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◆第六章 古き大妖◆
第三十六話 大妖、出現
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頂点にあった太陽が僅かに傾きを見せた頃……無人島で配置に付いていた祓い師達は【あやかし】の気配を感知した。
石鎚山法起坊の話では無人島は牛鬼の巣──言わば縄張りである。当然、他の【あやかし】が踏み込んでくる可能性は低い。つまり現れたのは確実に牛鬼だ。
しかし……一同が目にしたのは想像とは大きくかけ離れた姿──。
海の中から島へと上陸するにつれ明らかになった姿は人型。初めは頭部……そこから胴、足と海面から陸へと上り顕になったのは、年の頃なら十四歳程の、人目を引く程の美貌を兼ね備えた少年……。
少年はサラリとした長い髪で細い体躯、白いシャツにジーンズ、スニーカーという姿だった。
更に──。
「……。上手く隠れたつもりの様だけど……居るね? 祓い師共?」
牛鬼は即座に祓い師達の存在を看破した。
「法術による隠形か……見事だ。しかし、この牛鬼に通じるとでも思ったかい?」
これにより有利な筈の状況は崩れた。
牛鬼は祓い師達の存在に気付いている。不意討ちによる先制攻撃はもう通じない。恐らく筧の狙撃にも対応してくる筈……。
だが、未だ有利な点もある。今は日中の正午……【あやかし】が真なる力を発揮する闇まで時間がある。この期を逃せば、今後牛鬼との戦いは不利な状況下になる恐れがある。やはり倒すべきは今を於いて他に無い。
ならば………と、祓い師達はそれぞれの役割を果たす為に行動を始めた。
「やれやれ……。流石は大妖の牛鬼様だ。何で気付いた?」
最初に動いたのは心源と蒼禅……隠れていた場所から移動し少年と向かい合う。
「……その出立ち、天元明智の僧か。良くこの島に僕が居ると気付いたね」
「これも御仏の御加護ってヤツよ……。で? 何で俺達に気付いた?」
「簡単な話だ。法術で消したのは人の霊気の痕跡と匂いだろう? でも、君達の持つ鉄の匂いは消せなかったということだよ」
「成る程な……ソイツは盲点だったぜ」
牛鬼の巣である島に人工物は存在しない。で、あれば地上には鉄の匂いも存在しないことになる。少量ならともかく、蒼禅の利剣や筧の銃火器類は金属としての質量も多い。故に牛鬼はそれを嗅ぎ分けた様だ。
「それなら一般の者が上陸した可能性があるだろう……何故祓い師だと思った?」
「アハハハ。只人が上陸するには船が必要だろう?」
「そういうことか……」
船が無いということは第三者の手引きにて島へ渡ったことを意味する。流石の牛鬼も天狗の力で祓い師達が渡ってきたとは思わなかった様だが、移動手段が残されていないという大方の推測は間違ってはいない。
「それにしても……だ。何だぁ、その姿は……? 覚悟して来たのにこっちは肩透かしだぜ?」
「ククク……悪いね。この姿は非常に都合が良かったのさ。人に紛れ人を学ぶにはね……。それに……」
「………?」
少年は何処からか取り出した塊を心源達の目の前に放り投げる。それは……血の付着した女物の腕時計だった。
「上手くやれば街中でも喰えることがわかったのは良かった。磯女なんかを使うよりこの姿は便利なんだ。何せ人間の方から付いてくる。ククク……進化する愚かさには頭が下がるよ」
「テメェ……! 人を更に喰らいやがったのか!?」
「更に? 遅い遅い。気付くのか本当に遅いよ。祓い師も悲しいね……必死に守ろうとしても今の世界は人の命が軽い。行方不明なんて家族以外捜しもしないんだから」
「クッ……! 帰還したら直ぐに捜索の依頼を……」
「君達……まさか帰れると思っているのかい?」
少年の姿をした牛鬼から膨大な量の霊気が発せられる。心源と蒼禅はその圧力でほんの一瞬硬直した。そこへ少年の体から伸びた巨大な二本の足……先端に鋭利な爪を持った蜘蛛の脚が迫る。
石鎚山法起坊の話では無人島は牛鬼の巣──言わば縄張りである。当然、他の【あやかし】が踏み込んでくる可能性は低い。つまり現れたのは確実に牛鬼だ。
しかし……一同が目にしたのは想像とは大きくかけ離れた姿──。
海の中から島へと上陸するにつれ明らかになった姿は人型。初めは頭部……そこから胴、足と海面から陸へと上り顕になったのは、年の頃なら十四歳程の、人目を引く程の美貌を兼ね備えた少年……。
少年はサラリとした長い髪で細い体躯、白いシャツにジーンズ、スニーカーという姿だった。
更に──。
「……。上手く隠れたつもりの様だけど……居るね? 祓い師共?」
牛鬼は即座に祓い師達の存在を看破した。
「法術による隠形か……見事だ。しかし、この牛鬼に通じるとでも思ったかい?」
これにより有利な筈の状況は崩れた。
牛鬼は祓い師達の存在に気付いている。不意討ちによる先制攻撃はもう通じない。恐らく筧の狙撃にも対応してくる筈……。
だが、未だ有利な点もある。今は日中の正午……【あやかし】が真なる力を発揮する闇まで時間がある。この期を逃せば、今後牛鬼との戦いは不利な状況下になる恐れがある。やはり倒すべきは今を於いて他に無い。
ならば………と、祓い師達はそれぞれの役割を果たす為に行動を始めた。
「やれやれ……。流石は大妖の牛鬼様だ。何で気付いた?」
最初に動いたのは心源と蒼禅……隠れていた場所から移動し少年と向かい合う。
「……その出立ち、天元明智の僧か。良くこの島に僕が居ると気付いたね」
「これも御仏の御加護ってヤツよ……。で? 何で俺達に気付いた?」
「簡単な話だ。法術で消したのは人の霊気の痕跡と匂いだろう? でも、君達の持つ鉄の匂いは消せなかったということだよ」
「成る程な……ソイツは盲点だったぜ」
牛鬼の巣である島に人工物は存在しない。で、あれば地上には鉄の匂いも存在しないことになる。少量ならともかく、蒼禅の利剣や筧の銃火器類は金属としての質量も多い。故に牛鬼はそれを嗅ぎ分けた様だ。
「それなら一般の者が上陸した可能性があるだろう……何故祓い師だと思った?」
「アハハハ。只人が上陸するには船が必要だろう?」
「そういうことか……」
船が無いということは第三者の手引きにて島へ渡ったことを意味する。流石の牛鬼も天狗の力で祓い師達が渡ってきたとは思わなかった様だが、移動手段が残されていないという大方の推測は間違ってはいない。
「それにしても……だ。何だぁ、その姿は……? 覚悟して来たのにこっちは肩透かしだぜ?」
「ククク……悪いね。この姿は非常に都合が良かったのさ。人に紛れ人を学ぶにはね……。それに……」
「………?」
少年は何処からか取り出した塊を心源達の目の前に放り投げる。それは……血の付着した女物の腕時計だった。
「上手くやれば街中でも喰えることがわかったのは良かった。磯女なんかを使うよりこの姿は便利なんだ。何せ人間の方から付いてくる。ククク……進化する愚かさには頭が下がるよ」
「テメェ……! 人を更に喰らいやがったのか!?」
「更に? 遅い遅い。気付くのか本当に遅いよ。祓い師も悲しいね……必死に守ろうとしても今の世界は人の命が軽い。行方不明なんて家族以外捜しもしないんだから」
「クッ……! 帰還したら直ぐに捜索の依頼を……」
「君達……まさか帰れると思っているのかい?」
少年の姿をした牛鬼から膨大な量の霊気が発せられる。心源と蒼禅はその圧力でほんの一瞬硬直した。そこへ少年の体から伸びた巨大な二本の足……先端に鋭利な爪を持った蜘蛛の脚が迫る。
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