転生悪役王女は平民希望です!

くしゃみ。

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16:天才過ぎて困っちゃうんです

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 バスタ村へは、お茶会の帰りに寄ることにした。ドーラは何も言わないけど…まあ、寄るくらいならいいよね。
 そしてなんでかレオがお茶会に同席することになったらしい。お母様に頼まれたらしいけど、まったく心配性な母親だ。
 ラグナ領へは、行きだけでも半日掛かってしまう。馬車に慣れてないから半日もずっと座っていられるかが心配だな。でも最近は割と大人しく過ごしているし、半日の移動くらい大丈夫かな。

 ――――って、思っていた時期もありました。

「ひ、暇すぎる……!!」

 スマホもゲームもマンガもない移動が退屈で仕方ない。この時代の人たちって何もしないで何してるの!?…ああ、小説のひとつくらい持って来ればよかった……。

「馬車の中とはいえしゃきっとしろよ」
「だって…暇なんですもの」

 だらしなく座るわたしの正面には背筋をしゃんと伸ばしたレオの姿が目に入る。凛とした姿は本当にいいところのお坊ちゃんだと感じる。言葉づかいも上兄様のようになれば立派なお貴族様らしいのに、どうして乱暴な口調なんだろうか。…そういえばレオの回って他と比べると少なかった気がする。続巻で活躍するかもって噂はあったけど。

「じゃあ、前世とやらの話でも聞かせろ」

 暇だと言っているのにわたしが話す方なのか。というツッコミはとりあえずしないでおこう。わたしはいずれ平民になる身なのだから、あまり無礼なことはできないぞ。

「はい、では何をお話ししましょうか」
「主人公の女のこととか」
「まあ!まあまあ!では、お話しさせて頂きますね!」

 レオがアリスに興味を持つなんて!運命の女の事はやっぱり惹かれあう運命なのかしら!
 アリスが誰とくっ付くのかまだわからないけど、わたしはレオのこと応援するわ!上兄様と下兄様は実妹だしね。平民になるだろうけど、身分がなくなってもわたしはレオの恋を応援し隊だよ。クラレットの事は残念だったけど、初恋は叶わないっていうしね。

「アリスはとても心優しい女の子ですのよ。どんな人でも等しく平等。老人も子供も、平民も貴族も関係ないという考えの女の子ですのよ」
「へえ。天使みたいな女だな」
「ええ!天使のような女の子ですのよ!」

 ……あれ?
 思っていたよりも興味無さそうな反応だ。窓の外見てるし。
 いやいや、運命の女の子よ!?天使のような心の広さを持ってるのよ!?それなのにこんな反応薄いって……。興味を引く情報じゃなかったかな。でも漫画ではレオはアリスに「お前…天使みたいだな」って言ってたけどなぁ…。

「外見とかはどんななんだ?」
「えっ、えぇと、お母様と同じピンク色の髪で…お父様とは似てらっしゃらないですわね。お母様の生き写しのようですわ」

 少女漫画だから可愛い系の顔は大体同じ顔なんだけど。まあ、ともかく成長したアリスはお母様にそっくりなのだ。そっくりすぎてお城に連れてこられるくらいだし。幼くても見ればわかると思う――わたしはあの時見てもわからなかったけど。

「ピンクの髪な」
「ええ!とっても可愛らしい方なのできっと一目惚れしてしまいますわ!」

 アリスとレオも幼いころに一度会っている話が確かあって――……そうだ。レオとアリスはこの時くらいの年頃に会っているじゃないか!つまりレオと一緒に行動していればアリスに会える。
 お城に連れて帰って、「お父様!お母様!あなたの本当の娘よ!」「おお本当の娘よー!」「本物の王女様だー!」ってなるに違いない。そしてわたしは平民になって、処刑される未来を事前に防いだってことになるわ!やだわたしったら天才の発想ね!平民になってもやっていけるわこの天才の頭なら!

 ふふふ…と笑うわたしを尻目に、レオも何かを考えているようだった――。
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