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レジェとの出会い
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レジェと出会ったのは、半年前。何番目かもわからない育て親に連れられてヒュプノス領にやってきた、次の日だ。
「領主様への供物には良いモノが手に入ったな」
「ええ、ええ、魔物や帝国との戦争で使えるモノでしょう」
身も心も醜悪な老人二人がこそこそ話しているが全部丸聞こえだ。それでもわたしと接する時は優しい顔をしているから聞こえてない振りを続けるが。
「もう少しで着くからね、待っててね」
差し出されたのはキャンディだ。お金がなくてわたしを売りにいく割にはよくキャンディなんて高級品を買うお金があるものだ。
聖女、わたしがそう呼ばれ始めたのはいつだったか……。
中々子供の出来ない夫婦の元に生まれ、笑いも泣きもしない無愛想な赤ちゃんだったそう。前世の記憶とやらは特に覚えていた訳じゃないけれど、働きたくないと強く思っていたことだけは今も記憶にある。
そして、直ぐに産みの両親が死んだ。理由はなんだったかな、病死だった気はする。まだ赤子の頃のことだから悲しいとかは感じなかった。
それから、3番目くらいの親だったと思う。わたしが所謂チート的なステータスを持っていることに気付いたのは。
回復魔法【聖】というのは大抵の怪我は治せちゃうらしい。回復魔法にも属性が存在するらしいけど、聖属性というのはほぼ万能な魔法のようだ。
気付いてからは3番目の親はわたしを金の道具に使う使う……次第に話が大きくなっていって、ついにはわたしの取り合いになった。そりゃあもう血生臭い争いにまで発展した。
みんな保護目的だって言ってたけど、利用したいのはバレバレだった。わたしとしては、そのときは寝れるならどこでもよかった。
何度も親が代わって、老夫婦に引き取られた……かと思えば今度は領主に売りに出されると。
聖女とかどうでもいいからもう働きたくないなあ…十分怪我治してきたし。よく働いた、わたし。偉い。のでさっさと隠居したい。
屋敷に着くと、出迎えは一人だけ。それがレジェだった。
レジェの第一印象は若いのに苦労してそうなイケメンだなー、ってことくらいだ。
どうやらレジェが領主の代理人とわかると老夫婦は嬉しそうに笑った。子供ならいくら吹っ掛けてもいいと思ったんだろう。
「手紙で知らせた通り、この子が奇跡の力を持つ子でして……ええ」
「そうですか」
うわ、こんな冷たい目出来るんだってくらい冷ややかな視線を送るレジェと、それを送られて少し笑顔が引きつる老夫婦。
「金額の方ですが……」
「……用意してあります。こちらをどうぞ」
レジェが麻袋を差し出す。音を聴くに結構入っていそうだった。
老夫婦は満足そうに受け取るとわたしに声を掛けずにさっさと屋敷を出ていってしまった。
(えー…せめて一言くらいあってもいいじゃん……まあいっか)
「君、名前は?」
レジェがわたしの前にしゃがみこんで、手を取る。さっきまでと違って優しい表情をしていた。
「さあ?色んな名前で呼ばれてきたし、あの人たちなんかはわたしのこと呼んだことないしね」
その言葉を聞いて、レジェは怒っているような哀れんでいるような目でわたしを見る。
「僕はレジェ。…君の名前をつけても良いかな?」
「お好きにどうぞ」
どうせまた何処かに追いやられるんだろうし、名付けても意味はないと思うが。
「ホニィ。今日から君を、そう呼ばせてもらうよ」
優しく笑って頭を撫でられて。……頭を撫でられたのはいつぶりだったか。
少し鼓動が早くなるが驚いて心拍数が上がっただけだろう。
その日からわたしはホニィになって、レジェと二人で屋敷で暮らすことになった。
「領主様への供物には良いモノが手に入ったな」
「ええ、ええ、魔物や帝国との戦争で使えるモノでしょう」
身も心も醜悪な老人二人がこそこそ話しているが全部丸聞こえだ。それでもわたしと接する時は優しい顔をしているから聞こえてない振りを続けるが。
「もう少しで着くからね、待っててね」
差し出されたのはキャンディだ。お金がなくてわたしを売りにいく割にはよくキャンディなんて高級品を買うお金があるものだ。
聖女、わたしがそう呼ばれ始めたのはいつだったか……。
中々子供の出来ない夫婦の元に生まれ、笑いも泣きもしない無愛想な赤ちゃんだったそう。前世の記憶とやらは特に覚えていた訳じゃないけれど、働きたくないと強く思っていたことだけは今も記憶にある。
そして、直ぐに産みの両親が死んだ。理由はなんだったかな、病死だった気はする。まだ赤子の頃のことだから悲しいとかは感じなかった。
それから、3番目くらいの親だったと思う。わたしが所謂チート的なステータスを持っていることに気付いたのは。
回復魔法【聖】というのは大抵の怪我は治せちゃうらしい。回復魔法にも属性が存在するらしいけど、聖属性というのはほぼ万能な魔法のようだ。
気付いてからは3番目の親はわたしを金の道具に使う使う……次第に話が大きくなっていって、ついにはわたしの取り合いになった。そりゃあもう血生臭い争いにまで発展した。
みんな保護目的だって言ってたけど、利用したいのはバレバレだった。わたしとしては、そのときは寝れるならどこでもよかった。
何度も親が代わって、老夫婦に引き取られた……かと思えば今度は領主に売りに出されると。
聖女とかどうでもいいからもう働きたくないなあ…十分怪我治してきたし。よく働いた、わたし。偉い。のでさっさと隠居したい。
屋敷に着くと、出迎えは一人だけ。それがレジェだった。
レジェの第一印象は若いのに苦労してそうなイケメンだなー、ってことくらいだ。
どうやらレジェが領主の代理人とわかると老夫婦は嬉しそうに笑った。子供ならいくら吹っ掛けてもいいと思ったんだろう。
「手紙で知らせた通り、この子が奇跡の力を持つ子でして……ええ」
「そうですか」
うわ、こんな冷たい目出来るんだってくらい冷ややかな視線を送るレジェと、それを送られて少し笑顔が引きつる老夫婦。
「金額の方ですが……」
「……用意してあります。こちらをどうぞ」
レジェが麻袋を差し出す。音を聴くに結構入っていそうだった。
老夫婦は満足そうに受け取るとわたしに声を掛けずにさっさと屋敷を出ていってしまった。
(えー…せめて一言くらいあってもいいじゃん……まあいっか)
「君、名前は?」
レジェがわたしの前にしゃがみこんで、手を取る。さっきまでと違って優しい表情をしていた。
「さあ?色んな名前で呼ばれてきたし、あの人たちなんかはわたしのこと呼んだことないしね」
その言葉を聞いて、レジェは怒っているような哀れんでいるような目でわたしを見る。
「僕はレジェ。…君の名前をつけても良いかな?」
「お好きにどうぞ」
どうせまた何処かに追いやられるんだろうし、名付けても意味はないと思うが。
「ホニィ。今日から君を、そう呼ばせてもらうよ」
優しく笑って頭を撫でられて。……頭を撫でられたのはいつぶりだったか。
少し鼓動が早くなるが驚いて心拍数が上がっただけだろう。
その日からわたしはホニィになって、レジェと二人で屋敷で暮らすことになった。
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