姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆第六章 古き大妖◆

第三十二話 定められし四名

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 「再会の喜びは後にしようか、桜子。それで……そちらが道祖土スミジ殿か?」

 スミジが牛鬼討伐の依頼を受けたことは『対策室』に報告されている。
 作務衣姿の僧も寺院内には居る。が、髪や不精ひげ……何より高い霊力から筧は一目で道祖土の者だと見抜いた。

「初めまして、筧さん。お噂は予々かねがね
「私も聞いているよ。伊庭君と共に色々動いてくれている様で助かっている。正式に対策室専属になってくれればより嬉しいのだがな……」
「私に公務員は無理ですよ。堅苦しいのは苦手ですから」
「そうか……それは残念だ。ところで……」

 筧は伊庭の姿が無いことに気付いた。スミジが事情を説明すると、筧は何処か安堵の表情を見せる。

「成る程。だが、彼なら大丈夫だろう。さて……時間には限りがある。先ずは状況説明を頼む」
「そうだな。じゃあ……蒼禅、任せたぜ?」
「……。わかりました」

 昨日の磯女襲来と被害、石鎚山法起坊の助力による牛鬼の巣への移動、決戦に挑めるのは四名のみとなること……そして、本日正午が決戦の刻となることを蒼禅は簡潔に説明する。

「四名……それは厳しいな」
「まぁ、数が多けりゃ良い訳じゃねぇのも確かだろ」
「確かに。それで、出向くのは桜子を除いたこの場の面子か……あと一名は決まっているのか?」
「いや……それを話していたところにお前さんが来たんだよ」
「成る程……では、丁度良かったと言うべきだな」
「ほ~……ってことは、お前さんが加わってくれるのか?」

 心源の言葉に筧は不敵な笑みを浮かべる。

「老いたババアでは不服か?」
「はっ! それを言ったら俺もジジイになるだろうが。……が、本当に良いのか? 立場的には取り纏め役だろう?」
「それもお互い様だろう。幸い『対策室』には有能な者が居るのでな……そちらは部下に任せるとしよう」
「やれやれ……後悔すんなよ?」

 牛鬼討伐人員の四人目は、筧椿姫が担うこととなった。

 四名は実力的に申し分無いと思われるが、流石に手の内を知らねば連携に差し支える。そこで互いの術について限定的ながら開示することになった。
 無論、秘術の核心については伏せたまま……と言っても、この場にて他者の術を奪おう等と考える不届き者は無い。そもそも他者が奪える様な霊術を使う者も居ない訳だが……。

 天元明智宗の方術は、仏に対する信仰心により幽世から助力を得るものである。それ以外では霊気を使用した強化が主であり、法具に霊力を込めた投擲、封印、打撃という戦いを得意とする。

 仏への信仰心により苦難も辞さぬ故か、心源・蒼禅共に近距離、または中距離を最も得意とする。

「道祖土は霊印術だったな」
「一応、それだけじゃないんですけどね」

 スミジは有り体に言えばオールラウンダー。霊印を利用した術があらゆる状況に対応できるのは、道祖土が単独での祓い仕事を好む故でもある。

「『椿嵐』も霊印術だった筈だが……?」
「ああ。私の霊印術は刻印術だ。対象に事前に霊印を刻み強化や効果の付加をする」

 筧椿姫の祖父・影虎は現代の組織祓い師の基礎を創った人物とも言われている。
 理由はその術──名を【刻印呪法】。この場合の【呪】は『のろい』ではなく『まじない』を対象に刻み効果を発揮する。

 現代の祓い師減少を危惧した筧影虎は、術式に手を加え一部情報開示。それにより特殊な祓い道具を開発した。祓い道具は『超法規事例対策室』や『護国統霊会』に支給されている。
 刻印呪法は刻まれたもの自体に効果が生まれる。使用者が一般人でもそれは変わらないので、超法規事例対策室では刻印を施された装備が全員に支給されていた。

 その源流たる筧家の刻印術──当然ながら支給品とは比べるべくもなく効果・汎用性は高い。
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