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第五章 後宮へ
第五章④
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「あら、蓮花様お茶が……」
「ごほっ……も、申し訳ございません。あの、大変不躾なことをお伺いいたしますが、桜綾様はお幾つでいらっしゃるのですか?」
「私、十八になります」
ごほごほっ!
お茶も喉に詰まり放題だ。
「っじ、じゅうはち!?」
若いとは思った! 肌も綺麗だと思ってはいた!
──歳下の義姉だったなんて、知らなかった!!
「国同士の婚姻ですから……」
聞けば婚姻が決まったのは桜綾が生まれてしばらくの事だったという。
当時国同士は今よりももっと荒れていて、白蓮皇国と彩鳳国の外交は喫緊の課題だった。
白蓮皇国の妾姫として生まれた桜綾は第七皇女という身分もあり、生まれてすぐに当時10歳だった彩鳳国王太子の妃にどうかと打診があった。
国同士のことを鑑みて、彩鳳国国王はそれを受け入れて、二つの国は友諠を結び、今に至ると言われているのだそうだ。
7歳になると神の子から子供になる儀式を白蓮皇国では行う。白蓮皇国では7歳までは神の子として大事にされるが、7歳を過ぎると子供として扱い、早い子は奉公に出たりもする。
桜綾はそれを待って輿入れをした、というのだ。
「もう、白蓮皇国にいた時間よりも彩鳳国にいる時間のほうが長くなってしまったのに」
醒雪が桜綾を大事にしてくれていることは分かっている。
けれど……。
「物語でも愛し合う男女は結ばれるというのに、私は醒雪様に嫌われているんですっ」
はらはらっと涙を流す様子が可憐過ぎて、蓮花はつい見惚れそうになってしまった。
しかし、蓮花が気になったのは別のことだ。
桜綾はとても頭の良い人だ。
それは一緒に歴史の勉強などをしていても分かるし、この芙蓉宮が節度を持って運営されていることからもとても良く分かる。
なのに、醒雪とのことにはその賢さよりも、何か物語のようなものが優先されているような気がするのだ。
「なぜ、物語にこだわるのかしら?」
「あの……それは……」
頬を染めた桜綾がそっと教えてくれた。
今、都で大流行している書物だ。
『月華物語』
国の英雄である煌月が模範になっていて、身分違いの姫と紆余曲折の末に結ばれるという恋愛物語なのだそうだ。
「華蓮様は何度も身を引こうとなさるのだけれど、それを追う洸月様がとても素敵なの」
しかも、二人の恋愛場面の描写がとても美しくて素敵なんです、と桜綾はうっとりしている。
「他にも同じ作者で『許嫁最愛物語』というのがありますの。幼なじみが大人になって婚姻するんですけど、こちらもとってもきゅんきゅんするお話で……」
──それ、醒雪様と桜綾様がお手本になっているのではなくて?
ありとあらゆる書物を読んできた蓮花ではあるが、その物語は読んだことがなかった。
祖母である慶蓉は蓮花が読み漁る本の中から恋愛物語を除外していたのだ。
書物は蓮花が生きていく上で糧となるものだけを選んでいた。
なるほど、都の女性達はそのような書物に夢中らしい、と知って蓮花はその一番流行しているという『月華物語』を取り寄せてみた。
──こ、これがきゅんきゅんなのですか⁉︎
蓮花はその作品になかなかの衝撃を受けた。
確かに物語は桜綾が教えてくれた通りのお話だった。
洸月という皇子がいて、身分を隠し華蓮と出会う。二人は市井で恋に落ちるのだが、身分が違うことを知って、華蓮は身を引こうとする。
皇子は諦めずに華蓮を追ってついに二人は様々な障壁を乗り越えて結ばれる! というお話なのだが、桜綾が言うところの恋愛情景が……。二人は出会うたびに熱い情熱を交わす。
熱くとろける吐息とか、汗ばんだ肌が触れ合うとか、蓮花としては目を疑うような描写が次々と出てくるのだ。
蓮花は男女のあれこれを医学書で学んだ。
(こ、これは⁉︎)
描写が変わると、こうも変わるものなのだろうか。
しかも異常に読みやすく、登場人物にもすんなりと入り込めるような物語なのだ。
これは宮中で流行っている、と言うのも納得だった。
しかし、そういう問題ではなかった。
蓮花の見たところ、確かに醒雪は桜綾を大事に思っている。そしてもちろん桜綾も。
とても大事に思っているのにそれが伝わっていないことがとても不思議だった。
「ごほっ……も、申し訳ございません。あの、大変不躾なことをお伺いいたしますが、桜綾様はお幾つでいらっしゃるのですか?」
「私、十八になります」
ごほごほっ!
お茶も喉に詰まり放題だ。
「っじ、じゅうはち!?」
若いとは思った! 肌も綺麗だと思ってはいた!
──歳下の義姉だったなんて、知らなかった!!
「国同士の婚姻ですから……」
聞けば婚姻が決まったのは桜綾が生まれてしばらくの事だったという。
当時国同士は今よりももっと荒れていて、白蓮皇国と彩鳳国の外交は喫緊の課題だった。
白蓮皇国の妾姫として生まれた桜綾は第七皇女という身分もあり、生まれてすぐに当時10歳だった彩鳳国王太子の妃にどうかと打診があった。
国同士のことを鑑みて、彩鳳国国王はそれを受け入れて、二つの国は友諠を結び、今に至ると言われているのだそうだ。
7歳になると神の子から子供になる儀式を白蓮皇国では行う。白蓮皇国では7歳までは神の子として大事にされるが、7歳を過ぎると子供として扱い、早い子は奉公に出たりもする。
桜綾はそれを待って輿入れをした、というのだ。
「もう、白蓮皇国にいた時間よりも彩鳳国にいる時間のほうが長くなってしまったのに」
醒雪が桜綾を大事にしてくれていることは分かっている。
けれど……。
「物語でも愛し合う男女は結ばれるというのに、私は醒雪様に嫌われているんですっ」
はらはらっと涙を流す様子が可憐過ぎて、蓮花はつい見惚れそうになってしまった。
しかし、蓮花が気になったのは別のことだ。
桜綾はとても頭の良い人だ。
それは一緒に歴史の勉強などをしていても分かるし、この芙蓉宮が節度を持って運営されていることからもとても良く分かる。
なのに、醒雪とのことにはその賢さよりも、何か物語のようなものが優先されているような気がするのだ。
「なぜ、物語にこだわるのかしら?」
「あの……それは……」
頬を染めた桜綾がそっと教えてくれた。
今、都で大流行している書物だ。
『月華物語』
国の英雄である煌月が模範になっていて、身分違いの姫と紆余曲折の末に結ばれるという恋愛物語なのだそうだ。
「華蓮様は何度も身を引こうとなさるのだけれど、それを追う洸月様がとても素敵なの」
しかも、二人の恋愛場面の描写がとても美しくて素敵なんです、と桜綾はうっとりしている。
「他にも同じ作者で『許嫁最愛物語』というのがありますの。幼なじみが大人になって婚姻するんですけど、こちらもとってもきゅんきゅんするお話で……」
──それ、醒雪様と桜綾様がお手本になっているのではなくて?
ありとあらゆる書物を読んできた蓮花ではあるが、その物語は読んだことがなかった。
祖母である慶蓉は蓮花が読み漁る本の中から恋愛物語を除外していたのだ。
書物は蓮花が生きていく上で糧となるものだけを選んでいた。
なるほど、都の女性達はそのような書物に夢中らしい、と知って蓮花はその一番流行しているという『月華物語』を取り寄せてみた。
──こ、これがきゅんきゅんなのですか⁉︎
蓮花はその作品になかなかの衝撃を受けた。
確かに物語は桜綾が教えてくれた通りのお話だった。
洸月という皇子がいて、身分を隠し華蓮と出会う。二人は市井で恋に落ちるのだが、身分が違うことを知って、華蓮は身を引こうとする。
皇子は諦めずに華蓮を追ってついに二人は様々な障壁を乗り越えて結ばれる! というお話なのだが、桜綾が言うところの恋愛情景が……。二人は出会うたびに熱い情熱を交わす。
熱くとろける吐息とか、汗ばんだ肌が触れ合うとか、蓮花としては目を疑うような描写が次々と出てくるのだ。
蓮花は男女のあれこれを医学書で学んだ。
(こ、これは⁉︎)
描写が変わると、こうも変わるものなのだろうか。
しかも異常に読みやすく、登場人物にもすんなりと入り込めるような物語なのだ。
これは宮中で流行っている、と言うのも納得だった。
しかし、そういう問題ではなかった。
蓮花の見たところ、確かに醒雪は桜綾を大事に思っている。そしてもちろん桜綾も。
とても大事に思っているのにそれが伝わっていないことがとても不思議だった。
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