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第二章 新しい日常へ
第十六話 自分の気持ちをずっと隠していると、心に沈んだまま表に出せなくなる
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戦争なんて何で起こすんだろ……。理屈は分かるよ?攻められれば守る為に戦わなくちゃならないし、国境で揉めれば小競り合いから大きな争いにも繋がるかもしれない。
でも、結局は誰かの欲望から始まっているんだ。そうじゃない戦争を僕は知らない……。
岩部さんから聞いたあの話……戦争を終わらせた少年はそれを分かっていたんだろうね……。だから権力者を全員殺して戦争に繋がる兵器を消し去ったんだ。とても辛い役目……けど、それは悪じゃないと思う僕がいる。岩部さんや美緒さんの話からそう感じてしまった。
神様の力をもっと増やしたらもう戦争を起こさずに済むのかな……。
「アユム君?」
「あ……ゴ、ゴメンなさい。少し考え事をしてました」
「そう……。戦争の話だもの。あなた優しそうだから色々考えちゃうかもしれないわね」
美緒さんはポケットから飴を取り出して僕に手渡してきた。
「考え事をした時は甘い物が一番よ」
穏やかに微笑む美緒さん。彼女の過去の話はここで一度止まってしまった。丁度その時、美緒さんのお孫さんがやって来たからだ。
「お祖母ちゃん。話し声が聞こえたけど、誰かお客様?」
「あら、美結里ちゃん。実はね……神様が来てるのよ」
「えっ!?」
お孫さん──美結里さんは驚きの表情で周囲をキョロキョロと確認している。でも、当然僕のことは見えていない。そして心配気な表情で美緒さんの目を覗き込んだ。
「……。も~、ビックリさせないでよ、お祖母ちゃん。お迎えが来たとか言い出す歳じゃないでしょう?」
「ウフフ、ゴメンなさい。この猫ちゃん相手に独り言をね?」
「なぁんだ、それなら良かった。猫ちゃん、ゴメンね~、お邪魔しちゃったね」
「ンナァ~」
マウを撫でているお孫さんは、改めて見ても美緒さんの若い頃ソックリなんだけど、何というか別人だってわかる。もっと行動的に感じるのは今時の若者言葉のせいかな……うん、言ってて何だけど僕もまだ若者なんだよね……。しかもお孫さん……美結里さんの方が僕より歳上だよね、コレ。
ハハハ、変な感じ……。
大学生かな? 平日にラフな姿で過ごしているから休校とかかもしれない。
と……ここで美緒さんが唐突にお孫さんに切り出した。
「ねぇ、美結里ちゃん。お祖母ちゃん、初恋の人に会うって言ったらどう思う?」
「えっ? お祖母ちゃんの初恋の人って前に話してくれた婚約者さん?」
「そうよ。本当だったら私が結婚する筈だった人。その人に会おうと思うの」
お孫さん……美結さんとしては微妙な心境かもしれないよね……。大好きな家族とは別の人に美緒さんの気持ちが向いている訳だし……。
そう言えば、美緒さんの旦那さんってどうしてるんだろ? ご健在なら喧嘩になったりしないだろうか……僕は余計なことしてるのかもしれないと改めて思う。
でも、やっぱり岩部さんと美緒さんには一度会って話して欲しいと思う僕も居る。二人にはその権利はある筈だから……。
そんな僕の杞憂なんて吹き飛ばすように美結里さんは目を輝かせて美緒さんに答えた。
「それは会うべきよ、お祖母ちゃん! 初恋の人との再会なんて凄く良いと思うわ!」
「美結里ちゃんは嫌じゃない?」
「全~然? そもそもお祖父ちゃんも婚約者がいるって分かっててお祖母ちゃんと結婚したんでしょ? どっちが悪いとかじゃなくてさ……きっとお祖父ちゃんが生きててもその辺は認めてくれたんじゃないかなぁ」
「そうね……。博さんならきっと会いに行きなさいって言ってくれたわね」
旦那さんは博さん、ていうのか。でも、生きていたらってことはもう亡くなってるんだね。それはそれで複雑な気持ちになるんだけど……。
「それで……いつ会いに行くの?」
美結里さんの言葉に美緒さんは無言で僕に視線を向けた。当然美結里さんは怪訝な表情で僕の方を見るけど……やっぱり見えていないよね。
う~ん……どうしよう。このまま連れて行くのは簡単だけど、美結里さんは不安になっちゃうよねぇ。かと言って説明する為に姿を見せても岩部さんや美緒さんのように納得できるだろうか?何となくお化け扱いされそうな気がするんだけど……。
でも、結局は誰かの欲望から始まっているんだ。そうじゃない戦争を僕は知らない……。
岩部さんから聞いたあの話……戦争を終わらせた少年はそれを分かっていたんだろうね……。だから権力者を全員殺して戦争に繋がる兵器を消し去ったんだ。とても辛い役目……けど、それは悪じゃないと思う僕がいる。岩部さんや美緒さんの話からそう感じてしまった。
神様の力をもっと増やしたらもう戦争を起こさずに済むのかな……。
「アユム君?」
「あ……ゴ、ゴメンなさい。少し考え事をしてました」
「そう……。戦争の話だもの。あなた優しそうだから色々考えちゃうかもしれないわね」
美緒さんはポケットから飴を取り出して僕に手渡してきた。
「考え事をした時は甘い物が一番よ」
穏やかに微笑む美緒さん。彼女の過去の話はここで一度止まってしまった。丁度その時、美緒さんのお孫さんがやって来たからだ。
「お祖母ちゃん。話し声が聞こえたけど、誰かお客様?」
「あら、美結里ちゃん。実はね……神様が来てるのよ」
「えっ!?」
お孫さん──美結里さんは驚きの表情で周囲をキョロキョロと確認している。でも、当然僕のことは見えていない。そして心配気な表情で美緒さんの目を覗き込んだ。
「……。も~、ビックリさせないでよ、お祖母ちゃん。お迎えが来たとか言い出す歳じゃないでしょう?」
「ウフフ、ゴメンなさい。この猫ちゃん相手に独り言をね?」
「なぁんだ、それなら良かった。猫ちゃん、ゴメンね~、お邪魔しちゃったね」
「ンナァ~」
マウを撫でているお孫さんは、改めて見ても美緒さんの若い頃ソックリなんだけど、何というか別人だってわかる。もっと行動的に感じるのは今時の若者言葉のせいかな……うん、言ってて何だけど僕もまだ若者なんだよね……。しかもお孫さん……美結里さんの方が僕より歳上だよね、コレ。
ハハハ、変な感じ……。
大学生かな? 平日にラフな姿で過ごしているから休校とかかもしれない。
と……ここで美緒さんが唐突にお孫さんに切り出した。
「ねぇ、美結里ちゃん。お祖母ちゃん、初恋の人に会うって言ったらどう思う?」
「えっ? お祖母ちゃんの初恋の人って前に話してくれた婚約者さん?」
「そうよ。本当だったら私が結婚する筈だった人。その人に会おうと思うの」
お孫さん……美結さんとしては微妙な心境かもしれないよね……。大好きな家族とは別の人に美緒さんの気持ちが向いている訳だし……。
そう言えば、美緒さんの旦那さんってどうしてるんだろ? ご健在なら喧嘩になったりしないだろうか……僕は余計なことしてるのかもしれないと改めて思う。
でも、やっぱり岩部さんと美緒さんには一度会って話して欲しいと思う僕も居る。二人にはその権利はある筈だから……。
そんな僕の杞憂なんて吹き飛ばすように美結里さんは目を輝かせて美緒さんに答えた。
「それは会うべきよ、お祖母ちゃん! 初恋の人との再会なんて凄く良いと思うわ!」
「美結里ちゃんは嫌じゃない?」
「全~然? そもそもお祖父ちゃんも婚約者がいるって分かっててお祖母ちゃんと結婚したんでしょ? どっちが悪いとかじゃなくてさ……きっとお祖父ちゃんが生きててもその辺は認めてくれたんじゃないかなぁ」
「そうね……。博さんならきっと会いに行きなさいって言ってくれたわね」
旦那さんは博さん、ていうのか。でも、生きていたらってことはもう亡くなってるんだね。それはそれで複雑な気持ちになるんだけど……。
「それで……いつ会いに行くの?」
美結里さんの言葉に美緒さんは無言で僕に視線を向けた。当然美結里さんは怪訝な表情で僕の方を見るけど……やっぱり見えていないよね。
う~ん……どうしよう。このまま連れて行くのは簡単だけど、美結里さんは不安になっちゃうよねぇ。かと言って説明する為に姿を見せても岩部さんや美緒さんのように納得できるだろうか?何となくお化け扱いされそうな気がするんだけど……。
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