改造人間

SIN

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ジュタ 4

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 リオンは僅か3日で偵察用の小さなロボットに独自に通信機能まで付け、しかも遠隔操作まで出来るように改造してから偵察に行かせ、色んな情報を盗んで来た。その中で最も重要な情報だったのは、改造人間の作り方。
 小さなロボットの目にはカメラが付いていて、ロボットが見た景色は全てリオンのパソコンへデータとして残る。
 施設内の詳しい造り、人造人間に関してのデータ、研究員のトップが暮らしているエリアの様子。こうして施設内をくまなく見た小型のロボットは、自分の体を2つに分裂させ、1つは改造人間のデータが詰まった部屋の中で、もう1つはトップの部屋の中でそれぞれ大爆発を起こした。
 ロボットはいきなり3からカウントダウンを始めたのだから、普通の人間に爆発を凌げる術は無かった。
 何故このタイミングで殺す必要があった?
 これじゃあ施設側はロボットが襲撃に来たと思って、余計に戦いが終わらなくなるだけじゃないのか?
 リオンからしてみてもこの爆発は予想外だったらしく、しばらく呆然としていた。
 遠隔操作以外の行動、それはつまり……マザーからの直接命令だろう。
 マザーは俺達に手を貸すつもりなんて始めからなかった……んだろうな。そうでなければアジトからロボットが姿を消している事の説明が付かない。
 アジトを爆破されなかっただけマシだと思えば良いのか?
 モニターに映し出された映像が本物なのかを確かめるためにネットテレビをつけて見ると、どのチャンネルも施設で起きた爆発の事を報道していた。
 ただ、小型ロボットの目撃情報はない上、ロボット達は追加で施設を襲撃しなかった事もあり、単なる爆発事故とされているようだ。
 「月に行こう。施設の次の行動は、改造人間に詳しい人物を集める事だろう。だから月に先回りして、そー言った人物に成り済ますんだ」
 そう言ったリオンは何故か楽しそうに操作を始めた。
 何をしているのかは全く分からないが、とりあえず邪魔はしないようにスイと2人でネットニュースで情報収集する。
 どれ位の時間が経ったのか、ネットニュースでも同じような事が繰り返し報道されるようになった頃だから、1時間か2時間程度だとは思うが、リオンが立ち上がって満足そうな笑みを浮かべた。
 何かの作業が終わったらしい。
 「覚えてね。ジュタは今日から改造人間修理工を営む変わり者で、スイは改造人間の研究者って事にしたから」
 ニコニコと笑うリオンが物凄く胡散臭い。
 それにしても、今日から修理工って事にしたって……どんな手を使ったのかは分からないけど、俺とスイを普通の人間のように細工したって事なんだろ?
 本当にどうやったんだろう。月のシステムってかなり緩いのか?それともリオンが物凄く機械とかプログラムとかに詳し……あぁ、そうか。俺達にはついさっきまで機械の親分であるマザーが味方についてたんだった。
 改造人間のデータを手渡され、月に行く準備を始めたリオンとスイに背を向けてただただ暗記する。
 覚える事が多過ぎるから絶対に1日や2日じゃあ覚える事なんか無理だと半場諦めていたのに、改造人間の脳みそってのは学習能力が異常に高いらしい……自分自身がちょっと不気味だ。
 「覚えた……」
 データを返却するとリオンはその場で破棄してしまったので、今となっては改造人間を1から作り出せるのは俺だけと言う大変恐ろしい事になってしまった。
 いや、改造手術を手がけていた研究員ならばデータがなくても普通に作ってしまうのだろう。それなのに「変わり者の改造人間修理工」を施設に招こうと考えるだろうか?
 「設定は“買い足しに月に戻って来た”って事だから、適当に買い物しちゃって。支払いはこのカードを使ってね。施設の奴らに声をかけられるまでフラフラしてるんだよ。後、何かあったらシャトル前に集合」
 軽い打ち合わせが終わり、シャトルに乗り込んで月に到着すると、俺達は会話もせずに夫々打ち上げ場から出た。
 さてと、リオンの助言通りに買い物を始めよう。
 ガドルの施設があるエリアを避けつつ、声をかけられやすいように人の多いエリアの中を歩く。
 えっと、買い足しに来たって設定だから薬とか買っとくか。後は食料、ガスボンベに燃料……あ、修理工なんだから工具も必要か。
 こうして一通り買い物を済ませた後、ジュースなどを飲みながら公園でゆっくりと休憩してるんだけど、誰も声をかけて来ない。だからと言って誰からも目を付けられていない訳でもなく、買い物途中から俺を監視するように着いてくる男はいるんだ。
 きっとあの男がスカウトマンなんだろうが……何故声をかけて来ない?俺が改造人間だって事がばれたのか?それとも胡散臭いこのカードの事がバレたのか……。
 「あの……」
 男が声をかけてきたのは、公園で1時間ボーッとしてからだった。
 始めはちゃんと騙せているのかヒヤヒヤしたけど、どうやら大丈夫のようで、話し掛けてきた男は丁寧に事の説明をし、説明会があるから来てくれるよう頭を下げてきた。
 得体の知れない俺に頭を下げる程なんだから、改造人間の作り方を知っている研究員は生き残らなかったらしい。
 こうしてやって来た説明会があると言う会場……えっと、何か顔隠すモンないか?
 よぉ~く考えてみたらガドルが説明会に呼ばれているなんて容易に想像は出来た筈なのに、月での買い物って初体験の緊張があったのか、思い浮かびもしなかった。とりあえずメガネかけておこう。
 まぁ、ガドルは子供の頃の俺しか知らない訳だからメガネだけでも大丈夫だろうし、俺は改造人間修理工としてここに呼ばれている。名前はジュタのままだけど、そんなに珍しい名前でもないから大丈夫だろう。
 フゥと息を吐いてから会場内を見渡してみると、少し離れた所に緊張した風にピシッと綺麗に座ってるスイがいて、物凄く不自然な笑顔をこっちに向けながら小さく手を振ってきた。
 そのあまりの可笑しさに笑いそうになるのを堪え、小さく手を振り返した所で何処となく偉そうな人間が前に出てきた。
 「ご存知かと思われますが……」
 と、挨拶もなく始まった説明会は、時間にして5分もなかっただろう。
 掻い摘んで言うと「重役は皆死んだから代わりに地球にいってくれ」って感じ。で「俺達に死ねと言うのか」って誰かの怒声には「貴方達が行かないなら人類が滅びる」と正論を述べた。で、最後に「協力するかしないかは各自で決めて下さい」だって。その結果が、
 「冗談じゃない!」
 と、帰って行く多数の人間。
 会場に残ったのは俺とスイと、もう1人……ガドルだけ。
 何でガドルまで残ってるんだ?自分の施設があるんだから帰れっての!それとも俺の正体に気が付いたから……?
 いや、まさかな。
 もう1度俺達の意思を確認した偉そうな人間は、俺達の気が変わらないうちにと早速シャトルに乗せ、その日の内に半壊状態にされた施設に連れて来た。
 シャトルから降りると、何かの資料を手に持った1人の研究員が出迎えてくれて、
 「えぇっと……これからよろしくお願いします」
 と、深々と頭を下げてから簡単な自己紹介をした。
 どうやら生き残った研究員は、改造人間手術に関わった事のない監視役だけらしい。
 「説明は受けています。早く研究室に案内して」
 役になりきっているスイは、キリッとした顔でハキハキと喋っているのだが、その真剣な雰囲気が普段と違い過ぎて……ちょっと、笑いそ……。
 「スイさん……ですね?えっと、改造人間開発をして頂きますので、えっと……」
 研究員は何度も資料を捲りながら俺達の確認作業をしているようだ。と言う事は、俺も名前の確認をされるのかも?ジュタなんて珍しくない名前ではあるけどガドルの前では出来るだけ呼ばれたくないしな……。
 「俺は改造人間にとっての医者だ。これからはドクターと呼べ」
 メガネを中指で押し上げてフンッと鼻を鳴らしながら言うと、スイは密かに顔を伏せて笑っていた。
 「最後にガドルさん。改造人間からの信頼が厚い貴方には、ここの責任者になって頂きたい。人類を勝利へと導いてください!」
 改造人間からの信頼が厚い?
 あのルルって奴みたいに、ガドルの熱狂的信者が他にもわんさかといるってのか?
 施設に人間を売る為の保護施設の創立者だぞ?
 そりゃ……確かにタイキは俺よりもガドルについた訳だから、改造人間にとっては物凄く良い人間なのかも知れないが……。
 研究員は俺とスイを研究室に案内した後、「後の事はお任せします」と頭を下げて行ってしまった。
 さて、ここからどうするか……取り敢えずリオンに連絡しよう。
 「聞こえるか?」
 上着に付けていた小型マイクのスイッチを入れて呼びかけると、
 「2人共上手く行ったようだね」
 と、既に状況を把握している風な返事が小さなスピーカーから聞こえてきた。
 何処かにカメラも仕込まれてた?
 まぁ、細かい説明をする時間が省けたんだから別に良いか。
 「あぁ、早く来いよ。それと、俺の事はドクターって呼んでくれねぇか?ちょっと知り合いがいてさ、名前呼ばれるとマズイんだ」
 「OK、OK。10分もあれば着くから」
 ブツッと切れた通信。
 それから本当に10分程してノック音が聞こえたから、てっきりリオンだと思って何の確認もなくドアを開けたのに、そこに立っていたのはリオンではなく、ガドルだった。
 部屋の中には入って来ず、何も喋らず。改造手術中に使用する拘束器具を、思い詰めた顔をして眺めている。
 手術台を見に来た?
 だからって無言は可笑しいだろ。
 「用がないなら、失礼する」
 パタンと部屋のドアを閉めて鍵をかけ、耳を済ませてしばらくすると、ドアの前から遠ざかって行く足音が聞こえた。
 本当に部屋の様子を見学しに来ただけだったのか……。
 「ね、どう言う関係?」
 緊張の糸が切れた所で、俺のメガネをグイッと下ろしたスイがイタズラっぽく笑った。だから余程の質問ではない限り答えたいのだが……生憎、余程の事だから答えない。
 「別にどーでも良いだろ?」
 本当にどうだって良いと思ってたんだけど、やっぱり姿を見ると駄目だな。沸々と怒りとか情けなさとかが出てくるんだ。
 けど、俺を売った金で施設を建てたって事自体に怒りはない。寧ろ、改造人間にとって数少ない「良い人間」になる為にあの施設が必要だったんだろうから……まぁ、嬉しい。かな?
 じゃあ何に怒ってるのかって言うと、ガドルを見てると5年間腐ってた自分を思い出すから。
 タイキがどんな気持ちで一緒にいてくれたのかさえ気付かなかった自分が嫌で、情けなくなるから。
 な?答えられるような内容じゃない。
 「ガドルって言えばかなりの有名人だよ?ね、どー言う関係なのさ」
 地球ではそこまで有名じゃなかったと思うんだけど、そうか、スイは月出身だったっけ。にしたって、有名人だったのか……。だとしたら、リオンもスイと同じような質問をしてくるかも知れない。
 「リオンが来てからな」
 10分程で来ると言ってたし、そろそろ来たって可笑しくない時間だけど、爆発事故があったばかりで警備が厳しくなってるだろうから追い返されてるかも?
 正面入り口まで迎えに出た方が良いのだろうか?
 いや、何かあれば連絡が来るだろう。
 コンコン。
 ノックの音が聞こえる。
 またガドルじゃないか?とも思ったが、部屋の外からは人の気配が多数ある。
 ガドルだったとしても1人じゃないなら。と、メガネをかけ直してからドアを開けると、2人の研究員によって拘束されたリオンがいた。
 「この者がドクターの助手だと言って聞かないのですが……」
 ドクターって誰だっけ?あぁそうだ、俺がそう呼べって言ったんだ。
 だけど、実際にそう呼ばれると違和感が凄過ぎてポカンとしてしまった。
 「あぁ、間違いない」
 返事をしてすぐに開放されたリオンは、
 「遅くなってゴメンね~。でもぉ~、この人達が足止めしてきたんだから、しょうがないよねぇ?」
 とかなんとか言いながら研究員を舐めるように見つめ、それによって研究員は慌てた様子で頭を下げてドアを閉めて足早に去ってしまった。
 あのさ……なんでそんなブリッコキャラなんだ?
 「で、ガドルとどんな関係なんだよ」
 早速その話?
 身を乗り出してくる様子から、スイにとってこの質問は単なる好奇心からではないらしく、
 「まぁね、ガドルって言えば有名人。その有名人と知り合いって言うんだから気にはなるよね」
 そう言ってリオンも俺に注目した。
 改造人間からも、多分人間からの信頼も厚いだろうガドルの知り合いが破棄寸前の改造人間ってのも不自然な所なのかも知れな……ガドルの施設からきた奴は漏れなく全員ガドルの知り合いじゃねーか。
 だったら俺も施設出身って事に……いや、こんなくだらない所で嘘をついてどうするんだよ。
 「アイツは俺の兄貴なんだ」
 何故だろう、本当の事を言ってるのに物凄く嘘っぽい。
 「兄弟なら顔でバレるんじゃない?」
 あれ?信じてくれるのか?
 「アイツはガキん時の俺しか知らない。でも多少の変装はしようと思ってんだけど」
 うん。
 なんかもう、本当に細かく説明すればする程嘘臭い。
 「あー、だからメガネしてるんだね。似合ってるよ」
 え?
 スイだけじゃなくてリオンまで信じてくれるのか?
 それだけ信用されてるって事なのだろうか?だとしたら、嘘を言って適当に誤魔化さなくて良かった。
 満足げに笑ったリオンは、持ってきていた大きな鞄の中からアジトにあった機器を取り出すと部屋の中に設置しはじめたから、その間に俺とスイは2人で破棄場に向かった。
 能力的に処分される予定の改造人間や、反抗的な態度ってだけで破棄される事が決められた改造人間の救出は勿論、制御装置の不具合で動けないまま破棄される事になった改造人間の修理をする為に。
 俺を改造人間の修理工だと信じさせるミニイベントではあるが、1人でも助けられる命があるのなら死力を尽くしたい。
 こうして制御装置の不具合で破棄されかけていた5人を救う事が出来た俺は施設の中での立場を確保する事に成功し、同じくスイもリオンも信頼される事となった。
 これで第一関門突破、だな。
 俺達の立場が確立するまでに費やした時間は2日。そろそろマザーが何か仕掛けてくる事だろうから、俺達もそれに備えて行動を起こした方が良いんじゃないだろうか……。
 そう声に出そうかと思っていた矢先。
 「そうだ。前線に出ていた改造人間達の半数を呼び戻したから……夕方には戻って来ると思うよ」
 と、突然リオンから告げられた。
 前線で戦っている改造人間を半数も呼び戻した?
 「そんな事したら。前線の戦力が……」
 「大丈夫、Aクラスの改造人間を20人派遣したから」
 あぁ、そう言う事か。
 にしたって、前線の戦力は下がるだろ?待てよ、修理が必要な改造人間をそのまま戦わせているよりも遥かに戦えるな。それに、新しく派遣された20人は施設に俺達修理工がいる事を知っているから、故障を恐れて守りに入る必要がない。
 でも……タイキが戻ってくるって事はない……よな?
 リオンの言った通り、夕方には改造人間達がゾロゾロと施設に戻ってきた。その道中にロボットが襲ってきたらしく、全員が無事と言う訳ではなく、怪我の酷い者から順に手当てと修理をする事になった。怪我のない者も念の為にメンテナンスをする事になり、大袈裟に大きなマスクと帽子、白衣にメガネをかけて治療を開始させた。
 制御装置もあわせて取り外したい所ではあるけど、それはしないようにとのリオン命令。
 しかしだ、大きなマスクのせいで少々視野が狭い……だったら取ってしまえば良いだけなんだろうケド、そうは出来ない理由があって……タイキがいるから。
 タイキ自身には目立った故障はなさそうで、今はルルと一緒にガドルの部屋にいるらしい。けど、いつ入って来ても可笑しくないし、用心に越した事はない。
 「あんたみたいな医者、何故前線にはいない?俺達はロボット側にデータを盗まれる事を恐れて壊れた仲間を更に壊した……あんたになら、治せたかも知れない仲間を……」
 左腕を傷めていた改造人間の治療が終わろうとしていた時、ズット黙っていたソイツが不意にそう呟いた。
 俺は前線がどんな様子なのかを知らないが、今の言葉だけで壮絶なんだなって……前線に出た改造人間が1人も戻って来なかったんだから、そうだろうなとは思ってたけど、実際に壊れたり、動けなくなった改造人間は切り捨てられていたんだ。
 「負傷した仲間がいればいつでも連れて来い。それが仕事だからな」
 それに、改造人間のデータなんかとっくにマザーに知られてる。仲間を壊す意味なんか少しもないんだ……とは、声に出さない方が良いか。
 「……有難うドクター」
 壊れたら修理する。こんな当たり前の事が、こんなにも感謝される事なのか?
 人間だって具合が悪けりゃ医者に行くだろう。それと同じ事を改造人間は今までに出来なかった……それが異常なんだ。
 今までの研究員達の態度は悪過ぎた。俺達が重役になったからには、絶対に今までのようなやり方には戻させない。で、絶対にこの戦いに勝とうな!
 「これで全員終わったかな?あー疲れた」
 俺をサポートしてくれていたスイが廊下を確認して、誰もいない事を確認した上で伸びながら言ったのだが、実はまだ全員終わってはないんだけど……そう言ったら脱力するだろうか?
 「ガドルの部屋にいる2人で最後だから、もう少しだけ頑張ろうな」
 タイキはただのメンテナンスで大丈夫だろうケド、問題はルルか……。
 「良く覚えてるね。まさか全員の顔を?」
 思った通り、スイは「えぇ~」と椅子に座り込み、少し間を置いてから気になったんだろう事柄を尋ねてきた。
 改造人間の記憶力が優れているとはいえ、いちいち全員の顔を覚えられる訳がない。これからはドクターとしてよく怪我をする改造人間の顔は覚えていくのだろうが。
 「違う違う。その2人とは同級生だっただけ」
 同級生だからって覚えてるのも可笑しな話だよな、俺は5年間も腐ってたんだから、前線から戻ってきた改造人間とは全員1度は同級生になった事がある筈だ。
 「はぁ。呼んでくるから、その乱れたマスク直しときなよ?」
 スイに連れて来られたタイキとルルと……何故かガドルの3人は揃って部屋の隅に立ち、誰も診察台に上がろうとはしない。
 凄まじい警戒心を見せてる所悪いんだけど、こっちも早く休みたいから容赦なくその体を切り刻ませてもらう。
 まずはルルに合図を出すと「心細い」とか「怖い」とか言ってメンテナンス中ガドルの手を握って離さなかった。ガドルは「邪魔ですよね、すいません」とかなんとか言いながら何度も頭を下げてきて、そんな様子を部屋の隅に立ったままのタイキが凝視。
 ガドルでも、ルルでもなく、ただ只管俺の手元だけ。
 きっと、変な事をしないように見張ってるつもりなんだろう。それ程までにタイキにとってルルは大事な存在なのか。
 それにしても……一体どんな戦い方をすればここまで体が傷むんだ?
 「腕、動かしてみろ」
 修理が終わってから声をかけると、ルルは恐る恐る腕を動かし、数回クルクルと回した後、パッと明るい表情を見せた。
 「痛くない。ガクンってならない!」
 その言葉を聞いたタイキはホッと息を吐き、安堵の表情を浮かべて……あぁ、そうだった。前線では動けなくなった奴は壊されていたんだったな。きっとルルはズット腕が痛いのを我慢して何でもないように振舞っていたんだろう。
 そして最後はいよいよタイキの番。
 タイキはルルを修理した俺を信用したらしく、何も言わないうちに診察台に寝転んだ。
 見た限り何処にも怪我はないし、不調そうな箇所もないけど、念の為詳しく検査してみたが、やぱり何処にも異常は見当たらなかった。
 前線から戻って来た全ての改造人間のメンテが終わった部屋の中には俺とスイの2人だけ。だからマスクやら帽子で顔を隠す必要もなくなったと言うのに、俺達はただただ無言のまま疲労感に支配されて項垂れていた。だから必然的に部屋の外の話し声なんかが聞こえてきて……結構声って響くんだな、これからは注意して喋らないと……。
 まさか、ここの斜め向かいがガドルの部屋だったなんてな。
 「俺、ジュタを探してくる」
 タイキの声だ……なに?俺を探してなにになるってんだろう。そもそもここにいるし、さっきまで一緒の空間にいたし、声まで聞いたくせに気付かなかったじゃねーか。
 「ジュタは1度俺の施設に来たんだ……」
 今度はガドルの声。
 俺が施設に忍び込んだ事を知っている?確かに上着はガドルの部屋に捨ててきたけど、アレで俺だと特定出来る筈もない。上着を見たタイキが俺の物だと言った?それとも防犯カメラ?
 「けど、前線にはいなかった」
 ルルの声。
 隣から聞こえて来る話は重苦しく、そして俺の話だった。勿論居心地は良くないし、スイも俺の方を複雑な表情で見ていた。
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