幼聖女はお昼寝したいだけなのに

くしゃみ。

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ステータスちら見せ

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 レジェはここ、帝国と聖王国との境目にある領地、ヒュプノス領の辺境伯――の、代理人らしい。聖王国の王都に行ったまま帰ってこなくなってしまった辺境伯の代わりに領地を仕切っていて、あの大きな赤い屋根の屋敷の主人である。
 十六か十七だったと思うけれど、領民からも愛し頼られる立派な代理人を務めている。

「レジェ、どうせならおぶってくれた方が寝やすいんだけど」

 俵抱き……別名お米様抱っこ。一部では需要の高い抱き方らしいがされてみるとかなり寝づらい格好だ。お腹だけ圧迫されて寝るのは合わないようだ。

「文句を言う立場ではないだろう、君は。保護している方からして――――」

 つらつらお説教が始まる。屋敷に戻ってからって言ってたのに……。
 ここで口を挟むとお説教の時間が倍になるので黙っておく。触らぬ神になんとやらだ。…ちょっと違うかもだけど。

「君ももう少し聖女らしく振る舞ってほしいものだよ」
「聖女って言われてもねぇ」

 遠ざかっていく巣をバックに、『ステータス』画面が自動的に開かれる。

(お、レベルでも上がったのかな)

――――――

名前:ホニィ
年齢:12
性別:女
職業:聖女

体力:10
魔力:9999

保有スキル:成長速度アップ:Lv 10
      属性魔法【聖】:Lv 10
      属性魔法【火】:Lv 10
      属性魔法【水】:Lv 10
      属性魔法【風】:Lv 10
      属性魔法【土】:Lv 10
      回復魔法【聖】:Lv 10
      魔法耐性【全】:Lv 10
      逃亡:Lv1 New!

――――――

 改めて見てみるがこのステータスが普通なのか異常なのかはわからない。MPがカンストしてることだけはわかる。
 そして逃亡スキルとやらが増えたようだ。

 逃亡スキル以外はレベルも含めて変わっていない。どれも最初からレベルマックスなのは女神の特別仕様というやつだろう。

 新しいスキルはさっきの鷲の巣から逃げたことによって増えたようだ。こうやってスキルが増えていくのか。12年生きてて初めて知ったよ。

 ぼーっとステータス画面を見ていれば館に着いた。大きな屋敷ではあるが住んでいるのはわたしとレジェだけだ。
 真っ直ぐに向かうのはレジェの執務室だ。あーそういえば執務室で昼寝するのも飽きちゃって屋根の上でお昼寝してみようと思ったんだった。

「ふげっ」

 ぽいとソファに投げられる。おっきくてふかふかで良い匂いがするのはいいんだけど、毎日寝ていると飽きもくるというもの。でもまあやっぱり寝心地がいいのはここだな。

「この辺りは帝国の他に、魔物も多いからあまり外にでないように言ってたと思うけど」
「言ってたっけ?」

 ソファに寝転がってあくびを漏らす。その様子にレジェは深い溜め息を吐き出して、ソファの前にしゃがみこんでわたしの顔を覗き込む。

「巣に大人しく連れていかれた理由は?」

 抵抗しなかったこと前提の言い方だ。まあ、その通りなのだが。

「鳥の巣って気持ち良さそうじゃん?一度で良いから鳥の巣で、鳥たちに囲まれて寝てみたかったんだけど…思ってたより固いし痛いし寝心地悪そうだったよ」

 巣はなんの材質でできていたんだろうか。恐らく殆どが木片だと思うが。鷲の子供たちも羽が油っこくて気持ちが良いものではなさそうだったし、がっかりだ。空中散歩の昼寝は気持ち良かった分、残念すぎたのである。

「はあ……昼寝の探求するのはいいけど、屋敷内だけにしてほしい」
「はーい」

 やる気のない返事に困った顔をして溜め息をまた吐き出したけれど、机に戻って仕事を始めた。「そこから動かないように」と付け足して。
 レジェは心配性で過保護だな、まったく。
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