異世界召喚に巻き込まれたおばあちゃん

夏本ゆのす(香柚)

文字の大きさ
41 / 75
番外編

おばあちゃんの知り合い

しおりを挟む
こちらが本当の1章の完結編になるのかもしれないです。 

─────────────────────


 やぁっと、家のなかを片付けて座る事ができました。

 窓を開けて、縁側でぼーっとしていると部屋の中に風が吹き込んできます。
 目の前には畑がずーっと広がってて……

「忍、誰かが来たみたいだ」

「脩さん? 誰かしら? 知ってる?」

「何となくな…… まず、出てみろよ」

「うん。どちらさまー?」



 玄関の方へ声を掛けながら行ってみると、おばあちゃんと同じくらいのご婦人ともう少し若い男の人がいた。

 見たことのない人だ……

「どちらさまで?」

 後ろから脩さんがお客さんに声を掛けた。
 
 後ろに脩さんがいてくれるだけで、ほっとする。

「榎さんのお子様ですか?」

「おばあちゃん? おばあちゃんの知り合いですか?」

「ああ、あなたが幸裕さんのお孫さんの忍さん?」

 私が問いかけると、反対に問いかけてくる。んん?もう!

「どちらさまですか?」

 脩さんか冷静に問いかけてくれたので、少し落ち着いた。
 男の人の方が
 
「あ、すみません。この先の畑をお借りしているものです。えっと、民間団体なんですが、榎さんから畑を提供していただいてて。えっと、亡くなったって聞いて」

 何?この人?
 人が亡くなったからって、あなたに何の関係があるの?

「その…… すみません。突然に」

 私が腹を立てて睨みつけると、黙った。

「DVシェルターのかたですか?」

 脩さんが問いかけてくれる。私はまだ声が出ない。

「あ、そうです。あちらに見える建物を榎さんに提供してもらってて。あと畑を耕す手伝いとか……」

「それで? あなた方は何が言いたいのですか」

「えっと、そのまま貸して……」

 男の人が言い始めて、それを初老の女の人がとめる。

「ごめんなさい。さっき聞いたばかりでごめんなさい。」

 女の人は一度お辞儀をしてから、ひとつ息を吐いた。
 そして、背をちゃんと伸ばしてから深呼吸をするように、両肩をぐっと伸ばしてゆっくり礼をした。

「あちらの畑の一部と建物をお借りしている『時の会』代表の如月と言います。この度は突然の事で……」

「如月さんですね。こちらが榎幸裕さんのお孫さんの忍さんです」

「突然押しかけたりして申し訳ない事をいたしました。すみませんでした」

 女の人がゆっくりした言葉で話してくれるので、少し落ち着いてきた。
 そして、声がこの間の電話の声だと気がついた。

「あなたは先日のお電話のかたですか? おばあちゃんが亡くなったことを伝えようと思ったんですが、すぐ切れてしまって」

 女の人はびっくりしたように、目を見開いた。そして

「ええ、あの電話中に、幸裕さんが亡くなったと聞いたの」

「そうですか……」

 そして、何か決意を固めたような、強い瞳で私に話しかけてきた。

「お願いがあります。あの建物と畑を今まで通り貸してはいただけないでしょうか? もちろん、地代は支払い致します。ご迷惑を掛けるようなことはしませんから」

 何か必死なものを感じた。

「あなた達の活動ってどんなものなんですか?」

「DVに苦しむ妻と暴力にさらされている子供を保護するために動いています」

「女性と子供ですか?」

「ええ。DVの女性はいつの間にか自分が悪い、またはその状況になれてしまう事も多いのです。共依存の問題もありますし。子供も救えるものは少ないのですがそれでも一人でも救いたいんです。幸裕さんが、常にその状況に陥る寸前だったことはご存じでらっしゃいますよね? それでご賛同いただいて……」

「おばあちゃんが? そんなことは無いっ! だって、おばあちゃんはいつだって元気で、男の人にだって負けないぐらいバリバリ働いていたのよ? おばあちゃんが不幸な事なんてないはずだわっ」

 そうよ、おばあちゃんはいつだって傍にいて笑ってくれていたし、すごくバリバリ働いていたんだから。男の人を何人も使って。

「忍…… 分かりました。確かにあなたがアレの代表みたいですね」

 脩さんが私を後ろにかばうように、立ち位置をかえる。
 なに? 脩さん……

「賃貸契約はまた後程。書類をそろえて伺います」

 訪れた二人は、頭をさげて帰っていった。




 脩さんは私を縁側に座らせた。自分は私の後ろに足を延ばして座った。

「忍? 僕が幸裕さんに結婚の前に聞いた話をするよ。いいかい? 忍はこの目の前に広がる畑をみていて」

 何? 脩さんは何か聞いているの? 私は何も聞いていないわ……

 それからは、背中に脩さんの体温を感じながらただ聞いていた。



 おばあちゃんは、なんで今までそんなに辛かったことを私に黙っていたの?

 おじいちゃんとその弟の諍いと血の争い。結婚したおばあちゃんへの嫌がらせ。死んだおじいちゃんが争うのを嫌がって生前に相続のあれこれを決めて、おじいちゃんの弟と決別したこと。おじいちゃんはお父さんが10歳の時亡くなって、おじいちゃんの弟から家を追い出されたこと。この田舎に買っていた土地でお父さんを一人で育てたこと。私が10歳になった時亡くなった両親の財産で、また親族ともめたこと…… 私の持つ財産が常に狙われていて、おばあちゃんが守っていてくれたこと……

 確かに私の両親は、飛行機の事故で亡くなって賠償金が支払われているけれど……
 そんなことでおばあちゃんが苦労している何て思わなかった。

 何時だって、おばあちゃんは笑っていたし、何時だってやりたいことをはっきり示せば叶っていたわ。
 私はただ、守られていただけなのね……
 何も知らずに……


「それは違う。忍? 考えてごらん。幸裕さんがただキミを守っていただけだと思うのかい?」

「違うの?」

「幸裕さんはもうキミと離れようとしていたのは分かっているよね」

「うん……」

「彼女が何もできない守られるだけのキミを置いていくと思うかい?」

「でも……」

「自分で働いて、自分で生活して、自分自身の気持ちで選んで結婚したんじゃないのか?」

「それはそう……」

「それとも、忍は自分自身を生きることをしないのか?」

「どういう事?」 

「僕のいうことを全て聞いて、僕の望むことだけをするつもりかい?」

「脩さんは言わないでしょう?」

「言ってもいいかい? じゃあ、仕事を辞めて。家に入って欲しい」

「なんで?」

「別にお金に困っているわけではないんだから。家で出来ることをして欲しい。趣味の音楽でもいいし、絵でもいい」

「でも、料理の学校行ってもいいって。奥さんしながら学生は大変だろうけどって」

「言ったよ? でも自分の人生は歩かないんだろう? 僕のいう人生を歩いてくれるんだろう?」

「…… それはいや。働けるのに働かないで家にこもるのは嫌」

「習い事でもしていればいいよ」

「そんなの遊んでいるだけじゃない、自分で出来ることは自分でする。できなければ考える。でもどうしても難しかったら…… どうしたらいいか、一緒に考えてくれる?」

 話を続けているうちに、陽は傾いてきた。空に夕闇がせまる……
 風が、部屋の温度を一気に奪っていく。

「メシでも食べよう。さっき買ってきた弁当でいいかな」

「ごめんなさい。山を下りて帰るつもりだったのに……」

「いや、見せたいものもあるから、明日まではいるつもりだったんだ」

 そういえば、脩さんはここに来る前にコンビニに寄っていたわ。ん? 最初からそのつもりだったの?
 道理で、キッチンやバスタブまで綺麗に掃除をしたわけね。

 お湯を沸かし、インスタントのお味噌汁とコンビニ弁当をテーブルに。そういえば、水屋に茶筒があったわ。
 急須で二人分のお茶もいれ、もぐもぐ食べる。

 外はすっかり暗くなっている。

 
「忍? ちょっとだけ外に出てみよう」

 脩さんの声に誘われて外に出てみると…… ふっと玄関の明かりも消えて……
 手を引かれて畑の方へいってみる。

「空を見て」

 空?

 空を見上げてみると……

 今まで見たことのないぐらいの星が……
 きえたりついたり……

「前に聞いたんだ。幸裕さんに…… 忍を置いてここに何故来るのかと」

「なんて言ったの」

「ここは旦那さんと初めて自分たちで手に入れた土地なんだって。結婚して家を追い出されて、苦労して手にいれたこの土地で暮らしたかったって。その時二人で話したんだって、年を取っても二人で暮らしましょう。子供や孫が遊びに来れるように、いつまでも二人で元気に過ごしましょうって。だから、ここに帰って来たって。僕らの子供が遊びに来れるようにって」

「脩さん……」

「さっききた彼らは、幸裕さんが拾ってきた人たちなんだ。ひとに疲れて自分の殻に籠ったり、人に傷つけられて動けなくなったひとなんだ。彼らが、癒されるまでの間、引きこもってもいいんだ。何も出来なくていいから、自然と触れ合いなさい。野菜が作れなくてもいいから。収穫だけでもいいからって」

「おばあちゃんらしい…… おばあちゃん、いつも言ってたわ。美味しく食べることが出来れば生きていけるって」

「らしい…… な……」


 風が身体を冷たくしてきて…… 思わず脩さんにすり寄っていった。




「おさむさーん、外みて!」

「まだ、はや、い……」

「寝ぼけてないで、外を見て!」

 
 私の目の前には畑があった。
 確かに、家のすぐ前は草がぼうぼうだったから抜いたんだけれども。

 昨日は気づかなかった。向こう側に、たくさん実っている木や畑がある。
 ここは、美味しく食べるための里なんだ。おばあちゃんのいる、お家なんだ……


 向こうから数人の人がやってきている。
 それぞれの手には、今朝採ったであろう野菜を抱えていた。   

 


しおりを挟む
感想 547

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。