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第十五夜 魔の森
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「スフォンの村にて大規模な呪いが発生!さらにモンスターの集団に襲われています!至急救援を乞う!」
その知らせがギルド中に響き渡る。どうやら受付の奥に有る水晶玉から声が発生してるらしい。そして、そのまま水晶玉は沈黙して何も反応しなくなった。
「最悪だわ……こんなタイミングで」
受付のおねーさんが青ざめた顔色で呟く。オショウやゴラン達冒険者も悲痛な顔で悩んでいるようだ。よく分かっていないのは私だけらしい。
「えっと……救援にいくのよね?」
私の問いかけにも誰も答えてくれない。厳しい表情で黙ったままである。
「いや、状況はかなり厳しい」
ゴランが絞り出すように答える。
「まず戦力が足りねえ。高ランクの冒険者や戦士団、騎士団は俺達が発見した東のオーガの討伐に向かってしまった。それだって命懸けだしスフォンからは離れすぎてる、今から連絡してもとても間に合わねえ」
それを皮切りに他の冒険者達も次々に否定的な意見を述べてくれる。
「他の所にに残ってる奴らだって必要最低限な人数さ。距離も離れてる。ここが一番近い位さ」
「だが、ここから向かうにしても軽く六時間はかかる。普通ならそれぐらい村の連中と今連絡してきた冒険者達のパーティーが協力すれば持ちこたえられるだろうが、呪いが発生したと言ってた。何の呪いか分からないが、そんな状態で持ちこたえるのは無理だろう」
「スフォンの村の辺りのモンスターはここよりも強い。下手に救援を出しても被害が増えるだけだ」
意見は出尽くしたが、ネガティブなものばかりだ。状況は絶望的。このままじゃスフォンの村は壊滅してしまう。
けれど、私はその村を救わなければならない理由が有る!
「つまり、一番近くで自由に動ける私達が助けに行けば良いわけね」
あえて空気を読まない私の発言に、周りが「何言ってんだコイツ」と目を向ける。オショウだけは面白そうに笑ってるけど。
「ったく、大の男がくだらないことをグダグダグダ!あんた達の仲間や村人達が呪いで苦しんでる所に、モンスターに襲われてるのよ!もし自分達が同じ立場になったらどんなに心細いか想像してみなさい!」
「おいおい、話を聞いていたか?時間が掛かりすぎるって言ってんだろう!四半日もすれば村は滅びた後だぜ」
ゴランが慌てて止めに入るが、私は壁にかかっている地図を指差して説明する。
「央都からスフォンの村まで街道沿いに向かえば確かに六時間は掛かるわ。けれどこの森を抜けて最短距離を突っ切れば、道程は六分の一以下で何とか間に合う筈よ」
街道は森を大きく迂回してスフォンの村に繋がっている。だが、央都と村は直線距離では意外と近いのだ。
「馬鹿言ってんじゃねえ!この森はモンスターの巣窟だ。危険すぎるから街道も大きく回り込んで作られてるんだよ」
そんなことは百も承知だ。自分でも無理を言ってるのは分かってる。他の人達もそれに同調し始めた。しかし!
「私にはこの森を突っ切れる秘策がある!モンスターを振り切って森を移動する技が!」
力強く宣言して全員を黙らせる。正直半分はハッタリだ。上手くいくかやってみなければ分からない。それでも私は行かなければならない。
「けど、これは私一人だけしか使えない技なの。先に行って時間を稼ぐからあなた達は街道から……」
「ハッハッハ、拙僧も一緒に行こう」
オショウが楽しそうに笑いながら同行を申し出てくれる。
「拙僧の地潜術を使えばモンスターに見つからずに進むことが出来る。村に着けば村人の手当や呪いを解くことが出来るかもしれん。いやしかし、あのままウダウダやっていたら拙僧一人でさっさと向かう所だったが、嬢ちゃんはやはり大したものだな。ワーハッハッハ」
「ありがと、オショウも只の筋肉達磨じゃなかったわね。じゃ、時間もないし急ぎましょうか」
「待ってください!」
移動しようとした私達を止めたのは、受付のお姉さんだった。うわ、面倒臭くなりそうな予感。
「この件は明らかにC級以上のクエストに相当します。F級の美夜さんには二次被害を防ぐため救援に向かうことを許可出来ません」
えー、そこは見逃してよと思っても、お姉さんの真剣な表情を見れば私のことを本気で心配してくれること位は分かるし、言ってることは至極正論だ。
さてどうすればお姉さんを説得出来る?
私がF級冒険者でしかないのが問題なのだ。何の実績もない、強さも証明出来ない小娘を危険な戦場に向かわせられないのは当然のこと。他の人の迷惑になるだけで私がお姉さんの立場でも止める。
ならば、無理矢理にでもその立場をひっくり返す!
私は、おねーさんの目の前に金貨のたっぷり入った袋をわざと大きく音を立てて置いてやる。
「なら、私が冒険者ギルドに依頼を出すわ。依頼内容はスフォンの村の知り合いに会いに行く私を護衛する事。急いでいるので森を突っ切れる冒険者を希望。それに見合う特別料金を支払います」
「えっ?えっ?えっ?」
私の急な宣言と、規格外の依頼金に目を白黒させるおねーさん。無理もない、袋の中は五千エリン。日本円にして約五百万円、C級の討伐依頼の相場の約十倍である。
ちなみにこれは、盗賊がドロップしていった宝石を持ち主の貴族に届けたお礼の半分なのは言うまでもない。私にとってはあぶく銭に等しいものだ。
「じゃ、そーいうことで。オショウ行くわよ!」
「ハッハッハ、この依頼確かに受けたまわった。緊急ゆえ細かい手続きは帰ってからということで。御免!」
「ちょ、ちょっとー!」
おねーさんが思考停止してるうちにギルドを飛び出す私とオショウ。よしっ、これで規約違反にはならないはず。もし後でおねーさんが文句を言っても、あれこれ言って切り抜けてやる。
スフォンの村は北に有る。城門を抜けもうすぐ森へ差し掛かろうとする時、後ろから呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、ゴラン達のパーティーが息を切らせながら走ってくる。酒飲んだ後でそんな走ったらぶっ倒れるぞ。
この期に及んでまだ引き留めようとするのかと身構えるが、どうやらそうではないらしい。受付のおねーさんからのご命令で、彼らも依頼を引き受けて私を護衛してくれるそうだ。
「あー、言っときますけどスフォンの村で騒動に巻き込まれても、しっかり私を守って下さいね?それに森の中でも私についてこれなかったら報酬引かせてもらいますからね」
あの依頼内容ではスフォンの村に着いた時点で条件が達成してしまう。契約内容の確認は大事なことです。
「ハッ、あんまり俺達を馬鹿にすんなよ。森の中でも村に着いた後もきっちりガードしてやるよ。そっちこそ五千エリンしっかり払ってもらうからな」
よっしゃあ!言質を取ったよ。とほくそ笑みながら森に足を踏み入れる。
すると、〈魔の森〉〈立入禁止区域〉と目の前に表示が浮かぶが、〈危険区域立入許可証〉が反応して、〈立入禁止区域〉の表示がかき消えた。以前は入れなかった魔の森に難なく入れる事を確認する。
「それじゃ、しっかり追いかけて下さいね。〈グリンウイップ〉!」
勢いよく前方にある木の枝に緑の蔓を射出、木の枝に絡まった蔓を引き戻せば自分の体が前に引っ張られ空中移動。振り子の運動を利用してさらに前に跳び、次の枝へまたグリンウイップ。これを繰り返す。
もうお気づきだろう。そう、某大国の蜘蛛男やとある王国の調査兵団が使っているアレである。
いや、早い早い。モンスター達が気付いたときには遥か彼方へ通り過ぎた後なのだ。
あんぐりと口を開けて見送るゴラン達を置いて、私は森を突っ切るのであった。
「ハッハッハ、こりゃサルも顔負けだのう。では拙僧も」
言うがいなや、オショウは地面から出ている上半身を前に投げ出し、
「ハーッハッハッハッハ!」
何と、クロールで地面を泳ぎだした!
笑いながら地面を掻き分け進む巨大な何かに、森のモンスター達も大慌てで逃げ出す始末!
ソレは一直線に物凄い勢いで木々を、地面を、モンスターを掻き分けて爆走……いや、爆泳していったのだった。
「…………え?アレに追い付いてガードしなきゃいけないの?」
誰かがボソリとこぼした呟きにゴランは我に帰る。
「い、行くぞお前ら!あの筋肉坊主のすぐ後を追いかけりゃとりあえずモンスターは寄ってこねえ。このままじゃ五千エリンの報酬がどんどん減っちまうぞ!」
「あの坊さん、見つからずに移動できるとか言ってへんかったか?坊主が嘘ついたらあかんやろ」
「畜生!追いかけてくるオーガ共から無事に逃げられた後なのに……」
「絶対にあいつらを見失うなよ。この先のモンスターはマジでヤバいからな」
「くそ、酒が回らないように酔い止めの毒消し飲まなきゃなんねえぞ」
口々にぼやきながら、必死に追いかけるゴラン一行であった。
私は森の木々の間をを物凄いスピードで跳び移っていく。
新たに得た〈地形探査〉と〈植物探査〉のおかげで森の構造が頭の中に流れ込み、次にどう動けば良いか自然に解るのだ。
けれど……
「ウヒャァー!死ぬ死ぬ死んじゃうー!あんなのに刺されたら死んじゃうって!」
モンスターの縄張りまでは解らなかった。
私は今蜂の群れに追いかけられています。それもカラス位に大きな蜂の群れに。
ジャイアントビー。その果物ナイフ位大きな毒針は強力な麻痺毒を持ち、集団で行動する森のハンターである。うっかり巣の近くを通り過ぎた私に怒って追いかけてきました。
スピードが出すぎたこの状態を、自力で止める方法は解らなかった。
もうほとんど前に向かって落下しているような状態なのだ。グリンウイップも大木に衝突しないように方向や角度を調整するのに精一杯で、減速やブレーキまで手が回らないし、無理矢理止めると蔓が切れてしまって事故るのは目に見えてる。今は昼間で私のステータスは貧弱なのだ。一発で死亡してしまう。
「ワダジガバガデジター!ダレガダズゲデー!……ん?」
風圧で泣き言も満足に言えない私の脳裏に、〈植物探査〉さんから貴重な情報が流れてくる。
もうすぐ森を抜けるらしい。
ならば!っと名案が閃く。
森を抜けた瞬間に角度を調節して天高く飛び上がるのだ。後は〈双頭龍の旋風爪〉で落下速度を弱めることが出来れば死なずに済む。
この技は〈闘気法〉を使うので今のステータスでは一回しか使えないがタイミングさえ気をつければ何とかなるだろう。
そんなことを考えてる間に、木々の向こうに青空が見えてくる。
ここっ!
最後の木の枝に巻き付けた蔓を離すタイミングを遅らせ、私は今、天空へと舞い上がる。
空は何処までも高く高く、吸い込まれそうな青空だった。私は大空に向かって落ちていくような錯覚を覚える。
上昇が止まり、今度は下に落ち始める。私はそこで初めて地上を見下ろす。
谷は何処までも深く深く、吸い込まれそうな深さだった。私は谷底に向かって落ちていくような錯覚を覚える……って錯覚じゃないよ!今まさに落っこちてるよ!
森の中に深く大きな谷が有り、私はそのちょうど真ん中に勢いよく飛び上がったのだった。〈地形探査〉も覚えたばかりなので熟練度が低く、効果範囲が狭くて解らなかった。〈双頭龍の旋風爪〉を使っても両岸まではとても届かないし、これだけ深いと落下速度が付きすぎて一回しか使えない〈旋風爪〉も効果無し。
絶・体・絶・命!
「誰か、誰か嘘だと言ってー!こんな死に方間抜け過ぎるー!これは悪い夢よー!って夢だったわー!」
私の叫びは、大自然の森の中にこだましたのであった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
美夜 レベル6
種族
〔半吸血鬼〕
称号
〔■■■の種子との共生者〕 〔棒術使い〕
〔体術使い〕
〔熟練の料理人〕
〔F級冒険者〕
アビリティ
〈暗闇下ステータスアップ〉
〈暗闇下HP回復〉
〈大地属性〉
〈地形操作3〉
〈闇属性1 〉
〈魔性の魅了〉
〈植物操作5〉
〈陽光下ステータス小ダウン〉
〈陽光下HP半減、MP小回復〉
〈火属性大ダウン〉
〈光属性小ダウン〉
〈回復効果半減〉
〈教会利用不可〉
〈金属装備不可〉
〈棒攻撃力アップ〉
〈素手攻撃力アップ〉
〈調理許可証〉
〈幸腹〉
スキル
〔半吸血鬼2〕
〈吸血〉
〈夜目〉
〔棒術使い4 〕
〈双龍打ち〉
〈回し〉
〈螺旋突き〉
〔体術使い2〕
〈一本背負い〉
〔植物操作6〕
〈グリンウイップ〉
〈木の刃スラッシュ〉
〈リーフシールド〉
〈草薙ぎブレード〉
〈絆草膏〉
〈ローズウイップ〉
〔地形操作3〕
〈足落とし〉
〈大地の牙〉
〈ぬりかべ召喚〉
〔料理上手〕
〈加熱促進〉
〔料理人〕
〈毒性除去〉
〈栄養促進〉
〈食材の知識〉
〔熟練の料理人〕
〈精神負荷耐性〉
〈素材の声〉
〔F級冒険者〕
〈危険区域立入許可証〉
〈地形探査〉
〈幽霊探査〉
〈植物探査〉
〈食材探査〉
[コンボ技]/
〈双連牙〉
〈グリンウイップ〉+〈吸血〉+〈足落とし〉+〈一本背負い〉+〈大地の牙〉
〈双頭龍の六連牙〉
〈闘気法〉+〈双龍打ち〉+〈双龍打ち〉+〈双龍打ち〉
〈双頭龍の旋風爪〉
〈闘気法〉+〈回し〉+〈回し〉+〈回し〉
〈双頭龍の旋風連牙爪〉
〈双頭龍の旋風爪〉+〈双頭龍の旋風爪〉
〈螺旋緑の一鬼(らせんりょくのひとつき)〉
〈グリンウイップ〉+〈ローズウイップ〉+〈闘気法〉+〈螺旋突き〉+〈吸血〉
(コンボが1つ繋がる毎に0.2 倍のダメージが追加されていきます)
〈HP〉 98/196
〈MP〉 110 /110
〈力〉 10/15
〈素早さ〉 8/13
〈体力〉 12/18
〈技量〉 10/10
〈魔力〉 11/11
〈知力〉 5/5
〈精神力〉 9/9
〈魅力〉 5/5
〈幸運〉 3/3
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その知らせがギルド中に響き渡る。どうやら受付の奥に有る水晶玉から声が発生してるらしい。そして、そのまま水晶玉は沈黙して何も反応しなくなった。
「最悪だわ……こんなタイミングで」
受付のおねーさんが青ざめた顔色で呟く。オショウやゴラン達冒険者も悲痛な顔で悩んでいるようだ。よく分かっていないのは私だけらしい。
「えっと……救援にいくのよね?」
私の問いかけにも誰も答えてくれない。厳しい表情で黙ったままである。
「いや、状況はかなり厳しい」
ゴランが絞り出すように答える。
「まず戦力が足りねえ。高ランクの冒険者や戦士団、騎士団は俺達が発見した東のオーガの討伐に向かってしまった。それだって命懸けだしスフォンからは離れすぎてる、今から連絡してもとても間に合わねえ」
それを皮切りに他の冒険者達も次々に否定的な意見を述べてくれる。
「他の所にに残ってる奴らだって必要最低限な人数さ。距離も離れてる。ここが一番近い位さ」
「だが、ここから向かうにしても軽く六時間はかかる。普通ならそれぐらい村の連中と今連絡してきた冒険者達のパーティーが協力すれば持ちこたえられるだろうが、呪いが発生したと言ってた。何の呪いか分からないが、そんな状態で持ちこたえるのは無理だろう」
「スフォンの村の辺りのモンスターはここよりも強い。下手に救援を出しても被害が増えるだけだ」
意見は出尽くしたが、ネガティブなものばかりだ。状況は絶望的。このままじゃスフォンの村は壊滅してしまう。
けれど、私はその村を救わなければならない理由が有る!
「つまり、一番近くで自由に動ける私達が助けに行けば良いわけね」
あえて空気を読まない私の発言に、周りが「何言ってんだコイツ」と目を向ける。オショウだけは面白そうに笑ってるけど。
「ったく、大の男がくだらないことをグダグダグダ!あんた達の仲間や村人達が呪いで苦しんでる所に、モンスターに襲われてるのよ!もし自分達が同じ立場になったらどんなに心細いか想像してみなさい!」
「おいおい、話を聞いていたか?時間が掛かりすぎるって言ってんだろう!四半日もすれば村は滅びた後だぜ」
ゴランが慌てて止めに入るが、私は壁にかかっている地図を指差して説明する。
「央都からスフォンの村まで街道沿いに向かえば確かに六時間は掛かるわ。けれどこの森を抜けて最短距離を突っ切れば、道程は六分の一以下で何とか間に合う筈よ」
街道は森を大きく迂回してスフォンの村に繋がっている。だが、央都と村は直線距離では意外と近いのだ。
「馬鹿言ってんじゃねえ!この森はモンスターの巣窟だ。危険すぎるから街道も大きく回り込んで作られてるんだよ」
そんなことは百も承知だ。自分でも無理を言ってるのは分かってる。他の人達もそれに同調し始めた。しかし!
「私にはこの森を突っ切れる秘策がある!モンスターを振り切って森を移動する技が!」
力強く宣言して全員を黙らせる。正直半分はハッタリだ。上手くいくかやってみなければ分からない。それでも私は行かなければならない。
「けど、これは私一人だけしか使えない技なの。先に行って時間を稼ぐからあなた達は街道から……」
「ハッハッハ、拙僧も一緒に行こう」
オショウが楽しそうに笑いながら同行を申し出てくれる。
「拙僧の地潜術を使えばモンスターに見つからずに進むことが出来る。村に着けば村人の手当や呪いを解くことが出来るかもしれん。いやしかし、あのままウダウダやっていたら拙僧一人でさっさと向かう所だったが、嬢ちゃんはやはり大したものだな。ワーハッハッハ」
「ありがと、オショウも只の筋肉達磨じゃなかったわね。じゃ、時間もないし急ぎましょうか」
「待ってください!」
移動しようとした私達を止めたのは、受付のお姉さんだった。うわ、面倒臭くなりそうな予感。
「この件は明らかにC級以上のクエストに相当します。F級の美夜さんには二次被害を防ぐため救援に向かうことを許可出来ません」
えー、そこは見逃してよと思っても、お姉さんの真剣な表情を見れば私のことを本気で心配してくれること位は分かるし、言ってることは至極正論だ。
さてどうすればお姉さんを説得出来る?
私がF級冒険者でしかないのが問題なのだ。何の実績もない、強さも証明出来ない小娘を危険な戦場に向かわせられないのは当然のこと。他の人の迷惑になるだけで私がお姉さんの立場でも止める。
ならば、無理矢理にでもその立場をひっくり返す!
私は、おねーさんの目の前に金貨のたっぷり入った袋をわざと大きく音を立てて置いてやる。
「なら、私が冒険者ギルドに依頼を出すわ。依頼内容はスフォンの村の知り合いに会いに行く私を護衛する事。急いでいるので森を突っ切れる冒険者を希望。それに見合う特別料金を支払います」
「えっ?えっ?えっ?」
私の急な宣言と、規格外の依頼金に目を白黒させるおねーさん。無理もない、袋の中は五千エリン。日本円にして約五百万円、C級の討伐依頼の相場の約十倍である。
ちなみにこれは、盗賊がドロップしていった宝石を持ち主の貴族に届けたお礼の半分なのは言うまでもない。私にとってはあぶく銭に等しいものだ。
「じゃ、そーいうことで。オショウ行くわよ!」
「ハッハッハ、この依頼確かに受けたまわった。緊急ゆえ細かい手続きは帰ってからということで。御免!」
「ちょ、ちょっとー!」
おねーさんが思考停止してるうちにギルドを飛び出す私とオショウ。よしっ、これで規約違反にはならないはず。もし後でおねーさんが文句を言っても、あれこれ言って切り抜けてやる。
スフォンの村は北に有る。城門を抜けもうすぐ森へ差し掛かろうとする時、後ろから呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、ゴラン達のパーティーが息を切らせながら走ってくる。酒飲んだ後でそんな走ったらぶっ倒れるぞ。
この期に及んでまだ引き留めようとするのかと身構えるが、どうやらそうではないらしい。受付のおねーさんからのご命令で、彼らも依頼を引き受けて私を護衛してくれるそうだ。
「あー、言っときますけどスフォンの村で騒動に巻き込まれても、しっかり私を守って下さいね?それに森の中でも私についてこれなかったら報酬引かせてもらいますからね」
あの依頼内容ではスフォンの村に着いた時点で条件が達成してしまう。契約内容の確認は大事なことです。
「ハッ、あんまり俺達を馬鹿にすんなよ。森の中でも村に着いた後もきっちりガードしてやるよ。そっちこそ五千エリンしっかり払ってもらうからな」
よっしゃあ!言質を取ったよ。とほくそ笑みながら森に足を踏み入れる。
すると、〈魔の森〉〈立入禁止区域〉と目の前に表示が浮かぶが、〈危険区域立入許可証〉が反応して、〈立入禁止区域〉の表示がかき消えた。以前は入れなかった魔の森に難なく入れる事を確認する。
「それじゃ、しっかり追いかけて下さいね。〈グリンウイップ〉!」
勢いよく前方にある木の枝に緑の蔓を射出、木の枝に絡まった蔓を引き戻せば自分の体が前に引っ張られ空中移動。振り子の運動を利用してさらに前に跳び、次の枝へまたグリンウイップ。これを繰り返す。
もうお気づきだろう。そう、某大国の蜘蛛男やとある王国の調査兵団が使っているアレである。
いや、早い早い。モンスター達が気付いたときには遥か彼方へ通り過ぎた後なのだ。
あんぐりと口を開けて見送るゴラン達を置いて、私は森を突っ切るのであった。
「ハッハッハ、こりゃサルも顔負けだのう。では拙僧も」
言うがいなや、オショウは地面から出ている上半身を前に投げ出し、
「ハーッハッハッハッハ!」
何と、クロールで地面を泳ぎだした!
笑いながら地面を掻き分け進む巨大な何かに、森のモンスター達も大慌てで逃げ出す始末!
ソレは一直線に物凄い勢いで木々を、地面を、モンスターを掻き分けて爆走……いや、爆泳していったのだった。
「…………え?アレに追い付いてガードしなきゃいけないの?」
誰かがボソリとこぼした呟きにゴランは我に帰る。
「い、行くぞお前ら!あの筋肉坊主のすぐ後を追いかけりゃとりあえずモンスターは寄ってこねえ。このままじゃ五千エリンの報酬がどんどん減っちまうぞ!」
「あの坊さん、見つからずに移動できるとか言ってへんかったか?坊主が嘘ついたらあかんやろ」
「畜生!追いかけてくるオーガ共から無事に逃げられた後なのに……」
「絶対にあいつらを見失うなよ。この先のモンスターはマジでヤバいからな」
「くそ、酒が回らないように酔い止めの毒消し飲まなきゃなんねえぞ」
口々にぼやきながら、必死に追いかけるゴラン一行であった。
私は森の木々の間をを物凄いスピードで跳び移っていく。
新たに得た〈地形探査〉と〈植物探査〉のおかげで森の構造が頭の中に流れ込み、次にどう動けば良いか自然に解るのだ。
けれど……
「ウヒャァー!死ぬ死ぬ死んじゃうー!あんなのに刺されたら死んじゃうって!」
モンスターの縄張りまでは解らなかった。
私は今蜂の群れに追いかけられています。それもカラス位に大きな蜂の群れに。
ジャイアントビー。その果物ナイフ位大きな毒針は強力な麻痺毒を持ち、集団で行動する森のハンターである。うっかり巣の近くを通り過ぎた私に怒って追いかけてきました。
スピードが出すぎたこの状態を、自力で止める方法は解らなかった。
もうほとんど前に向かって落下しているような状態なのだ。グリンウイップも大木に衝突しないように方向や角度を調整するのに精一杯で、減速やブレーキまで手が回らないし、無理矢理止めると蔓が切れてしまって事故るのは目に見えてる。今は昼間で私のステータスは貧弱なのだ。一発で死亡してしまう。
「ワダジガバガデジター!ダレガダズゲデー!……ん?」
風圧で泣き言も満足に言えない私の脳裏に、〈植物探査〉さんから貴重な情報が流れてくる。
もうすぐ森を抜けるらしい。
ならば!っと名案が閃く。
森を抜けた瞬間に角度を調節して天高く飛び上がるのだ。後は〈双頭龍の旋風爪〉で落下速度を弱めることが出来れば死なずに済む。
この技は〈闘気法〉を使うので今のステータスでは一回しか使えないがタイミングさえ気をつければ何とかなるだろう。
そんなことを考えてる間に、木々の向こうに青空が見えてくる。
ここっ!
最後の木の枝に巻き付けた蔓を離すタイミングを遅らせ、私は今、天空へと舞い上がる。
空は何処までも高く高く、吸い込まれそうな青空だった。私は大空に向かって落ちていくような錯覚を覚える。
上昇が止まり、今度は下に落ち始める。私はそこで初めて地上を見下ろす。
谷は何処までも深く深く、吸い込まれそうな深さだった。私は谷底に向かって落ちていくような錯覚を覚える……って錯覚じゃないよ!今まさに落っこちてるよ!
森の中に深く大きな谷が有り、私はそのちょうど真ん中に勢いよく飛び上がったのだった。〈地形探査〉も覚えたばかりなので熟練度が低く、効果範囲が狭くて解らなかった。〈双頭龍の旋風爪〉を使っても両岸まではとても届かないし、これだけ深いと落下速度が付きすぎて一回しか使えない〈旋風爪〉も効果無し。
絶・体・絶・命!
「誰か、誰か嘘だと言ってー!こんな死に方間抜け過ぎるー!これは悪い夢よー!って夢だったわー!」
私の叫びは、大自然の森の中にこだましたのであった。
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美夜 レベル6
種族
〔半吸血鬼〕
称号
〔■■■の種子との共生者〕 〔棒術使い〕
〔体術使い〕
〔熟練の料理人〕
〔F級冒険者〕
アビリティ
〈暗闇下ステータスアップ〉
〈暗闇下HP回復〉
〈大地属性〉
〈地形操作3〉
〈闇属性1 〉
〈魔性の魅了〉
〈植物操作5〉
〈陽光下ステータス小ダウン〉
〈陽光下HP半減、MP小回復〉
〈火属性大ダウン〉
〈光属性小ダウン〉
〈回復効果半減〉
〈教会利用不可〉
〈金属装備不可〉
〈棒攻撃力アップ〉
〈素手攻撃力アップ〉
〈調理許可証〉
〈幸腹〉
スキル
〔半吸血鬼2〕
〈吸血〉
〈夜目〉
〔棒術使い4 〕
〈双龍打ち〉
〈回し〉
〈螺旋突き〉
〔体術使い2〕
〈一本背負い〉
〔植物操作6〕
〈グリンウイップ〉
〈木の刃スラッシュ〉
〈リーフシールド〉
〈草薙ぎブレード〉
〈絆草膏〉
〈ローズウイップ〉
〔地形操作3〕
〈足落とし〉
〈大地の牙〉
〈ぬりかべ召喚〉
〔料理上手〕
〈加熱促進〉
〔料理人〕
〈毒性除去〉
〈栄養促進〉
〈食材の知識〉
〔熟練の料理人〕
〈精神負荷耐性〉
〈素材の声〉
〔F級冒険者〕
〈危険区域立入許可証〉
〈地形探査〉
〈幽霊探査〉
〈植物探査〉
〈食材探査〉
[コンボ技]/
〈双連牙〉
〈グリンウイップ〉+〈吸血〉+〈足落とし〉+〈一本背負い〉+〈大地の牙〉
〈双頭龍の六連牙〉
〈闘気法〉+〈双龍打ち〉+〈双龍打ち〉+〈双龍打ち〉
〈双頭龍の旋風爪〉
〈闘気法〉+〈回し〉+〈回し〉+〈回し〉
〈双頭龍の旋風連牙爪〉
〈双頭龍の旋風爪〉+〈双頭龍の旋風爪〉
〈螺旋緑の一鬼(らせんりょくのひとつき)〉
〈グリンウイップ〉+〈ローズウイップ〉+〈闘気法〉+〈螺旋突き〉+〈吸血〉
(コンボが1つ繋がる毎に0.2 倍のダメージが追加されていきます)
〈HP〉 98/196
〈MP〉 110 /110
〈力〉 10/15
〈素早さ〉 8/13
〈体力〉 12/18
〈技量〉 10/10
〈魔力〉 11/11
〈知力〉 5/5
〈精神力〉 9/9
〈魅力〉 5/5
〈幸運〉 3/3
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彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
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※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
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