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前世の最後の記憶?
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「突然ですが、あなたは死にました」
「はあ」
真っ白な空間が突然眼前に広がっていた。
目の前には天女という言葉が合いそうなほど美しい顔をした女性が目の前に立っていた。
「はじめまして、佐藤梅子さん。女神です」
「はあ」
なるほど確かに女神っぽいと思った。プラチナブロンドの髪に白い布地に金の刺繍ラインが施された羽衣みたいな服装。
天使にも見えなくはないが、豊満な体つきは女神の方が相応しい。
「あなたは過労死したのです」
「まじで?よっしゃ」
上司からのパワハラセクハラ発言、無茶振りな仕事、サービス残業休日出勤その他諸々から解放されるのだ。顔や声には出ていないがかなり喜んでいる。
ただ、自分が亡くなってしまったらまだ山積みになっている仕事はどうなるのだろうかと不安は残っている。
(ああ、「まーこれくらい簡単にできるよね?」って言ってた上司が簡単にやってくれるか)
なんという解放感、なんという苦労の末だ。
「で、何で女神さまが?ここ、天国?」
「ええ、そうです。そしてあなたには転生権が与えられました」
「え、要らないです」
きっぱりはっきり告げれば、女神はふか~い溜息を吐き出して頭を押さえている。頭痛持ちなんだろうか、可哀想に。
「転生は決まっています」
「えーまじかー」
また日本人に生まれたら働かなきゃいけないから、フランス辺りがいいなあ。お休みいっぱいだし。
「転生先は異世界です」
「えーやだー」
文句ばっかり言うな、と言いたげな顔をしているがスルーしておく。
全く知らない世界に転生したらその世界観の事をまた学んだりしなければいけないじゃないか。そんな面倒なことは良いからさっさと見知った地球の新天地で楽に生かしてくれ。
「異世界なのは決まっています」
「それならせめて楽に生きていける家とか職業にしてよ。働きたくなーい」
「だめです。そこまでの徳が溜まってませんので」
徳ってなんだ。仏教みたいな言い方だな。言葉と見た目が随分合ってないなあ。
ていうか楽するのに前世での徳とか必要なの?転生システムめんどくさっ。
「えぇーじゃあもう転生しなーい。動きたくないし疲れたくなーい。もう働くとか無理ーめっちゃ働いたもーん」
「……はあ、わかりました。少しだけ楽に生きれるように、ステータスはいじってさしあげます。こんなことしないんですからね、特別なんですから!」
ぐだぐだ文句言って寝転がったのを見て、女神は少しだけ涙目になる。「はじめての転生者案内なのに…」とつぶやかれた言葉は聞こえなかったことにしよう。
「では佐藤さん。お元気で、そして強く異世界でも生きてください」
気を取り直した女神が改めて向かい合うと、深く頭を下げる――と、同時に光が放たれる。
光に包まれたとき、23歳OLだった佐藤梅子は地球上から確かに死んだ。
「はあ」
真っ白な空間が突然眼前に広がっていた。
目の前には天女という言葉が合いそうなほど美しい顔をした女性が目の前に立っていた。
「はじめまして、佐藤梅子さん。女神です」
「はあ」
なるほど確かに女神っぽいと思った。プラチナブロンドの髪に白い布地に金の刺繍ラインが施された羽衣みたいな服装。
天使にも見えなくはないが、豊満な体つきは女神の方が相応しい。
「あなたは過労死したのです」
「まじで?よっしゃ」
上司からのパワハラセクハラ発言、無茶振りな仕事、サービス残業休日出勤その他諸々から解放されるのだ。顔や声には出ていないがかなり喜んでいる。
ただ、自分が亡くなってしまったらまだ山積みになっている仕事はどうなるのだろうかと不安は残っている。
(ああ、「まーこれくらい簡単にできるよね?」って言ってた上司が簡単にやってくれるか)
なんという解放感、なんという苦労の末だ。
「で、何で女神さまが?ここ、天国?」
「ええ、そうです。そしてあなたには転生権が与えられました」
「え、要らないです」
きっぱりはっきり告げれば、女神はふか~い溜息を吐き出して頭を押さえている。頭痛持ちなんだろうか、可哀想に。
「転生は決まっています」
「えーまじかー」
また日本人に生まれたら働かなきゃいけないから、フランス辺りがいいなあ。お休みいっぱいだし。
「転生先は異世界です」
「えーやだー」
文句ばっかり言うな、と言いたげな顔をしているがスルーしておく。
全く知らない世界に転生したらその世界観の事をまた学んだりしなければいけないじゃないか。そんな面倒なことは良いからさっさと見知った地球の新天地で楽に生かしてくれ。
「異世界なのは決まっています」
「それならせめて楽に生きていける家とか職業にしてよ。働きたくなーい」
「だめです。そこまでの徳が溜まってませんので」
徳ってなんだ。仏教みたいな言い方だな。言葉と見た目が随分合ってないなあ。
ていうか楽するのに前世での徳とか必要なの?転生システムめんどくさっ。
「えぇーじゃあもう転生しなーい。動きたくないし疲れたくなーい。もう働くとか無理ーめっちゃ働いたもーん」
「……はあ、わかりました。少しだけ楽に生きれるように、ステータスはいじってさしあげます。こんなことしないんですからね、特別なんですから!」
ぐだぐだ文句言って寝転がったのを見て、女神は少しだけ涙目になる。「はじめての転生者案内なのに…」とつぶやかれた言葉は聞こえなかったことにしよう。
「では佐藤さん。お元気で、そして強く異世界でも生きてください」
気を取り直した女神が改めて向かい合うと、深く頭を下げる――と、同時に光が放たれる。
光に包まれたとき、23歳OLだった佐藤梅子は地球上から確かに死んだ。
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