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第二章 救命
第二章④
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「蓮花様はこの国のために煌月様を必ず救うと言っている。見守ってはいけませんか」
劉の問いかけに鴻璘は舌打ちした。
「どちらにしても医師も匙を投げたのだ。構わん、好きにするといい」
蓮花は医師の助手が作った清潔な場所に蛙をそっと置いた。
「けろりん、助けてね」
ふてぶてしい顔の大きな蛙が壺の中から出てきて、その場にいた全員が二、三歩後ずさる。
蓮花は袋の中から鍼を取り出し、その蛙にぶすーっと刺した。
さらにぐったりとして動けなくなった蛙の腹を小刀で開いていき、何やら臓腑を取り出すとまたその腹を針と糸で今度は縫っていく。
すっかり閉じたら、まだぐったりしている蛙を壺に戻した。
そして壺を劉に押し付けた。
「あまり動かさないようにして」
「あ……ああ」
そうしてその臓腑を串に刺し、天幕内の炎で炙りだした。言いようもなく胸が悪くなるような臭いが天幕内を包む。
一人、二人と天幕の外に出ていって今ここに残っているのは心の強いものだけだ。
もちろん劉将軍と、鴻璘は微動だにしない。
蓮花は今度はそれを煎じ始めた。
「おい! まさか、それを兄上に飲ませるんじゃなかろうな!?」
「飲ませます! これしか助けられないわ」
「蛙の臓腑だと……」
「けろりんは単なる蛙じゃないわ。蠱毒すら解毒する力を持った子なんです。助けるならあの子にしかできない」
「け……けろりん?」
「劉将軍! この人を黙らせてと言ったでしょう!」
強く蓮花に睨まれると劉はその言葉に何故か逆らえなくなる。
「鴻璘様、見守りましょう」
「だが、得体のしれないものを兄上に飲ませるわけには……」
その時だ。
煎じていた薬湯をふうふう吹いて冷ました蓮花はそれを自分の口に含んだ。
その姿を見て、劉も鴻璘も黙り込む。
そして寝台で苦しそうにしている煌月の唇に自分が口に含んだ薬湯をそっと流し込んだのだ。
蓮花はそれを何度も繰り返す。
──けろりん……ありがとうだけれど、激マズだわ。
すると、次第に煌月の苦しそうな表情が緩んでいったのだ。
先ほどまでは必死で呼吸する、という感じだったものが少しずつ落ち着いてゆく。
そして意識がなかった煌月がゆっくりと目を開いた。
そうして改めて蓮花は気づく。
──この方、なんて麗しいの?
黒曜石のような切れ長の瞳に、すうっと通った鼻梁、やや薄めの唇。その全てが完璧に配置されている。
「そなた……」
声までもが低くて甘い美声だ。
「私……」
こんな美しい人を見たことがない……!
夢中だったとは言え、唇を奪うように薬を飲ませてしまった。
蓮花は真っ赤になって立ち尽くす。
するとくすっと笑った煌月が蓮花の頬を指で撫でた。
「助けて……くれたのか、媛……」
「あの……私っ……」
「ありがとう」
目を開けていられたのはそこまでだったようで、煌月はまた目を閉じてしまった。
「煌月様っ!」
「兄上!!」
蓮花は手で制した。二人の動きがピタリと止まる。
「あと二日ほど高熱が出るはずです。けどそれは解毒のためなので心配しないで。今はお休みだけれど明日には目をお覚ましになるはず……。水分を十分に取っていただいてお粥から……お食事も取れるようなら栄養の……ある、ものを……」
蓮花は意識をなくしてしまった。
「蓮花様っ!!」
劉将軍……本当に声が大きい……のよ。
寝台に伏せてしまった蓮花を鴻燐が抱き上げた。
「俺の天幕に連れていこう」
「あ、私が……」
「いや、お前はけろりんを動かすなと言われていただろ」
そうして押し付けられた壺を抱えたままだったと気づく。劉は部下を呼んで壺を丁重に扱うように命じ、鴻璘の天幕へ向かう。
劉の問いかけに鴻璘は舌打ちした。
「どちらにしても医師も匙を投げたのだ。構わん、好きにするといい」
蓮花は医師の助手が作った清潔な場所に蛙をそっと置いた。
「けろりん、助けてね」
ふてぶてしい顔の大きな蛙が壺の中から出てきて、その場にいた全員が二、三歩後ずさる。
蓮花は袋の中から鍼を取り出し、その蛙にぶすーっと刺した。
さらにぐったりとして動けなくなった蛙の腹を小刀で開いていき、何やら臓腑を取り出すとまたその腹を針と糸で今度は縫っていく。
すっかり閉じたら、まだぐったりしている蛙を壺に戻した。
そして壺を劉に押し付けた。
「あまり動かさないようにして」
「あ……ああ」
そうしてその臓腑を串に刺し、天幕内の炎で炙りだした。言いようもなく胸が悪くなるような臭いが天幕内を包む。
一人、二人と天幕の外に出ていって今ここに残っているのは心の強いものだけだ。
もちろん劉将軍と、鴻璘は微動だにしない。
蓮花は今度はそれを煎じ始めた。
「おい! まさか、それを兄上に飲ませるんじゃなかろうな!?」
「飲ませます! これしか助けられないわ」
「蛙の臓腑だと……」
「けろりんは単なる蛙じゃないわ。蠱毒すら解毒する力を持った子なんです。助けるならあの子にしかできない」
「け……けろりん?」
「劉将軍! この人を黙らせてと言ったでしょう!」
強く蓮花に睨まれると劉はその言葉に何故か逆らえなくなる。
「鴻璘様、見守りましょう」
「だが、得体のしれないものを兄上に飲ませるわけには……」
その時だ。
煎じていた薬湯をふうふう吹いて冷ました蓮花はそれを自分の口に含んだ。
その姿を見て、劉も鴻璘も黙り込む。
そして寝台で苦しそうにしている煌月の唇に自分が口に含んだ薬湯をそっと流し込んだのだ。
蓮花はそれを何度も繰り返す。
──けろりん……ありがとうだけれど、激マズだわ。
すると、次第に煌月の苦しそうな表情が緩んでいったのだ。
先ほどまでは必死で呼吸する、という感じだったものが少しずつ落ち着いてゆく。
そして意識がなかった煌月がゆっくりと目を開いた。
そうして改めて蓮花は気づく。
──この方、なんて麗しいの?
黒曜石のような切れ長の瞳に、すうっと通った鼻梁、やや薄めの唇。その全てが完璧に配置されている。
「そなた……」
声までもが低くて甘い美声だ。
「私……」
こんな美しい人を見たことがない……!
夢中だったとは言え、唇を奪うように薬を飲ませてしまった。
蓮花は真っ赤になって立ち尽くす。
するとくすっと笑った煌月が蓮花の頬を指で撫でた。
「助けて……くれたのか、媛……」
「あの……私っ……」
「ありがとう」
目を開けていられたのはそこまでだったようで、煌月はまた目を閉じてしまった。
「煌月様っ!」
「兄上!!」
蓮花は手で制した。二人の動きがピタリと止まる。
「あと二日ほど高熱が出るはずです。けどそれは解毒のためなので心配しないで。今はお休みだけれど明日には目をお覚ましになるはず……。水分を十分に取っていただいてお粥から……お食事も取れるようなら栄養の……ある、ものを……」
蓮花は意識をなくしてしまった。
「蓮花様っ!!」
劉将軍……本当に声が大きい……のよ。
寝台に伏せてしまった蓮花を鴻燐が抱き上げた。
「俺の天幕に連れていこう」
「あ、私が……」
「いや、お前はけろりんを動かすなと言われていただろ」
そうして押し付けられた壺を抱えたままだったと気づく。劉は部下を呼んで壺を丁重に扱うように命じ、鴻璘の天幕へ向かう。
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