伊庭家の霊力は減少しつつも、呪詛を少しづつ壊していったのである。
「本来はもう二、三世代後に自然と目醒めたのだろうがな……その代に祓い師になりたいという者が居るとは限らぬ。伊庭竜仁は覚悟と渇望が代々で最も強かった……故に試練を与えたのだ」
呪詛を受けた伊庭家当主は、本心では祓い師としての伊庭家が没落することも吝かではなかった。所詮は因果な力……人として人らしく生きるには祓い師の力は強すぎるのだ。
もし子孫が祓い師の力を望まぬのであればそのままである選択肢も用意されていた。実際に伊庭家は祓い師の術は保管していても修行まで行う者は伊庭竜仁以外には居なかった。
「試練というのは……」
「山頂から落とした」
「そ、それは、ちょっとどうかと……」
「人は死に直面した時、その魂が力を増す。先程も言ったが、本来呪詛は二、三世代後に解けた。つまり……」
「弱まっていた呪詛を確実に破るには強い魂の力が必要だった……。理屈は解りますが……」
伊庭の心境を考えれば堪ったものではなかっただろうとスミジは思った。
「無論、死なせることはないよう動いてはいた。とはいえ、失敗しないことも判っていたのでな」
「神通力ですか……」
「左様。そして伊庭竜仁は見事、血に連なる呪詛を打ち破った。落下を防いだのも伊庭自身……お前の符術の力が作用したことも含めての話ではあるがな」
断崖から落ちた伊庭は一度死を覚悟した。しかし、再び生への執着により魂の力を呼び起こされ霊力が爆発的に上昇……これにより代を重ね劣化していた呪詛は伊庭の霊力に打ち破られ消え失せた。
更に伊庭は無意識にスミジの術符に霊力を籠め【参式・霊装紋】を使用、強化された霊力を下方に放出。霊気の層が落下の勢いを弱め伊庭は無事着地を果たしたのである。
「伊庭家はその歴史から【あやかし】にも【人】にも恐れられた一族であった」
「人にも……ですか?」
「うむ。伊庭家の役割は簡単に言えば暗殺……祓い師の術を用い、帝に害為す者を排除する一族。無論、無駄な殺傷はせぬが必要とあらば容赦なく……といったものだ」
「…………」
故に『伊庭は現世の番犬』とまで言われていたと法起坊は口にした。
それ程となれば伊庭家を排除したい勢力も少なからず存在する。帝に仕え寵愛を受けたい祓い師、伊庭家に誅殺された遺族、また新たな帝を据えて成り代わろうという者の謀略等が乱立し、伊庭家は徐々に立場を追われていった。
そして伊庭家は自らの存在により帝に害が及ぶ可能性を考慮し、皇室付きから離れ野に下り世俗の祓い師となった。
「だが、この際にある者が呪詛を用いた。伊庭家が二度と皇室付きに戻らぬようにとな」
「呪詛……それが伊庭家が霊力を失った原因……」
「その一端ではある。が、直接の原因ではない。直接の原因は【あやかし】と呪術師の共謀によるまた別の【呪詛】だ」
伊庭家の力を恐れた【あやかし】達と伊庭家への恨みを持つ者から依頼を請けた祓い師は、こともあろうか協力体制を確立し伊庭家を狙ったという。しかし、伊庭の当主はこれを全て撃退。だが、自らも呪詛を受けたが故にその霊力は低下を始めた。
その後、代を重ねる毎に霊力が失われる呪詛により祓い師としての伊庭家は没落へと向かう。長き時間を掛けてでも伊庭家の存在を幽世に関わる立場から排除したいという【あやかし】の呪詛は強力だった。
「しかし……最初に呪詛を受けた伊庭家当主は、霊力が失われる前に自らに術を施していた。それが今、伊庭竜仁が霊力を目醒めさせる要因となったのだ」
徐々に霊力が失われる呪詛を理解した伊庭家当主は、それを打ち消す為の呪詛を自らに施していた。
代を重ねる毎に当主の魂を一部削り『呪詛を弱める』という真逆の呪い……これにより伊庭家の霊力は減少しつつも、呪詛を少しづつ壊していったのである。
「本来はもう二、三世代後に自然と目醒めたのだろうがな……その代に祓い師になりたいという者が居るとは限らぬ。伊庭竜仁は覚悟と渇望が代々で最も強かった……故に試練を与えたのだ」
呪詛を受けた伊庭家当主は、本心では祓い師としての伊庭家が没落することも吝かではなかった。所詮は因果な力……人として人らしく生きるには祓い師の力は強すぎるのだ。
もし子孫が祓い師の力を望まぬのであればそのままである選択肢も用意されていた。実際に伊庭家は祓い師の術は保管していても修行まで行う者は伊庭竜仁以外には居なかった。
「試練というのは……」
「山頂から落とした」
「そ、それは、ちょっとどうかと……」
「人は死に直面した時、その魂が力を増す。先程も言ったが、本来呪詛は二、三世代後に解けた。つまり……」
「弱まっていた呪詛を確実に破るには強い魂の力が必要だった……。理屈は解りますが……」
伊庭の心境を考えれば堪ったものではなかっただろうとスミジは思った。
「無論、死なせることはないよう動いてはいた。とはいえ、失敗しないことも判っていたのでな」
「神通力ですか……」
「左様。そして伊庭竜仁は見事、血に連なる呪詛を打ち破った。落下を防いだのも伊庭自身……お前の符術の力が作用したことも含めての話ではあるがな」
断崖から落ちた伊庭は一度死を覚悟した。しかし、再び生への執着により魂の力を呼び起こされ霊力が爆発的に上昇……これにより代を重ね劣化していた呪詛は伊庭の霊力に打ち破られ消え失せた。
更に伊庭は無意識にスミジの術符に霊力を籠め【参式・霊装紋】を使用、強化された霊力を下方に放出。霊気の層が落下の勢いを弱め伊庭は無事着地を果たしたのである。
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