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第二章 救命
第二章②
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「ありがとう、お祖母様。ごめんなさい」
祖母は蓮花に向かって首を横に振る。
そして、蓮花の首に見たことのない首飾りをつけてくれたのだ。つけられている紐は普通のものだったけれど、その先についている飾りはかなり手の込んだもののように見える。
「お祖母様、これは?」
「お前のお母さんのものだよ」
「お母様の……」
「おそらく父親から頂いたものなのだろうと思う。あの子が外から持ち込んだのはそれだけだった。もしかしたら何かの手がかりにはなるかもしれない」
今まで父親のことは考えた事はなかったのだけれど、確かに蓮花の父親は外の人なんだろう。
接点などはおそらく見つからないだろうが、それでもそれを祖母が今まで一言も言わなかったのに、蓮花に渡してくれたことが嬉しかった。
「お前はここに収まるような子ではなかった。国の元大きく羽ばたいてきなさい」
「はい」
蓮花は祖母から離れて大司馬の元に向かう。
「劉大司馬、お待たせいたしました」
「お別れは済んだか?」
「はい。ありがとうございました」
大司馬が手を差し出すとそれを掴んで、ひょい、と馬に跨る蓮花だ。
まだ、遠駆けはできないだろうと、大司馬と蓮花は同じ馬に二人で乗ることになっていた。
蓮花が手を振りながら馬を進めると、やがて靄のようなものが村を覆ってその姿が見えなくなる。
「見えなくなりました」
「そう。誰からも見えない」
「それで村には二度と帰れなくなるのですね」
大司馬は黙り込む。
自分はそこへ辿り着く方法を知っているけれど、それは国家機密なのだ。たとえ当の村人であってもそれを明かすことはできない。
それが村の掟ならばなおさらだ。
「すまない」
「いいえ。私があそこにいてもなんの役にも立たないのです。祖母は国の元羽ばたけと言いました。今後は劉大司馬のお役に立てるように頑張ります」
「いや、ぜひとも彩鳳国のためにお前の力を貸してくれ」
桃園房に住まうものは天人と呼ばれ、重宝される。
そのことを蓮花は知らなかったのだ。
「私でお役に立つのでしたら」
『彩鳳国に天女あり!』
白蓮皇国の皇帝に進言されたそれを聞いて、皇帝はたった一言言った。
「奪え」
天人を有する国は弥栄を約束されると言われている。
そんなものをみすみす彩鳳国に渡すわけにはいかないのだ。
都に向かって馬を進めて半日もすると途中に街が見えてくる。
それですら、蓮花には物珍しかった。
綺麗に舗装された道と、たくさんの家、それから珍しい物を売っている店。
「劉大司馬、すごいわ」
「媛様、ここでは大司馬は止めてくれ。身分が明かされるのはよくない。劉でいい」
「劉様、では媛様もお止めくださいませね」
「蓮花様、かしこまりました。今日はここで休んで明日、都に向かうがよろしいか?」
「ええ、もちろん。野宿でなくてよかったわ」
それも楽しみにしていたのに、とか蓮花はぶつぶつ言っている。
野宿を楽しみとはどういう媛なのか、そう思うと劉は笑えてきてしまうのだ。
早く王子に会わせたい。
宿に入ると、蓮花は真っ先に馬小屋に向かった。
そうして手ずから草をやり、劉の愛馬を撫でている。ちょうど自分も馬小屋に向かったところでその姿を見つけて、劉は建物の影に身を隠したのだ。
「今日はありがとうね。重かったでしょう? ごめんね。あら、慣れているの? うふふっ、たくましいのね」
一人で馬を相手に喋っているのだ。
けれど、愛馬の満足げに鼻を鳴らす様子を聞いていたら、あながち伝わっていないわけでもないらしいと少し微笑ましくなる。
「劉様は無茶ばかりするの? まぁ、困った人ね」
こら、それは捏造しすぎだろうが。
「おい、誰がだ?」
「王子様が止めるのも聞かずに敵陣に突っ込んでいくのは良くないわよ」
なぜ、そんなことを知っている!?
「まさか、本当に劉輝と話せるのではないだろうな」
劉は自分の名から一文字分けて愛馬を劉輝と呼んでいる。
祖母は蓮花に向かって首を横に振る。
そして、蓮花の首に見たことのない首飾りをつけてくれたのだ。つけられている紐は普通のものだったけれど、その先についている飾りはかなり手の込んだもののように見える。
「お祖母様、これは?」
「お前のお母さんのものだよ」
「お母様の……」
「おそらく父親から頂いたものなのだろうと思う。あの子が外から持ち込んだのはそれだけだった。もしかしたら何かの手がかりにはなるかもしれない」
今まで父親のことは考えた事はなかったのだけれど、確かに蓮花の父親は外の人なんだろう。
接点などはおそらく見つからないだろうが、それでもそれを祖母が今まで一言も言わなかったのに、蓮花に渡してくれたことが嬉しかった。
「お前はここに収まるような子ではなかった。国の元大きく羽ばたいてきなさい」
「はい」
蓮花は祖母から離れて大司馬の元に向かう。
「劉大司馬、お待たせいたしました」
「お別れは済んだか?」
「はい。ありがとうございました」
大司馬が手を差し出すとそれを掴んで、ひょい、と馬に跨る蓮花だ。
まだ、遠駆けはできないだろうと、大司馬と蓮花は同じ馬に二人で乗ることになっていた。
蓮花が手を振りながら馬を進めると、やがて靄のようなものが村を覆ってその姿が見えなくなる。
「見えなくなりました」
「そう。誰からも見えない」
「それで村には二度と帰れなくなるのですね」
大司馬は黙り込む。
自分はそこへ辿り着く方法を知っているけれど、それは国家機密なのだ。たとえ当の村人であってもそれを明かすことはできない。
それが村の掟ならばなおさらだ。
「すまない」
「いいえ。私があそこにいてもなんの役にも立たないのです。祖母は国の元羽ばたけと言いました。今後は劉大司馬のお役に立てるように頑張ります」
「いや、ぜひとも彩鳳国のためにお前の力を貸してくれ」
桃園房に住まうものは天人と呼ばれ、重宝される。
そのことを蓮花は知らなかったのだ。
「私でお役に立つのでしたら」
『彩鳳国に天女あり!』
白蓮皇国の皇帝に進言されたそれを聞いて、皇帝はたった一言言った。
「奪え」
天人を有する国は弥栄を約束されると言われている。
そんなものをみすみす彩鳳国に渡すわけにはいかないのだ。
都に向かって馬を進めて半日もすると途中に街が見えてくる。
それですら、蓮花には物珍しかった。
綺麗に舗装された道と、たくさんの家、それから珍しい物を売っている店。
「劉大司馬、すごいわ」
「媛様、ここでは大司馬は止めてくれ。身分が明かされるのはよくない。劉でいい」
「劉様、では媛様もお止めくださいませね」
「蓮花様、かしこまりました。今日はここで休んで明日、都に向かうがよろしいか?」
「ええ、もちろん。野宿でなくてよかったわ」
それも楽しみにしていたのに、とか蓮花はぶつぶつ言っている。
野宿を楽しみとはどういう媛なのか、そう思うと劉は笑えてきてしまうのだ。
早く王子に会わせたい。
宿に入ると、蓮花は真っ先に馬小屋に向かった。
そうして手ずから草をやり、劉の愛馬を撫でている。ちょうど自分も馬小屋に向かったところでその姿を見つけて、劉は建物の影に身を隠したのだ。
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一人で馬を相手に喋っているのだ。
けれど、愛馬の満足げに鼻を鳴らす様子を聞いていたら、あながち伝わっていないわけでもないらしいと少し微笑ましくなる。
「劉様は無茶ばかりするの? まぁ、困った人ね」
こら、それは捏造しすぎだろうが。
「おい、誰がだ?」
「王子様が止めるのも聞かずに敵陣に突っ込んでいくのは良くないわよ」
なぜ、そんなことを知っている!?
「まさか、本当に劉輝と話せるのではないだろうな」
劉は自分の名から一文字分けて愛馬を劉輝と呼んでいる。
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