カースブレイカーズ 〜美夜ちゃんは呪われた幻夢世界をひっくり返す!〜

ユキマサ

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第二十五夜  走馬闘の戦い

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 走れゴラン。
 ゴランは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の魔王を除かねばならぬと決意した。
 ……私は、今宵、殺される。殺されるために走るのだ。身代わりの友を救うために走るのだ。魔王の奸佞邪知を打ち破る為に走るのだ。走らねばならぬ。そうして、私は殺される。若い時から名誉を守れ。さらば、ふるさと。……

「美夜ニャン?さっきから何をブツブツ不吉なこと呟いてるニャ?」

「いや、走ってるゴランを見てたら、『走れメロス』の一文を思い出しちゃって、つい」
「なんで、よりによってその一文をピックアップするニャ!」

 リッカが最もなツッコミを入れるが、仕方ないじゃないの。あのゴランが、魔枝螺の大群に一人で突っ込んでいるんだから。あのゴランが。

「マーレさん、今のうちに逃げましょう。ゴランの犠牲を無駄にしちゃいけません」

「犠牲って言っちゃたニャ?」

 私が降した冷静かつ涙をのんだ非情な決断に、「待った」をかける声が挙がる。

「まあ、待っとき。オモロイもん観られるから」

 そういうネルフの指差す先には、今にも魔枝螺の一体とぶつかるゴランの姿が。

「うりゃ!」

 あほう!そんな普通の飛び蹴りでどうにかなる相手じゃない……

 べきぃ!!

 ……って、枯木がへし折れるような音と共に、魔枝螺の相撲取り程もある太い胴体にヒビが入り後ろに弾き飛ばした! 

「「「「うそん?」」」」

 私、リッカ、ミャウル、マーレさん四人の声が見事にハモる。

「おりゃ!そりゃ!たりゃ!」

 あまり格好良くない掛け声と共に振るわれる蹴りが、拳が、ランスの一振りが魔枝螺の枝をへし折りながら遂には倒してしまう。ゴランは当然のように無傷だ。

「なにあれ?ゴランて本当はあんなに強かったの?」

 そういえば、ゴランが戦ってるのを観るのはこれが初めてだ。日頃の軽い言動や、パーティメンバーの扱いの酷さから大したことないと勝手に決めつけていた。
 でも、明らかにレンバさんより強い。これは一体?

「まあ、あの魔喰凱馬の鎧は装備必要レベルが30で、更に各ステータスをアップさせるからなあ。あれくらい当然やろ」

「必要レベル30ぅ?! 」

 このゲーム世界のルールに、装備品にはそれに見合う実力が必要だというものがある。
 ダンジョンを攻略した者だけがボスがドロップした(呪いが解けて元に戻った)アイテムを装備出来たりする訳だが、これだと当然、レベルの高いパーティーに連れて行ってもらって、ほとんど何もせずに伝説の武器を装備する低レベルプレイヤーを量産する寄生プレイを許してしまう。
 そんなもん、真面目に努力してレベルを上げ、苦労してダンジョン攻略しているプレイヤーからすれば業腹である。
 それを防ぐために、ステータスやレベルがその武具の基準値に達していないと、扱えない様に設定している筈なのだが、確かゴランのレベルは15前後、明らかにゴランはそのルールを無視しているのだ。

「そりゃ、自前で造った装備を扱えん方がおかしいやろ」

 何故かドヤ顔で宣うネルフさん。
 なるほど、そうか。あの魔喰凱馬の鎧も、ペガサスブーツも、ユニコーンランスも、モンスター化したゴラン自身から甲殻を剥ぎ取り、翼をもぎ取り、角をへし折って造られた物だったのだ!
 そんな身を削って(比喩ではない)造られた武具を当の本人が扱えるのは至極当然の事!
 前回、暴走して打ち倒された魔喰凱馬(ゴラン)の外装を喜々として剥ぎ取っているのを見てちょっと引いたが、それもこの鎧を造るためだったのだ。なかなか仲間思いのパーティではないか。いや、多分、きっと。
 見れば、他の女性陣も目に涙を浮かべている。
 そう!私達は今、伝説を目にしているのだ。不憫な扱いを受けていた男が自分自身の実力で光り輝く瞬間を!

「皆!ゴランを力一杯応援してあげましょう!」

 私の声がけに、女性陣は大きく頷くのだった。




「頑張るぇぇ!ゴラァァン!」

 私達女性陣の声援に、ゴランはこっちを向いて腕を大きく掲げる……って、カッコつけるなバカ!後ろから魔枝螺が三体迫ってるよ!

「ユニコーン流星槍!」

 なんか危険な技名を叫びながら、一秒間に百発を超えるかのような高速の槍の突きが、三体の魔枝螺を穴だらけにして吹き飛ばす。
 馬鹿野郎。ハラハラさせるな!二つの意味で。
 だが、まだピンチは続くのだ。こちらに向かっていた魔枝螺が全てゴランに襲いかかって行くのだから。
 だが……

「ペガサスギャロップ!」

 ペガサスブーツによる高速の連続蹴りで、残った数体の魔枝螺を文字通り木端微塵にしてしまう。

「このまま一気に行くぜ!」

 声を上げながら、ものすごいスピードで駆け出した。
 その向かう先は、ジャガマルクさん達が戦ってる第二陣の戦場であり、その先には当然、ボスキャラの誤神木が鎮座している。
 その誤神木の枝がザワザワと大きく揺れる。
 おそらく何らかの指令だったのだろう。それまで優勢に攻めており、こちらのモンスターやジャガマルクさん達にトドメを刺そうとしていた魔枝螺達が全員ピタリと停止して、一斉にゴランに向かって走り出す。
 正に四方八方、そして空中からも同時に襲いかかったのだ!
 流石にこれは不味いか、と思われたが、

「マクガイバー!ローリングクラッシュ!」

 なんか、激しく回転しながらゴランが魔枝螺の群れに突っ込むと、魔枝螺達が大きく仰け反り、天を仰ぎながら真上に吹き飛んでいって粉砕される。
 あ~、この敵キャラのやられ方、昔、某漫画で良く見たわ。
 十数体の誤神木を葬り去ると、そのまま後ろも見ずに走り去る。
 そして、誤神木の手前で大ジャンプ!
 ペガサスブーツの能力なのだろうか、五メートル以上高く跳び上がると、空中を蹴り、物凄い勢いで誤神木に向かって急降下!

「ペガサス彗星槍!」

 そのギリッギリな技名の通りに、自身を彗星に変えて誤神木へと槍を構えて突っ込んだ!

 ズガガァン!

 激しい衝突音と衝撃が、遠く離れたこちらまで伝わってくる。
 見れば、誤神木の幹の中央に、ユニコーンランスを深々と突き刺したゴランがいた。

 ピキッ!ピキピキピキ……

 そんな音とともに、縦に亀裂が走る。亀裂はどんどん伸びていき、根本から大木の中央辺りまで十メートル以上深い傷を負わせたのだ。

「やったぜ!ざまあみろ」

 戦場を一気に駆け抜け、魔枝螺の群れ三十体以上を打ち倒して全滅の危機をひっくり返し、誤神木に強烈なクリティカルヒットを打ち込んだ英雄、ゴランが大きく叫ぶ。
 
 バキッ!バキバキバキッ……

 激しい音を立てながら、誤神木がゆっくりと左後方へと傾いていく。
 その場の誰もが勝利を確信したその瞬間……

 ズシン!

「あれぇぇぇ~~?」

 情けない声を上げながら、英雄ゴランが空中高く飛ばされるが、そんなことを心配する者は誰もいない。もっととんでもない事態がが目の前に起こっているのだから。

 誤神木が右足を踏み出して、踏ん張っている。

 いや、何を言っているのか理解らないと思うが、ありのままを説明するとそうとしか言えないのだ。
 最初は、ゴランが入れた亀裂を境に右半分が根本から浮き上がり、大木全体が左後方に傾いていたのだが、突如、右半分……いやもう右足と言っていいだろう部分を自身の根を引きちぎりながら前に突き出し、あれほどコランダさんが傷つけるのに苦労していた硬い幹が、まるで膝を曲げるように柔らかく途中で湾曲しながら踏ん張ったのだ。
 その過程でゴランが吹っ飛ばされたのだが、今となっては些細なこと。
 今度は左足に当たる部分の根を引きちぎりながら、もう一歩前に進もうとしているのだから。
 終わると思っていた戦闘は、今新たな局面を迎えていた。



 時間は少し逆戻る。
 ゴランに魔枝螺達を破竹の勢いで打ち倒されて、誤神木はアレが非常に危険だと判断した。
 時間稼ぎに残りの魔枝螺を急遽足止めに向かわせる。敵であるモンスター共にトドメは刺せなかったが、順番を先送りするだけで問題はない。あの槍を持った男を足止めしている間に、もっと強力な魔枝螺を生み出すのだ。先程、魔枝螺を一斉に生み出したので残り魔力は少ないが、こちらは大地の龍脈から無限の魔力を取り込めるのだから何も問題はない。
 だが、問題が生じてしまった。それも二つも。
 一つは槍を持った男が、予想以上に強く、あろうことか瞬く間に20体もの魔枝螺の群れを一掃し、こちらにも攻撃をしようとしていること。
 そしてもう一つは、大地から魔力が吸い取れないことだ。有りえないことに龍脈の力が突然途絶えてしまった。
 誤神木は焦った。意思と使命を与えられてから、初めて狼狽した。
 慌てて原因を探る。龍脈に意識を乗せ逆探知すると、意外にもすぐ近くに原因があった。
 そこは、煙で自分を妨害していた女達がいる場所だ。
 そのすぐ後方に深い、とても深い穴が掘られており、その穴の底にいる何故か上半身だけが地面から生えている男が一人で龍脈の力の流れを断ち切っているのを誤神木は感じ取った。
 だが、そんなことは有り得ない。不可能だ。と誤神木は考える。たった一人で膨大な量の龍脈の流れを塞き止めるなど、大河の流れを身一つで押し止めようとするような暴挙なのだ。そんなこと出来る人間などいるはずが……

「ワーハッハッ!やっと気づいたか。嬉しいねぇ」

 その何者かが陽気に誤神木に龍脈を通して語りかけてくる。龍脈に紛れ込ませた誤神木の意識に気付いたであろうその男は、敵愾心などは感じられず気軽に自己紹介を始めた。

「拙僧の名はショウ・ブハン。皆からはオショウと呼ばれ慕われておる。見ての通りの旅の僧侶よ。この地を見守る神木に相見えたことに感謝の意を表そう」
 
 美夜がそこにいたなら、「誰が慕われているって?」とか「何が見ての通りなのよ?」とツッコミを入れそうなことを、オショウは呑み友達を相手にするように笑って誤神木に語りかける。

「いや~、穴ぐらの中で一人で居るのは寂しくてなあ。ちょっくら話し相手になってくれんかね。ハーッハッ八!」

「ふざけるな。貴様。龍脈の力を渡せ!」

 誤神木は攻撃の意を乗せ思念を叩き付ける。現在、誤神木とオショウは龍脈を通じて意識が繋がっており、これまでのオショウの言葉もテレパシーのようなもので、時間など一秒も経っていない。そんな無防備に近い状態で数千年を生き抜いた誤神木の攻撃的な念を受ければ、通常の人間の意識など一瞬で破壊されてしまうだろう。

「そうもいかん。これが拙僧の役目でな。ハーハッハッハ!」

 そんな攻撃的な念など軽く笑い飛ばすオショウ。やはり通常の人間ではなかったようだ。
 
「のう、誤神木殿。一体何があった」

 攻撃を受けたことなど無かったかのように、オショウが問いかける。だが、その口調は先程までの明るく軽いものではなく、様々な難関辛苦を乗り越えてきた漢の落ち着いた言葉だった。

「お主のことは龍脈に残った記録を読んだり、アカリ殿に頼んでこの辺りの妖精から聴いて調べてもらったが、ごく最近まで、この辺りの動物や妖精達からも慕われていた存在だったではないか。それが何故、突然豹変してしまったのだ?」

 龍脈の流れを塞き止めるまで、別にオショウはヒマしていたわけではない。
 美夜達が攻撃を開始すると共に、龍脈に直接干渉しやすくするため、地形操作で何百メートルもの縦穴を誤神木に気付かれぬように掘り進んでいた。
 ネルフが美夜の目をくすねて縦穴に放り込んでくれるヤキトリを頬張りながら、龍脈への接触点に辿り着いたオショウは、ネルフとの連絡役になってくれている火炎揚羽の妖精のアカリに誤神木のことを調べてもらうように頼み、自分も大地に記憶されている情報を読み取り、様々な事を知った。
 龍脈に残る記録によると、誤神木はこの辺りの森の長老みたいなものだった。
 その枝から舞い落ちる葉は、傷を癒やし病を治す優れた薬であり、四季を問わず実る果実は、飢えた動物達の命を救った。
 そうして天寿を全うした動物達は、その樹の根の側に穴を掘り終の棲家として安らかな眠りに就くのだった。
 そんな穏やかで優しい日々が突然終わりを告げる。
 初めは木の実や草を食べて生きている、小鳥やウサギなどの小動物が弱っていった。そして弱って動けない小動物を容易く捉えて食べた肉食動物や魔獣も同じように弱ってしまう。
 身体が食べ物を受けつけないのだ。
 瑞々しい草や、甘味をたっぷり含んだ果実も、口に入れた途端に耐え難い異臭を放つ腐った味に感じてしまう。理性が危険を感じ吐き出そうとするが、食わねば死ぬと本能が訴え、無理矢理嚥下する。しかし、食べたものは何故か栄養とはならず、飢えが、いや〈餓鬼地獄〉の呪いが拡がっていった。
 そんな飢えに苦しむ動物達の鼻に、遠くから甘い匂いが漂ってくる。
 飢えた動物達は救いを求めて匂いの方へ進んで行く。
 この先は長老の樹がある方だ。と動物たちは理解する。
 あの長老の樹の葉ならばこの呪いも解いてくれるに違いない。
 あの甘い木の実ならば、きっと喉を通るに違いないと希望を込めて進んでいく。
 そうして進んだ彼らの前に、突如として大木が現れる。
 唐突に森が途切れ、荒れた荒野の真ん中にその大樹が一本だけ立っていたのだ。
 以前、大樹の周りにあった木々も、草花も何も無くなっていた。
 いや、何もない訳ではない。死骸が、動物たちの干からびた死骸がその大樹の周囲を埋め尽くしている。
 動物たちは危険を感じてそこから離れようとするが、もう遅かった。鋭く尖った根が地中から突き出て動物たちを串刺にする。根は養分を吸い取り、たちまち哀れな犠牲者を干からびせ、その場に打ち捨てるのだった。
 動物たちは死の間際に悟る。全ては長老の樹の罠だったのだ。
 この辺り一帯に広がる地下水脈に呪いを流し、広範囲の植物を〈餓鬼地獄〉の呪いで汚染する。それを食べた草食動物、肉食動物、そしてモンスターへと食物連鎖を介して呪いは広まり、最後に匂いにおびき寄せられて、長老の木に全員吸収されるのだと。
 そうして長老の樹は……いや、誤神木は次の獲物を静かに待つ。甘い匂いを放ちながら。
 それが、大地に残った記録。オショウはそれを龍脈から読み取ったのだ。そうして知り得た情報のイメージを一気に誤神木に証明として叩き付ける。だが、そんな高難度な芸当が一介の僧侶に出来るものではないのだが……

「何がお主をそのように変えてしまったまでは分からなかった。そこまで貪欲に数多くの生命を吸い取って何とする?いくらお主が巨大でもさすがにちと食い過ぎじゃろう」

 やはりこの男は危険だと誤神木は判断する。万が一にも、全てを見抜かれ、計画を邪魔される前に早くこの男から龍脈の力を取り戻さねば……そうすれば、さらに強さを増した魔枝螺を大量に作り出し、こいつらを全滅させて、一刻も早くあの方に……
 そこまで考えを巡らせた御神木に、オショウはさらなる爆弾を落とす。

「お主の天辺に実ってる二つの果実を誰に捧げるのだ?」

 言い当てられた隠していたはずの真実に、誤神木は大いに驚愕する。そして、その時こそが、ゴランが彗星となって誤神木に突っ込んだ瞬間であった。

 ズガガァン!

 一瞬、ほんの一瞬の意識の空白だった。御神木は誰も知るはずのない己が目的を見事に言い当てた地中の怪僧に意識を集中し、地上の戰いから目を逸らしてしまった。
 そのため、防御に意識を集中するのが遅れ、ゴランの渾身の一撃をまともに食らってしまったのだ。もし防御に集中していたら、先に攻撃した三人のように表皮までで耐え抜いていただろう。だが、ゴランの一撃は幹に大きな亀裂を入れる程のものだった。

「おしょう。ウマク、イッタ?」

 火の粉がヒラヒラと縦穴を舞い降りてきた。いや、火の粉ではない。火の蝶、火炎揚羽の妖精アカリだ。イタズラが上手くいった幼女のように、無邪気にクスクス笑いながら、オショウの頭の上に降り立った。

「ハーッハッハッハ!いや、バッチリ上手くいったわい!アカリ殿が地上の様子を教えてくれたおかげよ。最高のタイミングでスキを作れたわ」

 大笑する筋肉僧侶のオッサンと、怪しく笑う小妖精の少女がハイタッチを交わす。出会って間もなく、種族も体格も大きく違うのに、長い時を共に過ごした無二の親友のようだ。

「き、貴様……まさか、あの刹那の中でわざと攻撃に合わせて会話を誘導したというのか」

「ハッハッハ、さすがにアカリ殿とお主の二方向同時念話はきつかったわい。じゃが、アカリ殿の目を通して地上の様子を見れたし、上空高くまで昇ってくれたおかげで、誤神木殿の天辺に隠していた、もの凄い力を秘めた二つの果実も見つけられたと言うわけよ」

 冗談ではない、と誤神木は歯噛みする。念話を二つ同時に行っていただと?龍脈の力を押し留めたままの状態でか!そんなマネ人間に……いや、我にだって無理だ。
 この男は我以上のバケモノだ。
 誤神木は瞬時に理解する。このままでは敗北すると。だが、強く大勢の魔枝螺を生み出す魔力はもうない。どうやって離れた所にいる地中の怪僧や槍を持った戦士、そして料理や調理の煙などというふざけた方法で、我が能力を封じたあの女を殺せばいいのか。せめて移動出来れば……

「フ、フハハハハ!ファーッハッハッハ!」

「ム?拙僧の笑い上戸が移ったのかな?だが、もう少し口を開けて、こうハーハッ八と……」

「やかましい!だが礼を言うぞ。貴様にではなく、我に大きな傷を付けたあの男にな」

 ゴゴゴゴ……と大地が揺れる。今度はオショウが知覚し驚愕する番だった。誤神木が縦に裂けた亀裂を利用して足を作り出し、大きく一歩踏み出すなど完全に予想外だったのだ。

「股のように傷を付けられて、やっと思い至ったわ。我自身を魔枝螺と化しそちらへ行けば良いとな。いくら貴様とて直ぐにはそこを動けまい。待っておれい、全員、我が直接殺してくれるわ」

 再び大地が揺れ、誤神木の声が途絶えた。残っていた足を踏み出し、完全に龍脈から離れたので念話が切れたのだ。あまりの展開にオショウとアカリは呆然とする。

「ウゴイチャッタネ」

「ハッ……ハッハッ……ハア。こりゃまいったのう」

 オショウの引きつった笑いも最後には溜め息へと変わる。今頃地上は大混乱だろう。何せ大巨人となった誤神木が、こちらへ向かっているのだ。

「ココニイタラ、アブナイ。ハヤクハナレヨ?」

「ハッハッハ。逃げたいのはやまやまだが、あやつが言った通り、今ここを離れると、堰き止めていた龍脈の力が一気に拡がって、ここら一帯大惨事になってしまうのでな」

 いや、参った。と頭をポンポン叩くオショウ。そんなお気楽な調子の今でも、人の身では耐えられない程の龍脈の力を止めているのだ。その証拠に背中に汗がびっしりと流れている。

「まあ、誤神木殿が離れた今のうちに、龍脈から呪いを取り除いて、〈餓鬼地獄〉の呪いを一掃してやるかのう。ハーッハッハ」

 さらにとんでもないことを言い出したオショウを、妖精のアカリは信じられないという目で見つめる。この人間は規格外すぎる。

「という訳でだ。アカリ殿にはここに残って、拙僧の手助けをしてもらいたい」

「エッ?デモ……」

 アカリは迷った。地上では自分の最愛の人がピンチなのだ。一刻も早く側に行きたい。それに、ただの小さな妖精である自分に、龍脈という大きすぎる力に干渉など出来るわけがないのだ。ここにいても自分に何が出来るというのか?
 そう判断して、あっさり断って地上に戻ろうとしたのだが……

「男というものは、押してばかりじゃ逃げてしまうものよ」

 ボソリと呟いたオショウの言葉に、ピタリと止まる。

「エッ?」

 振り返ると、何やら納得したようなな面持ちで目を閉じ、腕を組んでウンウンうなずいているオショウがいた。

「ナニソレ!ドウイウコト?」

 気になってオショウに詰め寄るアカリ。彼女は気付いていない。以前、美夜と揉めた神官達や、誤神木と同じように会話で誘導されようとしていることに。

「ム、聞こえてしまったか?いやな、ネルフ殿みたいな掴みどころの無い御仁は、女子の方から迫っても、のらりくらりとかわしてしまうものよ」

 アカリは目を見張った。まさにその通りなのだ。どうして分かったのだろう?

「まあ、周囲の目や種族の違いという問題は多々あるが、あの御仁はそんなことを気にするような度量の小さな男ではなかろう?」

 大好きな人を褒められて、アカリはウンウンと頷く。この男は正しく人を見る目があるではないか、とあっさり信用する。もっともらしく当たり障りのないことを言い当てる、占い師を信用する客のように。

「だが!一向にそれ以上関係が進まないのはアカリ殿、お主の炎のように押しまくる熱愛ぶりにある!」

 突然ビシッとアカリを指差し言い放つオショウ。アカリは狼狽した。何でもお見通しのオショウが言うのだ。きっとそうに違いない。

「ネルフ殿もお主のことを好ましく思っておるのは間違いない。しかしな、男というものは放っといても離れないという安心感があると、結婚や子作りといった責任が伴うものに尻込みするものなのだ」

 何処か実感のこもった力強い主張に、ガーンと頭に強い衝撃を受けた感じがするアカリちゃん。熱烈にアピールすればいつか愛を受け入れてくれると思ったこの100年余りの行為はいったい……

 落ち込む純粋な少女に悪魔……いや、オショウが優しくささやく。

「男が女にプロポーズする時の思いのほとんどはな、この美しい女を他の男に渡したくはない。俺だけのものにしたいというものなのだよ。では、どうすればいいか分かるだろう?」

 アカリはしばらく考え、自信なさそうに答えを出す。出してしまった。

「ねるふサマカラ、チョット……ハナレル?」

「その通り!押して駄目なら引いてみろの言葉通りに、少し他の男に懐いて素っ気なくされると、あのネルフ殿も危機感を覚えること間違いなし!」

 力強く頷くオショウ。自分で出した答えが正解だと言われ、すっかりそれが唯一絶対の方法だと思い込んでしまった。

「ホントカ?デモ、ソンナコト、シテクレルヤツ、イナイ」

 影馬車隊の仲間しか人間の男の知り合いはいないが、協力を頼んでもネルフとの信頼関係を優先して断られるだろうし、協力してもらってもあまりに不自然だ。
 もし、他の妖精と一緒になるとネルフに言ったら、それが一番良いと身を引かれるような気がする。
 しょんぼりするアカリに、オショウがニッカリ笑って手を差し伸べる。

「拙僧で良ければ協力しよう」

「エッ?デモ、ソーリョ、レンアイ、キンシ」

 僧侶や神官は神を信仰し仕える職業だ。信仰心の妨げになるために恋愛禁止を掲げている宗派が多いことぐらい、アカリだって知っている。もちろん、僧侶や神官も人間なので、恋に落ちたり結婚する者もいるのだが、その道を選んだ者はそれ以降実力が上がるのが極端に遅くなるらしい。。ましてや、目の前の男は信じられない程の実力を持っている。よほどの厳しい修練を積んで、神にその身を捧げなければそんな力は身につかないだろう。そんな男がこんな小さな妖精の少女と恋仲になるなど、不自然極まりないのだ。
 だが、そんな心配などオショウは軽く笑い飛ばした。

「なーに、拙僧は異教宣教師などと呼ばれる破戒僧よ。妖精の女子と恋仲になっても不思議ではなかろう。それにな……」

 オショウは説明する。
 死の危険が迫りくる暗い穴の中に、取り残された男女二人。
 命懸けで強大な呪いを解こうとする男と、必死にそれを支える少女。
 いつしか、二人の間には愛が芽生えるが、少女には昔から思いを寄せる人が。
 けれど、想い人はなかなか振り向いてくれず、少女は男に心を寄せていく。
 次第に距離が離れていく少女に、想い人は自分の真実の想いに気付く。
 果たして、少女の恋の行方は!?

「こんな感じのシナリオなら無理ないと思うが、いかがかな?」

「キャーッ、キャーッ、キャーッ!」

 オショウが語った、ベッタベタな少女漫画のノリのような展開に身悶えするアカリちゃん。自分がそんな物語のヒロインを演じるのが嬉し恥ずかしいのだろう。背中の羽や身を包む炎が激しく燃え盛っている。もうヤル気マンマンだった。
 ……ヒロインが小さな妖精の女の子なのは良いとして、男優役が濃いオッサン二人というのがミスマッチなのだが。

「おしょう、イヤ、ししょうト、ヨバセテ、クダサイ」

 まるで弟子入りを希望するような、真剣な眼差しで頼み込むアカリの手に、人差し指をスッと差し出すオショウ。

「拙僧の指導は厳しいぞ。ついてこれるか?しかし、まずはこの呪いを解くことが出来なければ何も始まらんぞ」

「ツイテ、イキマス。ししょう!」

 熱血スポ根のノリで、オショウの指を強く握るアカリ。
 そんな真剣な彼女を見て、オショウは心の内で呟く。

(あれ?口からでまかせで乗り切ったが、おかしなことになってしまったのう)

 何も知らない少女を言葉巧みに誘導して、いかがわしい契約で怪しい芸能界入りさせたスカウトマンのような悪辣な真似をしておきながら、本音はこれである。

(しかし、あのまま地上にやっても、間違いなく誤神木の攻撃に巻き込まれて死んでおったからのう。危険だからと止めても、ネルフ殿を心配して無理矢理行っただろうし)
 
 気合が入りまくってハイスピードで飛び回るアカリを眺めながら、ヤレヤレとオショウは溜息をつく。

(ま、言ってしまったものは仕方ないのう。あのネルフ殿をどこまで騙し通せるかは、アカリ殿の演技力次第だし、面白くなりそうだから皆死ぬでないぞ)

 死闘を繰り広げているであろう地上を見上げて、オショウは己の神に祈るのであった。





 舞台は再び地上に戻る。
 いきなり空中にペイッと跳ね上げられたゴランは、ペガサスブーツで空中に留まって、目と口を大きく開いてこっちに振り向き、ランスであれを指し示している。
 多分、「何だよ?あれ!」と言ってるんだろうけど、こっちだってそんなこと分かるわけない。
 誤神木が人型になって歩き出すなんて。
 太い幹はゴランが付けた縦長の傷を基に両足となり、足元には巨大な根が拡がって、その巨体をしっかりと支えている。
 枝が寄り集まり巨大な二本の腕と化した。手に当たる部分が異様に大きく、指が長い。
 頭に当たる部分は細い枝が集まってが球状になっているのだろうか?葉が髪の毛のように生い茂り、背中まで覆っている。
 ん?一瞬、球状の枝の隙間から赤い光が二つ見えた気がするが、あれが眼なのだろうか?
 そんな異様な巨人となった誤神木がズシンズシンとこちらに向かって歩いてくるのだ。どう考えても、レベル10前後のパーティが勝てるような相手ではない。正直サッサと逃げ出したいが、多分無理だろう。
 こうなったら、私達に出来ることは只一つ。ゴランにもう一度突っ込んでもらうように応援すること。

「「「「頑張るぇぇぇ!ゴラーン!」」」」

「やかましいわ!あんなのどうしろっていうんだよ!」

 先程とは打って変わって、私達女性陣の声援を否定するゴラン。
 うーむ、すっかり怖気づいているわね。無理もないけど。
 だが、先に動いたのは誤神木の方だった。
 大きく右腕の部分を後ろに回し、背中にある枝葉を、その大きすぎる手一杯にむしり取る。
 ……って、ちょっと、まさか!
 私はマーレさんの前に移動し、棒を回転させ〈双頭龍の旋風爪〉の構えを取る。

「ウイングガード!」
 
 ミャウルが羽根を広げてマーレさんを包みガードする。リッカは両手にクナイを、ネルフさんは札を構えている。さすが、皆プロの冒険者。危険を察知して防御の体勢を取ったのだ。

「え?え?え?」

 どこぞのプロの冒険者のリーダー様が、どうしたらいいか分からずにオタオタしてますけど……
 
 ブオン!

 豪風一扇!予想通りに、誤神木が掴んでいた多量の枝葉をこっちに向かってぶん投げた!
 その葉は鋭い刃となり、枝は矢となってもの凄い勢いで、空中に浮かぶゴランに、そしてその後ろの丘にいる私達に向かって飛んで来る。
 その数、五百以上!とても避けられるものじゃない。
 最初の犠牲者はゴラン。何もできずに棒立ちしてる。

「何やってんの!このバカ馬!」

 私の叫びが虚しく響いた。
 

 

 眼の前に迫りくる木の枝や葉っぱを見ながら、ゴランは「あ、これ死んだ」などと呑気に考えていた。
 木の葉は鋭利な刃となっているが、この鎧は切り裂けまい。だが、数が多すぎる。避けることも打ち払うことも無理だ。
 木の枝は鋭く尖っており、あの勢いだとこの鎧でも防げないかもしれない。
 俺が倒れたら、そのまま後ろのあいつらに攻撃がいっちまうな。
 思えば、あの美夜って女と出会ってからロクな目に……

「何やってんの!このバカ馬!」

 その叫び声が届いた瞬間!ゴランの脳裏にこれまでの思い出が走馬灯のように駆け巡った!

「オイ!何で俺が馬になって200キロ魔境横断レースなんて走らにゃならんのだ?」
「仕方ないんだな。借金返済の期限が迫ってるんだな。ちなみに、賞金貰えなかったら素材剥ぎ取りコースにそのまま移行するから、頑張るんだな」
 必死の思いで走り抜いたが、入賞できずに素材を容赦なく剥ぎ取られた。

「ホレホレ、もっと踏ん張って!あと百本以上この大横綱カブ引っこ抜かんとアカンのやで」
「ブルルルルッ!(こんな大岩のように巨大で重たいカブ抜けるわけないだろ!)」
 あのクソエルフが大きく育てすぎたカブの収穫に無理矢理駆り出されたっけ。

「女抱いて金が貰えるなんて、最高の仕事やないか」
「馬鹿野郎!種馬になって牝馬とだなんて冗談じゃねえ!まして馬との間に子供なんて絶対に無理だからあああっ!」
 あの時のことは……思い出したくもねえ!

「俺の人(馬)生、昔からあまりに悲しすぎるわ!」

 [条件を満たしました。〈魔喰凱馬〉の固有スキル〈走馬闘〉が発現しました]

 ゴランの意識に何処からか声が聞こえる。

[数秒間、思考速度、反応速度、行動速度が五百倍に引き上げられます。ただし、その後はペナルティが発生し、数日間まともに行動できません。スキルを使用しますか?]

 するに決まってるだろう!このままじゃ全滅だ。後のことなんて知ったことか!





 私が叫んだ瞬間、ゴランに迫っていた枝の矢の群れが一斉に弾け飛んだ!
 いつの間にか、その手にはユニコーンランスではなく、剣……いや、あれは刀を握っている。
 そういえば、ゴランはフンドシを締めていた。それって……
 まとまりかけた考えを慌てて中断する。まだ、全てを防いだ訳ではないのだ。次々と大量に矢衾が襲ってくる!

〈刀風剣技・刃神刀風(とっぷうけんぎ・ばじとうふう)!〉

 ゴランの動きが見えない!?だが、ゴランの繰り出す神速の連続攻撃が巻き起こす風が真空の刃となり、枝葉の群れを両断しているのが分かる。
 そうして、全ての枝葉を叩き斬った後、不意にグラリと脱力し、ゴランはゆっくりと地面に落下していった。

「ゴラン!」

「大丈夫や。ペガサスブーツが守っとる。しかしまさか、〈魔喰凱馬〉の固有スキル〈走馬闘〉を発動させちまうとは、無茶をする」
 

 固有スキルとは、私が装備している宵闇のマントが持つ〈闇の帳〉のようなものだろう。ネルフさんによれば、死の間際に見る走馬灯の内容によって、あらゆる速度が倍増するという、まさに起死回生のスキルだそうだ。そのために、単発技であるはずの〈刃神刀風〉も連続で使用し、木の枝や葉の矢衾を全部切り飛ばすことができたのだ。

「しかし、これでゴランはリタイアや。いぜんピンチに変わりないで。あれ見てや」

 言われてゴランの落ちた辺りを見てみると、そこには何故か一頭の馬がのんきにポックポックと歩いていた。

「え?あの危機感の全くない、バカ顔の馬ってやっぱりゴランなの?誤神木が近づいているのに、逃げようとしないんだけど」

「〈走馬闘〉で思考速度を加速させた反動で混乱状態やな。後、レベル以上の装備を誤魔化して使っとったから、呪われて馬にされたみたいや」

 なんとまあ。でも何度もピンチを救ってくれたのだ。あとは私達で……

「危ニャイ!美夜ニャン!」

 突然突き飛ばされ、よろめく私。
 一体何が、と振り向くと、そこには私を突き飛ばしたリッカの姿が……

 鋭い木の枝に胸を貫かれて、呆然と立っていたのだった。




_____________________________________

すいません。予想以上に時間がかかってしまいました。
    
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