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恨むべき相手は
しおりを挟む「あら?エドの子じゃなかったのね」
開口一番、アリアの放った言葉は部屋の空気を更に下げた。
気まずい空気の中、取り上げられた子は助産師がメイドに目配せをすると別室へと連れて行かれる。
「……だ、誰の子だというんです」
ようやく声が出たリリスが、震える声で聞く。
「髪が緑だから、ニコルかしら」
「り、リリスさま…っ」
アリアの返答にふらついたリリスを慌てて受け止める。部屋中の誰もがアリアを睨んでいるがアリアは気付かない。「エド怒るかしら。それなら要らないわね」なんて悪びれもなく呑気に言っている。ギル王子を見れば、呆然とした顔でアリアを見ていたがはっとするとみんなの方に向き直って深く頭を下げる。
「…クールス夫人を別室へお願いします」
何人かに支えられて、リリスを別室へと移す。助産師もそそくさと後片付けをすると出て行ってしまった。
「リア、君も…クールス夫人の元へ」
「……は、はい」
ギル王子が笑って言うが、その瞳は静かな怒りを宿しているのが伝わってくる。
何人かに支えられたリリスと共に別室へと行く。部屋には、アリアとギルだけが残っていた…。
「リリス様、だいじょうぶですか?」
あれから五年。五年も関係が続いていたなんて。見付かったはずじゃなかったの?どうして平然としていられたの?
もやもやと胸の中を渦巻いているが、リリスはそれ以上のものを感じているだろう。
椅子に座って呆然としたままのリリスの顔を見れば、小さく顔が動いた。
部屋に居るのは、皆前世で知っている令嬢ばかりだ。わたしの手を引っ張っていた貴族の人の姿はない。
「……大丈夫よ、ありがとう」
無理矢理だが、笑みを作るリリスはやっぱり強かだと感じる。
これだけ目撃者がいれば、さすがのアリアだって言い逃れはできないだろう。盲目なエドワードがどう思うかが想像つかない。少しでも目を覚ましてくれたらいいと思ってしまうのは何故だろう。
「あ、あの……」
震える声が後ろから聞こえて振り向くと、緑色の髪をした赤ん坊を抱いて、泣きそうな顔のメイドが立っていた。
「王妃様が……その、ニコル様の子ならリリス様に育てさせればよいと……」
頭がくらりと揺れる。
アリアはいったい何を考えて言っているんだろうか。
部屋の空気がまた下がったのを感じて、皆が不安な眼差しでリリスを見詰めている。
「…………わかりました。その子をこちらへ」
「リリス様!?」
その場で赤子の首を捻ってもおかしくはない……が、それをやってしまえばリリスがどうなるかわからない。
メイドが恐る恐る赤子をリリスに差し出すと、リリスは優しく抱いて笑った。
「産まれてきた命には罪はありません。ですが……不貞は許されることではありません」
はっきりした声で、強い瞳でリリスが言う。
リリスの言葉に胸がどくんと跳ねる。子供に罪はない……確かに、そうだ。
ギル王子が脳裏に浮かんで、胸がぎゅっと締め付けられる。同じことをし返せば良いなんて、相手が間違っていた。
リリスはわたしに一度笑いかけてから、部屋に居る令嬢たちを見てこう言った。
「……ジリアナの…そして私たちの雪辱を晴らす時が、来たのかもしれませんね」
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