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第四章 国の英雄
第四章①
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小さな街をいくつも抜けて、森を超えたとき、煌月と一緒に乗馬していた蓮花は煌月が馬を止めたのに気付いた。
「煌月様?」
煌月はまっすぐ前を見ている。とても誇らしげだ。
「蓮花、あれが都だ」
そう言って煌月が真っ直ぐに指をさす。
蓮花はその指の先に目をやった。
大きな山の中腹に今まで見たこともないような大きな王城が見える。山の中腹いっぱいに広がる屋根が太陽の光を反射していてそのとんでもない大きさが知れる。
その周りに広がる城下町は今までの街など小さなものだったのだと痛感した。やはり都は規模が全く違うのだ。
見たこともないような巨大な建物や城壁、たくさんの家は山の中腹から下にびっしりと立ち並んでいる。
「都自体が城塞のようにもなっている。ここまで攻められたことはないがな。一番奥の大きな建物が宮廷だ」
その宮廷はこんなに離れた場所からも大きく見える。
「とっても大きいわ」
「近くで見ると驚くぞ。本当に大きいからな」
「焼けた野原は……」
煌月は蓮花を見る。
蓮花はどこかとても遠くを見るような目をしていた。
「数年前までは西との境や南の境では焼け野原もあったと思うが、今は皇帝が立たれて後はそういうこともなくなったな。蓮花……焼け野原など見たことはないだろうに」
蓮花はハッとする。
「そういえば、そうですわね」
どうしてか蓮花はその光景を見たような気がしたのだ。
(なぜ知っているのかしら。書物で読んだのかしら。きっとそうね)
「我が国、彩鳳国は白蓮皇国との同盟も固い。以前のように焼け野原になるような戦はここ最近だいぶ少なくなった」
それでも時折、思い出したかのように南の赫州国がちょっかいを掛けてくるのがやっかいなのだ。
赫州国はもともと遊牧民の集まりで首長も立ったとは言うけれど、国として統一されているとは言えない。
国境では小競り合いが起きることもまだある。
「平定までの道は遠いな……」
一言そう呟いて、煌月は兵たちに声を掛けた。
「都までもうすぐだ! 帰るぞ!」
応! と答える声が力強くて、煌月は自分の前にいる蓮花をぎゅうっと抱いた。兵が元気に返事ができるほどまでに回復しているのは蓮花のお陰だ。
* * *
都への数日間の道中は蓮花が加わって本当に楽しいものになった。
「蓮花様! 蜂の巣を見つけました!」
「本当!? よくやったわ!」
喜んだ蓮花は劉将軍の部下を連れて意気揚々と森の中に入っていって蜂の巣を持ち帰ったりする。
部下たちも戦の帰りで、いつもなら重い足を引きずりながら都への道を進むのに、蓮花が滋養に良いものを森の中で見つけてきては部下たちにせっせと食べさせるので、日を重ねれば重ねるほど、部下たちは元気になる始末だ。
蓮花は気づくとしゃがんで草を取っていたりする。そして、煌月が見つめているのに気づくとふわりとした笑顔を浮かべる。
「これは蓬です。止血効果が高くてその上血を増やす効果もあるんですよ。兵士の方にはとても大事なことでしょう。興奮して眠れないときに枕元においてもいいのです。高ぶった神経を落ち着かせてゆっくりと良く眠れるから」
煌月にとっては単なる道端の草も、蓮花にとっては違うようで、その知識の深さに宮廷医師たちも一目置いていて、一緒に薬草を摘んだり乾かしたりしているようだ。保存がきくものもあるので、宮廷でもとても役立つでしょうと喜んでいた。
「兄上、蓮花はまさに天女ですね」
「うん」
誰とでも穏やかに接し、その優しさや知識の深さ、飾らない人柄に触れたら誰もが彼女に惹かれる。休憩をいれるため、野営をしている最中、煌月は兵の間を歩き回る蓮花を見ていた。
とても愛おしい存在だ。
命を救ってくれたのはもちろんだけれど、それだけではないものがやはり彼女にはある。
* * *
「煌月様?」
煌月はまっすぐ前を見ている。とても誇らしげだ。
「蓮花、あれが都だ」
そう言って煌月が真っ直ぐに指をさす。
蓮花はその指の先に目をやった。
大きな山の中腹に今まで見たこともないような大きな王城が見える。山の中腹いっぱいに広がる屋根が太陽の光を反射していてそのとんでもない大きさが知れる。
その周りに広がる城下町は今までの街など小さなものだったのだと痛感した。やはり都は規模が全く違うのだ。
見たこともないような巨大な建物や城壁、たくさんの家は山の中腹から下にびっしりと立ち並んでいる。
「都自体が城塞のようにもなっている。ここまで攻められたことはないがな。一番奥の大きな建物が宮廷だ」
その宮廷はこんなに離れた場所からも大きく見える。
「とっても大きいわ」
「近くで見ると驚くぞ。本当に大きいからな」
「焼けた野原は……」
煌月は蓮花を見る。
蓮花はどこかとても遠くを見るような目をしていた。
「数年前までは西との境や南の境では焼け野原もあったと思うが、今は皇帝が立たれて後はそういうこともなくなったな。蓮花……焼け野原など見たことはないだろうに」
蓮花はハッとする。
「そういえば、そうですわね」
どうしてか蓮花はその光景を見たような気がしたのだ。
(なぜ知っているのかしら。書物で読んだのかしら。きっとそうね)
「我が国、彩鳳国は白蓮皇国との同盟も固い。以前のように焼け野原になるような戦はここ最近だいぶ少なくなった」
それでも時折、思い出したかのように南の赫州国がちょっかいを掛けてくるのがやっかいなのだ。
赫州国はもともと遊牧民の集まりで首長も立ったとは言うけれど、国として統一されているとは言えない。
国境では小競り合いが起きることもまだある。
「平定までの道は遠いな……」
一言そう呟いて、煌月は兵たちに声を掛けた。
「都までもうすぐだ! 帰るぞ!」
応! と答える声が力強くて、煌月は自分の前にいる蓮花をぎゅうっと抱いた。兵が元気に返事ができるほどまでに回復しているのは蓮花のお陰だ。
* * *
都への数日間の道中は蓮花が加わって本当に楽しいものになった。
「蓮花様! 蜂の巣を見つけました!」
「本当!? よくやったわ!」
喜んだ蓮花は劉将軍の部下を連れて意気揚々と森の中に入っていって蜂の巣を持ち帰ったりする。
部下たちも戦の帰りで、いつもなら重い足を引きずりながら都への道を進むのに、蓮花が滋養に良いものを森の中で見つけてきては部下たちにせっせと食べさせるので、日を重ねれば重ねるほど、部下たちは元気になる始末だ。
蓮花は気づくとしゃがんで草を取っていたりする。そして、煌月が見つめているのに気づくとふわりとした笑顔を浮かべる。
「これは蓬です。止血効果が高くてその上血を増やす効果もあるんですよ。兵士の方にはとても大事なことでしょう。興奮して眠れないときに枕元においてもいいのです。高ぶった神経を落ち着かせてゆっくりと良く眠れるから」
煌月にとっては単なる道端の草も、蓮花にとっては違うようで、その知識の深さに宮廷医師たちも一目置いていて、一緒に薬草を摘んだり乾かしたりしているようだ。保存がきくものもあるので、宮廷でもとても役立つでしょうと喜んでいた。
「兄上、蓮花はまさに天女ですね」
「うん」
誰とでも穏やかに接し、その優しさや知識の深さ、飾らない人柄に触れたら誰もが彼女に惹かれる。休憩をいれるため、野営をしている最中、煌月は兵の間を歩き回る蓮花を見ていた。
とても愛おしい存在だ。
命を救ってくれたのはもちろんだけれど、それだけではないものがやはり彼女にはある。
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