時の記憶

知る人ぞ知る

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りんは村長さんの姿が見える範囲で歩き始めた。

破れた障子の隙間から社の中を覗き込んだり、賽銭 |《さいせん》箱の上に道中拾った松ぼっくりや栗をお供えしたり、手水舎 |《ちょうずや》の流れ出る水の様子をじっと見ていたり。

一通り見飽きてしまうと、やがてりんは吸い込まれる様に大きな御神木へと近寄った。


そこはまるで世界が違って見えた。

目の前を埋め尽くす一面の緑

そこはこの神社の中でも、一番空気が澄んでいるように思えた。


りんは思わずスッと息を吸う。

柔らかく澄んだ空気は少女の体の中を巡って、外へと消えた。



ずっと昔からこの御神木はここに存在し、村を見続けてきたのだろう。

幹には皺が刻まれ、巻かれている紐は少し黒ずんでいるようだった。


御神木はまるで祠を守るように後ろにそびえ立っている。

すると、風が吹いたと同時にザァザァと枝が揺れ、幾重もの葉がりんの元へ散ってゆく。

その枝が揺れたのと同時に、木漏れ日がりんの顔に影を作り出す。

温かく、雲ひとつない晴天の中、美しい光景に少女は微笑んだ。



りんは御神木に更に近づくと、恐る恐る小さな手で幹に触れた。

すると


「きゃっ!」


急に風が勢いを増して少女の周りを渦巻き始めた。

ゴウゴウと大きく揺れる御神木

いきなりの事に、りんはすぐさま目を閉じた。



・・・どのくらい経ったのだろうか。


やがて風がおさまり、少女はそっと片目を開けた。


辺りはとても静かだ。


御神木に勝手に触れて怒られてしまったのかと怯えながら、りんは大きな目をあちこちに向けて辺りを確認するが、先程と変わらない光景が広がっているだけだった。


けれど、全てが同じというわけではなかった。

ふと、りんは御神木の裏側から緑色の何かがはみ出ている事に気が付いた。
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