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◆第六章 古き大妖◆
第三十三話 塵輪鬼
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「私は前衛で刃を振るうか、または刻印呪術による後方からの銃撃……その辺りが基本戦術になる」
「フムフム……一応聞くが、前線が良いか?」
「それに関しては拘りはない。今回、最も当事者となるのは現地の者──つまり、大源寺もそれに該当するだろう。故にそちらの指示に従う」
「だ、そうだが……お前としちゃどう思うよ、道祖土?」
「私も概ね同意見ですね……でも、戦術としてなら幾つか提案が」
「おう。遠慮すんな」
「じゃあ……」
スミジは筧を後方、自らを中距離配置を希望した。
「筧さんには狙撃による攻撃、及び全体指揮を任せた方が良いと思います。前衛は心源さんと蒼禅さんにお願いして、俺はその中間にて連携……というのが望ましいかな」
前衛二人が疲弊や負傷した際、スミジと前衛を入れ換える。中距離では術で二人への支援も可能だろう。
狙いが正確な狙撃は後方からの有用性が高い。加えて筧は対策室に所属し集団戦闘の指揮経験もある。
「適材適所ってヤツか……俺はそれで良いぜ?」
「私も依存はありません」
一番危険な配置を引き受ける心源と蒼禅に臆した様子はない。寧ろ自分達だけで祓う意気込みさえ感じられる。
祓い師としての強い覚悟か、または責任感か……。
「飽くまで最初の前衛は……ということなので、臨機応変に行きましょう。状況次第では筧さんも前衛に出て下さい。それらの判断も任せますから」
「了解した。……他にも何かあるのではないか?」
「実は、石鎚山法起坊に言われました。牛鬼の目的は『塵輪鬼』だと……」
【塵輪鬼】──それは牛鬼の本体とも言える大妖。
千八百年前の大和王朝の時代……時の天皇である仲哀天皇と神功皇后は、九州の熊襲制圧へと向かう。その途中、休息に立ち寄った岡山の港にて熊襲に荷担した大陸の国・新羅が襲来……新羅の刺客・唐琴の操る『黒雲に乗った八つの頭を持つ牛と鬼の混ざりあった怪物』が天皇と皇后の一群を襲った。それが塵輪鬼である。
塵輪鬼は仲哀天皇の矢にて討たれバラバラになった。しかし……その恨みを晴らす為、仲哀天皇亡き後に三韓征伐を行った神功皇后の前に現れたのが牛鬼──つまり牛鬼は塵輪鬼から生まれたのだ。
この話は様々な解釈があるが、塵輪鬼が仲哀天皇に倒されその一部から牛鬼が生まれた……という伝承はほぼ同じだ。
「おいおい……するってぇと、牛鬼は更に凶悪になんのかよ……」
「それは分かりません。が……牛鬼は一体じゃない可能性もあるので……」
その言葉に筧は考察を交え意見を述べた。
「塵輪鬼単体の強さは分からないが、牛鬼が集まっただけでも強力になる。寧ろ牛鬼は集まったことをこちらに認識させ塵輪鬼としての力を底上げさせる気なのではないか?」
「それは……私達の認識を利用しようとしていると?」
「可能性の話だがな」
「…………」
今回の牛鬼はやたらと警戒心が強く姿を見せないことも含め、知能は相当に高い。
だが……スミジは気になっていたこともあった。
「牛鬼自身、頭が回るにしてもやり方が徹底してるんですよ。磯女なんかは牛鬼の指示だとしても、人間じみていた気がしませんか?」
「奇襲による混乱を狙ったり、警備の分散目的だったりもまぁ……言われりゃそうだな」
「もしかして裏に【咎憑き】がいるんじゃないかと……」
スミジの推測に場の空気が凍り付く。
咎憑き──祓い師の力を悪用し呪術師となった存在。例外無く個人の思想で術を行使し道理さえも捻じ曲げる、言ってしまえば『人格破綻者』である。
そんな存在ならば、【あやかし】とさえ結託する可能性さえ有り得る話だ。
「フムフム……一応聞くが、前線が良いか?」
「それに関しては拘りはない。今回、最も当事者となるのは現地の者──つまり、大源寺もそれに該当するだろう。故にそちらの指示に従う」
「だ、そうだが……お前としちゃどう思うよ、道祖土?」
「私も概ね同意見ですね……でも、戦術としてなら幾つか提案が」
「おう。遠慮すんな」
「じゃあ……」
スミジは筧を後方、自らを中距離配置を希望した。
「筧さんには狙撃による攻撃、及び全体指揮を任せた方が良いと思います。前衛は心源さんと蒼禅さんにお願いして、俺はその中間にて連携……というのが望ましいかな」
前衛二人が疲弊や負傷した際、スミジと前衛を入れ換える。中距離では術で二人への支援も可能だろう。
狙いが正確な狙撃は後方からの有用性が高い。加えて筧は対策室に所属し集団戦闘の指揮経験もある。
「適材適所ってヤツか……俺はそれで良いぜ?」
「私も依存はありません」
一番危険な配置を引き受ける心源と蒼禅に臆した様子はない。寧ろ自分達だけで祓う意気込みさえ感じられる。
祓い師としての強い覚悟か、または責任感か……。
「飽くまで最初の前衛は……ということなので、臨機応変に行きましょう。状況次第では筧さんも前衛に出て下さい。それらの判断も任せますから」
「了解した。……他にも何かあるのではないか?」
「実は、石鎚山法起坊に言われました。牛鬼の目的は『塵輪鬼』だと……」
【塵輪鬼】──それは牛鬼の本体とも言える大妖。
千八百年前の大和王朝の時代……時の天皇である仲哀天皇と神功皇后は、九州の熊襲制圧へと向かう。その途中、休息に立ち寄った岡山の港にて熊襲に荷担した大陸の国・新羅が襲来……新羅の刺客・唐琴の操る『黒雲に乗った八つの頭を持つ牛と鬼の混ざりあった怪物』が天皇と皇后の一群を襲った。それが塵輪鬼である。
塵輪鬼は仲哀天皇の矢にて討たれバラバラになった。しかし……その恨みを晴らす為、仲哀天皇亡き後に三韓征伐を行った神功皇后の前に現れたのが牛鬼──つまり牛鬼は塵輪鬼から生まれたのだ。
この話は様々な解釈があるが、塵輪鬼が仲哀天皇に倒されその一部から牛鬼が生まれた……という伝承はほぼ同じだ。
「おいおい……するってぇと、牛鬼は更に凶悪になんのかよ……」
「それは分かりません。が……牛鬼は一体じゃない可能性もあるので……」
その言葉に筧は考察を交え意見を述べた。
「塵輪鬼単体の強さは分からないが、牛鬼が集まっただけでも強力になる。寧ろ牛鬼は集まったことをこちらに認識させ塵輪鬼としての力を底上げさせる気なのではないか?」
「それは……私達の認識を利用しようとしていると?」
「可能性の話だがな」
「…………」
今回の牛鬼はやたらと警戒心が強く姿を見せないことも含め、知能は相当に高い。
だが……スミジは気になっていたこともあった。
「牛鬼自身、頭が回るにしてもやり方が徹底してるんですよ。磯女なんかは牛鬼の指示だとしても、人間じみていた気がしませんか?」
「奇襲による混乱を狙ったり、警備の分散目的だったりもまぁ……言われりゃそうだな」
「もしかして裏に【咎憑き】がいるんじゃないかと……」
スミジの推測に場の空気が凍り付く。
咎憑き──祓い師の力を悪用し呪術師となった存在。例外無く個人の思想で術を行使し道理さえも捻じ曲げる、言ってしまえば『人格破綻者』である。
そんな存在ならば、【あやかし】とさえ結託する可能性さえ有り得る話だ。
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