ソリティア 転生者の望まぬ隠遁生活

蒼村嬉享

文字の大きさ
28 / 34
第二章 新しい日常へ

第十一話 伝えたいことを信じて貰えた時、物事は大きく変わる

しおりを挟む
 意を決して挑んだ会話……どうやら結果的に岩部さんは僕の話を信じてくれたらしい。

 会話をしている中で少しづつ落ち着いたので、僕の現状を話しつつ僕の【力】を見せた。多分それが大きかったんだと思う。
 といっても、神様という部分は信じて貰えたかは微妙な気がする。もしかすると心を読む妖怪とか思われたかもしれない……。

「成る程……では、君は私の為に?」
「初めは役割だと思っていたので……。でも、意図しなくてもあなたの記憶を見てしまいました。だから力になりたいと思ったんです……」
「……どうやら君は損な性分らしいな」

 岩部さんは呆れたように笑う。

「それで……どうしますか?」
「………。そう言われても急なのでね……」

 岩部さんは複雑な表情をしている。彼の過去の記憶を見た僕には気持ちが少しだけ分かった。
 会いたいと思ってもいざとなればやっぱり複雑なんだ。別れた許嫁の今の家庭とか、独身を貫いた岩辺さんの気持ちとか、どうしてもそれぞれの環境を考えて判断しちゃうんだ。

 でも……。

「もしその気があるのなら言ってください。今のしがらみじゃなく岩辺さんの気持ちを最優先して下さい。そうでないときっと後悔すると思うので……」
「………」
「僕は大概ここに居ますから」
「……。では、明日まで待ってくれないだろうか? ……えぇと……君の名前は……それとも神様と呼んだ方が?」
「あ……そう言えば名乗ってませんでした。僕は安岐川アユムと言います。呼び捨てで構いません」
「ふむ……では安岐川君。また明日来る。済まないが待っていてくれ」
「はい。大丈夫です……どうか後悔しない決断を」
「………ありがとう」

 岩辺さんは軽く会釈をして去っていった。

「さぁ……朝御飯にしようね、マウ」
「ナァ~ゥ」


 翌日……岩辺さんは同じ時間に現れた。

「答えは出ましたか?」
「ああ。君の厚意を受けとることにした。……ありがとう」
「いいえ。僕……神と言ってもこの程度のことしか出来なくて……スミマセン」
「いや……君との出逢いが私の背を押したんだ。それは、私の本当の気持ちを知るだろう君だからこそ……。本当に感謝している」
「……まだ岩辺さんの望みは叶ってませんから……」
「そうだな……」

 それから僕と岩部さんは今後の打ち合わせをした。美緒さんの暮らす場所は他県?で結構な距離がある。交通に関しての費用や移動手段を考える必要がある。何せ猫の視点だし……。
 といっても実はもう方法は調べてはあった。昨日、電車やバスを乗り継いで行く方法を確認しておいたのだ。

「君としては行くのは何時が良いかな?」
「僕はいつでも良いので岩部さんの都合で調整してください」
「ふむ……では、明日でも大丈夫だろうか?」
「はい。大丈夫です」

 この即時の行動力が事業を大きくさせたのかな……。それとも、決意が揺るがない内に動きたかったのかも。

 そして更に翌日……僕の予想を上回り岩辺さんは移動手段を用意していた。

 黒の高級車……車種は違うけど、日本でも政府要人とかが乗っていたタイプの車が神社の入り口脇に止めてある。

 実は岩辺さんはお金持ち。海外での事業に成功した結果もあり大きな会社の事業主さんだった。今は引退したらしいけど多くの財を抱えていて慈善事業に力を入れているみたいだ。

 そんな岩辺さんの高級車(運転手付き)にマウと乗り込み、初めての遠征……というと大袈裟だけど、カルムンド世界初めての交通移動となった。
 因みにトムはお留守番。神社の管理を買って出てくれた。様子は猫通信で逐一確認するとのこと。


 向かう先は三県?程跨いだ先──藤園州。【暁】の都道府県は首都以外全て『州』で表記されるらしい。


 岩辺さんの想いが届くと良いなぁ……。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

私、お母様の言うとおりにお見合いをしただけですわ。

いさき遊雨
恋愛
お母様にお見合いの定石?を教わり、初めてのお見合いに臨んだ私にその方は言いました。 「僕には想い合う相手いる!」 初めてのお見合いのお相手には、真実に愛する人がいるそうです。 小説家になろうさまにも登録しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生能無し少女のゆるっとチートな異世界交流

犬社護
ファンタジー
10歳の祝福の儀で、イリア・ランスロット伯爵令嬢は、神様からギフトを貰えなかった。その日以降、家族から【能無し・役立たず】と罵られる日々が続くも、彼女はめげることなく、3年間懸命に努力し続ける。 しかし、13歳の誕生日を迎えても、取得魔法は1個、スキルに至ってはゼロという始末。 遂に我慢の限界を超えた家族から、王都追放処分を受けてしまう。 彼女は悲しみに暮れるも一念発起し、家族から最後の餞別として貰ったお金を使い、隣国行きの列車に乗るも、今度は山間部での落雷による脱線事故が起きてしまい、その衝撃で車外へ放り出され、列車もろとも崖下へと転落していく。 転落中、彼女は前世日本人-七瀬彩奈で、12歳で水難事故に巻き込まれ死んでしまったことを思い出し、現世13歳までの記憶が走馬灯として駆け巡りながら、絶望の淵に達したところで気絶してしまう。 そんな窮地のところをランクS冒険者ベイツに助けられると、神様からギフト《異世界交流》とスキル《アニマルセラピー》を貰っていることに気づかされ、そこから神鳥ルウリと知り合い、日本の家族とも交流できたことで、人生の転機を迎えることとなる。 人は、娯楽で癒されます。 動物や従魔たちには、何もありません。 私が異世界にいる家族と交流して、動物や従魔たちに癒しを与えましょう!

転生?憑依?したおっさんの俺は【この子】を幸せにしたい

くらげ
ファンタジー
鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は、四十目前の独り身の普通という名のブラック会社に務めるサラリーマンだった。だが、目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた。しかも【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!? 「誰も【この子】を幸せにしないなら俺が幸せにしてもいいよな?」

犬の散歩中に異世界召喚されました

おばあ
ファンタジー
そろそろ定年後とか終活とか考えなきゃいけないというくらいの歳になって飼い犬と一緒に異世界とやらへ飛ばされました。 何勝手なことをしてくれてんだいと腹が立ちましたので好き勝手やらせてもらいます。 カミサマの許可はもらいました。

処理中です...