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第三章 救国の天女
第三章④
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つい蓮花はふらふらと煌月の寝台のところまで行き、匙でスープを掬って煌月の口元に持っていく。
とても綺麗な形の唇が開いて真っ白な歯が覗き、なんだか艶やかな舌がちらりと見える。
そんなお口にずっとスープをあげ続けたのだ。
それに、煌月はなんだか妙に嬉しそうだし、美形が嬉しそうなのは本当にどきどきする。
──これって何なの?
顔もなんだか熱い気がする。
「蓮花、お前は食べたのか?」
「あ、いえ後で頂こうかと……」
「ではここへ持っておいで」
しかし、王族と一緒にご飯を頂いていいものなのだろうか。
「蓮花、戦場では兵士も将軍も一緒に同じ釜の飯を食べる。俺は戦場の帰り道で、本来なら兵士達と一緒に食べるんだ」
「あ……ではご一緒に頂きます」
「いや、俺が食べさせてやろう」
──はい……?
一瞬煌月の言っていることが理解できず、蓮花は首を傾げた。
「蓮花も食べさせてくれたからな。そのお礼だよ」
お礼と言われてにっこり微笑まれたら抵抗できないのはなぜなのでしょうか?
蓮花が持ってきた食事を嬉しそうに口の中に入れるのに、蓮花は真っ赤になりながら必死で頂くのだ。
──あの! もうお味とか分からないんですけども!
「兄上……」
天幕に入ってきた鴻璘が固まっていた。
第二王子で英雄とも呼ばれた兄が嬉しそうに蓮花の口に匙を運んでいるのだ。
「なんだ?」
ちょっとだけ煌月が不機嫌になったのは、食べさせてもらっていた蓮花が恥ずかしがっているその姿がとんでもなく可愛くて、それを鴻璘がしっかり目撃していたからだ。
「いや、俺は蓮花を義姉様と呼んだ方がいいんですかね。あ、そうではなく、明日にはここを引き払うと聞いたのですが」
「えっ?」
煌月の熱はまだ下がりきってはいない。こうして寝台で身体を起こすことはできるけれど、昨日までは生死の境をさまよっていたのだ。
蓮花が止めようとしたのを察して、煌月は手のひらを向ける。
「熱はあるが、大事ない。それより早く都に戻らなくてはなるまい。父上にご報告せねばいけないことがたくさんあるしな」
「ご自身のご結婚も含めてですか?」
鴻璘が尋ねる。
「そうだ」
それを聞いて、蓮花は目の前が暗くなってしまうような気がした。
──ご結婚が決まっているのね。
それはそうだろう。これほどに素敵な人なのだ。
きっとどこぞの貴族のお姫様とか、どこぞのお国のお姫様とか、分からないけどお姫様とかそういう方なのだろう。
「あ、ご結婚されるのですね。では私のようなものが天幕を出入りするのは誤解を招くし、よろしくないですわね」
「鴻璘、俺の婚約者が天幕を出入りするのは望ましくないことか?」
「いえ。英雄と天女のご婚姻は国を上げての慶事となることでしょう」
「え!? 私!?」
「蓮花、俺と結婚してくれるか?」
「ほ、本気で仰ってるの!?」
突然のことで訳も分からず、蓮花は戸惑うばかりなのに、煌月も鴻璘も当然のように話を進めていくのが分からない。
「蓮花、兄上はとにかく女性に人気のある方で、宮廷でも引く手あまたなのは間違いない。けれど、そのどれもに了承したことはないし求婚もしたことはない。俺の知る範囲では、蓮花、お前だけだ」
呆然としている蓮花に鴻璘が告げた。
「受けてくれるか?」
国の英雄とも呼ばれている美貌の軍神だ。
断れるはずもない。
それだけではない。この話を受けなければいけないと心のどこかで強く声が聞こえるようだった。
その端正な顔を微笑ませて蓮花の方に伸ばしてくれているその手を蓮花はそっと取った。
「はい……」
そう返事をする。
──この方と私は出会うために桃園房を出た……。
天啓のようにその言葉が蓮花の頭に閃く。
ご機嫌な鴻璘が天幕の外に出て二人の婚約を発表すると外からは大きな歓迎の声が漏れ聞こえてきた。
「ほら、大歓迎だ」
そう言って蓮花は煌月に肩を抱かれて驚き、煌月を見た。真っすぐに見つめ返してきた瞳の煌めきには逆らえない。
「蓮花」
「はい」
「俺と婚姻してくれるな?」
こくん、と蓮花はうなずいた。
とても綺麗な形の唇が開いて真っ白な歯が覗き、なんだか艶やかな舌がちらりと見える。
そんなお口にずっとスープをあげ続けたのだ。
それに、煌月はなんだか妙に嬉しそうだし、美形が嬉しそうなのは本当にどきどきする。
──これって何なの?
顔もなんだか熱い気がする。
「蓮花、お前は食べたのか?」
「あ、いえ後で頂こうかと……」
「ではここへ持っておいで」
しかし、王族と一緒にご飯を頂いていいものなのだろうか。
「蓮花、戦場では兵士も将軍も一緒に同じ釜の飯を食べる。俺は戦場の帰り道で、本来なら兵士達と一緒に食べるんだ」
「あ……ではご一緒に頂きます」
「いや、俺が食べさせてやろう」
──はい……?
一瞬煌月の言っていることが理解できず、蓮花は首を傾げた。
「蓮花も食べさせてくれたからな。そのお礼だよ」
お礼と言われてにっこり微笑まれたら抵抗できないのはなぜなのでしょうか?
蓮花が持ってきた食事を嬉しそうに口の中に入れるのに、蓮花は真っ赤になりながら必死で頂くのだ。
──あの! もうお味とか分からないんですけども!
「兄上……」
天幕に入ってきた鴻璘が固まっていた。
第二王子で英雄とも呼ばれた兄が嬉しそうに蓮花の口に匙を運んでいるのだ。
「なんだ?」
ちょっとだけ煌月が不機嫌になったのは、食べさせてもらっていた蓮花が恥ずかしがっているその姿がとんでもなく可愛くて、それを鴻璘がしっかり目撃していたからだ。
「いや、俺は蓮花を義姉様と呼んだ方がいいんですかね。あ、そうではなく、明日にはここを引き払うと聞いたのですが」
「えっ?」
煌月の熱はまだ下がりきってはいない。こうして寝台で身体を起こすことはできるけれど、昨日までは生死の境をさまよっていたのだ。
蓮花が止めようとしたのを察して、煌月は手のひらを向ける。
「熱はあるが、大事ない。それより早く都に戻らなくてはなるまい。父上にご報告せねばいけないことがたくさんあるしな」
「ご自身のご結婚も含めてですか?」
鴻璘が尋ねる。
「そうだ」
それを聞いて、蓮花は目の前が暗くなってしまうような気がした。
──ご結婚が決まっているのね。
それはそうだろう。これほどに素敵な人なのだ。
きっとどこぞの貴族のお姫様とか、どこぞのお国のお姫様とか、分からないけどお姫様とかそういう方なのだろう。
「あ、ご結婚されるのですね。では私のようなものが天幕を出入りするのは誤解を招くし、よろしくないですわね」
「鴻璘、俺の婚約者が天幕を出入りするのは望ましくないことか?」
「いえ。英雄と天女のご婚姻は国を上げての慶事となることでしょう」
「え!? 私!?」
「蓮花、俺と結婚してくれるか?」
「ほ、本気で仰ってるの!?」
突然のことで訳も分からず、蓮花は戸惑うばかりなのに、煌月も鴻璘も当然のように話を進めていくのが分からない。
「蓮花、兄上はとにかく女性に人気のある方で、宮廷でも引く手あまたなのは間違いない。けれど、そのどれもに了承したことはないし求婚もしたことはない。俺の知る範囲では、蓮花、お前だけだ」
呆然としている蓮花に鴻璘が告げた。
「受けてくれるか?」
国の英雄とも呼ばれている美貌の軍神だ。
断れるはずもない。
それだけではない。この話を受けなければいけないと心のどこかで強く声が聞こえるようだった。
その端正な顔を微笑ませて蓮花の方に伸ばしてくれているその手を蓮花はそっと取った。
「はい……」
そう返事をする。
──この方と私は出会うために桃園房を出た……。
天啓のようにその言葉が蓮花の頭に閃く。
ご機嫌な鴻璘が天幕の外に出て二人の婚約を発表すると外からは大きな歓迎の声が漏れ聞こえてきた。
「ほら、大歓迎だ」
そう言って蓮花は煌月に肩を抱かれて驚き、煌月を見た。真っすぐに見つめ返してきた瞳の煌めきには逆らえない。
「蓮花」
「はい」
「俺と婚姻してくれるな?」
こくん、と蓮花はうなずいた。
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