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11:脱走?いいえ城からは出てないです!

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 お茶会デビュー当日。
 かなりきついコルセットを付けられて、薄い桃色のドレスを着させられる。…く、苦しい。こんなの付けられてお菓子とか食べられる気がしない。今すぐ服を全部脱ぎ捨てたい衝動に駆られる。

 でも、脱走はしない。
 お母様がまた泣いちゃうし、監督責任でドーラが怒られるかもしれない。
 だからわたしは――

「レオ様、お願いです!わたしを連れて一緒に逃げて!」
「はあ!?」

 脱走がダメなら、駆け落ちである。
 一番最初に来たレオに駆け寄って手を掴むと全力で走る。「ちょ」とか「おい!」とか後ろから聞こえるけど無視して全力ダッシュする。

 誰もいないお城の裏側の方まで来ると息を整える。追っ手は…うん。来てないみたいだ。わたしの足もだいぶ速くなったみたいね!これならいつ何があっても逃げられるでしょう!

「な、なんだよ突然」
「ごめんなさい、レオ様。わたしどうしてもお茶会に参加するわけにはいかないのです!」

 今日のお茶会参加者には、既に会ったことのある人はレオ以外にいない。
 スムーズに入れ替わるためにも顔を会わせることはしてはいけないのだ。それに、処刑エンドフラグを立てるわけにもいかない。
 わたしの言葉にレオは心底あきれた顔をしている。

「主催が居なくてどーすんだよ」
「はっ…それは…」

 そうだった。お茶会の主催は一応わたしになっている。突然の体調不良とかで対応できないかな。

「わざわざ遠い領地から来た令嬢もいるんだろう」
「で、でもでも、それだとフラグが…!!」
「フラグ?」

 そう。今日のお茶会に参加するメンバーは他の悪役令嬢仲間たちなのだ。名前からして恐らく漫画に登場してきたわたしの取り巻きたちで間違いないだろう。

「レオ様、驚かないで聞いてください。わたし、実は前世の記憶があるのです!」
「…はあ?」

 痛い人を見るような目だ。信じてもらえないかもしれないけど、レオの真の婚約者のためにも話して味方になってもらった方がいいだろう。

「ここは、漫画の世界なのです!」
「マンガ?」

 …しまった。漫画という概念はないんだ、この中世の世界観じゃ。
 漫画ってなんて説明したら良いんだろう。絵の書かれたお話?
 言葉に困っていればレオががしがし頭を掻いて何度目かの溜め息を吐く。

「よくわかんねーけど、話は聞いてやる。茶会の件はそれからにしてやるよ」

 なんで上から目線なんだ…と思ってしまいつつも聞いてくれる姿勢なのは有り難い。
 たどたどしいけど、わたしは漫画とはどんなものでこの世界のことをなんで知っているのかを話し始めた――――。
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