転生悪役王女は平民希望です!

くしゃみ。

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25:月下の花畑での逢瀬です

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 うさぎは何とか一命を取り留めた。だけど、傷はわたしが思っていた以上に深かったらしく、絶対安静のようだ。わたしには、ぐったりと横になっている姿を眺めることしかできない。
 でも…助けられてよかったな。ふわふわで真っ白な毛を見て、ほっと安心する。
 それにしてもこのうさぎ、どこかで見たことあるような気がするんだけど…どこでだったかな。

「うーん…思い出せないし、いっか」

 考えるのをやめて、ベッドに寝転がる。村長さんの家だけど、城にあるベッドよりも随分と簡素的だ。今のわたしにはどちらかというとこっちのほうが居心地がよく感じるけど。

 ドレスは泥まみれに血まみれ。
 シキもわたしも物凄く怒られてしまったけど、わたし達よりもナイの方がもっと怒られていた。
 見張りの意味が無かったもんね…抜け出したわたしのせいではあるので、護衛隊長には怒らないようにとお願いしたけど……。

 コツン、と窓になにかが当たる。
 もう夜も遅いから風で揺れただけだろうか。気にしないで寝ようとすればまたコツンと窓になにかがあたる。

「誰かいるのかな……あ」

 ベッドを降りて窓の下を覗き込めば、レオの姿があって。
 ぱくぱくと声に出さないで何か言っているみたいだ。

『お、り、て、こ、い、よ』…?
 また抜け出したりなんかしたら怒られちゃうかな。レオと一緒だし、まあ大丈夫だろう。
 そっと音を立てないように気を付けて、わたしはレオの元へと向かった。

***

「レオ!今夜はレリア嬢お屋敷に泊まるのではなかったのですか?」
「ちょっと身の危険を感じて出てきた…って、それはいいからちょっと来い」

 そういえばレリア嬢は、バスタ村にいる男爵家の令嬢だけど、からだがとても弱くて…でも、ものすごく積極的な女の子だったっけ。
 漫画で出てこないのは…本編が始まってすぐに亡くなってしまったからなんだけど。

「どこへ行くんですの?」
「着いてからのお楽しみ」

 頭にはてなマークをたくさん浮かべながら、手を引かれて森のなかに入っていく。夜だし狼が活動している時間なんじゃないかと不安に思うのに、昼間に一人で森のなかをさ迷っているときより不安じゃない。……繋いでいる手のお陰かな。

 森のなかを歩いて少しした頃、開けた場所に出る。
  
「…わあ…!!」

 花畑。月の光に照らされて、輝いた花畑があった。
 この場所は、漫画で見たことがある。アリスと、レリア嬢の秘密の場所。アリスとレオが初めて会った場所でもある。
 一体、なんでここのことを…。

「こういうの、お前好きだと思って」
「はい、とても好きですわ!」

 更に手を引かれて、花畑の真ん中まで来る。レオの顔が月明かりに照らされて、はっきり見える。

 ……そんな優しい目で見られると。
 目があって思わず逸らしてしまう。嬉しいのと、恥ずかしいのと、混ざり合うなかにもうひとつ感情が浮かんできて。

「やっぱりフィアーナには花が似合うな」

 見たことないような穏やかな顔で笑うレオに、わたしはなんと呼んだらいいのかわからない感情の、名前を探した――。
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