異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)

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2章 森に引きこもってもいいかしら?

13.教会の子供たち3

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 さあ、ご飯が終わったら住む場所をなんとかしましょう。
 ホルストに掛け合ってしばらくソルトと子供たちに部屋を借りたわ。お節介もやり過ぎ? 
 そうね。私もそう思うわ。でもこのままじゃ同じままだわ。すぐにソルトはまた体の不調に苦しむでしょうし、子供たちも飢えていくだけ。少し食べることが出来たからでしょうか、少しだけ顔色が良くなったソルトさんには今日だけでもといって部屋で休んでいて貰うように言いました。ベッドに横になった彼女をみるとすぐに眠りについたようでした。

 何か、何かないかしら。

 裏口から外に出てみると、畑のなれの果てが見えました。畑で何かが採れれば……

 よく見ると、雑草の中にヨモギとドクダミに似たものが見えました。
 ちぎって匂いを嗅ぐと確かにヨモギとドクダミに似ています。
 えっと、エルムに見てもらえばこれが使える物かどうかが分かるでしょう。

 少しお金も使うのだから、その辺の事を知っている人がいなければね。

「イリス、ギルドに行ってエルムに手伝って貰いたいことが有るって言ってきてくれる? 草や木の鑑定もしてもらいたいから、エルムが無理ならそれの出来る人をお願いね」

「コーユ様はここで何をされるのですか?」

「うん……まずはここの草をみてもらってからだわ」

 不安そうなイリスですが、まずは使える手をかんがえないと。
 イリスを急いでギルドに向かわせました。


「おばさん、オレらはどうなるん?」
「おばあさん、僕らで何かできますか?」

 二人の男の子が不安そうにこちらを見ています。
 今から冬が来るこの季節に何が出来るかしら。野菜を植えても育たないでしょうし……
 あれらが使える草である事を祈るわ。ここが元教会の畑なら使えるかもしれないわ。

「今、鑑定が出来る人を呼んだから。するのはその後。手伝うわよね?」

 二人にそういうとこくんと頷いてくれました。
 先程までソルトさんのそばにいた女の子がこちらを見ていってきました。

「アタシにも何かができる?」

「ええ。あなたを頼りにしていますよ。料理は出来るかしら?」

 女の子、ミクリンは少し考えるように下を向いていましたが、はっきりした声で答えました。

「おばあちゃんみたいなのは出来ないけど、教えて貰えるのなら頑張れる」

 やはり女の子の方がしっかりしているわね。では頑張って貰いましょう。
 イリスが戻ってくるまでにすべきことはしてしまいしょう。

 ホルストにここをどれだけ使ってよいか聞きます。見捨てられている教会なので本部から何か言われるまではどう使っても構わないと。
 ふっ。そう、ね。
 確かに何か言われるまでだわ。彼も正式に雇われているわけではないのだもの。
 小屋の事を聞くと、確かに馬小屋だったようです。あの小屋の屋根部分を住めるようにしていたらしいのですが、馬もいなくなり少しずつ壊れていったとか。
 馬がいないのなら壊しても良いのではと思ったのですが、もし本部から人が来た時に困るというのです。
 あれは物置代りにしかならないようですね。
 部屋が、使える部屋がほしいわとつぶやくと、ホルストがあっと声を上げました。

「教会の仕事をするのであれば、住むだけなら部屋が使えます。ただし保証金が要りますが」

「保証金? いいわ。少々なら出すつもりよ。どんな部屋かしら。どんなお仕事なのかしら」

「この教会の修理と管理です。私がやっている手伝いです。でも現金収入にはなりませんが」

「例えば?」

「あのあたりの掃除や修理と神像の掃除、机や椅子の修理などです」

 そういいながら指さしているのは、屋根に近いところや神像のてっぺんです。ああ、足が悪いのであの辺りは難しいのでしょう。
 仕事を探してくれているのが分かります。

「部屋は使用人用の部屋がいくつかあるのでそれを使えば……ただ今は埃だらけですが」

「先ほど借りた部屋は?」

「あれは外から来た方用の物なので。今日はあなた様が宿泊費と同じだけを寄付して頂いたので使えましたが」

 私も毎日金貨一枚は払えませんね。すぐ持っているお金が底をついてしまうわ。

「使用人用の部屋なら掃除をすれば、使えるのね?」

 肯定の頷きを見た私は、ミクリンに二つの部屋を掃除するように言いました。どうして二つかですって?
 男性と女性を分けるためですよ。今は小さくてもすぐに大きくなりますから。今なら二人ずつ使えるでしょう?

 イリスが戻る前に、掃除を済ませてしまいましょう。
 タッツウには桶に水を入れて持ってくるようにいいました。
 セオルには箒を探してくるように言いました。
 ミクリンには先ほどまで着ていた服を持ってきてもらいました。
 それを雑巾代りにしましょう。部屋に入ってみると埃だらけですが、物はほとんど無いのですぐに掃除も終わるはずです。
 三人が部屋に来るまでに、天井部分の埃だけ取ってしまいましょう。
 得意の小さな風の魔法です。ほおら、くるくるくるくる……あら、壁の埃も取れて床のゴミもひとところに集まりましたね。

 セオルが来る頃には風の掃除は二部屋とも終わり、集めた埃を箒と塵取りで集めてすてるだけです。
 タッツウとミクリンが来た時にはそれも終わり、みんなで部屋の作り付けのベッドとクローゼットを拭きあげて終わりました。服を切ってもいいかと聞くとミクリンが自分のワンピースならいいというのでそれを雑巾にしました。どうやらズボンなどは作るのが難しいのでそれに当てをしながら使うのですって。ワンピースはええ、タックやフリルの無いざっくりした作りのもので、それでもあちらこちらに継ぎ当てしてありましたわ。



「コーユ様、どこですかー」

 イリスの声が聞こえます。そんな大声で呼ばなくても聞こえますよ。もう。


 厨房の近くにある使用人部屋ですからね。

 すぐにイリスの所まで行きます。するとそこにはサパンがいました。

「エルムは所用で出かけているのですって。サパンでも鑑定できるから」

「イリス。でもじゃないでしょう。サパン、あなたも鑑定が出来たのね。じゃあ、早速で悪いのだけれども、こっちに来てくれる?」

 ついサパンの手を引いて、裏の畑あとに来ました。あ、イーヴァじゃなかったわ……
 ま、いいわ。サパンも何も言わなかったもの。

「この植物なんだけど、エルブで合ってる?」

「ああ、それはエルブで間違いない」

「毒は無いのよね?」

「薬の基材になるものだからな。毒ではない」

 あ、やっぱり。


「じゃあ、こっちはなんていうの?毒は無いわよね?これも薬の基材になるのかしら?」

 小さな木を指さして聞いた。サパンはじっとそれを見て、葉を一つとると揉んで匂いを嗅いだ。

「これはニッキィだ。これは気付け薬の基材だ。毒は無い」
 そう……

 うんうんと私は頷いて聞いた。

 あとは、あ、あれ!
 白い十字の花を摘んでサパンに見せた。

「これは何? 毒は無いのでしょう?」

 サパンはその花を見るなり嫌そうな顔をした。

「臭い……それはジュウジ草だ。毒は無いが臭い。毒消し草の基材だ」

 だと思ってた。独特の匂いがするもの。でもあっちの世界では十薬っていって医者いらずなのよ。お茶にもなるし。肌荒れや便秘にもいいの。

「サパン、これらってお金になるかしら?」

「あ……なるかな? 依頼書が出ている時なら売れると思う」

 そう考えながら答えてくれる。

 どれも私が使ったことの有るものだわ。じゃあ、これを使った商品なら作れるわね。

 とりあえず、見分けがつくこれらを分けてあの小屋に干しておきましょう。もうすぐ冬だもの。必要になるときは来るはず。

 三人を呼び、二つの植物を見せる。
 ヨモギはミクリンに、タッツウにはジュウジ草を集めて束にするように言った。タッツウはジュウジ草を見てう へぇって言っていたけれど、着替えてからするといって部屋に走って行った。
 セオルには木の皮を剥ぐようにいう。木の幹に縦に横に切れ目を入れてそっとはがすのだ。
 ちぎれてもいいから、なるべく塊になるように指示を出した。
 サパンが男の子を見ていてくれるというので、私は女の子を見ることにしました。
 そしてミクリンがいくつかヨモギの束を作ったところで、彼女にはそれを使ったお茶とお菓子を作って貰う事にした。

 お茶は簡単なの。
 なるべく柔らかい葉を洗い熱湯をかけるだけ。
 あとは美味しい時間を見分ければいいの。
 もう一つはお菓子。日持ちをさせたいのでクッキーみたいなものに練りこみたいものね。
 ただ、砂糖が無いのでどうしようかとも思うの。油も無いし。だからまずは先ほど作った薄焼きのパンに練りこんでみようとおもいます。
 練りこむ前に、湯がいて切り刻んで、すり鉢……あ、すり鉢が無いわ。
 すり鉢が無いので……包丁で出来るだけ小さく刻みました。
 まずは少しだけ試作してみましょう。
 小麦粉に水の代わりにミルクを入れて、刻んだヨモギを少しだけ混ぜて。
 薄焼きのパンみたいに焼いてみました。
 熱々のそれをちぎって口に入れると、ヨモギの香りがして少し気分が落ち着きます。
 ほんの少しだけ苦い気がします。やはり少しだけでも甘味を足さなくてはね。

 後ろで見ていたミクリンに、一口大に千切ったのを試食してもらいました。

「どう? 苦みは気になるかしら?」

 ミクリンは苦みが気になったのか、一口大なのにさらにそれを小さく千切ってから食べていました。

「少しだけ苦いけど、大丈夫食べられる。おばあちゃん、なんでパンの中にこれを入れるの?」

「ん? そうね。ここにはお野菜が少ないでしょう? その代わりになるものを探してみているのよ。私の国ではこの草の葉をお茶やお菓子にしていたの。食べて分かったと思うけど苦みが有るから沢山は食べられないけれども。あとこの葉っぱは薬草なんですって。ポーションの原料の一つになるそうよ」

「えっ? それじゃあ、食べないで誰かに買ってもらう方が良いんじゃないの?」

「そうね。お金にはなるけど、その前にあなた達の健康が先じゃないかと思うのよ。あまり食べて無かったんじゃないの?」

「うん。最近、外に行ったお姉ちゃんからの仕送りが無くなったの。前は少しずつ送ってくれてたんだけど。前は他の人も送ってくれてたけど……最近は無くなって……今は近所の人が持ってきてくれるのを食べてるの」

「そう。大変なのね」

「おばあちゃん、ありがとう。でもね、仕方ないんだよ。もう冬だから。みんなも冬支度をしなきゃいけないから」

「あなたより大きい人はいないの?」

「うん。大きくなるとみんな出て行かなきゃいけないんだよ。自分で食べて行かなきゃ……」

何か決まり事でもあるのかしら?

「男の子はね、冒険者になるの。ギルドで色々仕事を貰うのよ。女の子は料理屋で働いたり、酒場で働くの。お金がたくさん貰えるから。それでね……」

 話始めると、堰を切ったように話が止まりません。出て行った子供たちのこと、ソルト先生の事、ホルストの事、近所のおばさんやおじさんのこと、自分の両親の事……

 話は飛びながら、とにかく色々な事を話します。
 ああ、ソルトさんが病気になってから不安だったことが一度に噴出したみたいね。
 そうね、食べるものもない、これから冬になるというのに薪も無い、家として使っていた小屋ももう限界のような状態で……今までは率先していろいろしてくれていたソルトさんも寝込んでしまって。一番年が上なんだからと、気をはっていたみたいなの。ホルストも色々差し入れをしていたようですが、すでに身銭を切って教会自体を修繕していたため援助するお金は残っていなかったようです。

 ふぅ、と一息をついたみたいなので、先に入れておいたヨモギ茶をカップに注いで差し出しました。
 彼女はそれを両手でぎゅっと握りしめてから、一口飲みました。
 こくんと一口……するとびっくりしたようにこちらを見ます。

「おばあちゃん。これ、すっきりするんだね。おいしい……」

 そのあとカップに入っているお茶をごくごく飲み干していいました。

「何だか元気になった気がする。お話を聞いてくれてありがとう」

 にっこり笑った顔は晴れやかでした。頬に赤みもさして。

 元気? 頬が本当に元気な子みたいに赤みが……。


 あら。もしかして。
 とりあえず、サパンを呼びに行きました。
 お茶と、パンを鑑定してもらいましょう。


 畑からサパンを厨房に呼んで鑑定を頼もうとしたところに、ソルトさんに付いていたイリスがやってきました。
 どうやら彼女は眠ったようです。
 イリスに状態を聞くと、全体的に疲れが溜まっているようで体力も無くなっている感じなんですって。

「分かったわ。サパン、このお茶とパンを鑑定してもらえる?」

 訝しそうにサパンが私を見ますが、調べるのが先と彼を促しました。

 サパンが何やら呟いていましたが……
 ビックリしたかのように大きく目を見開いています。あなた、そんなに大きく目が開けられたのね。知らなかったわ。
 ではなくて、結果が聞きたいわ。


────────────────────────

誤字脱字はまた今度直します。
同じくルビ振りも。
とりあえず、更新をしました。
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