転生悪役王女は平民希望です!

くしゃみ。

文字の大きさ
12 / 44

11:脱走?いいえ城からは出てないです!

しおりを挟む
 お茶会デビュー当日。
 かなりきついコルセットを付けられて、薄い桃色のドレスを着させられる。…く、苦しい。こんなの付けられてお菓子とか食べられる気がしない。今すぐ服を全部脱ぎ捨てたい衝動に駆られる。

 でも、脱走はしない。
 お母様がまた泣いちゃうし、監督責任でドーラが怒られるかもしれない。
 だからわたしは――

「レオ様、お願いです!わたしを連れて一緒に逃げて!」
「はあ!?」

 脱走がダメなら、駆け落ちである。
 一番最初に来たレオに駆け寄って手を掴むと全力で走る。「ちょ」とか「おい!」とか後ろから聞こえるけど無視して全力ダッシュする。

 誰もいないお城の裏側の方まで来ると息を整える。追っ手は…うん。来てないみたいだ。わたしの足もだいぶ速くなったみたいね!これならいつ何があっても逃げられるでしょう!

「な、なんだよ突然」
「ごめんなさい、レオ様。わたしどうしてもお茶会に参加するわけにはいかないのです!」

 今日のお茶会参加者には、既に会ったことのある人はレオ以外にいない。
 スムーズに入れ替わるためにも顔を会わせることはしてはいけないのだ。それに、処刑エンドフラグを立てるわけにもいかない。
 わたしの言葉にレオは心底あきれた顔をしている。

「主催が居なくてどーすんだよ」
「はっ…それは…」

 そうだった。お茶会の主催は一応わたしになっている。突然の体調不良とかで対応できないかな。

「わざわざ遠い領地から来た令嬢もいるんだろう」
「で、でもでも、それだとフラグが…!!」
「フラグ?」

 そう。今日のお茶会に参加するメンバーは他の悪役令嬢仲間たちなのだ。名前からして恐らく漫画に登場してきたわたしの取り巻きたちで間違いないだろう。

「レオ様、驚かないで聞いてください。わたし、実は前世の記憶があるのです!」
「…はあ?」

 痛い人を見るような目だ。信じてもらえないかもしれないけど、レオの真の婚約者のためにも話して味方になってもらった方がいいだろう。

「ここは、漫画の世界なのです!」
「マンガ?」

 …しまった。漫画という概念はないんだ、この中世の世界観じゃ。
 漫画ってなんて説明したら良いんだろう。絵の書かれたお話?
 言葉に困っていればレオががしがし頭を掻いて何度目かの溜め息を吐く。

「よくわかんねーけど、話は聞いてやる。茶会の件はそれからにしてやるよ」

 なんで上から目線なんだ…と思ってしまいつつも聞いてくれる姿勢なのは有り難い。
 たどたどしいけど、わたしは漫画とはどんなものでこの世界のことをなんで知っているのかを話し始めた――――。
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

家を乗っ取られて辺境に嫁がされることになったら、三食研究付きの溺愛生活が待っていました

ミズメ
恋愛
ライラ・ハルフォードは伯爵令嬢でありながら、毎日魔法薬の研究に精を出していた。 一つ結びの三つ編み、大きな丸レンズの眼鏡、白衣。""変わり者令嬢""と揶揄されながら、信頼出来る仲間と共に毎日楽しく研究に励む。 「大変です……!」 ライラはある日、とんでもない事実に気が付いた。作成した魔法薬に、なんと"薄毛"の副作用があったのだ。その解消の為に尽力していると、出席させられた夜会で、伯爵家を乗っ取った叔父からふたまわりも歳上の辺境伯の後妻となる婚約が整ったことを告げられる。 手詰まりかと思えたそれは、ライラにとって幸せへと続く道だった。 ◎さくっと終わる短編です(10話程度) ◎薄毛の話題が出てきます。苦手な方(?)はお気をつけて…!

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

悪役令嬢は反省しない!

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢リディス・アマリア・フォンテーヌは18歳の時に婚約者である王太子に婚約破棄を告げられる。その後馬車が事故に遭い、気づいたら神様を名乗る少年に16歳まで時を戻されていた。 性格を変えてまで王太子に気に入られようとは思わない。同じことを繰り返すのも馬鹿らしい。それならいっそ魔界で頂点に君臨し全ての国を支配下に置くというのが、良いかもしれない。リディスは決意する。魔界の皇子を私の美貌で虜にしてやろうと。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

悪役令嬢として断罪? 残念、全員が私を庇うので処刑されませんでした

ゆっこ
恋愛
 豪奢な大広間の中心で、私はただひとり立たされていた。  玉座の上には婚約者である王太子・レオンハルト殿下。その隣には、涙を浮かべながら震えている聖女――いえ、平民出身の婚約者候補、ミリア嬢。  そして取り巻くように並ぶ廷臣や貴族たちの視線は、一斉に私へと向けられていた。  そう、これは断罪劇。 「アリシア・フォン・ヴァレンシュタイン! お前は聖女ミリアを虐げ、幾度も侮辱し、王宮の秩序を乱した。その罪により、婚約破棄を宣告し、さらには……」  殿下が声を張り上げた。 「――処刑とする!」  広間がざわめいた。  けれど私は、ただ静かに微笑んだ。 (あぁ……やっぱり、来たわね。この展開)

処理中です...