3 / 72
第一章 託宣
第一章①
「きゃあぁっ!」
「媛様! 何してるんです!」
大量の書物を目の前が見えなくなるほどに積み上げて運ぼうとして、転倒した蓮花だ。
「あー、もう痛ったぁ……」
「そんなに前が見えなくなるほど積み上げるからですよっ」
玉鈴が腰に手を当てて、ぷんぷん怒っている。
「だって、お祖母様が戻られる前にお部屋を片付けておかなくては怒られてしまうんだもの」
蓮花の祖母はこの桃園房の主であり、村の重鎮だ。
村には村長などというものはいなくて、誰が治めるということもなく、昔からの秩序で成り立っていた。
全てが昔から引き継がれたしきたりにより成り立っている。
この村は外界とは遮断されているけれど、たった一つ外界と繋がっているのがこの桃園房だ。
外界から訪れるには選ばれたものだけが、正しい手順を行うことで桃園房を訪れることができる。
それは各国の中でも極秘とされていて、いろんな国の宰相がこの桃園房を訪れて、蓮花の祖母の占術を聞いてゆく。
村の人は外に出たら二度と村には入ることが出来ないが、たった一人桃園房の主だけは外界と村とを出入りすることが出来るのだ。
その力をもってして、桃園房の主になれると言われている。
ここは外界とは遮断された特別な村なのだ。
祖母が戻ると鳥の便りがあったので、蓮花は慌てて書物を片付けているところだ。
あの高熱を出した日、蓮花は目が覚めたら村人の力を失ったと沈痛な顔の祖母に告げられた。
それでも祖母は命が助かってよかったと頬を濡らしていたのだ。
『お前さえ、生きていてくれたら、それでいい』と。
蓮花の母は蓮花を産んだ後に、体調を崩してしまって亡くなってしまったと聞いている。
父のことは知らない。祖母に尋ねても教えてくれないから。
それでも村の子は村で育てるしきたりだ。
だから、蓮花はこの村ですくすくと大きくなった。
「蓮花、戻りましたよ」
房の入口で祖母の声がした。
「きゃぁ! お帰りなさい。お祖母様!」
お出迎えをしつつ、片付けきれなかった書物を慌てて懐の中に隠す蓮花だ。
「おや……、少し見ない間にお前は随分豊満になったようだね」
「あら、本当だわ。嬉しいこと」
祖母がすうっと息を吸う音が聞こえた。
──大変っ! 雷が落ちるわ!
「蓮花っ!」
「ご、ごめんなさいぃぃ……」
「書物は読んだらすぐに片付けなさいと言っているだろう!」
「だって~」
「だってではない」
はーっと大きくため息をついた祖母は、ひらひらと蓮花に手を振った。
「もういい。早く片付けなさい。客人が来る予定だから」
「はい」
村人としての力を失った分、蓮花は物心ついた頃から書物を読み漁るようになっていた。
書物はすごい。
そこにいなくても、そこにいるかのように知識を得ることができる。
また、力のない蓮花を不憫に思ったのか、祖母はありとあらゆる書物を蓮花に与えたのだ。
おかげで実は蓮花は大国の博士にもなれるほどの知識を得ているのだが、それは本人は知らない。
祖母は夢の世界の事のように大量の知識を得ていく蓮花をこの村から出すつもりはないのだから。
今回の外訪で国が荒れていることを確かめた。
今、この大陸は大国で皇帝が住んでいる白蓮皇国、その東にある彩鳳国、彩鳳国の南にある赫州国とで成り立っていた。
「媛様! 何してるんです!」
大量の書物を目の前が見えなくなるほどに積み上げて運ぼうとして、転倒した蓮花だ。
「あー、もう痛ったぁ……」
「そんなに前が見えなくなるほど積み上げるからですよっ」
玉鈴が腰に手を当てて、ぷんぷん怒っている。
「だって、お祖母様が戻られる前にお部屋を片付けておかなくては怒られてしまうんだもの」
蓮花の祖母はこの桃園房の主であり、村の重鎮だ。
村には村長などというものはいなくて、誰が治めるということもなく、昔からの秩序で成り立っていた。
全てが昔から引き継がれたしきたりにより成り立っている。
この村は外界とは遮断されているけれど、たった一つ外界と繋がっているのがこの桃園房だ。
外界から訪れるには選ばれたものだけが、正しい手順を行うことで桃園房を訪れることができる。
それは各国の中でも極秘とされていて、いろんな国の宰相がこの桃園房を訪れて、蓮花の祖母の占術を聞いてゆく。
村の人は外に出たら二度と村には入ることが出来ないが、たった一人桃園房の主だけは外界と村とを出入りすることが出来るのだ。
その力をもってして、桃園房の主になれると言われている。
ここは外界とは遮断された特別な村なのだ。
祖母が戻ると鳥の便りがあったので、蓮花は慌てて書物を片付けているところだ。
あの高熱を出した日、蓮花は目が覚めたら村人の力を失ったと沈痛な顔の祖母に告げられた。
それでも祖母は命が助かってよかったと頬を濡らしていたのだ。
『お前さえ、生きていてくれたら、それでいい』と。
蓮花の母は蓮花を産んだ後に、体調を崩してしまって亡くなってしまったと聞いている。
父のことは知らない。祖母に尋ねても教えてくれないから。
それでも村の子は村で育てるしきたりだ。
だから、蓮花はこの村ですくすくと大きくなった。
「蓮花、戻りましたよ」
房の入口で祖母の声がした。
「きゃぁ! お帰りなさい。お祖母様!」
お出迎えをしつつ、片付けきれなかった書物を慌てて懐の中に隠す蓮花だ。
「おや……、少し見ない間にお前は随分豊満になったようだね」
「あら、本当だわ。嬉しいこと」
祖母がすうっと息を吸う音が聞こえた。
──大変っ! 雷が落ちるわ!
「蓮花っ!」
「ご、ごめんなさいぃぃ……」
「書物は読んだらすぐに片付けなさいと言っているだろう!」
「だって~」
「だってではない」
はーっと大きくため息をついた祖母は、ひらひらと蓮花に手を振った。
「もういい。早く片付けなさい。客人が来る予定だから」
「はい」
村人としての力を失った分、蓮花は物心ついた頃から書物を読み漁るようになっていた。
書物はすごい。
そこにいなくても、そこにいるかのように知識を得ることができる。
また、力のない蓮花を不憫に思ったのか、祖母はありとあらゆる書物を蓮花に与えたのだ。
おかげで実は蓮花は大国の博士にもなれるほどの知識を得ているのだが、それは本人は知らない。
祖母は夢の世界の事のように大量の知識を得ていく蓮花をこの村から出すつもりはないのだから。
今回の外訪で国が荒れていることを確かめた。
今、この大陸は大国で皇帝が住んでいる白蓮皇国、その東にある彩鳳国、彩鳳国の南にある赫州国とで成り立っていた。
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
聖女様と間違って召喚された腐女子ですが、申し訳ないので仕事します!
碧桜
恋愛
私は花園美月。20歳。派遣期間が終わり無職となった日、馴染の古書店で顔面偏差値高スペックなイケメンに出会う。さらに、そこで美少女が穴に吸い込まれそうになっていたのを助けようとして、私は古書店のイケメンと共に穴に落ちてしまい、異世界へ―。実は、聖女様として召喚されようとしてた美少女の代わりに、地味でオタクな私が間違って来てしまった!
落ちたその先の世界で出会ったのは、私の推しキャラと見た目だけそっくりな王(仮)や美貌の側近、そして古書店から一緒に穴に落ちたイケメンの彼は、騎士様だった。3人ともすごい美形なのに、みな癖強すぎ難ありなイケメンばかり。
オタクで人見知りしてしまう私だけど、元の世界へ戻れるまで2週間、タダでお世話になるのは申し訳ないから、お城でメイドさんをすることにした。平和にお給料分の仕事をして、異世界観光して、2週間後自分の家へ帰るつもりだったのに、ドラゴンや悪い魔法使いとか出てきて、異能を使うイケメンの彼らとともに戦うはめに。聖女様の召喚の邪魔をしてしまったので、美少女ではありませんが、地味で腐女子ですが出来る限り、精一杯頑張ります。
ついでに無愛想で苦手と思っていた彼は、なかなかいい奴だったみたい。これは、恋など始まってしまう予感でしょうか!?
*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております
【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。
扇レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋
伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。
それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。
途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。
その真意が、テレジアにはわからなくて……。
*hotランキング 最高68位ありがとうございます♡
▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
王宮の万能メイド、偏屈魔術師を餌付けする
葉山あおい
恋愛
王宮で働く勤続八年のメイド、エレナ・フォスター。仕事は完璧だが愛想がない彼女は、いつしか「鉄の女」と呼ばれ恐れられていた。
そんな彼女に下された辞令は、王宮の敷地内にありながら「魔窟」と呼ばれる『北の塔』の専属メイドになること。そこの主である宮廷魔術師団長・シルヴィス・クローデルは、稀代の天才ながら極度の人嫌い&生活能力ゼロの偏屈男だった!
ゴミ屋敷と化した塔をピカピカに掃除し、栄養失調寸前の彼に絶品の手料理を振る舞うエレナ。黄金色のオムレツ、とろける煮込みハンバーグ、特製カツサンド……。美味しいご飯で餌付けされた魔術師様は、次第にエレナへの独占欲を露わにし始めて――?
意地悪な聖女や侯爵夫人のいびりも、完璧なスキルで華麗に返り討ち。平民出身のメイドが、身分差を乗り越えて幸せな花嫁になるまでの、美味しくて甘いシンデレラストーリー。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
翡翠の歌姫は 後宮で声を隠す〜特殊な眼を持つ歌姫が、2人の皇子と出会い、陰謀に巻き込まれながら王家の隠した真実に迫る
雪城 冴
キャラ文芸
◯第9回キャラ文芸大賞 奨励賞受賞
「権力に縛られずに歌いたい」
そう願う翠蓮には、自分でも知らない秘密があった。
それは、かつて王家が封じた禁忌の力――
◇
不吉を呼ぶ“特殊な眼”のせいで村を追放された少女・翠蓮(スイレン)。
生きるため、宮廷直属の音楽団の選抜試験に挑むことになる。
だが宮廷でもその眼は忌み嫌われ、早速いじめと妨害の標的に。
そんな翠蓮を救ったのは、
危険な気配をまとう皇子と、天女のように美しいもう一人の皇子だった。
しかしその出会いをきっかけに、
彼女は皇位争いと後宮の陰謀に巻き込まれていく。
歌声が運命を動かすとき、
少女は宮廷の闇と、身分違いの恋に立ち向かう。