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命綱なしバンジー
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――――と、いう経緯があったことを夢の中で思い出した。
前世では佐藤梅子という平々凡々な名前であったが、転生してからはなんという名前だったか。産まれたときに付けられた名前があったはずだったが、両親の死後ころころ育て親が変わったせいで全く思い出せない。
なので、現在面倒を見てくれている人が”ホニィ”と名付けてくれたので今はそれを名乗っている。
「あー……これはいかんですなぁ」
色々と思い出すのを止めたところで、自分が今置かれている状況に気付いた。大鷲の子供の一匹が自分ににじり寄っている。低い声を唸らせて、鋭い嘴の間からは生暖かい唾液が漏れていて、足をべっとり濡らしている。
「こんにちは、鳥さん。良い寝床に案内してくれてありがとう。ところでお腹が減っているようだけど、もしや食べようと思ってる?」
「grrrrrrrr」
意思疎通は不可能らしい。鋭く研ぎ澄まされた爪先が襲いかかる。それをぼんやり眺めて、「まじかー」とだけ呟いて間一髪のところで避ける。
大鷲の子供たちはわたしを食べたくて仕方ないらしい。
じりじりとわたしを巣の端まで追い詰めてくる。
(わたしの二倍も三倍もある大きさで、わたし一人食べたところで満足するんだろうか)
戦うか逃げるかの二択しかない。鷲共は既に臨戦態勢だ。
(大人しく逃がしてもくれなさそうだな。うーん、困った)
どうやらここは太く高い木の上に作られた巣のようだ。飛び降りようにも高過ぎて何事にも無関心なわたしでも流石に飛び降りようとは思えなかった。
「ホニィ!」
後ろを見てみれば、太陽のように輝く橙と金が入り混じった色をした髪の少年がわたしを見上げている。その顔は少し呆れたような、怒っているような表情だ。
「あ、レジェー」
少年――レジェに向かってひらひら手を振る。レジェはわたしの様子に頭を抱えて溜め息を吐き出した後、両腕を広げた。
(飛び込めと。絶対受け止めてくれるとは思うけど、四階くらいあるぞこの高さ…飛び降りるのに勇気が居るんだけど……)
鷲の前足が高く振り上げられるのが見える。このまま爪が振り下ろされる前に、わたしは勇気を振り絞って巣から飛び降りる。
向かい風は涼しく感じて気持ち良いが浮いていられるわけでもないので少しは恐怖を感じる。
「ホニィ!はあー……」
レジェが軽くバランスを崩して尻餅つきながらも受け止めてくれた。口からは大きな溜め息を吐き出して、わたしをぎゅっと抱き締める。
上を見上げれば鷲たちの子供はどうやら飛べないらしい。ピーピー喚きながら降りてくるつもりはなく悔しそうな目で見下ろしている。
「親鳥が戻ってくる前に離れよう。説教と、それからどうして捕まったのかは屋敷に戻ってから聞くよ。…大体予想できるけどね」
「むぅ。お説教はやだなぁ」
わたしが歩くつもりもないことはレジェにはお見通しである。俵抱きされて足早に歩き出すレジェに連れられて屋敷へととんぼ返りだ。
(あーあ、せめて羽くらいむしっておけばよかった。そろそろ寒くなるから羽毛布団欲しかったのにな)
全くもって、残念である。
前世では佐藤梅子という平々凡々な名前であったが、転生してからはなんという名前だったか。産まれたときに付けられた名前があったはずだったが、両親の死後ころころ育て親が変わったせいで全く思い出せない。
なので、現在面倒を見てくれている人が”ホニィ”と名付けてくれたので今はそれを名乗っている。
「あー……これはいかんですなぁ」
色々と思い出すのを止めたところで、自分が今置かれている状況に気付いた。大鷲の子供の一匹が自分ににじり寄っている。低い声を唸らせて、鋭い嘴の間からは生暖かい唾液が漏れていて、足をべっとり濡らしている。
「こんにちは、鳥さん。良い寝床に案内してくれてありがとう。ところでお腹が減っているようだけど、もしや食べようと思ってる?」
「grrrrrrrr」
意思疎通は不可能らしい。鋭く研ぎ澄まされた爪先が襲いかかる。それをぼんやり眺めて、「まじかー」とだけ呟いて間一髪のところで避ける。
大鷲の子供たちはわたしを食べたくて仕方ないらしい。
じりじりとわたしを巣の端まで追い詰めてくる。
(わたしの二倍も三倍もある大きさで、わたし一人食べたところで満足するんだろうか)
戦うか逃げるかの二択しかない。鷲共は既に臨戦態勢だ。
(大人しく逃がしてもくれなさそうだな。うーん、困った)
どうやらここは太く高い木の上に作られた巣のようだ。飛び降りようにも高過ぎて何事にも無関心なわたしでも流石に飛び降りようとは思えなかった。
「ホニィ!」
後ろを見てみれば、太陽のように輝く橙と金が入り混じった色をした髪の少年がわたしを見上げている。その顔は少し呆れたような、怒っているような表情だ。
「あ、レジェー」
少年――レジェに向かってひらひら手を振る。レジェはわたしの様子に頭を抱えて溜め息を吐き出した後、両腕を広げた。
(飛び込めと。絶対受け止めてくれるとは思うけど、四階くらいあるぞこの高さ…飛び降りるのに勇気が居るんだけど……)
鷲の前足が高く振り上げられるのが見える。このまま爪が振り下ろされる前に、わたしは勇気を振り絞って巣から飛び降りる。
向かい風は涼しく感じて気持ち良いが浮いていられるわけでもないので少しは恐怖を感じる。
「ホニィ!はあー……」
レジェが軽くバランスを崩して尻餅つきながらも受け止めてくれた。口からは大きな溜め息を吐き出して、わたしをぎゅっと抱き締める。
上を見上げれば鷲たちの子供はどうやら飛べないらしい。ピーピー喚きながら降りてくるつもりはなく悔しそうな目で見下ろしている。
「親鳥が戻ってくる前に離れよう。説教と、それからどうして捕まったのかは屋敷に戻ってから聞くよ。…大体予想できるけどね」
「むぅ。お説教はやだなぁ」
わたしが歩くつもりもないことはレジェにはお見通しである。俵抱きされて足早に歩き出すレジェに連れられて屋敷へととんぼ返りだ。
(あーあ、せめて羽くらいむしっておけばよかった。そろそろ寒くなるから羽毛布団欲しかったのにな)
全くもって、残念である。
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